第64話 合流とりとり
私はシオンの思いを無駄にする訳にはいかない。
彼女もろとも、ドン・グリードに稲妻を放った。
「グェエエエエエ!!?」
そこでシオンの乗るマウントコカトリスが暴れだした。
マウントコカトリスは人の言葉を理解するほど知能の高い魔獣だ。
今までの私達の会話を聞いていたのだろう。
シオンとドン・グリードと運命を共にする事に納得がいかなかったようだ。
シオンの跨っていたマウントコカトリスは、自分だけでも助かろうとシオンとドン・グリードを振り落としたのだ。
よくよく考えてみれば、マウントコカトリスの事を一切、考慮してなかった。
彼は稲妻に当たる事は嫌だったのだ。
そのせいか、お陰か、雷撃はシオン達に当たる事は無かった。
私は落ちていくシオンの手を掴もうと、距離を詰めていく。
マウントコカトリスの運動性能が優れていて良かった。
あと少しの所で落ちていくシオンの腕をつかむ事が出来た。
「団長! 上!」
シオンを引き上げると、彼女が頭上を指さした。
「かかったな! 喰らえ!」
シオンの手から離れたドングリードが、いつのまにか、私達の頭上にいた。
これは、さっきと同じ瞬間移動という奴だろう。
私はマウントコカトリスの手綱をとりながら、片手で剣を構え、攻撃に備える。
シオンはいつもなら、大剣を持っているが、マウントコカトリスに乗せるには、重くなる為に現在は携帯していない。
シオンは予備の魔道具を取りだし、バリアを発動させようとする。
ドン・グリードはマントを広げ、速度を私達に合わせる。
次の瞬間、奴は筒を咥えると、木ノ実を無数に吐き飛ばしてきた。
間一髪、バリアの発動の方が先だった。
ただ、一度破壊されたバリアのため、耐久力は皆無といって良いだろう。
時間稼ぎする事しか今は出来そうにない。
「団長! 目を閉じるっす!」
シオンが叫んだ。
彼女の手から、何やら光が漏れている。
私は思い出した。シオンが扱える、数少ない魔術の事を。
私は、嫌がるマウントコカトリスの目を手で覆い、私も目を瞑った。
それと同じくして、辺りに閃光がほとばしる。
「ぐぎゃああああ!??」
シオンの放った閃光によってドン・グリードは体制を崩す。
その隙をつき、わたしは稲妻を放つ準備をする。
このまま、トドメを刺す。
と、そこで例の音が聞こえた。
それは、空飛ぶマグロだ。
ダイコンが相手をしていたマグロ人族だ。
だがここに来たマグロ人族は1人だ。
5人はいたはずだ。
「ドン・グリード殿! 救援を頼む! 我々、マグロ航空隊の被害は甚大だ。 そちらも手こずっているようだが大丈夫か?」
マグロ人族はバランスを崩すドン・グリードを支えるように並走する。
「俺は油断しただけだ。貴様らマグロ人族は、奇襲と早期決着戦でのみ最強だ。それ以外だと体力と魔力の消耗が激しすぎてダメだな。」
「申し訳ありません!」
マグロはドン・グリードに己の不甲斐なさを謝罪した。
「いや、構わん。俺だってこんなザマだからなぁ、流石はげっ歯類連合直々に敵視される強敵って事よ! 有袋類連盟よりも強敵だ。おいマグロ! 例の必殺技やろうぜ!」
「了解!」
マグロ人族とドン・グリードが合流した。
2人は話しを終わらすと、マグロがマントを広げるドン・グリードの背面に、腹部を密着させる。
「「これこそ、あらゆる点に於いて空中最強の型!その名も『合体超獣リスマグロ』!」」
合体というか、くっついただけでは?
マグロの腹部にドングリードがくっついただけの歪な形態だった。
だが、そのダサい見た目に騙されてはいけないと私は瞬時に察した。
マグロ人族は、細かな動きは出来ないが、とてつも無く高速で空を飛ぶ。
ドン・グリードは、速度こそ平凡な速度でしか飛べないが、小鳥やトンボのような細かな動きで飛ぶ事ができる。
攻撃方法にしても、マグロは火炎を飛ばし、ドン・グリードは上下左右、無差別に木ノ実を吐き飛ばす。
今のコイツらは弱点を克服したと私は理解した。
「シオン! 全力で行くぞ!」
「援護なら任せてください!」
「ガァー!ガァー!」
私はマウントコカトリスの手綱を握り、シオンと共に、リスマグロへと突撃する。
・・・
(ダイコンデロガ視点)
「そんでなー、急にげっ歯類連合幹部を名乗るムササビみたいなリスが現れてなー、落とされたんだがん!? 早く追わんと、クレアやシオンが危ないで!!」
俺はクレア達を追ってる途中、湖に落ちていたレイラと、彼女が乗っていたマウントとりとりを見つけた。
どうやら新手が現れたらしく、しかもマグロじゃなくて、敵の正体はリスらしい。
それは予想出来ねぇーな。
話しを聞けば、口から木ノ実を吐きつけて墜とされたらしい。
これも予想出来ねぇーな。
マグロもリスも飛ぶなら、いっその事、大根が飛んでも違和感ないだろなー。
こちらのマウントとりとりも機嫌を損ねていて、飛ぶ気分じゃないらしく、俺とレイラの2人で、クレア達と一刻も早く合流する事にした。
単純な移動では、俺よりレイラの方が早いので、俺は、彼女の背中にしがみつく事にした。
それからしばらくすると、また知っている人物達がいた。
「あっ! デロちゃん! そちらは大丈夫なんですか!」
そこには、ミーナちゃんが、炭に塗れる刻甲の傷の手当てをしていた。
「おや? ダイコンさんじゃないですか? マグロはもう、大丈夫なんですか!? 今の私は見た通り、焼鳥になってしまいましたよ! これは屈辱ですよ!?」
刻甲はボロボロだが、いつも通り口数は減らないようなので、無事そうだ。
「ポポポポポポポポポポポポポポ!」
鳩尺様は、刻甲が心配なのか、落ち着かない様子で首を振りながらうろちょろとしている。
「なぁ、ミーナちゃん! マウントコカトリス借りて良いか?」
「はい、勿論いいですよ!……ところでレイラさんもデロちゃんも、マウントコカトリスはどうしたんですか?」
「機嫌を損ねて飛ばなくなった」
ミーナちゃんが他のマウントとりとりの事について聞いてきたので、俺は彼らの現状だけを話した。(過程や理由はどうでもいい)
俺の言葉を聞くと、僅かだが、ミーナちゃんの表情が険しくなったように感じた。気のせいだと思いたい。
「刻甲さん、鳩尺様借りますね?」
「ココ……? どうしたんですかミーナさん?」
「……連れ戻してきます」
刻甲はまだ何か言いたそうだったが、ミーナちゃんは耳を傾けない。彼女はそのまま鳩尺様に跨った。
「ポッ!? クルッポー? ポッポー!!」
「今の飛行能力特化型、鳩尺様は攻撃されても呪いが発動しませんので、お気をつけてくださいね!?」
刻甲も鳩尺様も困惑しているようだが、何構わずミーナちゃんは鳩尺様の手綱を握り、彼女を飛ばす。
「あ、そうだ……、デロちゃん! 良かったらこれ使ってください」
ミーナちゃんが何かを投げてきた。
それは魔道具だ。大きさは野球ボールくらいだ。
おそらく、これはフーリー戦の時に使った、水蒸気爆発を引き起こす魔道具だ。
シギアゲートを飛び立つ前に、バリアの魔道具を買うついでに調達したのだろう。
ミーナちゃんはその後、鳩尺様と共に、俺とレイラが来た道を戻っていった。
「気をつけてなー! 無理したら、いけんだでー!?」
レイラはミーナちゃんを手を振りながら見送る。
彼女はミーナちゃんが何をするかわかっていながら見送ったのだろう。
ミーナちゃんが何をしようとしているのか?
おそらく、機嫌を損ねた面倒くさいマウントとりとりに関する事であろうが、……深く考えるのはやめておこう。
俺は、唯一正常なミーナちゃんが乗っていたマウントとりとりに跨り、クレア達と合流する事にした。
コイツは、ドラゴンの大群を単独で、記憶を失いながら戦い、勝利した豪傑だ。
マグロだろうが、リス人族(?)だろうが、この『竜殺しさんw』の力が有れば、勝ったも同然だろう。
レイラと刻甲はここで待機して貰う。
本人達もそれには了承してくれた。
俺はひとり、マウントとりとりの手綱をとり、クレア達の追跡を始めた。
どうでも良いけど、『とり』が多くない?




