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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
シギア峡谷・アライグマのピカピカ大作戦編
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第50話 磨王アードバーグ・ライジング


大根(本体)は現在、修行している。


大根3号は、ミーナちゃんに囚われ、心身共に闇落ちした。


そして俺は本体によって、さっき生み出された大根4本のうちの一体、大根4号という者だ。


結局、全員大根は同一人物な訳だが、先の二人は行動が限られてしまっているので、暫くは俺が進行を務める事になった。


現在、俺は刻甲と共にアードバーグ派のアライグマ人族やフーリーの動向について町中を調べていた所である。



「この町が狙われる理由ですか?それなら私、知ってますよ!」


俺は刻甲に『げっ歯類連合』がこの町を滅ぼそうとしている理由について聞いてみた。


「ここ、シギアゲートはその名の通り、シギア峡谷の出入り口なんです! ここ以外に峡谷を安易に越えられる道は無いので、町が墜ちてしまえば、峡谷を越えるために、大きく迂回しなければならないのです!そうなれば、バーディアや東の海との国交が途絶えてしまいます!私も国に帰れなくなります!……ね?大変でしょ?」


刻甲はこの町の在り方について丁寧に説明してくれた。


おそらく、げっ歯類連合は温泉を独占する為に、シギア峡谷を越えて、温泉に来る者達を警戒しているのだろう。


これはあくまで推測だ。仮に間違っていたとしても、あのネズミどもが考える事なんぞ、似たような感じだと思う。


「刻甲和尚、お知らせしたい事がありやす」


俺と刻甲との会話に、ひとりの男が割って入ってきた。


「最近この峡谷上空をマグロ人族が飛び回ってるせいで、マウントコカトリスを飛ばす事が出来ないんすよ。どこにいても、もの凄い速さで飛んできて、峡谷を渡る者を無差別に攻撃するそうです」


「やっぱ、その噂は本当でしたか、ありがとうございます、カキザキさん!」


どうやら、刻甲とこの男は知り合いのようだ。


『カキザキ』という名前と、彼の東洋系の顔立ちから、刻甲と同じ『東の果ての国』の出身だろう。


「そういえば、げっ歯類連合のヤマアラシ人族の奴が『マグロ人族は自分らの仲間』みたいな事言ってたぞ?」


俺は、大根2号が得た情報を思い出し、刻甲とカキザキに伝える。


「むむ? そうなると、これはただの善意な協力ではなく、我々もライオネルさんみたいに、キチンと貴方と行動を共にしなければなりませんね!同盟、ここに成立です!」


なんか、刻甲がひとりで納得し、『東の果ての国に帰りたい者同盟』を締結してしまった。




・・・




事件はいつも突然だ。

俺と刻甲が利害関係の一致で手を組もうと、敵は空気を読まずに行動を開始する。


「みんなー!アライグマ人族がやってきたぞぉ!」


誰かがそんな事を叫ぶ。


この町にきた時もだが、アードバーグ率いるアライグマ人族は、町人にとってかなりの厄介者らしい。


ライオネルらもその風評被害のせいで、この町で俺達と出会うまでは、ろくな行動が出来なかったらしい。


俺は本体ではなく分身だ。とはいえ、まだフーリーらに生きている事を知られる訳にはいかない。


アードバーグ派のアライグマ人族を食い止めるには、動ける人員は限られる。


シオンはエキノコックスとミーナちゃんの魔手により苦しんでいるので、動けない。


ミーナちゃんは……動かさない方が良い、放っておこう。


そうなると、アードバーグらに対抗できるのは、俺の目の前にいる刻甲と、俺の雑用係として、動いて貰っているレイラくらいだ。


「刻甲、アライグマ人族を追い返すことはできるか?」


俺は刻甲にアライグマ人族を食い止めるよう頼んでみる。


「ココ?何を言ってるんです?いわれ無くてもやりますとも!」


刻甲はやる気のようだ。


「鳩尺様使えないけど、大丈夫か?」


俺は一応、刻甲に確認をとる。

俺は刻甲が鳩尺様を扱う事しか能力を知らない。

あれはこの世界では『禁術』と言われ、魂や命を操る違法的な魔術らしいため、気安く扱う事はできない。


「えぇ、問題ないです。 あの森の時は、私は貴方を強敵だと確信していたし、殺すつもりでしたので最初から全力だったんです!今回は鳩尺様が使えなくとも大丈夫です。あれから鳩尺様にも引けを取らない技を覚えましたよ! コケッ!」


「ええ、刻甲和尚は腕利きの冒険者ですから手札は多くあるんだ」


カキザキが刻甲の腕は確かだと、念を押すように言う。

そういえば前にシオンも、そんな事を言っていた気がする。




刻甲は錫杖(つえ)を持ち、鈴を鳴らしながら外へと出ていく。


「……以前までは、アライグマが現れるのは怖かったですけど、貴方達が勇敢にアライグマに立ち向かうのを見て、私は感動しました!この町のため、私の力をお見せしましょー!コケコッコー!」


刻甲は鳴きながらアライグマの居る方へ駆け出す。


「言えたじゃねーか……」


俺は刻甲の成長に心底感動した。


以前は自分の欲望のままに横暴を働いており、『クックドゥードゥルドゥー!』と鳴いていたが、今は『コケコッコー!』と鳴いている。


恐らく、彼自身に変化が起きた証なのだろう。

俺はそう思う事にした。




・・・




刻甲がアライグマ人族と追突してからまもなく、レイラがこちらに駆けつけてきた。


俺はレイラのマントの裏側に隠れながら戦況を見る事にした。


今回のアライグマ人族は、以前の様にイチャモンをつけて洗ってくる事はしてこない。


アードバーグ以下、アライグマ人族達はバケツを持ち、ただひたすら水を撒いている。


どこからあんな水が出てくるのだろうか?


俺はレイラに質問してみる。


「あれは、水を転移させる魔道具だと思うで。私(やー)バーディア砂漠では重宝しとる魔道具なんだで。 そんなんをなんでアライグマ人族が持っとるんだろなー?」


どうやら無限に水が出てくるあのバケツは、魔道具らしい。


そこで俺は思いだした。

げっ歯類連合は大雨を降らす事で町を滅ぼす気だ。


日光をピカピカに磨いた峡谷の壁に反射させ、町中の気温を上げる事で上昇気流を発生させ、積乱雲を作る。


夏場に海岸で発生しやすい様に、湿気が無ければ、高温でも積乱雲は発生しにくい。


アライグマ人族はそれを考慮して、原始的にも水撒きという方法で、町中を水浸しにして湿度を上げるそうだ。


レイラはひとりでアライグマ人族に立ち向かう刻甲に助太刀に入る。


俺は彼女のマントの裏側に根っこ触手で密着し、振り落とされないようにしている。


褐色方言少女に密着出来る。

これは役得。

『本体』が『分身(おれ)』に嫉妬している顔が見える見える。



刻甲は鳩尺様以外に、普通の鳩を召喚する事が出来るようだ。


そう、普通の鳩だ。


一見しょうもない手品みたいだが、刻甲の召喚した鳩は、敵の頭上で糞を漏らし落とす。


鳩の糞に塗れたアライグマは、洗う事にウンザリしていながらも綺麗好き、潔癖症という本能には抗えない。


「うわぁあああああ! バッチいのぉ!! いやじゃぁああああああ!!」


糞に塗れたアライグマはその不快感に耐えきれず、自分自身にバケツの水をぶっかける。


鳩の爆撃隊ならぬ糞撃隊である。


しかしアライグマ人族も、黙って糞の雨を浴びているわけでは無かった。


「もぉー! 汚い事しよってぇ!小賢しい、こすいのぉ!」


アードバーグがモップに似た聖剣、アラーインスレイヴから泡を大量に出してきた。


聖剣より湧いた泡により、鳩の糞は洗い消されてしまった。


「残念じゃのぉ……、アラーインスレイヴは汚ければ汚いほど、綺麗に出来るんじゃ!これで形成逆転じゃ、しばいたる!」


ライオネルが刻甲に向け、泡の塊を飛ばす。


刻甲を助けるため、レイラは刻甲の背中を掴み、素早さを活かして泡を避ける。


「おどれ、なにしてくれとんじゃあああ!?」


今度はアードバーグが、レイラに斬りかかる。


アードバーグはレイラに迫る。

距離はわずか3m。


これなら、姿を隠したままでも俺は行動できる。


根っこ触手を伸ばし、アードバーグの手足を拘束する。


「ふっ……、だらずどもめ!ワシがおどれらと戯れとる間に作戦は完了したったで?」


幾ら、アライグマに対抗しようが、大勢のアライグマ人族には抗えなかった。


「「しまった!」」


『今週のしまった』頂きました。

刻甲とレイラは、アライグマにまんまとしてやられた事に気付き、声を上げた。


「お前ら、作戦完了!撤退じゃ!(いぬ)るで!」


アードバーグの一言で、他のアライグマ人族は、一斉に去っていく。

その方向はシギア峡谷の方だ。

峡谷の壁を洗っている事から、もしかしたら、アライグマ人族のアジトがある可能性は大きい。


そんな事を考えていると、勝ち誇ったアードバーグが調子に乗ったのか、俺たちに声をかけてきた。


「ワシらは峡谷の側面に、アジト(わかた)あるけぇ、悔しかったら来いや!首洗って待っとるけぇのぉ!このわし、磨王(まおう)アードバーグ・ライジングは、逃げも隠れもせんけぇのぉ!待っとるでぇ! ワッハッハッハッハッハ!」


お前が首を洗うんかい! 普通、逆だろ。


アードバーグは手足を縛られているので部下のアライグマ人族に自分を担がせて、撤退していった。


「なー、どうするだ?追う?」


レイラが訪ねてきた。


「ここは撤退しましょう!下手に追っても向こうは敵の本拠地。 それに例のキツネ人族もいるかもしれません!残念ですが、ここは退きましょう!」


刻甲がそう意見した。

彼の言う通り、ここは撤退だ。

役者(キャスト)も揃っていないし、何せ俺の本体が、まだ修行中だ。


一度、皆で作戦を練った方が良いだろう。


それが終われば、ついに反撃開始である。



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