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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・導かれんでもいいヤツら編
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第9話 野菜獣大根、再び

襲いかかって来たシオンを一撃で沈めた。


それを見ていた他の団員達の、俺を見る目が変わったように感じる。


「まさか、狂犬(シオン)をあの状況から一撃で完封するとは……ただ大根(モン)じゃねぇようだなぁ。団長の言ってた事はマジかよ」


もう一人の副団長、トムが関心したように俺を見ていた。


他の団員も同じ反応だ。


部下(バカ)の無礼を謝罪する。彼女は悪い奴じゃないが、私の事になると余計にバカになるんだ。私からも謝罪する。本当に申し訳ない。」


クレアが謝罪してきた。


そんな平謝りで、許してもらえるとでも?


俺は許せる。




「なはっ!?……一体なにが!」


気絶していたシオンが意識を取り戻した。

思っていたより回復が早い。

俺が意識を失った時より回復が早そうである。


「シオン!貴様は何をしている!」


「……」


クレアがシオンの腕を掴み、叱咤する。


シオンは不意を突いた奇襲であったにも関わらず、一撃で鎮められた事に言葉が出ないようだ。


「……クソッ」


シオンは謝る事なく、クレアを無視しその場から去った。



ネスノ護衛団副団長、シオン・クーパー。


見た目、14.15歳くらいと幼い。

考えるのは苦手のようで直感に任せて動く。性格は大雑把で感情表現は不器用だし短気。


赤くもじゃもじゃしたロングヘアは、後ろから見ると、毛虫のようである。


腕と腰、足は重甲な鎧で守られているが、胸部は申し訳程度にサラシのみ。そのためドラム缶体形に見える。

先程根っこ触手であらゆる彼女の場所を、計測したところ、推定バストサイズは『A』。

腹部と太ももが無防備な、ハルバート使いの戦士。


これらの特徴から、俺は彼女の事を『赤毛虫』。

または、『重甲A()ファイター』と呼ぶことにする。

……異次元からの侵略者と戦う事は無い。




・・・




その夜、俺はミーナに、自分の家に泊まるように促され、彼女の家にお世話になる事になった。


しかし、落ち着かない。なにせ、近くにミーナがいるのだ。

兄のジェイクの隣はもちろん嫌だ。

女の子の隣だから緊張してるとか、そういう類の問題ではない。


どうやら、この大根の身体だと、足を伸ばせるフカフカベッドは居心地が良く感じられないのだ。


やはり大根は大根らしく土の中の方が良いという事だろう。


なので彼女に一言告げ、家の近くの土の中に潜り、眠る事にするのだった。


とても長い一日も、これで終わった。




・・・




朝目覚めた俺は、新たな力に覚醒していた。


根っこ触手が五感の役割を成せるようになったのだ。

昨日は、手として使ったり、計測に使った。

五感のうち触覚のみ働き、その感度は自在に操れる。


さらに、その根っこ触手から発展した能力。

抜いた根っこを槍にすることが出来るようになった。



『ネッコボルグ(未覚醒)』


効果:刺されたり殴られると痛い。



効果は未覚醒のせいか『痛い』のみである。

逆に痛くなかったら、槍として何の意味もなくないか?


とりあえず、根っこの扱いに慣れて起きたいものだ。


俺は村の地中に出来る限り、根っこ触手を張り巡らした。


太陽が昇り始め、村人が畑仕事に勤しみ出すころ、事件が起こった。


どうやら昨日、俺が片っ端から蹴散らし、全滅させたと思っていた野菜獣大根の残党が、何処からともなく湧いて現れた。


数はせいぜい5匹。クレア達だけで大丈夫だろう。


案の定、俺が向かおうとしたものの、クレアに「自分達に任せて、休んでいてくれ」と言われたので俺は身を引いた。


俺は根っこ触手の扱いの練習を兼ねて、地中から根っこの『視覚』によって見学する事にした。

俺は村全体を見渡せるのだ。

気分は監視カメラをチェックする警備員。……多分。



昨日と違い、この村の戦える人間はそろっている。


あの雷電を纏う聖剣使いのクレア。


赤毛虫のシオン。


中学英語の教科書に出てきそうなトム。


おまけに、腹痛が多少マシになったジェイクが加わる。


キャストに文句ない。


彼ら、ネスノ村の戦力を集結させれば、我々の勝利は確実である。



……と思っていた時期が、オレにもありました。



野菜獣大根。

自慢で悪いが、俺は何の躊躇いもなく、奴らを作業のように蹴散らした。


そのせいか、奴らの能力を甘く見ていた。


クレアやジェイクの強さも知っているからだろう。


唐突に現れた大根共は、あらゆる所に泥団子を投げつけていた。


前回の胴上げといい、目的がわからないが、村人は困惑し、中にはパニックになっている者もいる。


団員達が捕らえようとしても、大根共はとてもすばしっこい。

奴らは機動性に優れており、団員達は手こずっている。


奴らを他のもので例えるならば、某RPGのメタル系モンスターだ。


家屋などを使い、立体的な動きをするので更に面倒臭い。

おまけに、痛くも何ともない泥団子を投げてくるので、シオンは目に分かるくらいにはイラ立っている。


クレア達は村人を屋内に隠れるように誘導しつつ、攻撃に備えている。


シオンは自慢の瞬発力と捨て身の戦法で大根を追い込む。

しかし、素人が魚を手掴みしようとするように、攻撃は全くかすりもしない。


「くっそォ!なんだよコイツら!?逃げてばっかりでよォ!!むかつく!」


シオンのイライラが溜まりつつある。


今日の彼女の装備は昨日とは、違っていた。

俺に蹴られた事で防具の意味に気づいたのか、今日は胸部分に装甲を加え、腹部は鎖帷子を纏っている。

その代わり、肩や二の腕部分の装甲は薄くなっていた。


「ここでは、俺もクレア団長も戦いづらいな……」


ジェイクがふと呟いた。


クレアとジェイクの戦い方は昨日見ていたから俺も勘付いていたが、この村の中心で岩の砲弾をぶっ放したり、雷や斬撃を飛ばす事が出来ない。


野菜獣大根共は泥団子を投げつけてくるだけなので、死傷者が出ることは無い。

しかし、村が泥で汚れるのは、後の負担を抑えるためにも防がなければならない。


「なら村の外に、誘導するしかねぇなぁ?」


トムがジェイクに問い、クレアもそれに承諾する。


「それにアイツ、見てみろよ?」


トムの視線の先には大根2匹に翻弄されているシオンがいた。


「アイツ、適当に暴れているように見えて、村の外に追いやってる。……おそらくアレは適当だが、あのまま村の外に追いやる。他の大根も同様に」


各団員はトムの指示に従い、他の大根も同じように、村の外へ追いやる。


幸い、野菜獣大根の知能は高く無い。

それに好奇心旺盛の為、こちらの作戦に上手く騙されてくれる。案外追い出すのは簡単そうである。


「無理せず、確実に追いやれ!1匹ずつでも良い!」


トムの指示に従い、団員達は残りの3匹を誘導する。


ジェイクとクレアは村の外で備える。


「おい!そこのバカ(シオン)!そのまま真っ直ぐ、村の外へ大根を誘導しろ!わかったか!返事は!?」


「うるせぇ!トムは黙ってろ!

こちとら最初から、そのつもりでやってんだよ。団長と軟便筋肉魔術師(ジェイク)の所まで行きゃいいんだろ!?……つかお前も手伝え!」


トムはシオンの行動が適当で無かった事に多少感心したようだ。


……結成まもないチームって感じだな。



村の外に回りこんでいたクレアとジェイクは目標地点に大根が到着するのを待っていた。


あの二人がいる所は俺の触手が届かない。


村のメインの道が真っ直ぐなので、一応見えるのだが、根っこ触手ひとつひとつの、視力はせいぜい1,0。

視界は光の量でのみ調整されている為、見える世界は白黒。


あの二人がいる村の出入り口は、俺が埋まっている地点から、80mは離れているので、『根っこ触手』の限界の長さ50mを差し引き、30m先の物を見る感じである。

根っこ視界はモノクロなので余計に見にくい。


俺は野次馬する事にした。

他の脅威も無いしね。



という事で現在、クレアの近くまでやってきた。


クレアに「調子はどう?」と尋ねた所「野菜獣大根と姿形が紛らわしいので視界に入らないで欲しい」と真顔で頼まれた。


ジェイクにも同じ事を言われた。


こんな悲しい塩対応されたく無いから、次から空気は読もう……。


俺に、一つ『誓い』が増えた。




シオンとトムは野菜獣大根を2匹、目標地点への追い込みを完了した。


「団長!ジェイク!」


シオンが合図を出し、彼女とトムはその場から飛び退く。


「『石刃散弾雨(まかせろ!)』」


ジェイクは石の刃の雨を大根に叩き漬ける。


「「ギャー!」」


しかし野菜獣大根はまだ動く。


すかさず、クレアが斬撃を飛ばす。


「「ギャー!」」


大根は悲鳴をあげ、見事に真っ二つとなった。


奴らはまだ、もがいているが動けなさそうなので、ジェイクがもう一度石の刃の雨を大根に叩き漬け、完膚なきまでに打ちのめした。


「「ギャー!」」




問題が発生した。


2匹を撃破した直後、残り3匹の大根が突如、狂暴化した。


「「「ウー、ギャー!」」」


野菜獣大根共が、誘導していた他団員に反逆した。

大根の十八番かどうか知らないが、飛び蹴りが団員達を襲った。


今まで泥団子しか投げつけて来なかったので、油断していた彼らは、まともに攻撃を食らい、気絶した。


「なんだよ!?アレ!」


シオンが信じられないかと言うような声を出した。


「あの一瞬で、全員やられちまった……」


「おいバカ!? ビビってる暇なんかねぇぞ?俺らは団長の援護に回る」


「痛っ!?」


怖気付いたシオンの背中をトムが叩き、クレアとジェイクを前線に配置する事になった。


大根3匹は彼女らに襲いかかってきた。


クレア、シオン、ジェイクを無視し、大根共はトムのみを狙っていた。


連携のとれた猛攻に、トムは耐えきれず、その場に沈んだ。


明らかに、先程までのバカ大根とは動きが違う。


トトンヌは言っていた。

『野菜獣には知能が無く、命令(プログラミング)された事のみを遂行する』と。


つまり、どこかにこの大根を操る者がいるのだろう。


俺は地中と地上に、怪しい所が無いか探す事にした。


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