表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/187

第71話 ビーバーに支配された町


ハムスターの襲撃から数日がたった。


俺達は緑なき大地をひたすら歩き、第一の目的地であるイアドネス大河に辿りついた。

この大河を西へと歩けば、いずれ海、王都へとたどり着く。



川の周りには、人々が住まう町がある。


今までひたすら、何もない荒野みてぇな砂漠を歩いてきたので疲れた。


水分をふんだんに含んだ大根(おれ)には、こんな乾燥した気候は害悪でしかない。


なので、町という人工物が目に入っただけで、嬉しく思ってしまうのだ。



「ここもか……」


クレアが声を漏らした。

ここはイアドネス大河の近くにあるので、町の名はそのまま、イアドネスシティというらしい。


ただ、町のくせしてまったく賑わっていない。

この通夜のような静かさは、ハムスターに襲われたあの町と似ている。


やはり、げっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)の侵攻が進んだ事が関連しているのだろうか?


前回の町はハムスターに占領されていたし、もしかしたら、この町も何か、げっ歯類の統治下となっているのかもしれない。


「ダイコン、ここは複数に分かれて町を調べてみよう。 げっ歯類連合について何かがわかるかもしれん」


クレアにそんな事を提案された。

もちろん答えは、イエスである。



俺達、総勢7名は、2人組の3チームに分かれ、町を探索する事にした。


「あの……デロ先輩?」


「どうしたんだいシオン?」


シオンに呼び止められ、俺は彼女の方を振り向く。


「その……、オレ、余ったんすけど、どうすれば、いいっすかね?」


「あ……」


とても大事な事を忘れていた。

『二人組を作れ』という指示は、人数が偶数の時のみ許される指示である。


しかし今の俺達は、動物と野菜含めて7人だ。

つまり、1人余ってしまう。


俺はこの土地について詳しいレイラと組んだ。

クレアは情報収集能力に優れるミーナちゃんと組んだ。

あと、アライグマの王様とニワトリ坊主がタッグを組んだ。


余っちゃったかぁ……。


これは俺の適当さが招いた悲劇だ。

余ってしまうのは、とても悲しい事なのである!


シオンを悲しませたのは、こうなる事を予測出来なかった私の責任だ!

だが、私は謝らない!


「ついてこい赤毛虫(シオン)!!!」


「……はい!」


俺は、弁明も謝罪もいわない。

ただ一言『ついてこい』とシオンに命じる。


シオンはシオンで、呼ばれた事が嬉しかったのか、元気よく返事をすると、こちらへ駆け寄ってきた。


なんたる忠犬、赤毛虫メイドの尊さたるや。

子犬みてぇでかわいいなお前!

その髪の毛、モフモフさせろ!?




・・・




俺とレイラは、町を散策している。


シオンには単独で近辺の調査をして貰っているので、今は2人で散策中なのだ。



どうやら町人の声を聞く限り、げっ歯類連合に国が侵略されているのは真実らしい。


なんでもこの町は、現在、建聖ビビンバというビーバー人族の統治下となっているらしい。


そのため、前回のハムスターに支配された町同様、町に活気が無いわけか。


とはいえ市場となれば、シギアゲートの時と同じく、それなりに人々が行き交っている。



そこで一つ、気になることがある。


「なぁ? 聞きたかったんだが、なんでレイラは顔隠してんの?」


「…………ひみつ」


バーディアに来てから、レイラは人前に出てる時は、顔をマントで隠している。


おまけに、標準語のクール系となってるし、絶対何か隠している。



「もしかして、レイラってバーディアでは指名手配なのか? 暗殺者って言ってたし、王族の誰か殺っちまった?」


俺はいつものノリで軽口を呟く。


「……いくらダイコンでも言っていい事と悪いことがあるで?」


睨まれると同時に物静かなトーンで怒られてしまった。


王族をネタにするのは流石に不敬罪だったか?

故郷(くに)についてジョークを言われるのは好まないのだろう。

国辱はやめておこう。


「いや、その……なんかごめん」


シオンには謝らなかったが、この空気の重さには耐えられないのでレイラに謝った。



「デロ先輩! レイラ! 川岸に凄いものがあるっすよ!」


ありがとうシオン! よくぞこの、鈍重な空気をぶち壊してくれた!


村周辺を観察していたシオンが戻ってきた。



「川岸に嫌でも分かる凄い物が見つかったっす!」


「川岸? ひょっとしてビーバーが作ったダムか?」


この町ってビーバーに支配されてるらしいし、ダムの一つや二つあってもおかしくないだろう。


「そうなんすよ! いや、それだけじゃないっす! 見た限りあれはただのダムじゃないっすよ!」


シオンは早くダムを見せたいのか、俺とレイラを引きずりながら川岸へと移動する。




そして、川岸についた。


案の定、ビーバーが頑張って作っただろうダムがあり、近辺の水位が上がっている。


「あれ? ……あのダムって?」


俺は気づいてしまった。

シオンの言った通り、ダムが普通ではない。


知らなければ、ただのダムだと思うかもしれないが、俺とシオンには、このダムが異質であるという事が瞬時に分かった。



「そうっす! このダムは以前、ヌーターンがネスノ村の近くに作ったダムっす!」


延々と川上から川下へ続くこのダム、その形状は、ヌーターンがエクスカリカリバーの力を自慢するために作ったダム、別名『キャメロット・オブ・ビーバーズ』そのものだった。



「……おいおい、どういう事だよ」


俺は色々考えた。

『キャメロット・オブ・ビーバーズ』が展開されているという事は、ヌーターンが裏切ったという事なのだろうか?


あの沼ドブネズミめ、よくも裏切ってくれたな!


よくよく考えれば、ヌーターンと別れてから幾日も経過したのに、げっ歯類連合は俺達に牙を向けたままではないか!


ヌーターンによる和平交渉が失敗するという俺の予想は、的中してしまったようだ。



俺はこの町のどこかにいると思われる裏切り者(ヌーターン)を探す事にした。




彼を探す必要は無かった。

というより、犯人はヌーターンではなかったのだ。


「くそっ! このままでは捕まっちまう」


「姫様! 早くお逃げください!」


川下の方から、マントを羽織った何者かをエスコートする魔女のねーちゃんと、鎧を纏った戦士のおっさんが、こちらへ走ってきた。


彼ら3人は誰かから逃げている。


「こらまてー! 逃げても無駄だぞー!」


彼らを追ってきた者、それはビーバーだった。


身長は160cmと、大きいし、喋るし、ビーバー人族で間違いないだろう。


更にあのビーバーについてわかった事がある。


あのビーバー人族が持っている剣。

奴は背中に大剣を背負い、もう一つ、剣を握っている。


その握っている方の剣なのだが、それの特徴はノコギリのような形をしている。

エクスカリカリバーそのものだった。

あの剣は俺も使った事があるので、見間違える訳はない。



「くそっ! 時間稼ぎだけでも……!」


鎧を纏った戦士のおっさんが、大剣を構えて、2人に背を向ける。


離れていても伝わる。おっさんは覚悟を決めている。ビーバー相手に、死ぬ覚悟を決めているのだ。


「どりゃあああああああ!」


おっさん、ビーバーに斬りかかる!


「邪魔ァ!」


おっさんがビーバーに殴り飛ばされた。


おっさんの方が先にビーバーに刃を振り下ろしたはずだ。

その筈なのに、後攻のビーバーの方が背負った大剣でおっさんを殴り飛ばしたのだ。


大剣で殴り飛ばされたおっさんは、牛車に轢かれたように吹っ飛び、川へ落ちた。


そんな彼に、ビーバーは視線を向けない。


残った2人めがけて突っ込む。



「『火炎閃槍』!」


今度は、魔女のねーちゃんが、トトンヌやヌーターンも使ってきたレーザーをビーバーに向けて放つ。


ビーバーはレーザーを避けられなかった。


レーザーがビーバーに当たると同時に黒煙と炎がほとばしる爆発が発生。


やったか!……残念、やれてない!


「こりゃあ! 大人しくつかまれー!」


むせる!

ビーバーは難なく、炎を突破してきた。

まるで今の一撃が無かったかのように、ビーバーは驚きもしない。


奴はただ走っているだけだ。


自慢の一撃がまったく通用しなかった事に、慌てたのか、魔女のねーちゃんは、火、水、土、風、あらゆる魔術をビーバーにぶつける。


「邪魔ァ!」


「ぐぁあ! 姫様、お逃げください!」


魔女のねーちゃんが、唱えた魔術は、素人目でも、『火炎閃槍』同様に、レベルの高いものに違いない。


されど必死に抵抗するも報われる事はなかった。


魔女のねーちゃんはビーバーの持つ大剣で、おっさん同様に殴り飛ばされ、川へ落ちた。



「うわぁああああ!! こっち来るないやー! あっちいけや!」


「ガッハッハ! それは無理だな!」


姫と呼ばれていた人物は、悲鳴を上げ、ビーバーから逃げる。



「ん? 姫って言われとったでなー?」


「ああ、そうだな」


レイラに、確認するように尋ねられた。

あの魔女のねーちゃんは、確かに『姫』と言っていた。


姫ってアレか?

この国の王族的な意味の姫か?

オタサーの姫ではないよな?



「今の声といい、もしかして、()()()()かいな!?」


突如、レイラがビーバーに向かって走りだした。


「おいレイラ! 闇雲に突っ込むな!」


さっきのねーちゃんが使った『火炎閃槍』とかいう魔術は半端な物ではない。

ヌーターンやトトンヌとの戦闘で、俺はそれを知っている。


その『火炎閃槍』を無傷で切り抜けるビーバー相手に、ひとりで立ち向かうなど、無謀もいいところだ。


「シオン、援護頼む!」


「了解っす!」


こうなったら、ヤケだ。


レイラの後を追うように、俺とシオンもビーバーへ立ち向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ