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第51話 ダイナミック反撃開始


磨かれた峡谷の側面に夕日が反射し、アライグマ人族に洗われた町は、金色に染まる。


一見、幻想的、神秘的な光景なのだが、町の中にいる場合、眩しすぎてたまったものではない。

おまけに気温も高くなっている。


そんな日が何日か続いていた。


そして今日、アライグマ人族が町中に水を撒いた事により、自体は最悪となった。


撒かれた水が日光に晒され、一気に蒸発した。


故にげっ歯類連合とアライグマ人族の作戦は順調に進んでしまった。



俺、大根4号は空を見上げる。


真っ黒な雲が空を覆っている。

アライグマ人族が水を撒いていたのが昼前。

現在は、夕方になりつつある。


この雲は、峡谷によって流れをせき止められているので、ずっと町の上に留まっている。


いつ夕立が降ってきてもおかしくない状況にある。


だがしかし、俺達は大人しくアライグマ人族の作戦を成功させるなんて事はしない。



俺達もついに反撃に出る。


奴らのアジトは、磨王アードバーグ・ライジングが自分からバラしたので、大体の場所は掴んでいる。


そして、俺達の作戦はこうだ。


ゴリ押しこそ正義! 力こそパワー!

俺達とアライグマ人族では、数に差がありすぎる。だから早期決着を狙い奇襲をかける。それ以外には何もない。


フーリーは必ず出てくるので、その場合は本体が動く。


本体はライオネルと刻甲を連れて、どこかへ行ってしまった。


本体から下された命令は『刻甲と出会ったら時間稼ぎしろ』と言われただけだ。

それ以外、本体は何も伝えてこず、逆に俺達分身大根との情報共有を遮断した。本体が何を考えているか、俺には検討がつかない。


……ちょっと待って?

ライオネルも刻甲も本体がいない場合、俺達分身大根5人とライオネル派のアライグマ数人、あとはレイラとミーナちゃんのみとなる。


一応、シオンもここにいるが、ミーナちゃんに無理やり連れて来られただけだ。

シオンはすでに生気など感じられない生きる抜け殻になっていると思いきや、案外平気そうだ。

この状況に慣れたからかどうかは、全然わからない。ただ、エキノコックスによる症状に苦しんでいる雰囲気には見えない。

とりあえずシオンは待機でいいだろう。



そしてもう一つ、分身大根の見分けがつきやすい様に『本体』から、どこから仕入れたのか、検討がつかないペンキ入りのバケツを渡された。

赤、青、黄、緑、桃の五色だ。


なるほど。戦隊カラーか……。

つまり、戦隊ネタをしろという事か?


いいだろう。

俺達分身大根、5人は野菜戦隊ダイコンジャーとして、アライグマに立ち向かってやる。


他の分身達にペンキ入りバケツを配る。


そこで問題が発生した。


「……俺、自分に自信持てねぇよ!」


分身の1人が狼狽えている。

そいつの名は、大根3号。

ミーナちゃんの暴走を食い止める事に失敗したクソポエム線香花火くん(笑)である。


「何言ってんだよ大根3号(クソポエム)。ミーナちゃんにキーホルダーにされたからって、いつまでもいじけてんじゃねぇよ!」


「4号、お前はいいよなぁ……、常に前向きで」


3号は、地獄に落ちてそうな感じで、やさぐれている。


「3号よ、お前は自分の意思で戦った。負けはしたが恥じる事ではない」


「5号の言う通りだ。俺はそういう所良いと思うぜ」


「俺もそう思う」


2号を励まそうと、5号、6号、7号が2号に声をかける。


大根4号(おれ)は、(かれ)らの茶番が終わるまで傍観している。


……………………。


……………………。


……………………。


……………………。



「……フッ」


「……フッ」


「……フッ」


「……フッ」


3号、5号、6号、7号は互いの気持ちを理解した。

3号の心の傷は、同じ分身達と心を通わせる事で修復させたのだ。



……なんだよこのダイナミック的『フッ』リレーは?


説明一切なしで、長いこと沈黙して、自分らだけで納得してんじゃねーよ!わけわかんねーよ!


なんなの君達?4号(おれ)だけハブってるの?



という訳で、3号が赤のペンキにまみれ、4号の俺は青、5号は黄、6号は緑、そして7号は桃色のペンキに塗れ、見分けがつきやすくなったのである。




・・・




アードバーグらのいるアライグマ人族のアジトに辿りついた。


いつもなら、夕日に照らされて明るいが、今日は夕立がいつ降ってもおかしくないどんよりとした曇天の空。かなり暗いのである。


その視界の悪さを利用して、俺達は奇襲を仕掛けた。


アライグマは夜行性の動物だと、ミーナちゃんは言っていた。

アライグマ人族も普通は夜行性なのだが、ライオネルが言うにアードバーグ王の臣民は、人間と同じように、夜間に睡眠をとるようにしているらしい。よって、この時間に奇襲を仕掛ける事は問題ない。


「なんで、アジト(わかた)の場所、バレとるんや!誰がバラしたんじゃ!」


アライグマ人族の1人がそんな事を叫ぶ。

バラしたのはあんたらの王です。



奇襲は成功。


俺達、分身大根は根っこ触手で、アジトに潜むアライグマ人族を拘束していく。


俺達と共に行動しているライオネル派のアライグマ人族が、拘束されたアライグマ人族に、何やら呪文を唱えている。


これは、呪いを解く方法らしい。


アードバーグ以外のアライグマ人族もアラーインスレイヴの魔刃に斬られ、なんでも洗いたくなる呪いにかかった者も少なからずいる。


この呪いは、俺の飛び蹴りの『東京ドームの呪い』や、エクスカリカリバーの『木枝を齧りたくなる呪い』のように一生付き纏う呪いではないそうだ。


なので、呪いを解く事も安易と言うわけだ。


敵兵を無力化させる事が、ここまで上手く行ったのは、洗う事に嫌気がさしていた者もいるためだ。故に奴らの指揮は高くはない。



そして、俺達は捕らえたアライグマ人族を連れて、一回アジトを出た。


そこで、奴が姿を現した。


コラーッ(ダーッ)!おどれら、ほんとに来たんか!?別に今日の今日じゃなくてもええじゃろがぁ!今日はもう疲れた(えらい)し、たいぎーけぇ、帰れ(いね)や!」


磨王アードバーグ・ライジングが姿を現した。かなりお怒りのようだ。

アジトに招いたのは、彼は冗談のつもりだったらしい。

そんなの理解できるわけがない。


「帰らないよぉ〜!」


アードバーグに、大根4号(おれ)は、気さくにお断りする。


「なんじゃと!?ぐぬぬ……、こうなったらアラーインスレイヴで貴様らをピカピカのテッカテカになるまで洗ったるけぇのぉ!観念せーや!」


逆ギレした磨王は、俺達に襲いかかってきた。



分身大根どもを見分けにくいので、まとめました。



大根1号

分身ではなく本体。


大根2号

キツネに踏み潰され殉職。


大根3号。

ミーナちゃんに敗北したポエム大根。別名、赤大根


大根4号。

進行役。他の分身からハブられる。別名、青大根。


大根5号

モブ。別名、黄大根。


大根6号。

モブ。別名、緑大根。


大根7号。

モブ。別名、桃大根。

男であるにもかかわらず、順番的にピンクにされたが、ピンクのアクターさんが男というは珍しくもなんともないため、抵抗なく役を受け入れた。



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