ヤソマ、説明する
あれから俺とククリは正座させられ、ツクヨに説教されていた。
「ククリ!あんたはいっつもそう!すぐ我を忘れて人を叩き過ぎ!叩かれる方の身にもなりなさい!」
「は〜い。」
ククリはニコニコしながらツクヨの説教を聞いている。絶対反省してないだろ。
そしてツクヨは口撃の矛先を俺の方に向け始めた。
「それはそうとあんた!目の前でご主人様が痛めつけられてるのに、何傍観決め込んでるのよ!さっさと助けなさいよ!何の為の下僕なのよ?」
「いや、美少女同士が組んず解れつするかもと思うと立つに立てなくなったと言うか…いや、立ってはいたんだけど、それはむしろ字面は勃って…ゴニョゴニョ」
「立つと勃つ?どういうこと?」
どうやら本当に分からないらしい。実例をふまえて説明してやろうかと考えていたら、ククリがツクヨに近づき、耳打ちをしている。
「ツクヨちゃん、男の子っていうのは〜、……が、……なって、……で……。」
「え?ほんとに?アレがそんな事になるの?それでどうなるの?」
「その怒り狂った肉棒で、ツクヨちゃんの……を、……して、……で、……になるの。」
「えぇっ!?鬼畜じゃないの!!」
ククリから説明を受けているツクヨは見る見る顔が赤くなって行く。
その説明、何か余計な事まで言われてない?
「こ、このケ、ケ、ケ、ケダモノ!変態!異常性欲者!」
体を両腕で隠しながら俺を睨みつけ、罵倒してきた。
「見ていて新たな扉は開きそうになったが、勃っていたというのは冗談だ。助けに行こうとしたが落下の衝撃で頭がフラついてうまく動けなかった。すまん。」
ツクヨの俺を警戒している雰囲気がほわっと和らいだ。
「え、そうなの?そういえばあんた大丈夫だったの?私なんだか途中から記憶が無いのよね。でもまぁ無事って事は大方ククリが準備してくれてたのかしら?」
一瞬でゲロ吐いて失神したくせに何を偉そうに言ってんだこいつは。わざわざ異世界に死にに来た事になってしまう所だったんだぞ。
「いいえ〜。ツクヨちゃん〜。ヤソマくんが術式を発動して地面をクッションにしてました〜。」
それを聞いたツクヨは先程とは打って変わって目がキラキラと輝き出す。
「えっ!うそっ!?本当に!?すごいじゃないの!!あんたやれば出来るじゃないの!!」
かなり嬉しそうだった。それはもう神器"ツクヨのおっぱい"がぱいんぱいん揺れる程に。
「で、で、どうやったの!?一回見せてくれない?」
俺におもちゃをせがむ子供のような無邪気さでツクヨは言う。だけど…
「すまん。俺も必死だったからどうやったかわからん。あれから同じ事をしようとしたが何も起きない。」
俺が肩をすくめてそう言うとツクヨは見るからにがっかりした。
俺も見せてやりたいが出来ないものは仕方ない。
だがすぐに顔をあげて笑顔を見せた。
「う〜ん、でも希望は見えたわ!うん、すごいすごい!もっと詳しくどんな術式でどんな事になったか教えてよ!」
嬉しそうなツクヨに俺は包み隠さず全てを話した。
あ、おっぱい触ろうとした事は包み隠したけど。
「う〜ん、大地を柔らかくしたって事は、土か水属性かしら?それにこんなに広範囲を神獣武装もしないで影響を与えたという事は、かなりの大物神獣かもしれないわね!」
ツクヨはブツブツ言いながら自分の世界に入っていった。
その様子を見ていた俺はククリに問う。
「なぁ、これってすごい事なのか?後、神獣武装ってなんだ?」
「神獣武装は、神通力で呼び起こした神獣の力を依代が身に纏った状態の事です〜。神獣の力をフルで使う事ができます〜。神獣武装もしないでこの規模の術式はかなりすごい事です〜。もしかしたらA〜Sクラスの神獣を宿しているかもしれません〜。だからツクヨちゃんはかなり嬉しそうなんです〜。」
そんなもんなのか?と不思議に思っているとツクヨが俺の方に来た。
「ねぇねぇ、他に何か変わった事は無かった?なんでも良いの!神獣を特定するヒントがあれば神獣武装もしやすくなるわ!」
「う〜ん、何かあったかなぁ…?あ、関係無いかもしれないが、蛇の影を見た気がするな。」
「蛇?蛇ね?だとすると、オオモノヌシ辺りの蛇の神獣かもしれないわね!大地の神獣、Sクラスよ!」
かなり嬉しそうだな。
そしてツクヨは俺の方をビシっと指差した。
「こうしちゃいられないわ!さっそく特訓しに行くわよ!」
えぇ〜…、俺旅行とかに行ったらまず宿で仮眠取るタイプなんだけど…。
と思ったが、ツクヨの嬉しそうな顔を見せられては重い腰も上げざるを得なかった。
「んで、どうやって行くんだ?徒歩か?さっきみたいに"テレポ"を使うのか?」
「"テレポ"は使えないわ!」
え、さっき呪文とか詠唱して使ってたじゃん。
「何で使えないんだ?」
「あれは知り合いの転送術なの。私の術式じゃないわ!」
「え?じゃあ呪文詠唱とか何だったんだ?」
「かっこいいから一回やってみただけよ!ちなみに"テレポ"という術式名でも無いわ!」
たまに可愛いらしい所あるけどこいつどこまでもブレずにポンコツだな、と俺はため息をついた。