第92話 ウサギの好物が人参だからって、同じ根菜類の芋類はヤツらにとっては有害なんだぞ!?
(ダイコンデロガ視点)
刻甲を通じて、冒険者達の話を聞いてみた。
それで、わかった事だが、なんと冒険者や町人など、このバーディアの民という者達は、愛国心なる物がとても強い事がわかった。
近くに、ダリアちゃまの護衛をした末に、ビーバーにやられた魔女のねーちゃんと戦士のおっさん
から話を聞くと、どうやら無償で護衛の任務を受け持ったらしい。
そんな二人をそそのかせて、ダリアちゃまに想いを伝えるように言うと、二人は心よく受け入れてくれた。
なお、刻甲の介入が無ければ俺に対して『野菜獣大根にいわれてもなー』と話を聞いて貰えなかったのは秘密だ。クソがッ!
魔女のねーちゃんと戦士のおっさんがダリアちゃまに想いを伝えた直後だった。
彼女の身に変化が起こった。
ダリアちゃまから、青白いオーラが立ち上りだした。
ダリアちゃまは、更に変化した。
妹のレイラと同じ黒髪が、突如として銀髪へと変わったのだ。
「あ、あの変化は間違いねぇ! あの小娘め、覚醒しやがるぞ! バーディアの王族は特殊な力に目覚めるとは聞くが、その瞬間を見られるとはなぁ!」
ドン・グリードはダリアちゃまの身に起きている現象について知っているようだ。
というか、特殊能力とか初耳なんすけど。レイラからも何も聞いていない。
まぁ、聞かないから言ってないというとこだろう。
とりま、ダリアちゃまに戦闘能力が芽生えるなら、打倒ウサタンの為の力となれるし、全然オッケーって感じなんすよ!
「ええい、鬱陶しいぞお前ら!」
ウサタンは限界が来たのか、頭の痛みを堪えながら、魔王らしく漆黒の火球をダリアちゃまへ放つ。
「大人しくしてやがれ、クソガキ!」
ドン・グリードは、亜空間から木ノ実を取り出し、火球に向けて木ノ実を吐き飛ばした。
「なにっ!?」
ウサタンは驚く。
放った火球は、ドン・グリードが飛ばした木ノ実によって消されてしまった。
その間に、すべて完了した。
ダリアちゃまの周りの空気がキラキラとしている。
ダリアちゃまの周りから冷気を感じる。
「ふふふ、ふはは! やったで! ついに私も覚醒したで! これでレイラだけにデカイ顔させんけーなー!」
銀髪に変わったダリアちゃまは、右手を天に掲げると、そこに氷で出来た剣が形成された。
氷剣は、くの字に湾曲しておりブーメランとして使えそうな感じだ。
というより氷といえど、中々の厨二なデザインだね。無駄に細部にまで装飾が施されている。
そこまで、繊細に氷を使えるの? 凄いね。
質素な見た目に定評のある、俺のネッコボルグとは真逆だな。
流石は王族といったところだろう。
「おい、クソウサギ! 最後の確認をしといてやる! この氷属性の力に開花したダリア様のお言葉に耳を傾けるが良い!」
「え、なんだい?」
ダリアちゃまは、ウサタンに指をさし、能力が覚醒した事を誇るような偉そうな態度で、ウサタンに問いかけた。
「お前は、私を愛すか?」
ダリアちゃまは短く言い放った。
「はは、何言ってんの? 僕こそが頂点! 君なんか心底どうでもいいよ!」
ウサタンはダリアちゃまを嘲笑った。
一方、ダリアちゃまはウサタンの答えを聞き、不敵に笑った。
率直な感想だが、今のダリアちゃまの笑みは怖かった……。 ミーナちゃんに近いものを感じるぞ!?
「そうか、そうかいな! なら死ね! 私を愛さない者、それ即ち逆賊であり、最大に無意味! だから死ねやー!」
ダリアちゃま、次期バーディアを統べる者として、ウサタンに処刑を宣言する。
うーん……。
ダリアちゃまの今の発言を許してしまうと、将来的に暴君や独裁者になりそうだ。
流石にこれは、兄として、教育しとかないとダメだよねぇ?
ダリアちゃまは右手に氷剣を上段に構え、ウサタンに向かって走り出す。
なんか、示現流剣術を模した素人みたいだ。ちょっと可愛い。
更にダリアちゃまは、ウサタンの足元にまで氷を伸ばし、動きを封じようとする。
「今使えるようになったばかりの技で、この僕が倒せるわけないだろー!」
ウサタンは強がっている。
ウサタンはピョンギヌスの槍から稲妻を飛ばして来た。
おそらくこの魔王は本気だ。
さっきの火球といい、魔王本来の力を使ってきている。
もう魔眼だとか洗脳とかはどうでもよさそうだ。
稲妻がダリアちゃまへ突き進む。
……そういえば、ここって砂漠で、今は昼間だから、とても暑いんだよねぇ。
そんな所で氷を作れば、そりゃ溶けますよね。
溶けてる氷は滑りますよねぇ。
「うわわわわ!?」
ダリアちゃま、自分が作った氷に滑り、ウサタンの目の前でひっくり返る。
「ぐふぅ!?」
偶然にも、転んだダリアちゃまの足の爪先がウサタンの顎を蹴り上げた!
流石に、この動きにはウサタンも予測出来ず、直撃してしまったのだ。
偶然のサマーソルトキックは諸刃の剣であった。
更に、ダリアちゃまに握られていた事で氷剣が溶け、彼女の手から放たれる。
飛んでいった氷剣は、くの字型をしているので、ブーメランのようにこちらへ戻ってきた。
そのまま、ウサタンに直撃する。
「痛ーい! 今、絶不調なんだから! ちょっと加減くらいしてよ!」
ダリアちゃまに睨まれたダメージが相当大きかったのか、ウサタンはまだ本領を発揮できずにいる。
ダリアちゃまは氷剣を掴もうとするも、時間経過とともにどんどん溶けていくので、滑って掴めない。
ブーメランは更に暴走した。
気づけば魔女のねーちゃんや戦士のおっさん、その他冒険者達が暴走する氷剣の餌食となり、彼ら彼女らは、全滅した。
その結末に至るまでが酷かった。
ダリアちゃまは何を血迷ったのか、暴走するブーメランを止める為に、新たに氷ブーメランを作ったのだ。
中々、ブーメランの暴走を止められなかったので、ダリアちゃまは更に氷ブーメランを形成し、投げまくったのだ。
冒険者達が「おやめください! おやめください!」とダリアちゃまを止めようとしていた、ダリアちゃまが「私を愛してくれた皆を今度は私が守ったげるでー!」と調子に乗って昂ぶっており、冒険者諸君らは暴走ブーメランズにやられ戦闘不能となったのだ。
何してくれてますの? ダリアはん!?
自分のもとに集った民を全滅させちゃダメでしょう!?
「ねーねー、ダリアちゃま?覚醒した力が凄い事は、わかったよ? わかったけど、 なんか言う事あるんじゃない?」
俺は、優しくダリアちゃまに語りかけた。
「ご、ごめん! 調子のりすぎた……、次から気をつける」
ダリアちゃまが覚醒した氷を操る能力の晴れ舞台は、仲間側を全滅に追い込むという結果をもたらしたのだった。
「次など無いわ! 禁止じゃけぇ!その氷ブーメラン次使ったら、王女といえど、かぐったるけぇのぉ!」
アードバーグは2、3回ブーメランに当たったようで、相当カンカンのようだ。
俺もアードバーグには賛成だ。
兄として、ダリアちゃまに、氷ブーメランの使用を禁止させる事にした。
「って事で、氷ブーメラン禁止ね!」
「ご、ごめん……」
ダリアちゃま本人も、この被害を目の当たりにすれば、反省する。
身を縮めて申し訳そうにしてる姿を見てると、とても愛らしいので、つい許してしまいそうになる。
だから俺はダリアちゃまを許す事にした。
今思い返してみれば、レイラも盗賊の時に何度も無駄に疑似屁チャレンジをして、被害を拡大させた。
やはり双子だから、こういう所で似てしまうのかもしれない。
そう考えると、とても微笑ましいよね!
「お陰様で、かなり減ったようだね? ニワトリのプリーストや大根に磨王さん、ドン・グリードはピンピンしてるようだけど、それだけなら余裕かなー?」
ウサタンはピョンギヌスの槍を構え、こちらを見据えている。
結局、ウサタンと戦うのはこのメンバーらしい。
さて、どうやって倒そうか?
人参を渡したら夢中で齧りついてくれるだろうか?
ウサギは人参が好きだとよく言われるが、俺が小学生の時、学校で飼育されてた『ウサちゃんズ』はまったく人参食べなかった。寧ろ嫌ってたぞ!
誰だよ人参が好物って決めたヤツ!
あと、水分の多いキャベツやレタスは腹を壊すらしくウサギには向いてないらしい。
そういえば、飼育されてたウサちゃんズ……、キャベツが好物だったなぁ。
身体に悪い物が美味しいと思うのは、ジャンクフードを貪る人間だけじゃなく、ウサギも同じという事だな。
そのかわり大根の葉は、彼奴らの身に健康で、無害。好物でもある。
喜んで食らいつくぞ!
ウサギを飼ったら試して見るがよいぞ!
ん……? ちょっとまって?
大根の葉が好物って事は……。
……。
……!?
俺自身がウサタンの生贄になれば良いって事だな!
……それは嫌だ!
一週間休載します。
次回は日曜日になります。




