第59話 クレア合流、犬耳の脅威
「デ、デロ先輩ィ!? ほ、本当にこんな格好で、団長を迎えに行くんすか!?」
「逆にその格好以外で、クレアを出迎える気なの? お前のその形には俺が太鼓判押しまくる出来だから、クレア団長も喜ぶに決まってんだろ! コラァ!?」
「えぇ……」
クレアがそろそろシギアゲートに到着する様なので、マウントコカトリスから逃れた俺は、シオンにケモ耳属性を付与するために奔走、約2時間を費やしシオンを改造する事に成功したのだった。
「なかなか似合ってるじゃん!流石は俺とレイラ、ミーナちゃんの合作」
「イヌ耳と尻尾は、まぁ……いいとして、何でメイド服なんすか!?」
「かわいいから大丈夫!」
シオンはイヌ耳メイドに生まれ変わった。
俺はサムズアップで、主観的に問題ないことを告げる。
最初はイヌ耳カチューシャだけを付けてみたのだが、味気が無かった。
そこで俺は、ミーナちゃんやレイラに協力を仰ぎ、彼女らとの話し合いの結果、メイド服を着せてみることになった。
それがなんと、ガチで似合った!
シオンという素材の場合、完璧瀟洒なメイドではなく、右も左もわからなさそうなメイドとしてはダメダメな、新人感溢れるメイドになってしまうが、それが逆に『不完全』というシオンが秘める愛らしさを増強させた。
そんで、メイドが似合うとなれば、そこから細かくエプロンだのワンピースだの何だの、ファッションについて俺はよく分からんので省くが、シオンの体型、言っちまえば寸胴幼児体型に合ったメイド服を仕立ててやる訳よ。
俺達はシオンのスリーサイズを測り、彼女の胸囲がAでは無く、AAAだった事に驚愕しつつ、服を選んだ。
その結果、シンプルな白黒を基調とし、コルセットで体を細く見せ、ミニスカートにエプロンというコスプレメイドが完成したのだよ。
これは俺の趣味を土台に仕上げた衣装、みんなの色んな想いがこもっている、という設定だ。
シオンのキャラも考え、お腹の露出
も有りかと思ったのだが、メイドで露出度多くてネコ耳というのは、属性が暴走しすぎるので、派手な露出は控え、シオンのお腹の魅力が死なない様に、ボディラインが引き立つコルセットに決めた訳よ!
ところで『コルセット』と『コルベット』って似てませんか!?
……。
閑話休題。
俺はこれで完成! と満足したが、そこで待ったを掛けたのがミーナちゃん。
彼女は『シオンさんらしく武装をしてみるのはどうか?』と提案してきた。
この提案には、俺も賛同した。
結果、天才物理学者も納得するほどのベストマッチ!
とてもミーナちゃんが提案したとは思えないほど、良きアイデア。
細身のガントレットとグリーブが主な武装。
あまり多く装飾してしまうと、お転婆、破天荒なシオンの癖して、露出が皆無になってしまう事態に陥るので、これ以上の武装は増やせない。
露出はミニスカートによって目立つニーハイ、太もものみとなったが、ぼくはこれが一番良いと思います。
「シオンさん、かわいいですよぉ〜」
「んもぉ! ミーナさんまで何言ってんすか!? やめてくださいよ!?」
「私も、かわいいと思うで?」
「レイラも、やめてぇええ!」
ミーナちゃんもレイラもやけにノリノリである。
シオンは恥ずかしさのあまり、ダンゴムシみてぇに丸まっちまったが、それがまた愛らしいので、根っこ触手で、そのまま彼女を、クレアとの待ち合わせ場所であるシギアゲートの入場門付近まで、連れて行く事にした。
・・・
(クレア視点)
私はネスノ村に対して、げっ歯類連合等の魔の手への対策が完了した事を確認し、ジェイクやハダカデバネズミ人族、トム達団員に村を任せ、村を後にした。
その途中に足を運んだナン・モネーナ村では、人々がワニの駆除に苦しんでいた様なので、私が持つ聖剣ラビ・ラコゼの、雷の力を使い、川辺に居座る大量のワニを駆除した。
さらに、つい最近の事だが、高原を歩んでいると、マーモット人族というげっ歯類連合を、追放されたと悲劇的に語ってくるげっ歯類の盗賊に襲われた。
私はその様な賊を相手にするのは好きでは無い、マーモット人族に警告として、聖剣から稲妻を放ってみせると、彼らは突然叫び、どういう訳か転び始めた。
彼らはそのまま急斜面を叫びながら、転がり落ちていった。
彼らは何がしたかったのだろう? 考えてもわからない。
その一方で、ダイコンデロガ達も面倒事に巻き込まれていたらしい。
彼らから届いた魔術通信によれば、磨王アードバーグ・ライジング率いるアライグマ人族が、げっ歯類連合と手を結び、町中を恐怖に包んでいたとか。
その事件も、一部アライグマ人族の協力によって、無事に解決したそうだ。
珍事件もあったが、私はやっとシオン達に追いつく事が出来た。
そういえば、シギアゲート、バーディア国に来るのは久々だな。
ネスノ村に尋ねてきた少女、レイラ……なんとかって人物を、何処かで見た覚えがあるのだが、思い出せない。
一応、レイラも冒険者らしいので、以前バーディアに行った際に、どこかで出会っているのかも知れ。
もっとも私は、彼女に冒険者としてでは無く、違う形で出会った気がする。けれど、よく思いだせない。
そんな私の思考を吹き飛ばす様な光景が、目の前に現れた。
「クレアさーん!」
聞き覚えのある少女の声、桜色の髪をしたミーナがこちらに手を振っている。
その近くには、ダイコンデロガとレイラと、赤い髪に獣の耳のカチューシャをつけた家政婦……いや、武装してるから戦士か? ……いや、なんだろう? 分からん……、顔を埋めている少女がいる。
はて? シオンの姿が見えないが、どこにいるのだろうか?
「おい赤毛虫、顔を上げろよ!クレアに失礼だぞ!?」
ダイコンデロガが、謎の少女に声をかけた。
「…………!?」
少女が体を小刻みに震わしながら顔を上げた。
「え!? シ、シオン!?」
私はつい声をあげてしまった。
謎の少女の正体が、狂犬の副団長と呼ばれるシオン・クーパーだと、誰が予想できようか。
私がシオンと出会ったのは、2年前の事だ。
当時から冒険者の間で、相手構わず喧嘩を売る狂犬としてシオンは有名だった。
当時の彼女の装備は、動きやすさ、快適さを彼女なりに考えた結果なのか、胴体はサラシのみ、代わりに、四肢を重甲に固めるという奇抜な格好をしていた。
それが現在、狂犬と呼ばれた少女は、メイド服を着て、顔を真っ赤にしている。
シオンは自分の事を『オレ』と言うくらい男勝りでお転婆で豪快な女の子だ。出会った当時の彼女は13歳、あれから2年経ったので今は15歳か。
体格に似合わず、大剣やハルバートといった大型の武器を好んでいた。
現在、そんな男勝りな狂犬と呼ばれた少女は、メイド服を着て、顔を真っ赤にしている。
「はう……!?」
突如、目頭が熱くなった。
今までのシオンとの思い出が、急に蘇り始め、無意識に私は涙を流していた。
シオンの成長が心底嬉しかった。
・・・
(ダイコンデロガ視点)
「ちょっと女子〜!クレア、泣いちゃったじゃ〜ん!!?」
「えぇ!? オレのせいっすか!? 聖剣は持ってるっすよね? 団長、大丈夫っすか! なんで!?なんで泣いてんすか!?」
俺はシオンに理不尽な責任を押しつけると、彼女は素直に泣き崩れていくクレアの元に駆けつけていく。
ミーナちゃんとレイラは、この情景を子犬を見るような笑みを浮かべて眺めている。
俺も空気を読んで、動物を見るような目つきで彼女達を眺める事にした。
「……いや、グスン……、にゃんでもない。お前の成長に……嬉しさと悲しさを感じただけだ……グスン」
「団長!? そういうのやめて!」
クレアはシオンとの付き合いが誰よりも長いので、色々思う事があるのだろう。
なんか、他人事のように見てた俺まで、貰い泣きしそう。……大根でも、これは泣けるでぇ!
と、そんなこんなで俺達とクレアは合流出来た訳だ。
感傷に浸る時間はもっと欲しいが、ゆっくり出来ないのだ。
俺はクレアにヤツらを紹介しなければならない。
・・・
(クレア視点)
「どうも始めまして、ですねクレアさん! 愚僧はニワトリ人族、名を刻甲と申します。ちなみに坊主ですが、野菜以外も普通に食べますよ! 愚僧は破戒僧なので! そこら辺のお気遣いは大丈夫です!」
「ポポポポポポポポポポポ、クルッポー!」
「こちらは鳩尺様です。ちょっとお茶目ですが、淑やかな女性です」
ダイコンデロガに『紹介したい仲間がいる』と言われて連れてこられた場所には、同盟を結んだというニワトリ人族の僧侶と、彼が使役する召喚獣鳩尺様という、縦に長い歪なハトがいた。
「なぁ、ダイコンデロガ? 同盟という事はげっ歯類連合を倒す事も彼らの目的なのか?」
「いや、そういう事は聞いてない。 刻甲らは『東の果ての国に帰りたい』だけで峡谷を抜けてから後の事は、何も知らないな」
ダイコンデロガはそんな事を言った。
破戒僧刻甲。
冒険者ならば、その名前を聞いた事無い者はいない。
それほど彼は有名人なのだ。
彼が仲間になってくれるなら頼もしいだろう。
「峡谷を抜けた後、私どもはどうするか決めてません! カキザキさんの他にも、コバヤシさんという方も同盟に加わってますが、同盟の条件は『マウントコカトリスを飛ばす事』ですしね、個人的には、力を貸したいのですが、愚僧一人では、判断できないのですよ。」
どうやら刻甲だけで、どうこう言えないらしい。
彼らにも彼らの事情がある。無理に協力を頼むのは難しい。
「ところがどっこい! 我々の代わりとなる方がいます!ですよね?ダイコンデロガさん!」
「おう、そうだとも! 出てこい、真磨王、アードバーグ・ライジング!」
「わしを呼んだかぁ!?」
代役がいるという事で、ダイコンデロガがその者の名を呼ぶと、一人のアライグマ人族が姿を現した。
「なぁ、ダイコンデロガ? 聞いた話だと、あのアライグマ人族とは、敵同士だったんじゃないのか?」
私は以前、魔術による通信で、シギアゲートはアライグマ人族に支配されていると聞いていた。
ダイコンデロガに協力していたアライグマ人族がいたらしいが、その者の名はアドミラール・ライオネル。
アードバーグ・ライジングは敵大将の名前と聞いている。その彼が何故ここにいるのだろうか?
「おい、ダイコン!ちゃんと話通しとけや! クレア嬢が、えらく動揺しちょるで?」
「あ、ごめんごめん! 魔術通信って一度に送信できる文字数限られてるから、文で面倒するの面倒だったんだよ。文より口で説明した方が楽だし」
ダイコンデロガはアードバーグに胸ぐらを掴まれながら言い訳をすると、再び私に語り掛ける。
「げっ歯類連合に、弄ばされた復讐をする為、アードバーグは仲間になりました! ライオネル師匠達、他のアライグマ人族はアライグマの里に帰っちゃいました。以上!」
「何が以上じゃ、このだらず! もっとわかりやすく話したれや!」
「ちょっ!? 痛い! アライグマの爪、意外と痛い!やめて!」
アライグマがダイコンデロガを引っ掻いている。
この同盟、本当に大丈夫なのだろうか?
私は少し不安である。




