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ケモミミ男の娘先輩

本日二話目です。

「生きてるッッッ!!! なんか視界がおかしい気がするけど、俺生きてるよ!!!」


 朝からハイテンションですみません。俺死んでなかったです。まあ、横たわったまま動けないんですけどね。

 思ったよりは体へのダメージは少ないが、立ち上がることができない。あの野郎(ゴブリン)からの攻撃も理由にはあるだろうけど、おそらく魔素中毒による体の変異が大きい。体に力が入らないからね。


「っと、そうだ。なんか視界がおかしいんだよな。目が良くなったというか、魔力のようなものが見えるし、あとなんか特殊な力を手に入れたことが感覚でわかる」


 1mほど離れたところに落ちていた知恵の果実を頑張って手元に持ってきて、目について質問をしてみる。


『魔眼-変異系。

 魔素中毒により変異した目。

 視力強化、魔力視覚などの基本的な魔眼能力に加え、魔物を擬人化させ、魔人とする変異系の能力をもつ。

 魔素中毒によって変異する体の部位は多岐にわたるが、目が変異するのは希少であり、その中でも変異系能力はとても珍しい』


 どうやら忌々しい魔素中毒によって目が変異したおかげで魔眼という大層な物を得てしまったらしい。魔物を擬人化させ魔人とする能力...メリットゼロじゃないか? 魔物みたいな危険な生物を擬人化してなんの意味があるんだよ...使い道ないけどまあいいや、それよりこの倒れたまま動けない状況をなんとかしないと。



「...とかいってるうちにまたまたピンチですね」


 木陰から現れた一匹の狼が、警戒しつつも俺へと近づいてくる。

 その狼はあまり体が大きいわけではないが、銀色の美しい体毛を偉そうになびかせ、獣特有の威圧感を感じる目で俺の姿を睨み逃さない。

 魔眼から魔力を宿した獣だという情報が伝わってくる。つまりは魔物だということだ。


 近づくところまで近づき、眼下に俺を捉えた狼は、そのご自慢の凶悪な牙を俺へと見せつけ、大きく口を開くと、どでかい咆哮(ほうこう)を一発かましてくる。


 狼の体が青白く光ったかと思うと、同じ光が俺の体を包み込み、身体中の痛みや倦怠感が消えた。


 ...ん? なんで痛みや倦怠感が消えたんだ? え? なんでこの狼『クゥーン』って言って俺に体を擦り寄せてくるの?




「なんか知らんけど懐かれた」


 無防備に自らの大切な毛を撫でる手を受け入れる狼は、野生の獣のプライドなどかけらもないのだろうか? さっきまで恐怖しか感じてなかったこの狼がなんだかとても可愛く見えてきた。


「懐いているなら擬人化しても敵対はしないかな、よし、やってみよう」


 使い道の難しい能力を手に入れた瞬間使う相手が現れるなど、何という僥倖(ぎょうこう)。魔眼に力を入れると、俺の魔力が狼へ注がれていくのが感覚的にわかった。


 狼は白い光に包まれ、その光が収まった頃にはすでに、大事な部分を都合よく体毛で隠し、狼のころと変わらない美しい銀色の髪にかわいらしいケモミミをつけた美少女へと姿を変えていた。


「...えっ!? なんですかこれは!? 僕、人間になってる!?」


 ...ごめん見た目完全に美少女だけど声完全に少年だったわ。これ男の娘ってやつだわ。なんでこいつ体毛で胸隠してんだよ。


 あわあわと狼狽(うろた)えるケモミミ男の娘を観察していると、やがて俺の様子に気づいたようで(いぶか)しげにこちらを見てきた。


「あ、えっと、助けてくれてありがとな、俺の名前は泉野目(いずのめ) (かい)だ。魔物を人間にする能力があるから、言葉でお礼がしたくて一時的にやらせてもらった。元の姿にも戻せるけど...」


 そういうと、男の娘は安心したようで、警戒を解いた。そして、天真爛漫な笑顔を向けてくれる。


「何だか安心する魔力を感じたので助けたのです! この姿気に入ったのでしばらくこのままでいいです! あと...」


「あと...?」


「あと、名前がないので僕に名前をください! そして僕のボスになってください!」


 ニッコリと微笑みかけてきた。

 やめてくれ、その笑顔は反則だ。男のくせに超かわいい。元が獣だからか? 名前? いいよいいよ、つけてあげちゃう。いくつ欲しいの? え? ひとつでいい? あ、そう...


「...フロウ、なんて名前はどうだ? 

 あとボスの件だが、よくわからんが一緒に行動してくれるなら俺も心強い。よろしくたのむ」


「...フロウ! かっこいいですボス! ありがとうございます!」


 こうして、俺こと泉野目(いずのめ) (かい)は可愛らしい部下を得たのであった。

 ナレーションっぽく言ってみたかっただけで意味はない。






___フロウの風魔法がゴブリンを殲滅する。

 戦闘中だというのに無邪気に笑みを浮かべ、逆に邪気を感じてしまう始末だ。


「やりました、ボス!」


 撫でてください! とケモミミを差し出すフロウはとてもかわいいが、頰についた血を拭き取ってからにして欲しい。


___魔法。

 俺にはまだ使えないその力を使いこなすフロウは、子供だが狼だけあってこの大森林ではかなりの力を持つようだ。群れているだけの雑魚であるゴブリンなど簡単に蹴散らしてしまう。

 いやその雑魚にボコボコにやられていた俺が言うんだからなかなかのジョークだ。


 俺自身も魔力に対しての抗体ができたおかげか、身体能力がかなり上昇したようで、ゴブリン程度なら3対1でも勝てるようになっていた。

 あそこでフロウ先輩が倒したゴブリンが5〜6体転がってるけど、見なかったことにしよう。俺はフロウの頭をがしゃがしゃと撫でると、再び大森林の中を歩き続ける。


 まだフロウと出会って数時間しか経っていないが、フロウの強さは中々だということがわかる。知恵の果実先生も強種族(いいとこのぼっちゃん)だって言ってたから間違いない。だが、フロウ曰く親や仲間は緑と黒の体毛なのにフロウの体毛が銀色のせいで群れからはぐれたらしい。可哀想に。


「ボス! ほら、ここに湖があるんですよ!」


 フロウが大森林の先輩知識を活かして湖に案内してくれた。湖の近くには動物たちが集まっており、フロウが魔法を使って何匹か狩ってきてくれる。

 ...いやマジでこれヒモだろ。会って数時間のフロウ先輩にたかるクズですね。フロウの褒めて! がまた俺の罪悪感を駆り立てる。


「まあ、お肉美味しいからいいか」


「ん? どうしたんですか? 足りないんです? また取ってきます?」


「い、いやいい。これ以上はほんと完全にヒモになるから」


 焼いたお肉をもぐもぐと食べていると、部下に気を使われた。

 ボスの面目丸つぶれである。


 しかしあれだな、フロウには擬人化時と狼時で適当なゴブリンとかと戦ってもらったが、擬人化時の方が魔力量が多い気がする。慣れてないのか魔法への変換効率は悪いみたいだが、擬人化させた方が強力になるのかもしれない。

 こんなことまで分かるとは意外と魔眼役に立つな。擬人化能力も強力みたいだし、メリットゼロとか言ってサーセンしたッッ!!


 焼いた肉に感動しているフロウを横目に、魔眼に力を込めて、ふと湖の反対側を見渡すと洞窟のようなものが見えた。

 この湖もまあまあ大きいが、太陽の位置を見ると夜までにはつけそうだな。洞窟のような場所を活動拠点として、これからどうするかを決めるとしよう。

 洞窟へ行って中を確認することに決めた。


 食後に狼の姿になったフロウの体を(臭かったので)湖で洗い、その後洞窟へと足を向けた。

完全に趣味です。すみません。


ちなみに、熊みたいな魔物に襲われなかった理由は、主人公に魔力がなかったからです。ゴブリンに夢中で気づかれませんでした。

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