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ヤソマ、転送される

「あんたこそ何言ってんの?あんたは明日から高天原で暮らすのよ?修練所の入所手続きも済ませてるから今日で人間界とはサヨナラよ?」


とんでもない事を言い出したなこの女は…。

昨日まで、只のついてない高校生だったのに急展開過ぎる。

だが同時に自分の知らない世界へ旅立つ、男心をくすぐる展開だった。

そもそも天界がこの世界と似たようなシステムであれば、その修練所とやらの入所手続きも大変だったろうに。

こいつこんなに偉そうだけどもしかしたら世話好きの良い奴なのかもしれないな。

まぁ理不尽が過ぎるけど。

つーか俺が断ったらどうするつもりだったんだ?


「待ってくれ。俺にも俺なりの生活がある。行くのは了承するが今日、今すぐ行くってのは無理がある。」


「そうなの?用意に時間のかかる男はモテないわよ。」


ぐ…。だから俺には17年彼女がいなくて童貞だったのか。今日からは5分で準備出来る男になろう。


「まぁ、俺は両親も衣食住を保障してくれてるだけで、それ以外に関わりも無いし、別れの挨拶をするような仲の奴もいない。」


「? じゃぁすぐに行けるじゃないの。何の準備があるのよ?」


「ハンカチとティッシュは持っているかの確認と、バナナは持って行こうか悩んでいる。」


「それぐらい10秒で決めなさいよ!!」


バシっとツクヨのツッコミが入った。

タイミング、角度は申し分無いが、加減知らずなのか打撲になりそうな程痛い。

まぁ本当の所は何だかんだ今までの生活が移住する事で思い切り変わってしまう事に不安になっているのだ。こう見えて俺は気が弱いんだよ。

なので天界に行くにも、心の準備が必要だった。


「ちなみに、言っておくけど向こうは私程まではいかないけど、負けず劣らずの美人揃いよ。あんたは人間だから物珍しくて皆にモテモテかもね。」


「何やってんだツクヨ!おいてくゾ☆」


「はぁ…、あんたチョロすぎて驚きを通り越して呆れるわ…。」


俺の天界への移住は一瞬で決まった。


「そうと決まったらさっそく行くわよ!ククリ、聞こえる?…そう。今からこいつをそっちに連れて帰るわ。転送よろしく!」


ツクヨはまた宙に向かって誰かと会話し、その後俺の手を握ってきた。

それと同時に地面に六芒星のような紋様が浮かびあがり風が俺達を包み始めた。

くそ…。こいつ細くて白くて柔らかい良い手をしてやがる。腐っても美人。手を繋がれるとオラ、モジモジすっぞ!

うつむき加減のツクヨの顔を横から良くみると少し赤くなっている。

初恋カップルかよ!と思うと余計に俺も恥ずかしくなってきた。


「こ、これは転送するには体の一部に接触しておかないといけないから、し、仕方無くやってるのよ!私の手に触れられる事、か、感謝しなさい!」


「わーかってるよ!白くて柔らかくて細い可愛い手に触る事ができて幸せです!」


「キモいわ!吐きそうな程に!」

顔を赤くしたツクヨが風に負けないように大声で叫ぶ。

俺も負けじと大声で返す。

すると光が俺達を包み込める程強くなり始めた。


「そろそろね…。呪文詠唱行くわよ!」


「そんなのがあるのか!?何かはわからんが、頼む!」


ツクヨは目を閉じ、呪文のような物を唱えている。

それにしても呪文詠唱まであるのか。本格的にファンタジーになってきたな。

もうここまで来たら行くっきゃねぇ!

漫画やゲームとは違う本物の術式、俺は準備できてるぜ!どんとこいや!


「………。テレポ!」



「それ、ファイナルファンタジーの魔法やんーーー!!」



ぐにゃぁぁぁっと世界が歪み始めて俺はその場から姿を消した。





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