第42話 高原の覇者、マーモット人族
「あああああああああああああああああああ!!!」
盗賊の件を無事解決させ、神との対談からなんとか解放され目覚めた俺は、仲間達と共にナン・モネーナ村を後にした。
「あああああああああああああああああああ!!!」
ヌーターンを筆頭にアライグマ人族によって清掃された場所は、偶然にもシギア峡谷へと続いていた。
「あああああああああああああああああああ!!!」
……ナン・モネーナ村を後にして数日経過。
現在、シギア峡谷付近の高原を、馬車の荷台に揺られながら進んでいる。
恐らく、標高2000mくらい登って来ている。辺りには森や木などなく、目に入るものは芝か崖くらいだ。
「ああああああああああああああああああ!!!」
…………この高原地域には、かなり大きな町があり、俺達はその町でクレアと合流する事になっているらしい。
「あああああああああああああああああああ!!!」
………………。
「あああああああああああああああああ!!!」
「……さっきから誰だよ!うるせーよ!」
俺はシンプルに怒鳴った。
さっきから、競馬場で外れ馬券を投げ捨てるおっさんの怒り声に似た、叫び声が聞こえてくるのだ。
最初は幻聴かと思ったが、周期的に彼方此方から聞こえてくるので、俺の忍耐力はバリバリに削り殺された。
「この鳴き声は多分、マーモット人族ですかねぇ?」
ミーナちゃんが首を傾げ、呟いた。
「知っているのかミーナちゃん!……それでその、モルモットだかマーモセットだか、よくわからん生物はなんなんだい?」
「はい!マーモットはリスの仲間で、主に高山地域に生息している獣人族なんですよ!」
ミーナちゃんは、俺の質問を待っていたかのように、ウキウキと目を輝かせながら解説してくれた。
まるで動物博士だな。
「リスの仲間という事は、げっ歯類じゃないっすか!?もしかしてげっ歯類連合と関係あるんすかねぇ?」
ミーナちゃんとの会話に、身の程をわきまえない赤毛虫が首を突っ込んできた。
「ヌーターン、その、マーライオン(?)人族について何か知らないか?」
とりあえず、『げっ歯類連合』に詳しいだろうヌーターンに聞いてみる事にした。こういう話はヌーターンがよく知っているだろう。
「マーモット人族は、確かにげっ歯類ではあるが、仲間ではないのだ……」
「え?そうなの?なんで?」
つい聞き返してしまった。
俺だけじゃなく、この場にいる全員が意外そうな顔をしている。
今まで、数種類のげっ歯類が現れ、襲ってきた。
しかし、『げっ歯類連合』に関係ないげっ歯類がいるのは予想外。
「その……もともと奴らマーモット人族は仲間だったのだが……」
「……だが?」
ヌーターンが声を籠らせるので追及してみる。
「……奴らとてもうるさいのだ!そんでもって、何かあれば、突然叫ぶのだ!そんな奴らの風習にはついて行けず、トトンヌ殿とヒパビパ殿と相談して解雇してやったのだ!」
妥当な選択だね!
その分、こちらの手間が増えた訳だが。
「……ちょっと、あれ見てーや!?何か居るで!?」
馬を引いているレイラが前方に不審なものを発見したようだ。
彼女の指差す方向を見るも、数百メートル先。
その先に『何か』が居る事はわかるが大根の眼を持ってしてもそれが何かは、わからない。
レイラはとても視力が良いのだ。
つまりレイラは、先日の盗賊の件で、俺が見えなかったモノまで見てしまっていたという事。
だから後半、あそこまで萎れていたのだろう。今度メシでも奢ってあげないといけなさそうである。
「む?レイラの言う通り、何か居るっすよ?クマっすかね?ビーバーっすかね?」
それから間も無く、シオンも不審な生き物を視界に捉えた。
レイラには劣るが彼女も優れた視力を有している。
よくよく考えてみたら、現代日本で生活していた『液晶ばかり見てた奴』の価値観で考えてはダメなのだ。
おまけに、レイラとシオンは冒険者や暗殺者という身でもあるため、俺が思うよりも、自然と向き合っているので、それなりの能力はあるということだ。
俺は、地獄のピクニック振りに、望遠鏡を使い、レイラとシオンが観測した謎の生物を見てみる。
「なんだあのネズミ?いや、クマ?」
ソイツの見た目は、シオンの言った通り、クマとビーバーのどちらにも見えるが、個人的にリスにも見えた。
カピバラに似た薄茶色の毛に覆われており、服は着ていない。
「デロちゃん?私にも見せて貰えますか?」
俺は言われた通り、ミーナちゃんに望遠鏡を渡す。
「……あれはマーモット人族ですね」
ミーナちゃんのお陰で謎の生物が、例のマーモットだという事がわかった。
「あああああああああああああああああああ!!?」
どうやらマーモット人族は俺達の存在に気づいたらしい。
叫んでいるだけだが、奴らの声のトーンが、馬券が当たった時のおっさんと、外れたおっさんの叫び声くらい、さっきとは違うのだ。
前方にいたマーモット人族がこちらに駆け寄ってくる。
「あ、アイツ、ワタシ達を敵視しているぞ!?」
ヌーターンはマーモットの叫び方で、彼らが俺達に友好的でないと察知した。
マーモット人族の1人が棍棒を片手に、短い二本足でガニ股で走る。
「なんだ貴様らぁあ!!!!!ここが我々マーモット人族のテリトリーと知っての狼藉かぁああああああ!!!?」
声がでかい。マーモット、物凄くうるさい。
「むむ!!!!?そこにいるのはヌートリア人族ではないか!!!!?……さては貴様ら、我々マーモット人族に仇なす不届き者だな!!!これ以上、我々の名誉を汚されてたまるか!皆のもの、であえ!であえぇええええ!!!!!」
「「「ああああああああああああああああ!!!!!」」」
マーモット人族の1人が声をあげると、この高原のあらゆる所に潜んでいたマーモット人族達が鬨の声をあげ、姿を現わす。
「お前は、マーモット人族の首魁、サイドワインダー・ヤマーモットではないか!?」
ヌーターンは目の前のマーモット人族と知り合いのようだ。
ところで『サイドワインダー・ヤマーモット』ってどういうネーミングセンスなんだ……?
「そうか、貴様はヌートリアの騎士王、ヌーターンか!!?前は世話になったな!!!あの時はよくも、我々マーモット人族の口を縛ってくれたな!?あの時は叫びたくても叫べなかったんだぞ!『げっ歯類連合』め!ゆるさんぞ!!!!!」
ヤマーモットとヌーターンには、因縁があるようだ。
「ヤマーモットの相手はワタシに任せてくれ!ダイコン達は他のマーモット人族を頼むぞ!」
ヌーターンはエクスカリカリバーを抜き、ヤマーモットと対峙する。
俺達はヤマーモットの配下のマーモット、約10匹の相手をする事にした。
そこでミーナちゃんが俺に声をかけてきた、
「デロちゃん!大丈夫ですよ!マーモットのリーダーは『サイドワインダー・ヤマーモット』という、強そうでかっこいい名前をしていますが、恐れる必要はありませんよ!」
「お、おう……」
かっこいい……???
ミーナちゃん的に、応援してくれているのだろう。
彼女が、物凄く真剣な眼差しで訴えてくるので、何も言い返すことができない。物凄い圧を感じる。
絶望的なネーミングセンスで、ネスノ村をパニックにさせた彼女が認めるマーモット人族。
これは、厳しい戦いになりそうである(笑)




