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第76話 うちで飼ってたメスのインコは、言葉を覚え無かったが、鳥籠から脱走する事は覚えた


「ここまで派手にすればバレるよねー。 でも、僕の洗脳は普通じゃないよ? 魔王だからね、君やドン・グリード同様に、ユニークな能力を使えるんだよ」




ミーナちゃんやシオン、クレアにレイラ、おまけにアードバーグは、突如現れたウサギに、愛くるしさという手口で洗脳されてしまった。


現在、この場に正気な人物は俺以外にダリアしかいない。

そのダリアも洗脳されたレイラに拘束され、危険な状況にある。


「お前は誰だ?」


「げっ歯類連合七幹部(VII'st)が一人、魔王ウサタン・インフェルノだよ、 因みに『怠惰(スロウス)』を担当してるんだ。よろしくねー」


ウサギはもう隠さない。

というより、隠す必要が無くなったのだろう。

恐らく、ここにいる俺とダリア以外の全員はこの魔王ウサタンという奴に洗脳済みだ。



彼はあいも変わらず、呑気に木ノ実を食べながら、自己紹介してやがる。

どっからその木ノ実出してんだ?


あと、そこで食事するなよ!?ミーナちゃんの服が汚れるだろ!


魔王ウサタンは七つの大罪のうち『怠惰』を担当しているというが、俺の知る限りだとウサギって『色欲(ラスト)』を象徴する動物でしょ?


おまけに魔王ウサタンとかいう、サタンと紛らわしい名前をしているが『憤怒(ラース)』でもなく『怠惰』

とても紛らわしい。




不味いな。 この状況は不味い。

洗脳なんて溜まったもんじゃないな。


とりあえず逃げよう!


俺はレイラの腕を根っこ触手で縛り、彼女の手から短剣を振り落とす。


「ぐっ!?」


動きを封じた隙を突き、ダリアちゃまを解放させると、俺は、ダリアちゃまを担いで宿屋を飛び出した


「逃がさないよ! ……えっと、ミーナちゃんだっけ? 大根を追って!」


「……」


「大根を追って!?」


「……」


ウサタンは俺を追おうと、自身を抱き上げるミーナちゃんに指示を出すが、彼女は動かない。


「もういいよ!」


ウサタンはミーナちゃんから飛び降り、自ら俺を追ってきた。


しかし、大きな隙ができたので、ウサタンから逃げるのは余裕そうだ。


そんな安堵した時だった。

レイラに回り込まれてしまった。


なんとなくだが、ウサタンがついて来ないので、素早さに特化したレイラが、代わりに来ると思っていた。

だから俺は根っこ触手で彼女を縛り、レイラを踏み台にし、飛び跳ねる。


「おわぁあああ! 飛んどる! 飛んどる!」


俺に根っこ触手で掲げられているダリアちゃまが叫んでるが俺には関係ない。

どこの王族の姫様だろうが、逃げるという目的を完遂するためなら手段を選ばない。我慢しろ!


これでレイラは追ってこないだろう。

あとはひたすら突っ走るだけだ。


レイラを跳んで躱し、着地するなり俺は走りだす。

もう、俺を止める奴はいない。 あばよ、とっつぁ〜ん!


俺は確認のため後ろを振り返る。

レイラは追ってこない。


予想通り…………うおっ、まぶしっ!


突如、閃光が俺の目に突き刺さってきた。


伊達じゃない強力な光を見てしまったので、非常用として、視界を根っこ視覚に切り替える。


それでわかったが、レイラ以外にもウサタンを愛でた連中は操られてる訳であるので、違う奴が追ってきたのだ。


「お前か、赤毛虫!」


今の閃光は、シオンが扱える魔術だ。

以前、鳩尺様の追跡から免れるために使った事がある。

俺はそれにまんまと引っかかった訳だ。


そしてシオンは何も嫌がらせで、閃光魔術を唱えたわけではない。


ヤツも来た。


強化魔術を施された全身鎧の騎士、クレアが無数の稲妻、電撃を飛ばしながら、走ってくる。


あのー、クレアさん? 聖剣がなくとも電撃使えたのか?

ロングソードでも稲妻扱えるの?


……いや、よく見ると彼女が握っているのは、聖剣の代理として持たせているロングソードではない。


クレアが握っている剣は、ドン・グリードに持ち逃げされたはずの本物だ。聖剣ラビ・ラコゼであった。


どういう事だってばよ!?

なんで、ナチャラルに聖剣を取り戻してんの!?


まるで意味がわからんぞ!?


レイラの身のこなしに加え、シオンのナイスアシスト、そしてクレアの、湧くようにして取り戻している聖剣からほとばしる数多の電撃。


普段の彼女よりも、明らかに強い。


もしかして、アレか?

敵になった途端に強くなるとかいう現象か? それは厄介だ。


なら俺も、本気を出さなくてはならない。


俺は赤筋大根になるため、ミェルニルを握りしめる。


ミェルニルを、握りしめる……!

ミェルニルを……!


……って、ミェルニル無いやん!


そうだ、ミェルニルってミーナちゃんに預けてるんだった。宿屋に置いてあるんだったな。



後方より全身に稲妻を帯びたクレアが重い足取りで近づいてくる。

いつもと違い兜を被っているので表情は見えないが、今の彼女は黙っていても殺気が流れ出ている。


俺はクレアに恐怖を感じた。


ここまで、彼女を恐れるのは、久しぶりだ。

彼女との初対面、ムッコロ……ではなく、くっころ宣言したとき以来だ。


流石に、ただの大根の身でウサタン含め、クレアやレイラを対処するのには(ほね)が折れる。


ミーナちゃんがウサタンの命令を聞かず不動なのは良いものの、ひょっとしたらアードバーグも襲ってくるかもしれない。


ひょっとして俺の仲間全員、ウサタンにNTRされちまったか!?


いや、厳密には全員ではない。

刻甲と鳩尺様がここにはいないからな。

しかし、刻甲の姿を朝から全然みていない。

どこいったんだあのニワトリ!?


俺は成す術がなくなったので、ダリアちゃまだけでも逃そうと彼女を根っこ触手から解放する。


せめて、時間稼ぎだけでもやってやろう。


俺は追ってくるクレアの方へ立ち向かう事を決めた。



俺がクレアに立ち向かおうとした時である。

上空から謎の飛翔体があらわれた。


「ポポポポポポポ、くるっぽー!」


聞き覚えのある鳴き声だ。


「朝市に美味しそうな穀物を探しに行ってる間に大変な事になってますね! おや敵はクレアさんにレイラさん、シオンさんにミーナさんも敵なんですか!? どういう事です!? 返答希望(コケコッコー)!」


空から鳩尺様と刻甲が現れた。

ずっと姿を見なかった理由は、ただ鳥として穀物を探していただけのようだ。


「鳩尺様! 『くねくねの舞』で敵の足止めをお願いします!」


「ぽっぽー!」


鳩尺様は刻甲の指示に従う。


鳩尺様はクレアの前に立ちはだかると、長細い首と体を波状にくねくねと蠢かせる。


「ぐぁ……!?」


その舞を直視してしまったクレアは頭を抑え、膝をつく。


クレア以外も、くねくねの舞を見たことで一時的に精神的ショックを受け、その場にうずくまる。


「これは不味い!?」


ウサタンは鳩尺様が脅威になりうる存在だと理解し、跳ねながら猛スピードでやってきた。


「刻甲! どうすんだ!?」


俺は刻甲に問う。


「心配ありません! ここはひとつ、錯乱用の召喚術、というより、呪術を発動させます!」


そういうと刻甲は呪文を唱え出す。


「乾けよコウイカ。干されよコウイカ。

貴様らはインコの体を丈夫にする。 その甲を御箱に詰めれば六道を抜け、浄土への扉が開かれん!

インコに齧られるのが貴殿らの贖罪。

……ちなみにオカメインコはトサカがあるから、インコではなくオウムだァアアアアアア!」


それは呪文なのか???


刻甲が呪文(?)を唱え終わると、刻甲の頭上から子供ひとり入れそうな箱が現れた。


「鳩尺様! この『小鳥箱(コトリバコ)』をお使いください!」


「ぽっぽー!」


鳩尺様は刻甲が召喚した『小鳥箱』を足で掴んで羽ばたき、追ってくるウサタンへと箱を落とした。


「うわっ!」


ウサタンは箱を避けられ無かった。


ウサタンの元に箱が落ちると案の定、箱が壊れた。


すると中から小さな何かが沢山飛び出してきた。


箱から飛び出したモノ。

それは小鳥だった。


セキセイインコ、コザクラインコ、ボウシインコ、サザナミインコ、ゴシキセイガイインコ、マメルリハといった大量のインコが、鮮やかな色彩を見せつけるかのように飛びたつ。


ヨウムやコンゴウインコといった大型インコもいるようだ。


「オマエ、コウイカカ? カルシウム、ダイスキ! オイシイ! オイシイ!」


インコ達は白いウサタンをコウイカと判断したのか、彼の元に集まり出した。


「うわぁ! こっちくるなー!」


ウサタンは飛び跳ねながら、迫りくるインコから逃げる。


「マテー 、コウイカ! オイシイカルシウム!」


インコ達は地上に降り立つと、二足歩行でウサタンを追いかける。


飛べよ!


「隙ができましたよ! 逃げましょう!」


「大丈夫なのか!?」


「ええ!『小鳥箱』と鳩尺様のくねくねの舞で足止めは完了ですよ! 追って来られる確率は、インコのメスが言葉を覚えるよりも低いですよ!」


よくわからん確率だな。

それはどれくらい低いんだ?



俺とダリアは刻甲に手を引かれ、ウサタンとその洗脳下にあるクレア達から逃げた。


俺達は、広いこの町を無作為に移動して、ひたすら逃げ続けた。

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