第88話 突然だが、ダリアちゃまの愚痴、自分語りに付き合って貰おうか!
(ダリア視点)
私はバーディア国第一王女、ダリア・ビント・ファルボド・アスファ。
名乗った通り、この国の次期当主にされる予定である。
理由は単純に、一番最初に生まれたからだ。
この国では、男女関係なく長子の者に王位が継承されるのが伝統だ。
だから私は、大声で言いたい。
『そんな伝統、途絶えてしまえ!』と。
この伝統というクソのせいで、私の人生は最悪だ。
私には双子の妹、レイラがいる。
彼女は双子といえど、次女という理由で、私よりも束縛のない生活をしている。
同じ日に生まれたのに、なんでここまで差が出るの?
私が物心ついた頃、レイラは常に病弱だった。
そのせいか、お母様はレイラに付きっ切りだった。
私はお母様と色々話したり遊んだりしたかった。
けれど、レイラの面倒を見なくてはいけないので、私はお母様と一緒にいた思い出がほとんど無い。
10歳を控える頃になると、レイラの病弱な体質は改善した。
私は嬉しかった。
だって、レイラが元気になったから、私もお母様と一緒にいられるから、嬉しかった。
けど、それは叶わなかった。
お母様はレイラと入れ替わるように、体調を崩し、現在では常に寝たきりの毎日を過ごしている。
私は、お父様が嫌いだ。
私が幼い頃から、次期王となる身である私に、礼儀だの作法だの、政だの、帝王学だの、あれやこれや、意味のわからない事ばかり押し付けてきやがる。
武術も色々やらされたが、私には才能が無く、実力が身につく事は無かった。
強くなるどころか、3日に一度は肉離れを起こしたり、腰を痛めたりした。
筋肉痛に至ってはほぼ毎日だ。
明日はどんな痛みが待っているのか、考えると怖かった。
誰にもその気持ちを相談できず、毎晩、布団の中で震えていた。
周りの大人達は「慣れる」と言うが、何年経っても進展しなかった。
そんな私を見ても、親父は励ましてくれなかった。
寧ろ、進歩しない私を見て、理不尽な説教をしてきた。
次は何にいちゃもんを付けて叱ってくるのか、考えると怖くて、身体が震えた。
親父は、それを見ても心配してくれなかった。
逆に「俺の子のくせに情けない」とかほざいてくる。
あの男は、私が少しでも弱音を吐けば、「俺がお前くらいの頃は〜」と笑えない昔話を始めてきやがる。
自分が出来た事は、自分の血を引く私が出来て当然と、思考を押し付けてくるから、私は父が嫌いだ。
私は父じゃない。
『私には私の考えや、やり方ってもんがある。だから褒めてほしい!』といった主張をすれど親父には、甘えだの、言い訳だのと罵られる。
今日は何を言われるか怖かった。
その恐怖のせいか、やる気は無くなっていった。
だから、私は父が嫌いだ。
そして双子の妹、レイラ。
私は彼女の事も嫌いだ。
病弱を理由に、お母様を奪いやがった。
しかもレイラは、お母様を奪う事だけに飽き足らず、10歳を越えてからは、武道や一部勉学で才能を開花させ、大人達に褒められた。
……これは、私に対する挑発か?
散々、お母様を独り占めした挙句に、姉のプライドを踏みにじり、名誉すらも掻っ攫う。
おまけにレイラは、代々バーディア国王家の人間が潜在的な秘めている特殊能力を、12歳で覚醒させた。
レイラは気配を消す事や、高速で動く事に長けた『風属性』の力に覚醒した。
そんな妹が怖かった。
いつか自分はレイラの踏み台にされるのでは?と思っていたからだ。
ちなみに親父は『火属性』の力を使うし、先代の王、私の祖父は『水属性』の力を使っていたらしい。
そして私は、17歳になった現在も、覚醒していない。
かつては病弱だった妹にさえ追い抜かれる。
私はそんなレイラの顔もみたくない。
陰では、ダリア様もレイラ様くらいしっかりして貰いたいと周りの大人達に卑下されだした。
それらの影響かどうかわからないが、私は12歳になった頃から、『自分は不幸』『私はダメ人間』『所詮私は無能』という負のイメージを周囲に露骨にアピールするようになった。
それに対して、大人達は「もっとしっかりしろ!」と説教してくるだけで、愛して欲しいという私の行動原理、気持ちを誰ひとりわかってくれなかった。
誰も私を愛さない。
私は一日のほとんどを自室に閉じこもる様になった。
親父は「出てこい!」「話を聞け!」「ドアを開けろ!」とガミガミ怒鳴ってくる。
そんな親父に対する叛逆として、私は引きこもったのだ。
あの男が、私を自分の現し身だと勘違いしてる限り、私はアイツの言う事は聞かない。
それに、外には敵しかいない私の事を理解してくれる味方は誰一人いない。
そんな四面楚歌な室外に出る事なんて怖すぎて出来ない!
私も親父も、互いにムキになり、関係は最悪なまま、現在に至る。
・・・
ある日、事件が起こった。
バーディア国領海に、謎の巨大な海竜が出現したという物だ。
しかも、その海竜の正体が神話上の存在である『海王リヴァイアサン』らしくバーディア中は混乱した。
リヴァイアサンが支配した海には、ゼリー状の物質に埋め尽くされ、国の漁業が壊滅的な状態になったのだ。
しかも、リヴァイアサンを解き放った真犯人は『げっ歯類連合』とかいうネズミの獣人達が、『禁術』の力で作ったと、自分達の力を誇示してきた。
レイラは国を救うために、リヴァイアサンを倒す方法を探しに旅に出た。
それが今から2年前の事。
これで五月蝿いヤツが一人消えてくれた。
ついでに親父もどっかに行って欲しいものだ。
ところが『どっかに行く』のは親父ではなく、私の方だった。
げっ歯類連合に城が占領され始め、親父は王勢の冒険者を雇い、私を部屋から強制的に連れ出し、城を後にした。
気分は最悪だ。
大勢の知らない人達に、部屋から連れ出された事よりも、引きこもってたせいで、抵抗する力すら無く、あっさりと連れていかれた事に対し、私のイライラは治らなかった。
自室という空間以外では、落ち着かない。
私は揺れる馬車の中で、子供みたいに不貞寝していた。
気を使ってか、冒険者達は誰も私に話しかけなかった。
けして、話しかけて欲しい訳ではない。
彼らだって、ネズミどもから、蛆にも劣るような駄目王女を守るなんて、不本意なはずだ。
私は、彼らの冒険者の顔も正確な人数も覚えていない。
バーディア王都を離れ、数日が過ぎた頃、げっ歯類連合の刺客が私を攫いにやってきた。
その刺客はビーバーだった。
何を考えてるかわからないビーバーだった。
私はああいう性格をしたヤツは嫌いだ。
見るだけで恐怖を感じる。
何を考えてるのか、常に笑いながらビーバーは私を追いかけてきた。
私は運動は大嫌いだが、ビーバーには捕まりたくないので、必死に走った。
全力で走るのは何年ぶりだろうか?
けど、案の定すぐに息がキレて、辛い。
もう止まりたい。 帰って寝たい。
雇われ冒険者達は、そのビーバーに立ち向かうも、ビーバーに軽々と返り討ちにされ、二人にまで減っていた。
流石の私でも、片手の指で数えられる人数は把握できる。
この二人は、止まりそうな私の背中を押すように、ビーバーから逃がしてくれた。
雇われてるだけなのに、冒険者という者たちはここまでやるのだろう?
きっと親父は、この人達に大金を渡したのだ。
じゃなきゃ、ハエのクソ以下の私に侍る訳が無い。
そこまでして、後継となる私を守りたいのか?
まぁ、そんな事は無いだろう。
私の事をそんなに大事に思ってるのなら、私の気持ちをわかってくれるはずだ。
ついに限界が来た。
護衛の冒険者二人が、私を残して、追ってくるビーバーに立ち向かった。
結果はお察しの通り、ビーバーに返り討ちにされた。
けど、私はビーバーには捕まりたくなかった。
私にもプライドという物がある。
いや、私にもプライドはある。
ビーバーに捕まれば、それこそ国中の笑い者だ。
ビーバーに捕まったお姫様として、後世笑い語り継がれる。
そうなってしまったら、私はもう誰からも愛されなくなってしまう気がした。
だから逃げた。
最期に一度、愛されるために逃げた。
恐怖で微かな悲鳴と鳴き声しか出ないが、とにかく走った。
誰でも良い、人でなくても、犬でも猫でも魚でも!
あのビーバー以外なら何でも!
もう、そこらに生えてる草でも、そこらに落ちてる牛糞馬糞でもいい!
ビーバーに捕まる前に、誰か私を愛して!
作者「次回もダリアちゃまの愚痴に付き合ってくれ!
ダイコンデロガ「嫌だ!」
三人称「嫌です」




