ヤソマ、気になる
「…であるからして、神様の見習いである候補生は自身の属性の神通力を依代である君達に流し込んで神獣の力を顕現させているわけですな。言うなれば外と内の扉を止めておく、ドアストッパーの様な役割をしているわけです。それから…」
教室内に中年ぐらいの男性教師の声がこだまする。
あのヤンキードッキリから数十分後、俺の転校による自習のザワつきは収まり、二限目の座学が始まった。
こちらの先生は金剛先生とは打って変わって痩せ型のひょろりとしたタイプの先生だった。似ている人といえば"ごはんですよ"のCMのキャラクターによく似ている。名前は……知らないな。
俺は兎に角この詰んでいる状況から少しでも希望を見出す為に黒板にかじりつく勢いで勉強した。
今まで勉強は特に集中もせず適当にやってきたが、人間"死"がかかると意外と集中できるもんだなと心の中で自分自身に感嘆の声をもたらした。
俺が必死で勉強していると前の席のオカゲがくるりと振り返ってその健康的おっぱいで俺の集中を逸らしてきた。オカゲ本人的にはそんな意図は全く無いのだろうがその凶暴なまでに誘惑してくるおっぱいは俺の視線を捕まえて離さない。
やめてぇぇぇ!勉強出来なくなっちゃうぅぅぅ!
「ほえ〜〜。ヤソマはマジメだなー。ウチはもう眠すぎて何にも頭に入って来ないぞ。」
そう言ってオカゲは小さな口を目一杯に開いてあくびをした。女性ならちゃんと口を手で隠しなさいよ!いや、あくびで潤んだ瞳も可愛いけども!
「まぁな。俺はまだ術式も神獣も、何にも分かってないから少しでも理解しとかねぇとついて行けなくなっちまいそうだろ?」
「そうかー。偉いなー。でも依代は見習い側と違って術式も体術も感覚で対応する事が多いからぶっちゃけ座学は必要ないぞー?ほらあいつなんか見てみろ。」
オカゲが指差した方を見ると世紀末のザコモヒカンもとい、つるぴかハゲ丸君がトランプタワーを作っていた。教科書立ててるけど既に大分ハミ出てるよ!これでバレないと思ってたらただの馬鹿だよ!
しかし男性教師もこの状況に慣れているのか、一切注意する事なく淡々と自分のペースで授業を進めている。
生き残る為に集中していたから気がつかなかったが、周りを見渡せば、近くの席の者と談笑していたり、早弁をしている奴までいる。
「な?皆座学なんて何の役にも立たないって思ってんだ。何しろ闘い方は神獣の記憶がサポートしてくれるからな。頭でっかちになったって実戦じゃ使えないんだよ。それより次の実習の方が体力使うから頑張れよー?」
そう言ってオカゲは前を向き、机に伏せてすぐに寝息を立て始めた。俺はオカゲに倣って睡眠を取って実習とやらに備えようか、このまま座学をキッチリやりきるか迷ったが、睡眠を取る為に机に伏せたせいで露出した彼女の、キメ細かい肌をした可愛らしい腰が気になってどちらも成し得る事が出来なかった。




