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第65話 合体超獣リスマグロ


俺はミーナちゃんからマウントとりとりを借り、クレアとシオンを追っていた。


「ぃよぉ! テメェが噂の野菜獣だi……!!?」



……今、俺の目の前を何かが通り過ぎた。



後ろを振り返ると、通り過ぎた声の主が、こちらへ再び迫ってきていた。


そいつはマグロだった。俺が逃した1匹だろう。

しかし、声を発したのはマグロではない。


声の主は、マグロの腹にくっついている奴だった。


「俺はげっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)の幹部が一人! リス人族のドン・グリードだ!」


マグロの腹部に、コウモリのようにマントを広げたリスがくっついている。

このリスは眼帯をつけ、筒を咥えている。



「なんだこいつ……」


げっ歯類連合の幹部と名乗っているし、このドン・グリードとかいう奴の力は侮れたものではない。

しかし、マグロとリスが合体するという、あまりにも異形な存在に、つい小言が漏れてしまう。


「俺らは合体超獣リスマグロ! 恐れおののくがいい!」


「あ、そうっすか」


俺はリスの言葉を受け流し、この状況を整理する。


レイラは『ムササビみたいなリスが襲いかかってきた』と言っていた。

なら、クレアとシオンが、現在コイツと戦っていないのは何故か?


「テメェの仲間の女どもは、俺が湖に落としてきた! お前も落ちろ、クソ大根!」


ドン・グリードが、懐からとある剣を取り出した。

その剣は、俺も見たことある物だ。

クレアが使う……なんとかっていう聖剣だ。


ドン・グリードは俺を挑発している。それも剣を見せ、わかりやすいようにだ。


「どうした? ()()を見た途端に顔色が悪くなったぞ?」


ドン・グリードの煽りは止まらない。


ただコイツが言ってる事は間違っていない。

俺は確かに、この剣を見て心底驚いた。


クレアが持っているはずの聖剣を、コイツが持っているという事は、今頃クレアは手ぶらなので、大変な事になっているだろうと予想がつく。



……まぁ、シオンと一緒に居ると聞いたし、ここは赤毛虫イヌメイド、シオンちゃんにクレアちゃんは任せよう!


浮上した問題を自己完結させ、俺はドン・グリードの挑発に応えるように、ネッコボルグを投げつける。


「あぶなっ!?」


素早い身のこなしで、ドン・グリードは俺の頭上へ回りこむ。

やはり、マグロの速さがあるせいか、多少離れても、すぐに距離を詰められてしまう。


今思った事なのだが、ドン・グリードはどこから自身の体格よりも大きい剣を出してきたのだろうか? 四次元ポケットでも持ってんのか?



「トドメだ、落ちろ!」


ドン・グリードは筒を咥えると何かを吐き飛ばしてきた。

件の『木ノ実弾』という奴だろう。


突如、俺が乗るマウントとりとりが、自分から降り注ぐ木ノ実を避ける。


マウントとりとりは、この事態を学習しているのか、ドン・グリードが攻撃する前に自分から回避したのだ。


こんな狭い峡谷を高速で自在で動くとは、俺はマウントとりとり、いやマウントコカトリスのスペックの高さを舐めていた。


マウントとりとりは高度を上げると、マグロとドングリードに向かって翼を閉じ、勢いよく降下した。


今がチャンスだ。

戦いでは高所を取った方が勝ちやすい。オセロの角を取ったような物だ。


俺はリスマグロの背に向けて、ネッコボルグを投げつける。



「グワァ!?」 「消えた……?」


頭上を取られたドン・グリードが、マグロを残して、その場から消えた。


「木ノ実を喰らえ!」


ドン・グリードは、いつのまにか俺達の頭上へ移動していた。





「グァーグァー、グワァー!(大根! あのリスは木ノ実を吐き飛ばして攻撃するよ!俺見てたからわかるもん! あと、空間転移みたいな魔術使うから気をつけなよ!?)」


俺の乗るマウントとりとりが語りかけてきた。


レイラやミーナちゃんも言っていたが、やはりドン・グリードが飛ばしてきたモノは木ノ実なのだ。


それともう一つ、空間転移、瞬間移動という物も使えるのか?

さっき、体格に合わない剣を取り出したのも、それが答えという事か? やはり四次元ポケットが使えるのだな。


ただ、引っかかる点はある。

好き勝手に瞬間移動できるなら、わざわざマグロと合体し、速力を強化する必要はない。

瞬間移動ができれば、速度や距離なんて関係ないのだから。


何かトリックがあるのだろう。





俺とマウントとりとりは、それから何度もドン・グリードの背を、後ろを取った。


けれどその度に、ドン・グリードは俺の頭上へと移動してしまう。



「グワァ……」


流石に、峡谷間を低空飛行し続けた事で、マウントとりとりに疲労が溜まってきている。


しかし、背を取り合うドッグファイト、イタチごっこを繰り返す事で、ある事がわかった。


それはドン・グリードは()()()()()から必ず現れるという事だ。


何回もやってわかった事なのだが、ドングリードが現れる高さは、必ず同じ。


湖の水面すれすれを飛んでいても、水面から離れていても、ヤツが現れる高度は、毎回同じという事に俺は気付いたのだ。



俺はマウントとりとりを敢えて降下させ、加速させた。


マウントとりとりは困惑している。

マウントとりとりの腹部が水面に着こうとした時、さっき、ミーナちゃんからもらった魔道具の準備を始め、マウントとりとりの手綱を握る。


その魔道具とは、フーリー戦、アライグマ戦で使った水を一瞬で昇華させる魔道具だ。


この魔道具は、見た目が野球ボールほどの大きさなのだが、中にはバスタブから溢れ出る量の水が詰まっているらしい。


水って蒸発すると体積が、ゆうに1500倍は超えるんでしょ〜? あらやだ!? そんなの水蒸気爆発しちゃうのも当然じゃない!



「グェエエエエ!?」


魔道具を発動させると、爆風が吹き荒れた。


マウントとりとりが叫びながら、直角に近い角度で爆風に押されて、急上昇する。

俺達は峡谷から、広い空へと抜け上がった。


突然の爆風に邪魔されたマグロ人族は、迎撃する事が出来なかった。


「このバカ! そんな高く上がったら、瞬間移動できねぇーよ、チクショウ! マグロ! 再度合体だぁ!」


ドン・グリードが苦言を漏らす。



普通に考えれば、狭い峡谷間よりも広い空でドンパチした方が良いと思う。


ただ、今この場には、短期決着戦に優れたマグロ人族が一人いる。


今はドン・グリードと距離を空けている事で体力を温存、回復させている。

下手に空へと飛び出せば、控えたマグロが飛んでくるという事だ。

だから俺達が空高く飛ぶ事は、決してないと、ヤツは思っていた。


ドン・グリードは、俺達が峡谷から上がらないように、敢えてギリギリな戦いをするように誘導していた。

その方が彼にとって、瞬間移動が使えるので良いのだろう。


今まで、マグロとの合体を解いていたところから、リスマグロの力を持続させる事にエネルギーを使うと推測した。



そんな彼らの、俺達を舐めたような戦法は俺達がぶっ壊した。


ドン・グリードはマグロ人族と再び合体し、俺達へと高速で迫ってくる。


ついに決戦という訳だ。




・・・




「ぎゃあああああん! もうやだー!おうち帰りたいー!」


「団長! 良い子だから静かにしてください!」


一方その頃、ドン・グリードに敗れたシオンは、剣を手放し、泣きじゃくるクレアを諌めながら、救援を待っていた。

不幸にも、周りには剣の代用となる道具、大根、ナマズは存在しない。


おまけに、マウントコカトリスは機嫌を損ねて飛んでくれない。


「びぇええええん!! 」


「団長ぉ!」


シオンはこの状況下、何も出来ず満身創痍。

三人称(わたし)は「がんばれ!」と念じる事しかできない。



がんば!


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