第74話 ダリアちゃま、聖域を見つける
「ワッハッハ! ちょっと遅れてしまったかァ!? それはそうと悪いな! お姫様の捕獲は失敗してしまったわ! ワッハッハ!」
「遅いよビビンバ〜、オポッサム達が死んだふりする前にログハウス作って貰わないと困るんだけどー?」
カピバラゴンと共に、ビビンバはバーディア王都に戻ってきた。
ビビンバのもとに、彼と同じ幹部である、とある2人が駆けつけた。
その一人、魔王ウサタンは気怠そうに出迎えた。
「やけに上機嫌だなビビンバ? なんかいい事があったのか? それはそうと、作戦失敗とは何があった?」
ウサタンの横には、シギア峡谷上空で、ダイコンデロガに不遇にも敗北したドン・グリードがいる。
ドン・グリードは困惑した。
ビビンバは、バーディア王の娘を捕らえる任務を失敗したくせに、不気味なほどに上機嫌なので、その理由を尋ねたのだ。
「イアドネスシティで、例の大根に出会ってな! そのついでに姫を向こうに取られちまったんだ! 聞いてはいたが強いなぁ、あの大根! ドン・グリードやフーリーが負けた理由がわかったぞい!」
「「は!?」」
ビビンバの言葉に、ウサタンもドン・グリードも困惑する。
「って事は、砦要員のハムスター人族も負けちゃったのかー、ざんねん♪ ざんねん♪」
「あいつら、もうこんな近くまで、やってきたか……、今度こそ決着つけてやる」
憎たらしそうな顔で、ドン・グリードは筒を握りしめる。
「そうか! じゃあ、俺はオポッサムどもの所にいくで! じゃーなー!」
ビビンバは2人に手を振ると、そのままオポッサムがいるであろう、どこかへと、走り去っていった。
彼が去った後、ドン・グリードは歩み始める。
「ねぇ〜? どこに行くの?」
そんな彼をウサタンは呼び止める。
「言わなくても分かってんだろ?」
「ええ!? 思わないようにしてたけど、やっぱそうなんだ? 大根倒しに行くんだ? 一人で勝てるの? マグロとタッグを組んでダメだったのに? バカなの?」
ウサタンはドン・グリードを煽る。
「……今だろうが何年後だろうが、あの大根を仕留める事には変わりは無ぇよ。
いつ攻めるかで悩んでんなら、今、攻めるのが一番気分が良い! 俺は悩む事が嫌いなんでな! それに、前回の戦いでわかったが、大根の仲間もそれなりに脅威だ。 ここはギャングの本領、闇討ち、奇襲で仕留めてやる」
「なるほど、仲間か〜」
ドン・グリードはウサタンの煽りに乗らず、一人で、イアドネスシティに向かう準備を始める。
「ちょっと待ちなよ!ドン・グリード」
「なんだ??」
ウサタンは珍しく、誰に支持された訳でもなく、自発的に、ドン・グリードにとある提案を出す。
「僕とチームを組まない?」
「は?」
いつもは受動的なウサタンが、らしくなくグイグイとくるので、ドン・グリードは困惑した。
「奴らには仲間がいるんでしょ? なら、こっちも組もうよ? どっちみち、一人じゃ勝てないし、貢献も出来ないよ? なんたって、仲間って良いよね? 絆とか、愛とか、友情とか? そういうの大好きなんだ、僕」
ウサタンはウサギ特有の、つぶらな赤い瞳でドン・グリードを見つめながら懇願する。
「ああ、わかった! いいだろう、自称魔王の力を見せて貰おうじゃねーか!」
ドン・グリードはつぶらな隻眼をギラつかせ、ウサタンの要求を受け入れた。
彼も単独で行動しようとは、ハナから考えていなかった。
だが、いつも呆けているような魔王と自称する怠惰なウサギ人族を頼ろうとはしなかった。
しかし、状況は変わった。
カピバラ人族のヒパビパが認める程、ウサタンは実力者だ。
そんな彼から共闘を持ちかける姿を見て、ドン・グリードはウサタンへの印象が変わった。
「こいつは出来る」ドン・グリードが長年の木ノ実の密輸で培った対人スキル、経験がそう判断した。
「文字通り、奴らに地獄を見せてやろうぜ! テメーの力を満遍なく見せてもらおうか!」
だからドン・グリードはウサタンとタッグを組んだ。
「(……これで、やっと『力』が手に入る)」
ウサタンが、ドン・グリードに聞こえない微かな声で呟いた。
同時に、小動物には似合わない邪悪な笑みを、ウサタンは堪えドン・グリードと共に、イアドネスシティへと向かった。
・・・
(ダイコンデロガ視点)
「な、なるほど、つまりレイラは、そこのダリア姫と姉妹で王族だったという事か……!」
「団長、声が大きいっすよ」
「すまない」
俺達は、なんとかダリアちゃまを追いかけるレイラとシオンと合流し、その過程でクレアやミーナちゃん、刻甲にアードバーグとも合流したので、ダリアちゃまを捕まえ、今まで起こった事をみんなに説明していたのだ。
「数年前、バーディアの式典でやとわれ、護衛してた時に2人に会ってた事を思いだした。 レイラに関しては、当時と身なりが違いすぎて、今まで、わからなかったが」
クレアは昔から面識があったようだ。
逆に今まで忘れてた事の方が気になるが……。
「ダリア……さん? でいいですよね? これからよろしくお願いします」
ミーナちゃんは、俺を抱きかかえながら、ダリアちゃまに挨拶をする。
なんか、ミーナちゃんに抱きかかえられるのが、俺の指定席みたいになってるが、殺気とか無ければ良い席なので俺からは何も言う事はない。 どーだ! 羨ましいだろう!!!
ダリアちゃまに関してだが、この先、どこへ逃げようがげっ歯類連合の魔の手からは逃れられないと判断し、俺達と共に行動することにした。
彼女の護衛は、俺達が出会った魔女のねーちゃんと戦士のおっさんの2人だったが、ダリアちゃまいわく、もともと10人は護衛がついていたらしい。
もっとも、げっ歯類連合から逃げる途中、ビビンバやその他、連合の獣人の攻撃によって倒れていったらしい。
ここで俺は思ったのだが、最後まで勇敢に戦ったねーちゃんにしろ、おっさんにしろ、ダリアちゃまの事を大事に思ってなきゃ、そこまでしないと思う。
ダリアちゃま本人が気づいてないのが残念だが、彼女は十分に愛されている。
それに気づいてないのは、拗らせてる故のものだろうか?
まったく、早く大人になって欲しいものだな!
「なーなー? それはそうと、なんでダリアはシオンにくっ付いとるだ?」
レイラは自分の姉が、自身よりも小柄なシオンに、母親に抱きつくダリアちゃまに、疑問を投げかける。
「ここが私の母胎と言う名の聖域だからだがなぁ! 私は新お母様に産み直してもらうだーッ!」
「ええ!? ダリア……さん! 大丈夫っすか! げっ歯類連合に精神汚染魔術とかされたっすか!?」
抱きしめられるシオン、ダリアちゃまの言葉にげっ歯類連合を疑う。
しかし、残念だな。それは魔術ではない。
ダリアちゃま、自分を受け入れてくれたシオンを母親と錯覚している模様。
やはり、さっきのハグで精神が変な意味で壊れている。
バブみに目覚めた挙句に、魔界転生を望んでいる。
早くなんとかしたいが、俺は脱バブみの方法とか知らないし、柳生十兵衛でもないので、彼女を止める事はできない。
ミーナちゃんは笑顔のままダリアの言葉に相槌を打っているが、その他クレアやシオン、レイラ達は、本気で呪いの類にかかったのではないかと、色々話しを展開していく。
なんか、面倒臭くなってきた。
「ミーナちゃん!」
「はい、なんですか?」
「今夜泊まる宿探すついでに散歩してこようか?」
「わかりました!」
俺はここから逃げるように、ミーナちゃんと共に彼女達の元を去った。




