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ほしがりなお姫様

作者: かなで四歌
掲載日:2020/01/13

 あるところに、それはそれは美しい、けれどほしがりなお姫様がいました。



 ほしい、ほしい。全部ほしい。

 お姫さまは目に付いたものぜんぶをほしがります。

 あの服がほしい。

 あの犬がほしい。あの猫もほしい。あの馬もほしい。

 あのおいしそうなケーキが、煌びやかなアクセサリーが、日当たりのいいあの家が。

 あの優しそうなお父さんがほしい。あの綺麗なお母さんがほしい。

 あのサーカスがほしい。あの橋がほしい。あの町だって私のものよ。

 ぜんぶぜんぶ、私のものなのよ。

 でも足りない、きっと全然足りないの。

 なぜって、私は満足していないもの!



 お城の家来はみんな、お姫様のために、毎日いろいろなおくりものを集めてきます。

 それが王様の命令だったからです。

 お妃さまを亡くした王様は、それはもうお姫様に甘いのでした。



 やがて王国中からよいものを全て集めると、お姫さまは悲しみました。

「私は全部を手に入れたのに、前と何も変わってないわ」

 豪華なベッドに寝転んで、お姫さまは涙を流します。

「本当に私がほしいものは、いったいどこにあるのかしら」



 お姫様が部屋から出てこなくなったので、王様はすっかり困ってしまいます。

「いったいどういうことだ。私は全てを与えてやったのに」

「私がほしいものは、この国にはなかったようなのです」

「ならばおまえはどうしたら、幸せになれるというのだろう」



 王様は国中におふれを出しました。

「だれか私の娘を満足させてはくれないか。できたものを、私の次の王とする」



 たくさんの人が、色々なおくりものを手に集まりました。

 お姫さまは大層喜びましたが、決して満足はできません。

 お姫様の宝物庫はあふれ、しかし国中が疲れ、王様はうなだれてしまいました。



 そんな中、一人の男の子がお城の扉を叩きます。

 年のころはお姫さまと同じくらいで、しかし随分とみすぼらしく見えました。

「王様、私をお姫様に会わせていただけませんか」

 王様はわらにもすがる気持ちで、その男の子をお姫様に会わせます。

「お姫様、私はあなたと友達になりに来ました」

「ともだち……?」

「ええ。一緒に過ごしてみませんか」

 男の子は言いました。

 野原を歩き、川に遊ぼう。

 手をつなぎ、隣を歩こう。

 あなたの苦しいとき、楽しいとき、いつも隣にいて、あなたと同じように感じましょう。

「それで私は満足できるのかしら?」

「ええ、きっと満足できますよ」



 数年がたち、それからというもの、お姫さまと新しい王様はいつも一緒にいます。

 手をつないで歩き、二人で相談し、共に国を治めます。

 あんなにあふれていたお姫様の宝物庫には、今は少しの思い出の品しか入っていません。

「ねえねえ、私、あれがほしいわ」

 お姫様が甘えると、王様は微笑みを浮かべました。

「一番綺麗なものでなくてもいいの。一番高いものでもなくていいわ。

 きっとなんでもいいの。

 私、あなたがくれる、あなたが考えて選んでくれたものがほしいの」

「私のお姫さまはほしがりですね」

 少し考えて、王様はお姫様に言いました。

「今日も、私の心からの言葉をおくりましょう」

 王様はお姫様の目を見つめて、大切そうに手を取って言いました。

「お姫様。大好きですよ」

「私も! 私、そのおくりものが一番好き!」

 お姫さまは満足そうに、王様の目を見つめました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物じゃない幸せの価値。 大切にしたいですね。 王様とお姫様ずっと幸せに!
2023/04/29 18:22 退会済み
管理
[一言] 個人的に、物って、たくさん持っていてもあまり満たされないのですよね。 むしろあり過ぎると使いたい物を探すのに困るので、必要なものが必要なだけあるのが理想です。 お姫様が本当に求めているのが…
[一言] 本当に必要なものは、モノではなく、心。そして共に過ごす時間と、誠意ある言葉。当たり前のことですが、それを相手に捧げるのは何より難しいことだと思います。 モノで解決させることの方が簡単で、忙…
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