第45話 エキノコックス
ダイコンデロガが、キツネ人族でありながらげっ歯類連合の構成員であるフーリーと相対していた時、別の場所ではヌーターンが単独で、アライグマ人族やげっ歯類連合について調査していた。
「久方ぶりだな、ヌーターン王。相変わらず迷子か?」
ヌーターンは人々が行き交う街道にて、すれ違いざまに声をかけられた。
その声は彼の知っている人物だった。
「その声は、剣豪ヤンマーマ!」
ヌーターンは、ヤンマーマという人物に気づき、足を止める。
「よぉ、元気にしてたか?」
ヤンマーマは、黒く鋭く尖った毛を持つヤマアラシ人族。
ヌーターンとは知り合いで、ヤマアラシは、げっ歯類である事からわかる通り、彼はげっ歯類連合の一員である。
「ヤンマーマ!お前と、大事な話しをしたいのだ!」
「奇遇だな、俺も久しぶりに貴様と語り合いたい所だ。ここでは俺のトゲがみんなの迷惑になる。場所を移そう……」
ヌーターンは、ネスノ村の件についてヤンマーマと話をするべく、路地裏へと消えた。
・・・
(重巡ダイコンデロガ視点)
俺はキツネ人族のフーリーに完敗した。
奴は完全に俺の上位互換。十八番の飛び蹴りもネッコボルグも通じない。
俺達は、突然現れたアライグマ人族、アドミラール・ライオネル他、アライグマ人族数名によって、戦線離脱することに成功し、現在はとある隠れ家に、身を潜めていた。
アライグマ人族の内部分裂という事だろうか?
ライオネル達からは敵意を感じられなかった。
今はシオンの傷の手当てに、助力してもらっている。
俺を庇ったシオンは『問題ない』『平気』と強がっているが、彼女の容態はそこらの子供が見ても、大丈夫な訳が無い事はすぐにわかる。
発熱に、腹痛らしき症状が、他人から見てもわかるのだ。
ミーナによる、応急的な回復魔術によって、外傷は癒せたものの、シオンの健康状態は芳しくない。
「こりゃあ、あのキツネから寄生虫もろーて来とるんじゃないか?」
アドミラール・ライオネルが、シオンの様子を見て呟いた。
「キツネから寄生虫って……もしかしてエキノコックスですか?症状も当てはまりますね。……けど、発症するのがあまりにも早すぎるんじゃ?」
ライオネルの呟きに、ミーナが反応した。
「あのキツネ人族、欺角・フーリーは『自他共に欺く角』と呼ばれ槍術と拳法に長けとる強者。 奴の『突き』は、相手に致命傷を負わせると同時に、自分自身が体内に持っとる寄生虫、エキノコックスを傷口から相手の体へと侵食させ、苦しませるんじゃ。しかも普通の物と違い、寄生虫が肝臓に侵食すると即座に、体を蝕みだすというゲテモノなんじゃよ」
ライオネルの説明を聞いて、シオンの容態は本気で危ないものだと理解した。
シオンのバカ!お前をイジって遊ぼうかと思ったのに、これじゃ手出しできねぇじゃねーか。
あのキツネ人族、フーリーにシオンの敵討ちをしたいが、今の俺では返り討ちにされる事は分かりきっている。
「……ところで、あんたらアライグマ人族は、あのモップを持ったアードバーグ・ライジングってのとどういう関係なんだ?」
俺はライオネル他、ここにいるアライグマ人族に率直な質問した。
「話せば長くなるのぉ……。
わしらは『げっ歯類連合』への勧誘を断った。
そしたらカピバラ人族の道化師が、どこからかアライグマ人族の聖剣、アラーインスレイヴを召喚してきてのぉ、我が友アードバーグ王を斬ったんじゃ。
すると呪いが発動してアードバーグ王は我々を連れ、全てを洗い始めた!そんで気づけばここに辿り着いたちゃう事じゃけぇ。
わしはアードバーグ王を止めようと強行手段にでたが、そんな時、あのキツネ人族が現れてのぉ。
衰弱しきったアライグマ達には何も出来ず、立ち向かったアライグマ人族の若人はフーリーの奴に、ぶち回されてしまった。
そうして、残ったのはここにいる者と、アードバーグ王に着いていった者だけ。あとはエキノコックスに掛かり、どっかで寝込んでおる……」
ライオネルが、己の不甲斐なさを悔いている事がわかった。
「ちなみに、アラーインスレイヴの呪いって、能力ってどんなのがあるんだ?」
「第1の能力は、斬られた者を究極な綺麗好きにしてしまう。
第2の能力は、泡を操り、泡に触れた全てを浄化させるんじゃ。そこのニワトリ人族みたいにのぉ……」
アードバーグ・ライジングの胸に刀傷があった事を思い出す。
かつてトトンヌが、召喚術が扱える仲間がいると言っていた。
『カピバラ人族の道化師』という点から、アラーインスレイヴを召喚し、アードバーグを斬ったのは、マジシャンの様な格好をしたヒパビパの事だろう。
俺はヒパビパの事をよく知らないが、三界王の一角、世界を覆い尽くす大蛇を倒した、邪竜カピバラゴン。
そいつを使役していたのがヒパビパ、実力は今までのヤツらとはケタ違いだと思う。
俺の問いにライオネルは素直に答えると視線をアードバーグ・ライジングに洗われた刻甲に、視線を移す。
「私、今日から皆様の笑顔と幸せを護る事をきめましたよ!!あと、シオンお嬢さんの事、私に任せてください!この町のウデの良い医者を知ってます!」
このニワトリ人族の心は洗われた。
アラーインスレイヴの泡により、身も心も洗われた刻甲。
このニワトリから、かつての邪気溢れる破戒僧という設定は、文字通り洗い流されてしまったようである。
だが、ウデの良い医者については有益な情報だ。早くそこへ、シオンを運送しなければならないが、刻甲だけに任せるのは安心出来ないので、俺も賛同しよう。
「ところでデロちゃん?……今回のげっ歯類連合は難敵です。助けて貰った事ですし、ここはアライグマ人族の方々と共闘した方がいいかもしれませんよ?」
ミーナちゃんにそんな事を提案された。
「本来なら、わしらアライグマ人族が他種族に肩を並ばせる事は有り得ん話じゃが、今回は文句も言っとられん!わしらは王を正気に戻さんといけん。そのためには、げっ歯類連合を倒さんといけん!そして、お前らは『げっ歯類連合』を倒すため遠路はるばるここまで来た。フーリーとの戦い方は特別にわしが教えたる!利害の一致じゃと思うで?」
ここに来て、アドミラール・ライオネルの提案に乗らない訳が無い。答えは勿論、イエスである。
ここに来て、仲間が新たに加わった。
アドミラール・ライオネルとその仲間のアライグマ人族。
あと、予想などしてなかった綺麗なニワトリ人族の刻甲和尚。
シオンの仇は俺達がとる!(*死んでません)




