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ハムスターに転生しても勇者様は最強です!  作者: ヤマザキ
プロローグ
2/12

実は俺、異世界人だったらしい

 今までの話を聞いてるだけで既にお腹いっぱいだが、今度は異世界と来たか。


 よーし、いいだろう。こうなったらもう、開き直ってやる!


 どんなトンデモ情報でもガンガン持ってこい!


「あなたは2千年前、ドラゴイミアと呼ばれる世界を救った勇者でした。ですが、あなたの力を恐れた魔王が、動物を100回助けて死ぬという苦行をこなさない限り、元の世界には決して転生できないという、強力な呪いをかけたんです。魔王の力は強大で、我々天界人も為す術がありませんでした。本当に申し訳ありません」


「…………」


 開き直ってやると宣言したが、物には限度がある。


 さーて、どこから突っ込もうか。


 とりあえず、俺が異世界を救った勇者だったって辺りからか?


 そもそも俺は、動物をかばって100回死んだことすら記憶にない。


 実は異世界人だったと言われても、なんのことやらさっぱりだ。


 唯一覚えてるのは、このハムスターを助けて――。


 あ、あれ!? ちょっと待てよ。


 そういえば俺、どんな生活を送ってたんだ?


 名前は? 学校は? 仕事は? 家族は? 恋人は?


 そもそも俺、男だったっけ、女だったっけ!?


 自分を『俺』っていうのがしっくりくると思ってたけど、よく考えるとちょっと違うような……。


「あ、あの!」


「何かご質問ですか?」


「なんだか頭が混乱してきた。今までの俺がどんな人間だったか教えてもらえないか」


「2千年分のデータですね、了解致しました。100回の転生のうち60回は男性として、残りの40回は女性として暮らしていました。平均寿命は20歳、死因は全て動物をかばっての事故死です」


「いやいやいや、待ってくれ。俺が欲しかった情報と違う……」


「え? そうですか? ではどういったデータを?」


 100回転生を繰り返してきたってのは何度も聞いた。


 平均寿命が20歳なのも既に知ってる。


 だが、100回のうち4割は女性として暮らしていたという情報は中々衝撃的だ。


 ってことは、ハムスターをかばって死んだ直近の俺も女性だった可能性が……。


 うーん、だめだ。


 どんなに頭をひねっても、自分の素性に関することだけ思い出せない。


 好きだったアニメとか、課金しまくったソシャゲのことは覚えてるのになんでだ……。


 まぁでも、100回も転生して、その間に男だったり女だったりしたなら、ハムスターをかばって死んだ俺がどんな人間だったかなんて、些細な問題かもしれない。


 それに、詳細に思い出したところで、どうせろくでもない人生だったに決まってる。


 よし、俺がどんな人間だったかは、気にしないでおこう。


 自分のことは、とりあえず『俺』のままでいいか。


 色々考えた末にそう割り切った俺は、ニビエスを見上げて首を横に振った。


「いや、なんでもない。今のが欲しかった情報だ」


 俺はもう死んだんだ。


 自分がどんな人間で、どんな人生を送っていたかを振り返る必要なんてないよな。


 すがすがしい気持ちでいると、ニビエスもどこか嬉しそうな顔で俺を見下ろす。


「とにかく、あなたが動物をかばって100回死んだのは、前人未踏の快挙なんです!」


「だろうな。やれって言われても中々達成できるもんじゃないぞ」


「2千年の間に勇者が魂を磨き、さらに強大な力を得るとは、魔王も予想外だったことでしょう。今のあなたの魂の価値を日本円に換算すると、なんと300兆です!」


「は!? 300兆!?」


 確か、日本の国家予算がそのくらいじゃなかったか!?


「さすがはドラゴイミアの勇者じゃ」


「己の魂を、よくぞここまで磨き上げた!」


 再び、大きな歓声と拍手が響く。


 感激して目に涙を浮かべている天界人も、1人や2人ではなかった。


 俺はどう反応したらいいかわからず、困惑しながら頭をかく。


「2千年前にドラゴイミアに平和をもたらした勇者も突出した力を持っていましたが、今のあなたはそれを遙かに上回ります。魔王など、恐るるに足りません!」


「お、おう。なんかすごいのはわかったけど、具体的にはどう強いんだ?」


 そう聞くと、どこか興奮した様子のニビエスがさらに身を乗り出した。


「魂が強化されたことにより、すごくモテるようになりました」


「は? モテる?」


 強いというイメージとは結びつかない単語に、俺は首をかしげる。


 好意を寄せられるって意味の『モテる』で合ってるのか?


 それとも異世界特有の言葉だろうか。


「対象はモンスターと亜人だけですが、側にいるだけで猛烈に好かれます」


 猛烈に、好かれる……。


 どうやら俺の認識は合っていたようだ。


 だけど、モンスターにめちゃくちゃモテるって、それのどこが強いんだ?


「腑に落ちない、という顔ですね」


「いや、もっとこう、超パワーとかチートな最強魔法とかを期待してたんだが」


「2千年前の勇者の強さは、そういう類いの物ではありません。戦わずして勝つ、モンスターとの友愛が平和をもたらしたのです」


「へぇ、そうだったのか」


 自分のことのはずなのに、少しも思い出せないな。


 聞いていても完全に他人事だ。


 いやだが、ちょっと待てよ。


 モンスターにモテモテって、使い方次第ではめちゃくちゃ強いのでは……!?

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