第66話 コイツをCICから叩きだせ…!
俺と自称ドラゴンスレイヤー、マウントコカトリスコンビと、ドン・グリードとマグロ人族の合体形態、合体超獣リスマグロの戦いが始まった。
マウントとりとりは、爆風の勢いを殺す事なく、上空へと飛ぶ。
それに対して、リスマグロは、速度担当の圧倒的な推進力で、じわじわと距離を詰める。
「こんだけ、追いつけば十分よ! 喰らえ!ドングリ機関砲!」
制御・操作担当が筒を咥え、ドングリを吐き飛ばしてきた。
俺はバリアを張り、ドングリを防ぐ。
「おい、マグロ! お前も攻撃しろ!」
「了解!」
ドン・グリードがマグロに指示を出す。
マグロは口から火炎を飛ばしてきた。
これは見覚えある魔術だ。トトンヌが使ってたし。
飛んでくるドングリに火炎が混ざり、ドングリ弾は焼夷弾に変異した。
ドングリが火炎で強化されたせいか、バリアに亀裂が現れる。
俺はネッコボルグを作り、リスマグロに投げつける。
リスマグロがネッコボルグを避けるため、速度を落とし距離を開ける。
ネッコボルグの攻撃が終わると同時に、リスマグロは温存していたエネルギーを使い、体当たりをするように突っ込んできた。
「グァ! ガァー! グワァー! (やばいよ! もうダメだ! 追いつかれるー!)」
俺は屁古垂れ、弱気になるマウントとりとりの手綱を握る。
やるなら今しかない。
マウントとりとりの機動力を信じよう。
「オ○ガ11、イジェーークト!」
「グェエエエエエエエエエエエエ!!??」
俺はマウントとりとりの手綱を思いっきり引いた。
マウントとりとりの手綱を引いた勢いで速度を落とし、視線は空を向く。
そして、マウントとりとりは空中で、宙返りをした。
これは、クルビットという技だ。
マウントとりとりの腹を前方に向かせたまま、水平に飛ぶ。
これだけなら『コブラ機動』と呼ばれる技だ。
更にそこから、後方に一回転させ、水平姿勢に戻す機動を『クルビット』という。
外見上の挙動は、高度を変えないままの宙返りに見えるのだ。
こんなのをやるのは、ソ連の一部の戦闘機か米国の戦闘機、あとはゲームでしか、できないだろう。
もちろん俺は後者、ゲームの経験でマウントとりとりで試してみたのだ。
結果成功! マウントとりとりの機動性の高さは実証された。イエイ!
「なにぃ!?」
急に速度を落とし、宙返りするなど予想できず、リスマグロは俺達を追い抜いてしまった。
「ガァー! グワァ!? ガーガー!! グェアアアアアア!!!」
無理な機動をさせたせいか、マウントとりとりがトサカを震わせ、言葉にならない怒りを俺にぶつけてきている。
リスマグロからは、俺達が突如消失したように見えていただろう。
制御・操作担当がマントを広げ、速度を落とす。
スピードがある程度出てしまうと、小鳥の様な軽やかな動きが出来ないようだ。
ここ隙!
そんなに……僕たちの力がみたいのか……?
攻撃してくる……お前らが……悪いんだぞ……。
やって……やる、……殺られる……前に!
俺は心の中で、CICから叩き出されそうな、アスロックな思考を回し、行動に出る。
ネッコボルグという根っこ触手から生成される槍は、遠距離攻撃にも優れている。
だが、命中率は良いものではない。
俺はこれから、決して外れる事のない神の矢『サジタリウスの矢』をリスマグロにぶちかます。
俺は根っこ触手を無数に束ね、リスマグロへと伸ばす。
リスマグロとの距離は30mから40mくらいだろう。充分だ。
俺が行う攻撃、『サジタリウスの矢』と言ったものの、その実態は射程距離がアホみたいに長い根っこ触手で、リスマグロを殴って、 確実にデストロイするだけである。
「まっふー!!?」「ぐっほー!!?」
束ねた根っこ触手が、リスマグロを直撃した。
殴り飛ばされ、バランスを崩したリスマグロに追い打ちのネッコボルグを投げつける。
「いったぁ!」「いてっ!」
ネッコボルグがリスマグロに刺さった。
「こんにゃろぉ!」
リスマグロが大勢を整え、こちらへ突進してきた。
痛みを押し殺しているのか、ヤツらは一向に諦める気配はない。
マウントとりとりの手綱を引き、リスマグロの突進から避けるよう指示をだす。
しかし、マウントとりとりは動かない。
「……グェエエ、オエーーーーー」
「うわっ!? 汚い! 汚い! ……くっさ!?」
マウントとりとりが吐いた!
俺はマウントとりとりの口周りから、尻尾の方に避難する。
物凄くゲロ臭い。
大根じゃなかったら、確実に貰いゲロしてt……。
「オエーーーーー」
ダメでした。
何故か大根でも、気持ち悪いと吐くようだ。
以前、ミーナちゃんから逃げる時、クレアに振り回されていた時も吐きそうになったし、当然なのだろうか?
マウントとりとりに無理な動きをさせた事と、その事に対して怒り頭に血が上った事により、別の液体も胃から上ってきたのだ。
「うっわ……! きたなっ!? ……オエーーーーー」
「ドン・グリード殿、大丈夫か!? ……オエーーーーー」
マウントとりとりの嘔吐を起点に、敵味方関係ない無差別攻撃が始まった。
この場にいる動植物、計4名、マウントとりとりを爆心地として、全員吐いた。
今思えば、ゲロ吐くフラグを、町から飛び立つ時に建てていた事を思い出した。
君はトップガンになれないね。
俺はマウントとりとりから降り落とされ、そのまま落ちていく。
とっさに根っこ触手を伸ばして、マウントとりとりの脚を掴めたので、なんとか助かった。
それと同時に、リスマグロも嘔吐物を追うように、落下している。
このまま、落ちてしまえば良いものの、リスマグロは、しばらくすると、大勢を整えこちらに向かってきた。
木ノ実に撃ち抜かれるのは、まだ良いが、火炎弾に当たってしまえば、致命傷は免れない。
赤筋大根になれれば、火なんて怖くないが、荷物はまとめてミーナちゃんに管理させているので、使える物は、耐久値が限界なバリアを張る魔道具と、水蒸気爆発を起こす魔道具があと1つあるくらいだ。
しかも、それはマウントとりとりの背中においてるので、このまま根っこ触手を伝って登っている間に、リスマグロにやられてしまうかもしれない。
俺は出来るだけ、早くマウントとりとりへ登る。
こんな時に赤筋大根の力があれが、一瞬で登れるが、置いてきてしまっている。
なんで置いてきたんだ? 俺は……。
まさに、絶体絶命を悟った時、目の前を何かが通過した。
それも1つ2つなんて数じゃない。
「デロちゃん! 大丈夫ですか!?」
「ポポポポポポポポポポポポポポ」
知ってる声が聞こえた。
俺は、鳩尺様に乗るミーナちゃんに助けられたのだ。
今、俺の目の前を通ったのは、マグロ達でも、リスマグロでもない。
機嫌を崩して飛ばなくなったマウントコカトリスが、束になってリスマグロへと襲いかかっていたのだ。
「ポポポポポポポポポポポポポポ」
その一方、鳩尺様は微動だにしない。
「ミーナちゃん、どうやってアイツらから協力を得たんだ? あんな頑なに言うこと聞かなかったのに」
「優しく、接してあげれば、心を開いてくれるんですよ」
ミーナちゃんは微笑みながら答えた。
「グワァ……ガァー(やっぱ、女王は恐ろしい、逆らわない方が身のためだぁ〜)」
どこからか、マウントコカトリスの苦言が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
「ポポポポポポポポポポポポポポ」
鳩尺様はハチドリのように飛んでいる。彼女は何が起きようと、微動だにしない。
一体、ミーナちゃんは何をしたんだ?
俺とアードバーグが乗っていたマウントとりとりの他にも4匹のマウントコカトリスがいる。
クレアとシオンの乗っていたものだろうか?
「カキザキさんとコバヤシさんは無事でした。今はアードバーグさんやレイラさん達と合流してます!」
どうやら、あのマウントとりとりは、カキザキとコバヤシの乗っていたものらしい。
あの火炎弾を受けて、生きているとは思わなかった。
「グェ……グェエ……、グワァッ!!?」
怒り、吐き、俺を落としたマウントとりとりは、ミーナちゃんの存在に気づくと、居眠り中に上司に声を掛けられた時くらい驚いた。
「…………」
ミーナちゃんは驚くマウントとりとりを、ただ見つめる。
それだけなのに、マウントとりとりの表情が青ざめていく。
「グワァ〜ッ!」
マウントとりとりは、他のマウントコカトリスと共に、リスマグロへと飛んでいった。
「ミーナちゃん、よくわからんけど、すげー!」
俺はとりあえず、ミーナちゃんに賞賛の声をかける。
「それほどでも〜、 えへへ〜」
ミーナちゃんが凄くにやけている。 これは、かわいい。
上っ面だけでも可愛い事は大事だ。
「ポポポポポポポポポポポポポポ」
鳩尺様は、強風で髪の毛がボッサボサになろうと、遠くを見つめ何構わず飛んでいる。
計5匹のマウントとりとりが、リスマグロに立ち向かう。
だが、ここで負けるリスマグロではない。
「雑魚はひっこんどけ!」
ドン・グリードがドングリ機関砲を放つ。
「グェエ!?」「ガー!?」「グワァ〜!?」
マウントとりとりは、あっけなくドングリ機関砲に敗れ、落ちていく。
えぇ……、さっきまでの奮戦はどうしたよ?
俺の中でのお前達の株が、大暴落した。
ミーナちゃんは笑顔のままだが、仮面を被っているような表情だ。
裏で何言ってくるかわからないタイプの顔だ。
「ポポポポポポポポポポポポポポ」
一方、鳩尺様は何も考えてなさそうに飛んでいる。
リスマグロが一直線に、こっちへ飛んでくる。
その時、リスマグロの翼、ドン・グリードのマントが突然燃え出した。
「おわっ!? ……こんな時に限界かよ!? 構わん、つっこめー!」
ドン・グリードは苦言の声を漏らすも、一切気にせず、突っ込んでくる。
おそらく、マグロ人族の飛行限界による発火だろう。
マグロ人族は、飛ぶと発熱する。
冷却するためには、マグロ本来の活動場である海などの水に浸かる必要があるのだ。
今の奴は、自身が溜め込んだ熱量が膨大しすぎた結果、腹部にくっつくドン・グリードのマントを発火させるに至ったのだ。
「うぉおおおおおお!! くたばれ大根!」
「ヒューイの仇!」と言わんばかりに、リスマグロは、全身を燃やしながら、俺とミーナちゃんが乗る鳩尺様に突っ込んでくる。
ゴジラに燃えながら突進するモスラにも見える。
「貴様らもろとも、炎に飲み込んでやるぅうううう!!!」
ドン・グリード、すてみの突進!
そんな勇姿は俺は興味ない。
「デロちゃん、これを」
俺はミーナちゃんからとある魔道具を受け取った。
あの爆破する奴だ。
俺は、その魔道具を炎上中のリスマグロに投げつける。
「!?」
リスマグロに魔道具が直撃すると、魔道具の効果が発動した。
はい、ドカーン!
大量の木ノ実を持っていたせいか、マグロ人族が発熱しすぎていたせいか、何が原因かわからないが、赤い火炎と黒煙を伴う爆発がおきた。
マグロとドン・グリードが黒焦げになり、落ちていく。
「おのれ! おのれ!? 今回の勝利は貴様らに譲ってやる! だが次は負けんぞ! げっ歯類連合、万歳!」
ドン・グリードが落下して、しばらくすると、空間にゲートのような物が現れ、そこに彼は消えていった。
辺りを見渡すか、ヤツはどこにもいない。
そして、マグロ人族もこれで全滅だ。
とりあえず、色々納得いかないが、俺達の勝利だ。 これで無事にバーディアへと行けるだろう。
そういえば、何か忘れているような?
・・・
ダイコンデロガとドン・グリードの決着がついてしばらくした頃、シギア峡谷のとある場所で、テンションがガタ落ちの、シオンちゃんとクレアちゃんが遭難していた。
「うぅ……、ヒック、シオンお姉ちゃん、おウチに帰りたいよー」
クレアちゃんは、シオンちゃんの服を握りしめ、涙目で訴えかけている。
「あ、団長! いい枝ありました!」
シオンが湖に落ちていた流木をクレアちゃんに渡す。
クレアちゃんは、何か握れる物さえあれば、元に戻る。
「これ木?」
「そうっすよ!」
クレアちゃんの問いにシオンは答える。
「いただきます!」
「!?」
シオンはクレアちゃんが突然言った事を理解するのに、時間がかかった。
「団長ぉ! 何やってんすか!? それは食べ物じゃないっすよ!」
クレアちゃんが、流木をかじりだした!
これは、エクスカリカリバーに斬られた事で身に受けてしまった呪いだ。
クレアはこの呪いを、精神を落ち着かせる事で、抑制する事が出来ていた。
しかし今の彼女はクレアではない。クレアちゃんだ。
心の強さなんて、そこらの幼児の方が勝る事もあるという。
クレアちゃんは泣き虫で弱虫で、何かを噛む癖がある。
それに追い打ちをするように、エクスカリカリバーの呪いもある。
「団長! それは噛むものじゃないっすよ! は、はなせ! はなしなさい! やめなさい!」
シオンは焦っているのか、口調が変わる。
「やめて! これ私の! シオンお姉ちゃんには不要なもの!?」
「言うこと聞かない子は、悪い大根のお化けの所に連れていくっすよ!」
「ぅぇ……びぇええええええん! やーだ! あの大根の所やーだ! シオンお姉ちゃんのバカ!」
何をいわれようと、クレアちゃんは枝を絶対に話さない。
シオンとクレアの枝木を巡る戦いは、ダイコンデロガやミーナ、レイラ達が、2人を見つめるまで続いたという。
次回から後編、バーディア編突入です。
本投稿よりしばらく休載、充電期間とさせてもらいます。
復活は、2月3日(日)からになります。




