げっ歯類連合、幹部集結 その3/3
「そんな……!?ハムスターどもが何でいるんだ!?」
カンガルー人族のルッチーとその仲間たちは、捕らえられたオポッサム人族を助けるため、げっ歯類連合のアジトに強襲を仕掛けた。
彼らの目の前にはカピバラ人族が一人しかいなかったので、これは好機だと有袋類達は思っていた。
そんな有袋類達の前に突如として現れたのは、4人のハムスター人族であった。
「サーロイン・ベガさん、カルビ・シリウスさん、ホルモン・フォーマルハウトさん、ハラミ・スピカさん、ナイスタイミングですよ、ハムスター人族の四天王さん」
ハムスター人族は、獣人族の中でも極めて小さい種族だ。故に隠れる事など、容易い事である。
ヒパビパに呼ばれたハムスター人族の四天王に続く様に、どんどんハムスター人族が姿を現す。
「雑魚は我々にお任せください」
ハムスター四天王の一人、サーロイン・ベガがヒパビパに、雑多な有袋類の相手を引き受ける了承を得て、一気に襲いかかる。
その後まもなく、有袋類達レジスタンスはその場を追い出されたのだった。
残ったのはカンガルー人族のルッチーと、他数名のみ。
ウォンバット人族やコアラ人族は、ハムスターから逃げてしまったようだ。
「こんなはずでは……!こうなれば、玉砕してでも、オポッサム人族を助けるぞ!」
ルッチーは諦め無かった。
彼の鍛え上げられた全身の筋肉が、盛り上がる。
ここで割り込んでくる奴が2人現れた。
「やーやー、暇だったから出てきたけど、もう終わりかなー?」
「俺の早撃ちでカンガルーなんてイチコロだ。クソガキは引っ込んでな」
出てきたのは、大魔王ウサタンとドン・グリードだ。
「おや?ウサタンさんにドン・グリードさん?休んでいても良いのですよ?」
「ヒパビパ、お前こそ休んどけ、ずっと働き続けてると体に悪いぞ?木ノ実でも齧って休んでろ」
ドン・グリードはヒパビパに休む事を提案してきた。
「たしかに、ドン・グリードさんの言う通りですね、お言葉に甘えて、ここは任せましたよ」
ヒパビパは休憩出来る事が嬉しかったのか、素直に役を譲った。
「ねーねー、ドンちゃん?僕もいいよね?」
「勝手にしろ。ただし、俺の獲物には手を出すな」
「はいはーい!」
ドン・グリードはウサタンを適当にあしらい、ルッチーへと歩みよる。
リス人族のドン・グリードと、カンガルー人族のルッチー。
両者が向かい合うとその体格差は歴然だ。
ルッチーはカピバラ人族と同じくらいの身長をしているが、筋肉質な体型をしているので、その迫力は凄まじいものだ。
それに対するリス人族、ドン・グリードの身長は、ルッチーの膝にも届かない。
近接戦、肉弾戦に於いて、ここまで体格差が開いてしまえば、ルッチーの方が暴力的な程に、圧倒的有利だ。
されど、ドン・グリードは余裕の表情だ。
彼は例の筒を持ち、片手で亜空間の扉を開く。
「あれが、ドン・グリードさんの力ですね」
「へー?どんなの?」
ヒパビパがそんな事をつぶやき、ウサタンがそれに興味を持つ。
「ドン・グリードさんは亜空間に収納庫を持っているんです。その中の時間は止まっていて、食べ者を何年保管しても腐る事がないんですよ」
「へー、そりゃ凄いや。でも流石に無限に入れられる事は無いでしょ?」
「それはそうでしょうね。けれど、私は彼との長い付き合いで、収納庫が満パンになったという事は、一度も聞いた事ないんですよねぇ」
「へ〜、ドン・グリードさんって、案外凄い人なんだなー。僕もそんな力欲しいな〜」
ドン・グリードの亜空間収納庫の情報を聞いたウサタンは、不敵な笑みを浮かべた。
「そういうウサタンさんも、沢山能力を持ってるじゃないですか? 流石は大魔王といったところですかね?羨ましいですよ」
「も〜、褒めても何もでないよヒパビパ〜」
ウサタンはヒパビパに煽てられ、何も考えてなさそうなアホ面で応えた。
ウサタンとヒパビパが雑談している間に、ドン・グリードは既に行動に出ていた。
ドン・グリードはルッチーから距離を取り、亜空間から木ノ実を幾らか取り出して、口の中に頬張る。
無数の木ノ実を口に詰め込んだせいで、ドン・グリードの顔が、両頬に風船を付けたように膨らむ。
「………………!!」
ドン・グリードは何やら口をモゴモゴと動かすと、筒を加えた。
それを見て、ルッチーは木ノ実を吐き飛ばしてくると理解し、敢えてドン・グリードへと駆け出した。
その距離の詰め方は相当なものだ。
距離を詰めたルッチーは、鍛えられた尻尾で身体を支え、両足でドン・グリードを蹴る。
その一撃を、ドン・グリードは尻尾を使って衝撃を吸収させた。
この技は、フーリーから教わった技だ。
フーリーはカンガルー人族の蹴り技が相当な物と知っていたので、ドン・グリードなど、もふもふな尻尾を持つ者に、モフモフ尻尾ガードを教えていたのだ。
「蹴り技が無効化された……だと?」
ルッチーは今起きた事を理解する事が出来なかった。
そして彼に隙が生まれた。
「……!………………!」
ドングリードは鼻から酸素を吸い込むと、咥えた筒から口内に溜め込んだ全木ノ実を全て吐き出す。
それはもう一方的な暴力だ。
ドングリやクルミなど、雑多な木ノ実が機関銃の様に猛々しい轟音を掻き鳴らしながら、ルッチーの身体を叩きつける。
時間にすれば、わずか5秒の出来事だろう。
しかし、集中砲火を浴びたルッチーは煙を上げながら、バタンと倒れた。
「うるさいから、僕はあんな能力いらないけど、凄いや!ドン・グリードは満足そうだから、あとのカンガルー人族や敵は僕がやっつけちゃってもいいよね?」
「ああ、好きにしろ! あと最初の一言は余計だ!」
ドン・グリードに許可を貰ったウサタンは童心に帰ったような笑顔を浮かべながら、残りのカンガルー人族へと襲いかかる。
「おやおや、これは敵ながらカワイソーですねぇ……」
ヒパビパは、カンガルー人族のレジスタンスが気の毒だと思っていると、やりきった感に満ち溢れるドン・グリードに声をかけられた。
「やっぱ、物足りんな、クソガキに譲ったのは間違いだったな。 ところでヒパビパ提案があるんだが?」
「ふむ、なんですかな?」
「大根は、フーリーを倒したといったな?つまり近いうちに、シギア峡谷を渡るのは確定事項って事だよな?」
「ええ、そうです。 ですが、あの峡谷地帯は最強と謳われたアライグマ人族の水軍を一瞬で壊滅させたマグロ人族が支配しています。 ここは彼らマグロ人族に任せようと思っておりますよ」
「……ヒパビパ?お前やっぱり働きすぎで頭がおかしくなってるぞ?今までそうやってきて、大根どもにことごとく刺客をやられて来たんだぞ?マグロ人族はフーリー並み、それ以上の実力を持ってるかもしれんが、ここはトトンヌみたいに慎重にいこうや!」
「どういう事ですか?」
ヒパビパはドン・グリードの言葉の真意を聞いた。
「マグロ人族だけでは不安だから、俺も行ってやるんだよ! 仮に負けたとしても、奴らの情報だけでも送ってやるからよ!そうすれば、奴らが、ここに辿り着くころは、げっ歯類連合は万全の状態で戦えるって寸法、負けても買っても、俺達の利益となる。 問題無いだろ?」
「貴方がそこまで言うなら、仕方ないですね……。 わかりました、マグロ人族の方々には私から連絡しておきます。あと何か望みの品とかありますか?」
ヒパビパの問いにドン・グリードは少し考える。
「じゃあ、ムササビ形態になれる例の魔道具をくれるか?マグロ人族だけが空飛んでも俺が、ノロノロと地面で動いてちゃ無意味だからな」
「たしかにそうですね。わかりました。それでは、シギア峡谷には今日中に向かって貰いたいんですが、良いですか?」
「ああ、何も問題無い、仕事の準備は早めの方がいい」
こうして、ドン・グリードは、シギア峡谷を支配するマグロ人族と連携し、ダイコンデロガ達を倒しに向かったのだった。
今回の閑話、ケモノばかりで、人間が一人も出てこないという結果になってしまいました。




