第83話 野菜獣大根、懸賞金大暴落の真実
前々から気になっていた事なのだが、ネスノ村や地獄のピクニックの時と比べて、シギアゲート、バーディアと俺が動く大根だという事に対して誰も驚かない。
もしかして、この辺りには、動く大根や野菜が普通にいるのだろうか?
この町にも獣人は沢山いるが、俺以外に動いている野菜はいない。
注目されないという事は周りの目を気にせず、散策できるので、個人的にはありがたい。
しかし、ここまで反応されないと無意味に理由が気になってしまう。
「どうした大根? 悩み事か?」
俺の顔色を伺ってドン・グリードが声をかけてきた。
ドン・グリードはギャングの頭目らしいので、もしかしたらこの地方の情報に詳しいのかもしれない。
ドン・グリードは本来敵だが、この件は相談しても大丈夫な案件だ。ここはこのリスの力を借りてみよう。
「実は最近、俺の存在を見ても誰にも驚かれなくなったし、金貨数枚の懸賞金がかけられてるのに、誰にも追われなくなったんだ。 ドン・グリードは何か知ってたりするか?」
「……ぷっ! お前遅れとるな! ぬっへへへ!」
なんだコイツ……。
自分から訪ねといて、その反応はないでしょ。
「何も知らねーようだから、根本的な事から教えてやる! ギルドに対して野菜獣大根の討伐依頼を出したのは、この俺だ!!!」
ババーン! と効果音がつきそうな感じで、ドングリードは答えた。
「俺はギャングスター故に、闇の世界に顔が広くてな、ヒパビパとトトンヌに野菜獣大根の中に特異点が現れたと言われ、その対策として、この俺がギルドに内通するモンに、頭下げて頼み込むことで、貴様を指名手配にしてやったというわけだ!」
ドン・グリードが語った驚愕の事実。
というか、頭下げたのか君……。
つまりコイツのせいで、魔猪を退治するだけだった筈が、刻甲や鳩尺様と戦う羽目になったわけか。
なんて奴だ、ドン・グリード。
首を下げるだけで世界を操作する事もできるのかよ。
流石は石油王ならぬ、木ノ実王。
「でも、なんで俺は狙われなくなったんだ?」
俺が指名手配されたきっかけは分かったが、手配後しばらくして、誰も俺を捕まえようとしなかった事はわからない。
「あー、それはアレだ。 野菜獣大根の価値が大暴落した。 金貨5枚から、ハナクソ5粒以下の価値にまで下がっちまったんだ」
ものすごいデフレだな。そりゃ誰も狙いませんわー。
俺って、ハナクソ以下の価値なのか……。
「なんで下がったんだ?」
「俺が野菜獣大根1匹捕まえれば、金貨5枚の懸賞金が出ると、他の幹部に言ったら、ヒパビパが『げっ歯類連合の資金にする!』と言いだしたんだ。
ヒパビパの意見に賛同したトトンヌが大量の大根をシギアゲートや色々な町で買い占め、
その大根を全て野菜獣大根にして、ギルドへ持って行き予定通り金貨を山ほど貰ったんだ。
まぁ、そのせいで野菜獣大根の価値はハナクソ以下になっちまったって訳よ!」
なるほど、コイツのせいで冒険者に追われる身となったと思えば、因縁の相手であるヌートリアとカピバラが間接的に救ってくれたのか……。
あと、大根をシギアゲートなどの町で買い占めたと言っていたが、もしかして俺の分身を作るために大根を大量に買おうとしたら、4本までと指定された事があった。
おそらくアレは、トトンヌが大根を買い占めたせいだろう。
転売目的の買い占めはやめよう!
「ヒパビパは頭は回るが、金の巡りを見る目は素人だ。 俺がいなきゃ、いずれ破産するかもしれん! 奴の能力から考えてもな!」
「ヤツの能力って?」
「ヒパビパの能力だぁ? それは……、って流石に仲間は売れねぇよ! バカァ!」
ドン・グリードが昔話をするように愉快そうに話してくれてるので、ヒパビパの能力を聞き出そうとしたが、そう上手くいかない。 ドン・グリードに怒られてしまった。
結果として、俺が追われなくなった事の真実が知れたので、ずっと心の中にあったモヤモヤが晴れて良かった。
お陰で、爽快な気分でウサタンをぶっ潰せそうだ
ウサタンに対して誰よりも強い負の念を抱く三人と刻甲、鳩尺様は歩みだす。
ダリアちゃまは、無条件に愛されるヤツを斃し、母親を取り返すため。
ドン・グリードは、騙されて奪われた能力を取り返すため。
俺は、世界の平和を脅かし、バーディアの人々を苦しめるげっ歯類連合の野望を砕くために……。
というのは建前で、本音はミーナちゃんや赤毛虫、クレア嬢にレイラ同志を、俺の元から引き剥がし、俺のハーレムライフ(変な獣が複数混入)を台無しにした罪で、ウサタンをモフモフに屠ってやる!
小動物だろうと容赦しない。動物愛護? 知った事か!
・・・
ダイコンデロガがウサタンの元に向かう少し前の事である。
「ん? 3人との繋がりが切れちゃったな〜。 流石はフーリーやマグロ人族、ドン・グリードを倒しただけの逸材だ。 僕の洗脳を解くなんて凄いな〜」
宿屋のロビーを占拠したウサタンは、クレア、シオン、レイラとの力の共有が出来なくなった事で、自身が彼女達に掛けた洗脳が破られた事に気付いた。
しかし、ウサタンにはダイコンデロガとドン・グリードが共闘している事には気付いていないようだ。
ウサタンの能力は力を共有する事は出来ても、五感で得た情報の共有は出来ないようだ。
ウサタンはさっきまで、刻甲の召喚した小鳥箱より現れたインコに追われるも、魔王としても力と洗脳したミーナの助けにより、大事に至る事は無かった。
ウサタンは現在、ミーナに抱き上げられる形で、ダイコンデロガとダリアの追撃、奇襲の事を考えている。
そんな彼には、もう一つ気になることがあった。
「ねぇ? そろそろ茶番はやめたらどうかな? 洗脳されたふりをしても、無駄なんだけど?」
ウサタンは誰かに向けて、多少の殺意と共に問いかけた。
現在、このロビーには、ウサタンとミーナ以外には誰もいない。
だがウサタンが殺意を向けた相手はミーナではない。
「なんじゃあ? わしは、すっかりオドレを騙せとると思っとったのに……、もちぃーと演技力磨かんといけんかもしれんのぉ」
ウサタンの前に現れたのは、アライグマ人族の現王で彼に洗脳済みだと思われていた磨王アードバーグ・ライジングであった。
「なんなの君?」
「おどれみたいな狡いヤツは、わしが、ぶちまわしたろうと思ってのぉ、今まで様子見しとったんじゃ。 そんじゃ、お前を引っ掻くが、文句は受け付けんで!?」
アードバーグは、アラーインスレイヴを模した剣を構えて、ウサタンに飛びかかる。
ミーナという人質がいるようだが、アードバーグは気にしない。
彼の必殺技には殺傷能力は無い。
泡をだしたり、汚れたモノを浄化するという力があるだけなので、ミーナが傷つく事は無いのである。
ウサタンは自分の力をミーナと共有する。
するとミーナは普段ではありえない身体能力を発揮し、飛びかかるアードバーグを回避する。
「おお? よう分からんが、流石は魔王。 そう簡単にしばく事は出来んようじゃのぉ? こりゃ、まずミーナ嬢をどうにかせないけんか?」
「はぁ? 所詮アライグマ、磨王だか、なんだか知らないけど、僕と敵対するなら覚悟してよね? いっとくけど、ミーナちゃんはそう簡単に渡さないから」
こうして、ダイコンデロガ達が合流するまで、束の間のアライグマvsウサギの戦いが勃発するのである。




