第48話 横暴な根性論とサラアライグマ
連投、もはやこれまで。
次回から普通の投稿ペースに戻ります。
『ダイコン、そして我が盟友達、ありのままに言うが、ワタシは皆と共に旅が出来無くなった!申し訳ない』
ヌーターンは、俺たちとは一緒にいられない事を謝罪する文面を手紙の頭に持ってきていた。
俺はさらに読み進める。
『ダイコン達が、この手紙を読んでいる時、ワタシは既にお前達の元から離れているだろう。
いくらワタシでも、旧友、ヤマアラシ人族のヤンマーマの圧迫感の強い命令には背けなかった。
だが、ワタシは決してダイコン達を裏切った訳では無いぞ?
ワタシはワタシで、ネスノ村を活性化するための工作をしてみる!
ヤンマーマにも一応、相談してみたが『お前は操られている」と一点張り、こっちの話を聞いてくれなかった。
トトンヌ殿やヒパビパ殿なら、ワタシの話をわかってもらえる
また会う時は、げっ歯類連合とネスノ村が和解できていると思うぞ!』
手紙1枚目には、ヌーターンが決して裏切った訳では無い言い訳で覆われていた。
あと、最後の一文だけみると、和解失敗しそうなフラグ立ってんだけど?
そのあと、俺は2枚目を取り出した。
『もちろん、こんな言い訳だけで終わる訳では無い。
ヤンマーマとげっ歯類連合に協力しているキツネ人族の男から聞いた話をしてやろう!
まず一つ、アライグマ人族についてだ。
アライグマ人族の大将、アードバーグ・ライジングは、ヒパビパ殿の持つ召喚能力によって、聖剣アラーインスレイヴの呪いにかかり、全てを洗いつくすまで止まらなくなったらしいのだ!
そこにフーリーと、ヤンマーマは目をつけ、シギア峡谷の側面をアライグマ人族達に洗わせる事にしたというらしい。
どうやら崖の側面を鏡の様にピカピカに磨き、日光を町中に反射させる事で気温を上げ、上昇気流を発生させ積乱雲を作り、雨を降らせるサイクルで、町を水没させるという陰謀を企てているのだ!
頼む!どうか止めてくれ!
フーリーというキツネ人族はCON CORN、自他共に欺く角と呼ばれ、彼の能力はその名が関連してるらしい!
どうか奴の秘密を解いてくれ。ご武運を祈っている!』
手紙はここで終わっていた。
ヌーターンは俺達とは行動出来ないが、自分の立場を利用し、行動に出るそうだ。
ヌーターンはご丁寧に、アライグマ人族の計画ついて、書いてくれていた。
げっ歯類連合の監修の下での作戦なので回りくどい事はご愛嬌。
俺はもう突っ込まない。
放っておけはしないので計画は一応、阻止する。
だが俺が一番気にしているのは、やはりフーリーの事だ。
『自他共に欺く角』
『角』はフーリーの槍術や拳法の突き技を、表わした事だが『自他共に欺く』という所に奴を攻略するための答えがあるだろう。
さっき、シオンの事についてミーナちゃん曰く、医者が『寄生虫を視認する事はなかった』と言っていた。
これは関係がありそうだ。
もしかしたらシオンは、エキノコックスに感染などしておらず、催眠の類をかけられた可能性もあり得る。
「デロちゃん!私わかりましたよ!」
ヌーターンの手紙を横目に見ていたミーナが声をかけてきた。
「私が考えるに、シオンさんはキツネに化かされているんですよ!本当は、エキノコックスなんかに、感染してなどいなく、蹴られた際に精神的な魔術をかけられたに違いありません!魔術ですよ!キツネ人族なら出来ても不思議ではありません!」
ミーナちゃん?急に主張が強くなりすぎでしょ?
彼女の言う通り、その可能性は大いにありえる。しかし、なんでもかんでも魔術のせいにするのは、如何なものだろうか?
原理や発動条件、弱点を見つけなければ、奴との戦いは困難なままだ。
「じゃあ、早速ですが、シオンさんをキツネの幻惑から解き放ちます!気合いがあれば幻術なんて怖くないですよぉ、シオンさん?力をつけるため、まずは30kmランニングしましょう!」
「「「えぇっ!?」」」
ミーナちゃんが唐突、気が触れた様な事を言うので室内の俺は勿論のこと、シオンとレイラも困惑した。
ミーナちゃんがベッドで横になるシオンの脇を掴み持ち上げる、
「え……!?ミーナさん?マジっすか?待って、待って!」
当然だがシオンは、俺とレイラに視線で助けを求めている。
彼女はミーナちゃんが怖くて、体に力が入らないようだ。
例え、エキノコックスにかかっている事が、幻術だったとしても、苦しんでいるシオンを根性論で治療させる事は止めなければならない。
おそらく、部活中に水を飲んではいけなかった世代の人間でも、ミーナちゃんを止める事は躊躇わないだろう。
ミーナちゃんがシオンを引きずりながら、外に出ようとする。
シオンが涙目でこっちを見てる。
ミーナちゃんに両脇を捕まれ、ベッドから持ち上げられてる姿が、猫に似てて笑えてくるが、悲惨な末路が予想されるので俺は止める。
俺よりも先に、レイラが動いた。
レイラがミーナちゃんの背後に回りこみ、羽交い締めで、動きを封じる。
普通の女の子ならここで解決。
しかし、ミーナちゃんはあの筋肉の妹、そう簡単に白旗を上げる事は無かった。
ミーナちゃんは、レイラの足を踵で踏んづけた。
「いだっ!?」
レイラは踏まれた足の方に意識がいってしまう。
ミーナちゃんは瞬時に隙をつき、お辞儀をするように前方へ屈む。
ミーナちゃんが前に屈んだ事でレイラの体が浮いてしまった。
ミーナはそのまま後方へ勢いよく走り、壁にレイラを叩きつけた。
レイラはミーナを羽交い締めで完全に封じたと油断していた。それ故に負けた。
だとしても、ミーナちゃんの今の反撃は殺意が高すぎるでしょ!
俺はミーナちゃんの潜在能力や恐怖に関しては、今まで散々、直に体験してきたのでこうなる事も想定していた。
先手必勝! 俺は根っこ触手でミーナちゃんの手首と足首を縛り、動きを封じた。
「……」
ミーナちゃんは無言のまま、縛られてた手首を動かした後、複数回掌の開閉を繰り返す。
そんな事をしても無駄だ。
かつて根っこ触手で、魔猪を縛った事もあるんだ。
そう簡単に千切れはしない。
ミーナちゃん、ここで御用!大人しく投降しなさい!
無駄な抵抗は、怖いからやめるんだ!?
ミーナちゃんが、やめてくれる訳がなかった。
ミーナちゃんは、眉ひとつ動かさず、全体重を乗せ、脚を開き、勢いよくその場にしゃがんだ。
すると、プチッと言う音が微かに聞こえ、彼女の足に纏わりついていた根っこは千切れた。
次にミーナちゃんは、縛られた両手を頭上に上げ、勢いよく振り下ろした。
すると、手首を縛っていた根っこが千切れたんだなぁ〜これが。
「うそ〜ん……」
俺自身、根っこによる拘束は効果があると思っていたのに、ミーナちゃんが、糸くずを振り払う感じで拘束を解いたので、なんか泣きそうになった。
映画でよく見るセガ○ルや、シ○ワちゃんに敵対する連中の勇敢さを、理解できた気がする……。
こっちの策略を軽々突破されちゃあ、こっちも玉砕しか選択肢がなくなるんですよ!
「シオォオオン!逃げるぉおお!!?」
俺はせめてシオンだけをこの場から逃す事にする。
……私、大根3号は、己の生きる意味を見つけました。
私は線香花火になりたい。
一瞬だけ輝けられるなら、人生短くとも悔いはない。
・・・
……何やってんだ大根3号は?
手紙を受け取れとは言ったが、『本体』である俺を差し置いて、女の子達とイチャつきやがって……!そんな命令は出してないぞ!?
おまけに最後には、猫の糞にも劣るポエムを撒き散らす始末、こっちが恥ずかしいわ!
『本体』はフーリーとの戦いに備えて、アライグマ人族のアドミラール・ライオネルの指導の元、修行に励んでいる。
その内容なのだが……。
「手が止まっとるで?もちーと、沢山洗えんのか?」
病院でミーナちゃんの暴走を食い止める口実でイチャついている大根3号の情報に意識を向けすぎて、ライオネルに注意された。
「……ところで何で修行が、川で皿洗いなんだよ!こんなので強くなれるのかよ!」
俺はライオネルに修行ということで、皿を洗わされてる。それも色んな種類の皿が雑多に入り混じっていて、とても洗いづらい。
車を洗わせる修行というのは映画で見たが、皿はおかしい。絶対におかしい。
皿が洗えたからと言って、空手が上手くなる事なんか絶対ないぞ?
これ、ただのアライグマの宿命の押し付けでしょ!?
「誰も強くなるためとは、言っとらんで?お前さんは既に力を持っとるじゃろ?けど力の使い方を全然、理解出来とらん!おどれに足りんのは、集中力、忍耐力じゃけぇ。おまけにすぐイキるとありゃあ、根本的に性根を叩き直さないけん!」
ライオネルは俺の痛い所を正確に射抜いてきた。
確かに、忍耐力、集中力はない。
彼の言った通り、根本的に自分の心を入れ替えなければいけないと俺は自分に言い聞かせた。
性根を根本的に鍛え治す。
大『根』だけに!……ってね?
……。
…………。
……そういうとこやぞ!?




