見せられた記憶
高給取りの仕事には第二学年のはじめにある属性検査が必須だ。
しかし、学院の学費は前払い。今年の分は大丈夫だが、来年のはじめにいようと思うと、最低でも1ヶ月分は先に払わなくてはならない。
そんな余裕があるものか!
考えながら寝て、その日の夜、夢を見た。
ある人の人生なのだろうが、殆どが本の紹介だった。
OLが”悪役令嬢”になる。
この物語の”悪役令嬢”位置の”ヒロイン”が出てきて、人の心を操る"アイテム"を使って男を何人も侍らせる。
王子様にまで手を出した"ヒロイン"を"悪役令嬢"がを逆ざまぁして終わり。
"ヒロイン"は、犯罪証拠の捏造と、王子の心を操ろうとした国家反逆罪で牢屋行き。
白に近いほど色の薄いブロンド、翠の目。
私そっくりの"ヒロイン"を見て私は思った。
その手があったか。
色仕掛けには、元手がかからない。私の外見から言って、むしろ普通の格好のほうが成功率が上がるのではないだろうか?
すっかり忘れていたが、学院の学費は馬鹿高い。
当然、通えるのは金持ちだけ。
"玉の輿探しなら学院"と言われるだけはある。
王子に手を出す前に貢がせた装飾品やドレスは、公爵令嬢と張り合えるレベルのものだった。
一式売れば、男爵あるいは子爵程度の爵位なら買えるくらいになるだろう。
少なくとも、数カ月ーいや、下手したら1年ぐらいの学費になる。
とりあえず第2学年の始めの属性検査までは在学したい。
終わったらすぐに院長に推薦をもらって女性近衛になる。魔力操作は完璧だ。最近まで貴族だったので、庶民よりは簡単に推薦はもらえるだろう。
色仕掛けが咎められ推薦をもらえなかったとしても、属性検査が済んでいればある程度の高給取りになれる。
おお、完璧な計画だ。
”ヒロイン”はもったいない事をしたものだ。
そもそも、王族にさえ使わなければ、知られていない薬ー"アイテム"なんてバレるはずがない。
国家反逆罪で投獄とか、王族に手を出さなきゃ回避可能だろう。
完全犯罪の毒は、知られていない、現存のものと全く違う毒なのだ。
わざわざ、他国のマイナーな薬を使っているのだ。
せいぜい伯爵家位でやめておけば、解析されることもなかっただろうに。
私は、そんな愚は犯さない。
貢がせて貴族位を買って、お義母様とお姉様の地位を盤石にし、自分も魔力の量と操作性を武器に女性近衛になるのだ。
やっと現状をどうにかする算段がついた。
そうすれば、浸水した部分の復興を助けられるし、私が女性近衛になれればお姉様は女官を辞めてもいい。
お姉様は本来次期当主だ。
お義母様の跡を次ぐ勉強を再開することもできるだろう。
状況説明
”記憶”は、典型的なヒロインが悪役令嬢化するパターンの悪役令嬢者ものです。
ちなみに”アイテム”には、
・他国では殆ど無い薬草を使っている。(この国では猫じゃらし的扱いの草。)
・そのため他国ではおとぎ話扱い。この国では知られていない。
・他国からの移民が小遣い稼ぎに作った粗悪品
という設定があったりします