第82話 赤毛虫がんばれ! 大根を倒せ!
聖剣をクレアから奪った事で無力化にすることに成功した。
手に持つ物が無くなったので、クレアちゃんは洗脳されていようと、危害を加えてくる事はない。
シオンがクレアちゃんの事を大変不安に思っているようなので、無害だという事がわかる。
一方俺は、クレアから聖剣を奪ったことで、赤筋大根となる事が出来た。
残った敵はシオンだけだ。
彼女もウサタンの力の一端を使っているが、赤筋大根の足元には及ばない。
悔しめ!そして悩め! 砂糖をかけられたナメクジみてぇにな!
「ぶっ殺してやる! この野郎! よくも団長を……! 団長を泣かせた奴は絶対ぶっ殺す! 野郎ぉぶっ殺してやるぅ!」
シオンがキレた!
まるで子供に危害が及びそうな時の動物みたいだ。
前世で、ウリボーを誘拐しかけた俺を突き殺した親イノシシそっくりの気迫だ。
これは油断できないんじゃないかなぁ……?
子供を持つ動物というものは、己を犠牲にしてでも子供を守ろうとする。
シオンが俺に対して向ける怒りは、洗脳によるものなのか、彼女の潜在的な怒りなのか、俺には区別できないが、俺に逆らってるので、前者にしておこう。
「シオン姉ちゃああんッッ!! たしゅけてよぉお! びぇええええん!」
「ああっ!?団長、泣かないで! 大丈夫だから!」
泣き喚くクレアちゃんの泣き声に、シオンがあたふたしている。
お前もしかして、洗脳解けてんじゃねーの?
猿芝居か? 茶番か?
「団長!少し待ってて! 今このクソ大根ぶっ殺して、そっち行くから!」
「早くきてよぉおおお! うぇえええん!」
シオンはクレアちゃんに安心するように声をかけた後、大剣を両手で握りしめ、こちらを見据える。
「クソ大根と低脂肪チキン!団長に安心してもらうためにもテメェらをぶっ潰す!」
シオンから、かつてないほどの闘気がにじみ出ている。
彼女の眼光も獲物に噛み付こうとする獣のようだ。
シオンが大剣を構え、単身で突っ込んできた。
彼女の目には殺意がこもっていた。
じっとしてたら間違いなく真っ二つになってしまうぞ!?
大変だよねー?
シオンがドタドタと疾りだす。
それだけだと、恐ろしく思うかもしれないが、シオンは犬耳のメイドだ。
ヒラヒラとエプロンやスカート、それについているフリルをたなびかせている。
まぁ、大変! このままだと凶悪な赤毛虫に斬り殺されちゃう!
激おこシオンは止まらない。
彼女が大剣を扱う姿は、羽のように軽く見える。
重鈍な大剣を担いでいるとは思えない。
赤筋大根といえど、当たり場所が悪ければ、ウサタンの洗脳化にあるシオンに叩き斬られてしまうだろう。
だから俺は、シオンを根っこで縛っちゃう!
赤筋大根の根っこ触手で、シオンの全身を縛る事が出来た。
やはり、赤筋大根は良いものだ。 根っこ触手の扱いが安易にできる上、強度も段違いに高い。
根っこ触手で縛る事で、シオンはさながら赤毛虫と呼ぶのにぴったりな見た目と、劇的な変化を遂げた。
彼女は抵抗できず、ゴロゴロと転がっていく。
そしてクレアちゃんがいる場所まで転がり続ける。
そう、シオンが転がる弾道の果てには、クレアちゃんがいる。
うわぁああ! シオンお姉ちゃん! 危ない!!」
「うわわわわああああ! 団長! よけて!」
ゴッツーン!
砂煙を巻きあがらせ、転がるシオンと泣き喚くクレアちゃんが激突した。
クレアは避けようとするも、驚いて腰を抜かしてしまったらしい。
四つん這いの姿勢に加え、生まれたての子鹿みたいに四肢を震わせており、逃げる事はできなんだ……。
ぶつかった2人は気絶した。
目にぐるぐる渦巻きを浮かべてそうな間抜け面な事から大事には至っていないだろう。
これにて刺客3名の無力化は完了である。
・・・
気絶したままのクレア、レイラ、シオンの洗脳が完全に解けていない事を考慮し、3名の身柄は拘束させてもらった。
もっとも、聖剣を奪われたクレアちゃんが、反旗を翻してくる可能性は微々たるものだが、何がどう転がるかはわからない。
俺たちはウサタンと決着をつける事にした。
戦える人員は……まさかの俺だけだ。
刻甲と鳩尺様は、クレアとの戦いで力の多くを使ってしまった。
ダリアちゃまは戦えないし、ドン・グリードは手持ちの木ノ実の殆どを使ってしまったので、戦力にはなれない。
そういえば、シオンの頭を殴ったことでドン・グリードはブチ切れたダリアちゃまに首を掴まれ、使い古されたぬいぐるみみたいになっていた。
「やめて」とダリアちゃまに懇願してもドン・グリードに対しての憎悪の気持ちが収まらないようなので、根っこ触手で縛っておいた。
おてんばな姉を持つ弟は辛い。
余計なお荷物が一つ増えてしまったのは誤算だ。
否、ダリアちゃまは最初からお荷物である。
俺はそんなダリアちゃまを引きずり、刻甲と鳩尺様に残り3人を担いで貰っている。
ちなみに、鳩尺様と刻甲が分離する際、弾け飛んだ衣服が巻き戻しされたように、刻甲の元に集まり、元に戻った。
どうやら刻甲はクレイジーダイ○モンドを使えるらしい。
グレートですよこいつはァ。
俺たちは、洗脳された3名を、どこかへ不当投棄してきた。
3人の拘束は緩めておいたので、目が空いたら好きな所に行くし、腹を空かせれば俺たちの所に戻ってくるだろう。
やつらは鼻が良いからな!
「どうせ私なんか、おっても足手纏いだでなー……」
ダリアちゃまは、俺に縛られた事でネガティヴさを発揮。
対応が面倒なので、彼女も放っときたいが、一応兄妹? 姉弟? の契りをしているし、ほっとけば拐われる可能性はあるので、俺と同行だ。
いやですねー。
この問いかけは、俺に慰めて欲しいと言ってるのと同義語だ。
これが他人なら「うるせぇ、メンヘラ野郎! クソして寝な!」と罵る事は無いにせよ、適当に流すだろう。
しかし彼女と俺は、血を分けた……いや、分けて無い兄妹なのだ。
「多分、ダリアちゃまでも役に立てる。 あのぶりっ子ウサギ野郎を倒すには、ダリアちゃまの憎しみが必要不可欠となるだろう! だからダリアちゃまは足手纏いじゃない」
これは励ましになるのだろうか?
自分で言っといてアレだが、不安になる。
「コッココ! この世界に必要無い人など居ません! 得意分野を見つければ、誰しも輝けるものなのですよ! ちなみに私は、破戒僧になると『吉』と占星術師さんに言われたので、こうして戒律を破って、破戒僧になったんですよ!」
「そんな適当な理由で破戒僧になったんかい!」
俺は、唐突な刻甲の自分語りに突っ込みを入れてしまった。
逆に突っ込まないのは難しい。
「現に愚僧は幸せですよ! どうですダリアさん? 破戒僧になるために、一度、仏の道に進んでみませんか? ダイコンさんもどうです!戒律を破るのは楽しいですよ!」
刻甲よ、破戒するために仏門に入るなんて、仏様が可愛そうではないか?
「丁重に断る!」
「絶対つまらんと思う。 なりたくないわ!」
俺とダリアちゃまは、刻甲の誘いを冷酷に断った。
とりあえず、ダリアちゃまがウサタンに抱く憎しみは、何故か俺やドン・グリードよりも格段に強い。
ダリアちゃまは、生霊とか沸いて出てきそうな雰囲気を醸し出している。
これは、ウサタン攻略のカギになりそうだ。 多分。




