■ 07 … 004
――03:32――
ドルチェの掲げた指先から頭上の枝まで半透明の糸が伸びていた。枝から周囲にかけて縦横に絡んだ無数の網目……おそらくはそこから見えざる糸が張り巡らされているのだろう。半透明の糸と透明の糸を組み合わせた糸の結界が、縦横無尽の檻となってナデシコに降り注ごうとしている。のみならず左右から、そしてナデシコ自身からも半透明の糸が次々と迫っていた。勢いこそ緩慢だったが、避けるのはほとんど困難だ。
対するナデシコの動きは明快。糸の結界を敷くドルチェに向けて全力で駆け始めていた。頭上の網目を掻い潜り目前の糸を躱し前へ前へと疾走する。
「フフ……」
無謀な突進。そう捉えたのだろう、ドルチェの口元が可笑しそうに歪む。それを見ながら、僕――伊吹アスクはひどい後悔を覚えていた。
僕はこの場に来るまで、もしかしたら対話によって解決できるのではないか――そんな甘い考えを持っていた。言霊使い師を介して見ているもうひとりの狂乱者の倉見モカと違い、神楽坂ドルチェのことは浅倉エイジを通して聞いただけだったからだ。
モカの心はひどい有り様で……対話の予知なんてありはしなかった。人間がそう簡単にあそこまで追い詰められるものだとも思わなかった。だから僕は神楽坂ドルチェとの対話という可能性に一縷の望みを抱いていたのだ。
……その認識がどれだけ甘かったか、よくわかった。
ナデシコの軽口に、同じく軽口で応じた神楽坂ドルチェの表情は終始愉しげだった。それがただただ、怖ろしかった。僕らを見るナデシコの目が明白に、僕らが死に至るまでの道程を見ていたからだ。退路を塞ぐ算段を、四肢を拘束する順番を、無防備になった僕らが辿る結末を、神楽坂ドルチェの両目は思い描いている。
モカのそれとはまた違った形の殺意。モカが燃え続ける炎のような殺意だとしたら、ナデシコのそれは無条件で凍てつかせるような冷たい殺意だった。胸中に抱く溢れんばかりの殺意を向けながら、これから殺そうとしている相手と仲良く会話をしてみせる精神性……それが歪んでいないはずがないのだ。
対話で解決が望めるなんて、笑うこともできない絵空事だ……
『足手まといじゃけえ。助力はいらん』
ナデシコはここに着く前にそう言っていた。
ひとりで戦い、勝利を収めると。
……僕にできることはまた、何も……ないのだ。
ただ祈るのみだった。両膝を震わせながらドルチェを挑発し、駆けるナデシコの勝利を。
不可避の糸がナデシコの目前に迫る。ナデシコは不可避の糸に向けて鋭い手刀を一閃。するとどうだ、半透明の糸がいとも容易く両断されていた。
「!」
「あ……!」
「……ふぅん?」
僕とフユが声を上げ、ドルチェの両目が訝しむように細まる。次々と迫る半透明の糸をナデシコはステップを踏むように身を捻って回避し、そして二度三度と手刀を振るって、糸を切り落としていく。彼女の手刀が振るわれるたび、そこに微かなきらめきが生まれていることに気づく。枝葉の天上から注ぐ細い月明かりを受けてきらめくそれは、刃だった。
「ふん……アンタも鍵と竜殺しの剣を叩く槌から受け取ってたワケ」
「察しがいいのう。近頃は物騒じゃけえ」
踊りを中断するように立ち止まるナデシコ。周りの糸は動きを止めている。ナデシコは手中できらめきを弄ぶように、その得物を振り回す。くるくると星明かりを受けて三つの刃が踊っているように見えた。しかし次の瞬間にはそれが一振りのナイフであることがわかった。
「バタフライナイフ? チャチな玩具ね」
ドルチェの言葉に頷くように、ナデシコは得物を開いて見せた。バタフライナイフ……柄の部分に収納された刃を、付け根の部分を支点にし、片手で広げることのできるナイフ。
鍵と竜殺しの剣を叩く槌……小岩井テンマの脅威度に逆比例した武器を創生・貸与する固有能力だ。ナデシコは予め彼からバタフライナイフを渡されていたことになる。『固有能力の脅威度に逆比例』した武器を創生するというあの能力は、脅威度の高い固有能力の持ち主が相手になるほど、殺傷力の低い武器を生む。悲恋を唄う蜘蛛という脅威度の高い固有能力を持つドルチェならきっとプラスチック製の包丁などになるだろう。固有能力が不明の倉見モカがガトリング砲を振り回すのはつまり彼女自身の持つ固有能力の脅威度は極めて低いということを意味していた。……では、ナイフは? 八嶋ナデシコの固有能力は果たして、どんなものなのだろう……
「これで上等じゃけえ、裁縫用のハサミでも良かったのう」
不敵に言い捨ててナデシコはドルチェへの疾走を再開する。それに応えるようにドルチェは半透明の糸で迎え撃つ。糸を捌くナデシコのその手の動きは堂に入ったもので、アクションゲームの好成績のリプレイ映像でも見ているかのような、そんな錯覚すら覚える。
けど、けれどナデシコ。それじゃ……時間の問題だ……
幾度となくドルチェの前に立ちはだかっていた宇都宮コトリの音速を越える春への扉を以ってしてもドルチェの側へは至れなかったのだ。いくら鋭利なナイフがあったところでドルチェの生み出す糸の量に、技巧に、脅威には届かない。いずれはあの半透明の糸に絡め取られてしまう。それが次の瞬間でないという保証はどこにもない。
「フフフ…………」
不敵に嗤うドルチェに向かって、バタフライナイフを片手に駆ける八嶋ナデシコ……僕は目を背けたいという気持ちを殺しながら、彼女の闘いを見ていた。
……しかし、妙だった。
糸を躱し、躱し、躱し、切断し、躱し、切断し、切断し、前へと迫るナデシコ。左右から、天上から、前方から迫る半透明の糸の檻は緻密にできていて、ひとつを避けても次の糸によって、次の糸をやり過ごしてもその次の糸によって、どんどん追い詰められていくように出来ている。さながら詰将棋だ。王を詰める為の最適解を実践し続けているかのようだった。
しかしナデシコは、追い詰められこそするも、致命的な詰みに嵌まる一手を巧妙に回避している。不可避に近い糸の檻をかいくぐり続けるナデシコ。まるで予めどこに糸が向かっているかが見えているかのような、そんな動きに思えてならない。
――詰将棋をしているのは果たしてどちらだろう?
『白昼夢想って言ってね』
耳元で声。半透明の亡霊、五十嵐ビビが囁く。
八嶋ナデシコの固有能力の正体を。
――03:34――
(ちぃと、骨が折れるのう……)
前後左右上下。神楽坂ドルチェの糸による攻撃は死角がない。宇都宮コトリとの戦闘を続けていたと聞いた。その戦闘の成果なのだろう、糸の結界を操るドルチェの技量は優れていて、小ぶりのバタフライナイフ一振りで対抗するのは如何にも難しい。
難しい――が、不可能なことではなかった。
蝶の舞のような足運びで迫りくる糸を躱し、心許ない小振りの刃でドルチェに迫る為の道を切り開き続ける。ただの偶然……天性の勘……そんな言葉では済まされないだけの回避を重ねた頃、ドルチェの表情から余裕は削げ落ちて、驚愕に染まっていた。ドルチェのその表情を、ナデシコは長いこと目にしていた。
(まつ毛が長い。よぉ見れば整った面をしとるが……そろそろ見飽きたのう)
余裕が消え、驚愕し、敵対者のそれとして相応しい表情に変わるまではほんの数秒だった。その数秒間という時間を、ナデシコの意識は何十、何百倍もに濃縮した情報として捉える。
彼女の固有能力、白昼夢想が可能としているのは『体感時間の操作』だ。思考力の加速とも言える。加速したナデシコからすれば迫りくる糸など止まっているも同然だ、あくびを忘れるほどに遅い。無論、身体の方は加速する思考とは違って変化はないため、ひどく緩慢な身体に鞭打って、
(あの糸を躱して、くぐって、あれを切って……)
長く引き伸ばされた思考の中で何度も検討した末に、ゆっくりと回避行動を取る。
……相対しているのが倉見モカだったなら、話は違った。
体感時間をどれだけ遅らせた所で、放たれた銃弾を避けることなどできないからだ。
得物が拳銃ならば可能性はある。引き金に掛けた指や銃口の角度を見れば、着弾箇所を予想し、そこから身体を逸らすことはできるからだ。しかしフユの得物はガトリング砲……加速した思考は自分が蜂の巣になることを覚悟する時間にしかならないだろう。
(……チカシとミモリがやろうとしてたのより、ちぃとカッコが悪いがのう)
アスクから聞いた、対ドルチェの必勝の術。彼らほどスマートに勝つことはできないが、白昼夢想を持つ自分ならば泥臭い打倒を果たせると確信する。
目前に迫ろうとするナデシコを敵対者と定めたドルチェの表情が不敵に歪む。笑顔の形……おそらくはナデシコの手の内に、固有能力の正体に当たりをつけたのだ。そしてその攻略方法も思いついたと見える。となれば次に来る技もわからないではない。それを回避することが叶えば、
(仇討ちは、終わりじゃけえ)
――03:34――
「――――」
幾重にも張り巡らした糸を回避し続けるナデシコを見たドルチェ。
驚愕から立ち直った彼女はひとつの可能性に思い至る。
(方法はわからないけど、糸の軌道を知られてるってこと……!?)
そうでなければ十重二十重の糸の攻撃を尽く躱された事に説明がつかない。看過されているのは半透明の糸だけだろうか? 見えざる糸の方はどうか――ドルチェは内心で首を振る。どうであったとしても、不可視の糸は戦闘前に設置するなり、半透明の糸に巻きつけるなりして扱う物。その軌道を看過されていようがいまいが、直接的な攻撃手段としては採用できない。
(厄介ね……でも、それなら)
糸をくぐり抜ける好敵手を前にしたナデシコの表情が歪む。愉しげに、不敵に。糸の軌道を読まれると言うなら――軌道を読まれようが関係のない攻撃を放つまでだ。
(遊びはここまで。一番単純な方法で終わりにしてやるわ……)
――03:35――
半透明の糸を捌かれ続けたドルチェが不意に笑みを浮かべた。言い様のない不安を覚えるような笑み。それは敵対者に対して勝利を確信した時の笑みなのだと本能が告げた。
「ナデシコ……ッ!」
僕はドルチェまであと数歩分の距離まで迫った少女の名を呼ぶ。おそらくドルチェは大技を使うつもりだ……それをなんとかして伝えなければ――
けれど対面している当人が僕の抱く可能性に気づかないはずもない。自分に向く大技の気配を嗅ぎ取ってなおも目前の敵目掛けて駆けているのだ。であれば僕にできることはただ、ナデシコの奮戦が実を結ぶよう強く願い続けることのみだ……
「フフ……」
ドルチェが両腕を広げる。すると僕らの頭上、森の木々を柱にしたドーム状に張り巡らされた半透明の糸が出現した。それはスズメバチの巣のように禍々しい模様を描いている。冒涜的なプラネタリウム……そんな形容が相応しいだろうか。
……こんな量を同時に出したのか……!? いや……そういうことか!
それらは見えざる糸だった物なのだ。
おそらく戦闘以前から、見えない糸を僕らの頭上、木々に張りめぐらしていたのだ。スズメバチの巣のような模様を作っている理由も判る。見えないまま執拗なまでに重ねていったから、どこか禍々しい、幾何学的とも呼べる模様に至ったのだ。それは頭上だけには留まらなかった。ドルチェの背後、あるいはナデシコの左右にまで、その糸の結界は出現していた。
今この瞬間それらを可視化した理由は明白だ。
単調な攻撃が避けられるのであれば、不可避の広範囲多層攻撃を仕掛ければいい。
言霊使い師を使うまでもない。容易くその単純な戦略は想像できた。
「――――ッ」
「――――」
相対するふたりの少女は同時に行動を起こす。
ドルチェが広げた両腕を振り下ろす。三六〇度、幾層にも重なった糸のプラネタリウムは崩れ落ち、ナデシコに迫って行く。
ナデシコがドルチェに向けて駆けようと疾走する。残り数歩。その頭上から糸の層が迫っていく……
ナデシコは……間に合わない!
「……くっ」
半透明の層が透ける先、パーカー姿の少女の疾走が止まったのが見えた。
糸が……彼女の身体にたどり着いたのだ。握られていたバタフライナイフの柄にまで半透明の糸は及んで、ナデシコの手からその刃を取り上げる。
僕の両目が、凍りついたようなフユが、無関心そうに視線を投げかけたままのナユタが、糸に捕らえられたまま動けずにいるコトリが、そして半透明の亡霊が、ナデシコの身体が宙吊りにされる様を捉えた。
「……、…………っ!」
「藻掻くだけ無駄よ。これでチェックね、子豚さん」
糸で拘束されたナデシコ。腰に手を置いて高圧的な視線を向けるドルチェ。その構図だけで勝負の帰趨は明確だった。嗜虐的に微笑みながらドルチェは言う。
「――さ、て。上手に鳴けるかしら? フフ……」
これで……これで終わりなのか?
半透明の糸によって宙吊りにされたナデシコの背を、僕は見ていることしかできないのか……打つ手はないのか……!?
いや。
打てる手は、ひとつだけある。
言霊使い師。ドルチェに向けて僕の忌むべき能力を使って、心のバイパスを繋ぐ。精神的な一瞬の不意打ちは必ず隙を作るはずだった。
迷ってる暇はない。
ふと、肩越しにこちらを振り返ったナデシコと、目が合った。
この一週間の日々、あまり言葉を交わしたことはなかったけれど……それでもその瞳が語る真意を汲むことはできる。たぎるような戦意がこもった眼差し。彼女はこう言っているのだ、水を差すな、と。
「……………………!」
彼女には策がある。彼女はまだ自分の闘いを終えていない……それが判った。そうだ、一度信じると決めたのだ、彼女の勝利を。絶体絶命の不利を見たからって、それを疑う理由にはならない。僕はただ、起死回生の策がナデシコの手中にあることを信じた。
そして、それは叶った。
勝利を確信したドルチェの隙……
それを付く形で、その奇妙な脱出劇は行われた。
宙吊りだったナデシコの身体。
それが自由落下に従うように、ぽとりと、落ちた。
「――え」
驚愕するドルチェ。
みぞおちの辺りに、ナデシコの渾身の右ストレートが放たれる。
「がッ…………」
もろに決まり、彼女は膝をついた。完全に無防備だった所への一撃だ、致命的なダメージを負ったはず。焦点の定まらない視線がナデシコの身体を捉え、驚きに見開かれた。
「――――はだ、か?」
三六〇度、身体中を糸によって絡め取られたはずのナデシコ。月明かりが照らす彼女の身体は文字通り一糸まとわぬ姿。瑞々しい肌の輪郭は全体的に細く、しかし四肢には適度な肉付きを保っている。
崩れ落ちたドルチェを仁王立ちで見下ろしながら、八嶋ナデシコは口を開く。
「肌を晒すのも、仕事じゃけんのう」
痛快な言葉。
ナデシコが自身を絡め取った糸から脱出したのは、単純なことだった。念動力を使い、衣服を脱ぎ捨てたのだ。パーカーとスパッツを脱ぎ去る時、四肢に絡んでいた糸も巻き込んだ。そして自由になった身体でドルチェのもとへ迫ったのだ。
「……、…………」
みぞおちを突かれ内蔵が痙攣を起こしたのか、ドルチェはぜえぜえと荒く浅い息を繰り返し、それから項垂れた。ショック症状からか意識を失ったのだろう、そこいら中の糸が唐突に弛緩していく。視線を向ければ拘束されていたコトリの身体も自由になっていた。
……これは。
これは、じゃあ、つまり……
「勝った……の?」
フユが、つぶやくように言った。吐息のように細い声だった。ナデシコは僕らを振り返る。そしてちいさく笑ってから、
「……ぶいっ、じゃ」
ピースサインを向けてきた。
勝った。
勝ったのだ、狂乱して殺意を振りまく神楽坂ドルチェに。
「は、はは……」
力が抜ける。
意識を失ったドルチェをこの後、どうするかという話はあるにせよ……
今ばかりは、安心して膝をつくのも無理はない話だった。
けれど隣のフユはそうも行かないようだった。
「……ナデちゃん! どうして…………」
震える声。切羽詰まった声色でフユは、
「どうして――下着を着けてないの!」
……そんな肩の力が抜けるような言葉を口にした。
衣服を脱ぎ捨てた八嶋ナデシコは夜の森に射す薄っすらとした月明かりの下に白い肌を晒していた。しかしフユ、死闘を越えた仲間に向ける最初の言葉がそれってどうなんだ……!
ナデシコは、その言葉にきょとんとして、
「オフじゃけぇ」
実家ではパンイチです、みたいなニュアンスで答えた。いやいやいや、とフユは首を振る。交通整備の赤い棒を振る看板みたいなぎこちない動きだ。
「ナデちゃん、ナデちゃん? じゃああなた、まさか、普段は下着を着けないってこと?」
「そうじゃが」
「ばかー!!!!」
一週間聴いたことのなかったデジベルでフユはナデシコを叱責する。耳がキーンとした。
「ハレンチだよナデシコちゃん! ハレンチ! ハレンチスコ=サビエルなの!?」
「うちは別に、ハレンチに開港を求めてやってきたりはしておらんが……」
「アイドルよ、多分その黒船乗り付けはペリーだと思うけど」
「アスク君は黙ってて!」
理不尽に怒られる。すみません。
「じゃ、じゃが……別にうちが気にせにゃ、えーじゃないの?」
「いいわけないよ、何言い出すのこの乙女は!」
「じゃが……」
「ジャガーもチーターもトラーもないの! ヒョウ柄で良いからつけないとダメなの!」
なんか無茶苦茶なことを言いだした。柄に貴賎があるのだろうか……? あとトラーってなんだ。勢いで聞き流しちゃったけどものすごい面白いこと言ってないか……?
「って言うかアスク君もどうなの! そっと背を向けるとかできないかなっ!」
ダメ出しが僕にまで飛んできた! でもまったくもってその通りだ!
僕は言われるまま背を向ける。度々すみません。
「ま、まぁ、しかしそう目くじら立てることと違……」
「違わないから!! もー、なんでわかんないかな、わかんないかなーっ!?」
「じゃが……」
「トラー!」
すごい剣幕で母親のように怒り狂うフユに、口ごもるナデシコ。背中でそんなやり取りを聞いて場違いにも苦笑してしまう。
「…………なぁあれどうすんの? とりあえずお礼を言いたいんだけど……」
糸から脱した宇都宮コトリが立ち尽くす僕のもとへやって言った。その表情は困惑で染まっている。お礼を言うべき相手がネイキッド状態でお説教されている……
「うん……えっとだな……」
五十嵐ビビの亡霊がくすくすと笑った気がした。このやり取りも確定してたってことか。少しブルーになる。
フユのお説教の時間を使い、コトリにこれまでの経緯を語った。




