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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
シギア峡谷・アライグマのピカピカ大作戦編
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第44話 峡谷の門の町


シギア峡谷地帯。

それを目にした感想は「なまらデカい!」という道産子小学生並みの感想であった。


俺たちはマーモット人族の件の頃より前に、この峡谷を地平線の向こう彼方に認識していた。


最初は「なんか見えるー」という興味のカケラもない反応を示していた俺も、峡谷に近づくにつれ、そのスケールのケタ違いさに度肝を抜かれた。

これは峡谷というより壁だ。

巨人も進撃する事を諦めるほど高い壁だ。


こうしてシギア峡谷が「なまらデカい」と改めて実感したところでシギア峡谷の麓に位置する町、シギア・ゲートにたどり着いた。


この町は、クレアと合流する場所であるが、先日の件で、サイドワインダー・ヤマーモットが言った事を鵜呑みにすれば、ここにアライグマ人族がいる。

ヌーターン曰く、げっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)と関係の無いアライグマ人族。

彼らが、友好的な種族だと良いが『全世界清掃作戦』をして周りに嫌がらせをするヤツらだ。その可能性は極めて低いだろう。

マーモット人族が口にしていたキツネ人族の方がより良い関係を築けそうだと俺は予想する。


今までアライグマ人族が綺麗にしただろう痕跡が、この町で途絶えている。


遠目で見てもわかる!

この町、めっちゃ(なまら)ピッカピカ!綺麗すぎる!もちろんアライグマ人族の仕業だ。




・・・




ヌーターンはアライグマ人族について個人的に調査がしたいらしく、町につくなり俺達と別れ、レイラは、馬車を停められる場所を探すため俺達とは町の入り口で別れた。


俺はミーナちゃんとシオンの3人で、この町について調べて見る事にした。


町の中心部に近づくほど、町人の数が次第に増えている。


前世は地方出身、今世はネスノ村出身なので、ここまで人まみれだと、祭か何かのイベントかと錯覚してしまうが、ここではこれが普通。


標高2000m以上、そんな土地にありながら、町の名前通り、シギア峡谷の門としての役割を持ち、沢山の人々が行き交う。


そして『人』だけではなく、多種多様の獣人族も多い。

二足歩行のネコ人族、イヌ人族。

露店を構えるパンダ人族もいれば、袈裟を着たニワトリ人族の坊主もいる。


ん?ニワトリ人族の坊主?


「おい!あんた刻甲(こっこう)か!?」


俺はニワトリ人族を見分ける事など出来ないが、坊主のニワトリなど他にもいるとは到底思えないので、話しかけてみた。



「コケッ!?そ、その声は……!?」


ニワトリ人族の坊主は俺の呼びかけに反応した。


まさかの本人である。


「お前……生きてたのか。そもそも、何でこんなところに居るんだ?」


刻甲は悪夢でも見てると錯覚しているのか、こちらを二度見、三度見、と繰り返している。


「わ、私も……あれから色々ありまして、ギルドから追い出されてしまったのです!……一応、言っておきますけど、私ここでは、なにもしてないですよ!?ほんとですよ!?」


刻甲の言う『色々』な事は多分、他人の命を使う『禁術』が関係してんだろうと察しがつく。


「……」


ふと俺の後ろにいるミーナとシオンに視線を流す。

シオンは刻甲に対し呆れた感じである。

これは何も問題ない!


一方、ミーナちゃん。

いや、ミーナさんは凄い形相で、刻甲を睨みつけている。

この顔は、ヒロインがしてはダメな(つら)だ。

いつもの、圧力のある無言の笑顔というフィルターは死んだ。


仏の顔は三度どころか一度もない!ミーナさんの顔つきは羅刹、または修羅と化した。

率直に怖い!


……あ、でも今の彼女に、タバコ咥えさせて、スカジャン着させたら姐御感が出るぞ!?

俺じゃなきゃ見逃しちゃうね……!


「メロンパン買って来いよクソ大根!」と罵られると同時に壁ドンされたいかも!

ああ〜、やだもー!夢が膨らむぅ〜。


「……いやいや、ミーナさん!大丈夫、気分を落ち着かせて!?このニワトリはもう無害!多分!」


俺は、ときめく邪念を振り祓い、ミーナさんを荒ぶる神に見立て諌める。


「デロちゃんが、そう言うなら仕方ないですね……」


なんとか願いが通じ、ミーナさんをミーナちゃんに戻す事に成功。




しょうもない事の鎮圧に成功したが、別の事件が発生した。



「ア、アライグマ人族がやってきたぞー!!隠れろぉおお!!?」


誰かがそんな事を叫んだ。


「大変だ!みんな逃げろぉ!!」


「嫌ァああ!徹底的に洗われるぅううう!」


賑わっていた町は、たった一度の呼びかけで大混乱を招く。


町人達は近辺の屋内へと隠れてしまった。



「……あの、私も隠れてもよろしいでしょうか! ?」


刻甲が俺に尋ねる。


「お前、あんだけ俺達を苦しませてたクセに、たかだかアライグマごときにびびってんの?」


俺は呆れた感じで質問を返した。


「今のアライグマ人族を侮ってはいけません!見つかれば、イチャモンを付けられ、全身を洗われてしまいます!」


刻甲は俺に必死に訴えかけてくる。



「なんじゃおどれら!そのえらく汚れちょる格好はァ!洗ったるけぇ、観念せーや!」


刻甲と話していると、ドスの効いた知らない声が聞こえた。


声の聞こえた方を見ると、そこには灰色と白と黒の毛に覆われた、数匹のアライグマ人族がいた。


よく見ると、アライグマ人族達の毛は、新品の高級タオルのように、体毛がフサフサしている。


そして、今声をあげたのは、一番手前にいるやつ。恐らくアライグマ人族のリーダーだろう。


そいつは、片手にモップを持っており、胸に袈裟がけに斬られた刀傷が目立つアライグマ人族だ。


「まずは貴様から洗ったる!」


「ココッ!?」


前にいたアライグマ人族のリーダーは、モップを振り上げ、刻甲に飛びかかる。


刻甲はアライグマの動きに反応が遅れてしまう。


アライグマが持っていたモップは、ただのモップではなかった。

モップ自体が鞘となっており、その正体は剣。


アライグマが抜刀すると同時に刀から泡が湧きだした。


「コッコ……コケー!?」


泡は自我を持っているのか、自ら刻甲に覆い被さった。


刻甲はもがくも、その抵抗は虚しく意味が無い。刻甲の全身が、泡に包まれる。


しばらくして泡が引くと、そこには全身洗いつくされた刻甲が立ち尽くしていた。


「……」


刻甲は、悟りを開いた様な清々しい表情をしたまま黙っている。


先程まで泥を被っていた彼のオンボロな黒い袈裟は、艶のある黒真珠似た色へと変わりとげ、ベタついていた羽毛はフサフサとした清潔感のある物へ変質した。


「次はお前らじゃ!長旅で沢山(ようけ)汚れとるで?このわしアライグマ人族の王、アードバーグ・ライジングが、ばり洗ってやるけぇのぉ!!そこの小さい(こまい)大根!まずは貴様からじゃー!」


普通なら、身体を無償で洗ってくれるなんて、ありがたいと思うが、ここの町人がアライグマ人族を恐れる理由は、刻甲の成れの果てを見れば察しがつく。

洗われた際の高揚感、リラックスにより、魂が抜けてしまうのだろう。


そう簡単に洗われてしまう訳にはいかない!


アライグマ人族の王と名乗った、アードバーグ・ライジングは、さっきと同じく剣から幾万の泡を飛ばしてくる。



「シオン、ミェルニルを!」


「はいっす!」


何かあった時の為、シオンにミェルニルを持たせていてよかった。


シオンから受け取ったミェルニルで瞬時に赤筋大根へと変わり、襲ってくる泡の塊を叩く。


「なんじゃと!?」


アードバーグは苦言を漏らす。

ミェルニルで泡の塊を叩くと、シャボン玉が連動するように弾けて消えた。

だが、泡に触れた事により、ミェルニルがかつての輝きを取り戻し、眩く煌めいている。


「ほう……?さてはその槌、伝説の武器の類じゃな?オモロいのぉ、このアライグマ人族の聖剣『アラーインスレイヴ』とどっちが強いか勝負しよーや?」


どうやら、モップ型剣の正体はアライグマ人族の聖剣だったらしい。

という事は、この聖剣ひとつで、ナン・モネーナ村近辺からここ、シギアゲート間を洗ってきたという事だ。

エクスカリカリバーの能力も、規格外な力を秘めているが、それはアライグマ人族の聖剣、アラーインスレイヴも同じみたいだ。


だからと言って、怯んでいる訳にもいかない。


アードバーグは再び、泡の塊を飛ばしてくる。連なった泡は、大蛇みたいに俺の周りを這いつくばる。

俺を囲って、身動きを封じたいようだが、そう簡単にいかせる訳がない。


俺は真正面を突っ切る。

赤筋大根の身体能力を持ってすれば、瞬発的な力で、この場を凌ぐことも可能。

目の前に泡があるが、一瞬だけなら効果は弱いだろう。


「なんじゃと!自分から泡に突っ込んだ!」


俺は泡の中を赤筋大根の剛力により、突っ走った。


泡に包まれた刻甲の様子を見て予想はついていたが、泡に揉まれ包まれると、物凄く心地が良く、力だけでなく、魂も抜けるような快い気分になれた。

その抱擁感により、精神的な攻撃に弱い赤筋大根の力は弱まり、ただの大根に戻ってしまう。


だがそんな事など、どうでもいい。むしろ予想はしていた。



泡から抜けた俺は自分に喝を入れ、アードバーグへとミェルニルを投げつけた。


「ぐはっ!?」


ミェルニルはアードバーグの頭部に命中。

彼が、身につけているマントが、ミェルニルの能力で蒸発し、アードバーグは気を失った。


「アードバーグ様ぁ!?」


「こ、これで、もう洗わなくてもいいのかのぉ?」


「王が、やっとお休みになられた……」



王をやられ、他のアライグマ人族が激昂するかと思っていたが、反応はその逆。


どうやら、アードバーグが取り憑かれた様に暴走し、他のアライグマ人族は無理やり彼に付き合わされていただけなのだ。


他のアライグマ人族はもう洗い物は懲り懲りといった感じである。アラワナイグマに改名するかもしれない。


呆気ないが、これで一件落着。……なら良かったんだけどね?



げっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)の作戦の邪魔はしないで欲しいのだが?」


ここに来て新手だ。

しかもげっ歯類連合。

ヌーターンから、アライグマ人族は無関係だと聞いていたので、ヤツらと繋がりがある可能性は皆無だと思っていた。


「お前は?」


俺はこの場に乱入してきた声の主の方に視線を向ける。


そいつは、げっ歯類連合と言ったが、ネズミでは無かった。


そいつの身体は黄色で、手足は黒毛。もふもふした尻尾をぶら下げている。

そいつは背筋が伸びており姿勢が良く、槍を携えている。

そいつの頭には、大きく尖った耳があり、糸の様に細い目とシャープな口が特徴的な獣人だった。


「どうも、トトンヌ殿から大根(あなた)の事は聞いております。私はキツネ人族の、欺角・フーリーと申します。以後お見知り置き……は、しなくていいです」


頭を下げて自己紹介したキツネ人族のフーリーは自己紹介を一方的にすると槍をこちらに向けて突っ走ってきた。


俺は瞬時に、ミェルニルで槍の攻撃を弾く。


現在、赤筋大根の力が使えないので、ミェルニルは使わない方が良いかもしれない。


ここは、このキツネと同じ槍、ネッコボルグで対処した方がよいかもしれない。


ミェルニルをシオンへ返し、俺はネッコボルグを構える。


「こちら側に合わせてくれるのですか……舐められたものですね」


フーリーは不敵に笑う。


俺はその余裕の隙を見てネッコボルグをキツネに突き刺す。


「甘い!」


フーリーはネッコボルグを片手で掴み、受け止めた。


「貴方、槍の使い方が雑ですね……。それだと、まるで素人じゃないですか?」


フーリーは蔑むように俺を嘲笑う。


「な……、んだとテメェ?」


「デ、デロちゃん、安い挑発です!ノらないで……」


ミーナちゃんが注意を促してくれているが、俺の耳には最後まで入らなかった。


俺はこのキツネ、フーリーの安い挑発に乗せられてしまった。


俺は根っこ触手から、新たにネッコボルグを作り、フーリーを突き刺そうとする。


だが、それも無駄。

俺の行動は、完全に読まれていた。


フーリーは槍を振り、俺を殴り飛ばす。


俺は距離が取れたので、これはこれで、好機だと思った。


ネッコボルグでの攻撃を諦め、助走をつけて全力の力でフーリーへ飛び蹴りを放つ。


大根(おれ)の尖った足がフーリーの胴体に吸い込まれていく。

このままなら勝てる。


「槍の扱いだけでなく、蹴り技までお粗末ですね」


フーリーは、キツネ特有のモフモフとした尻尾をクッション代わりに使い、俺の飛び蹴りの威力を打ち消した。



飛び蹴りさえ不発に終わった俺は、へなへなとその場に崩れ落ちる。


「仕方ないですね。私が冥土の土産に、本当の蹴り方を教えてあげます」


そういうとフーリーは、槍を担ぎながら走りだす。

持っていた槍を棒高跳びの様に地面に突き刺すと、それを踏み台にして、大きく飛んだ。


凄い跳躍力だ。推測20mは越えている。


宙に舞う、フーリーの身体から蛆が蠢くような黒く不快なオーラが現れ、隕石のようにフーリーは俺の頭へと急降下する。


これは避けられない。

というより、身体が動かない。


「デロ先輩!?」


突如、俺を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、その声の主に俺は投げ飛ばされる。


その瞬間、フーリーが誰かを蹴る鈍い音が、聞こえた。


フーリーが蹴ったのは俺では無い。


「シ、シオン!?」


シオンが俺を庇い、代わりにフーリーの飛び蹴りに直撃してしまった。


「おや、大根をかばうとは、勇敢なお嬢さんですね……。ですが『自他共に欺く角(コン・コーン)』に当たってしまうとは、先の長い人生を台無しにしてしまいましたね。かわいそうに……」


フーリーは意味深に苦言を漏らす。


「こ、こんくらい大丈夫っすよ……!来いよ……クソキツネ!」


フーリーに蹴られたシオンは自分の心配をさせないように俺に笑いかけ、フーリーに虚ろな敵意を向ける


「シオンさん、喋らないで下さい!傷の手当てをしますから」


倒れるシオンをミーナが介抱する。


そんな中、俺はただ突っ立っているだけだ。


ネッコボルグも飛び蹴りも、今まで通用しなかった事なんて毎回(いつも)のようにあったのに。


今回は違う。

シンプルに能力、技術の差で負けた。


未だ知らない神がくれた能力が、どんな強力だったとしても、俺はこのキツネ人族に勝てる気がしなかった。


「邪魔が入りましたが、とりあえず貴方は、野菜獣大根なので、処理させてもらいます」


フーリーが槍を構えこちらに迫る。



その時だった。



「こっちじゃ!」


どこからか泡が現れる。

アードバーグが持っているアラーインスレイヴからではない。


たちまち、俺やフーリー、シオンやアライグマ人族たちは、泡に包まれる。


そのまま俺とミーナ、シオンと、ついでに刻甲は、何者かに手を掴まれ、フーリーから離れる事に成功した。


「あんたは?」


俺は手を引く人物に尋ねた。


「わしは、あの(バカ)の旧友、アライグマ人族のアドミラール・ライオネルじゃ。げっ歯類連合をなめとったら痛い目に合うけぇのぉ、慎重に行かんと、いけんでぇ?」


アドミラール・ライオネルと名乗ったアライグマ人族とその仲間のアライグマ人族によって、俺達は、フーリーとアードバーグ一行から一旦、逃げることに成功した。




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