第40話 神vs大根 夢の中に閉じ込められた☆
「やはり、ワタシの予想は正しかった!」
クソのような作戦を完遂し、ヌーターンと川岸で合流。
彼は個人的な調べごとに答えを出したらしく、上機嫌のようだ。
「どうかしたのか?」
とりあえず俺はヌーターンの機嫌が良い理由を尋ねる。
もしかしたら今後俺達にも関係する事かもしれない。
「ふっふっふ!良いだろう教えてやろう!この川を見て違和感を感じないか?」
ヌーターンに問われ、川に視線を移す。
今現在は夜の為よく見えないが、ワニが無数にいる事以外、普通の大きな川だ。
「ワニが500匹くらいいる以外は、変わった所はないと思うけど?」
「甘いなダイコン、それこそがおかしいのだ!川の中にいるワニを大量に目視できるのは何故だ!?川の中など、水が濁っていて鳥でもなければ、普通は視認する事など不可能!」
言われてみれば、水中のワニが見えるなんて普通ではない。
上流ならこの透明度も納得できるが、ここは平地。川の深さ、広さを考えてみると普通ではなかった。
「……人為的な何かなのか?」
「そうなのだ!そしてワタシは犯人が誰なのか確信した!」
ヌーターンはドヤ顔で言い放つ。
「んで?その犯人は誰なんだ!?」
「ふっふっふー!犯人は清掃する事に誇りを持つ、我々ヌートリア人族の宿敵、この村から突如として失踪したアライグマ人族なのだ!」
「な、なんだってー!」
大昔、ヌートリア人族とアライグマ人族は、アライッコ戦争で、どちらが綺麗好きかを競った。
その結果、必要以上に自然を綺麗にしたため、生態系を破壊した過去を持つ。
「アライグマ人族はあらゆる物を綺麗に洗う事で世界を征服しようと、今まで何度も陰謀を企てきたのだ!この村を侵略したのもその作戦の一つだろう。あとこれは個人的な予想だが、魔術的な何かを感じる……!」
アライグマ人族に因縁があるせいか、ヌーターンの言葉には凄みがあった。
げっ歯類連合と言いアライグマ人族と言い、行動原理が物凄くしょうもない事には触らないようにしよう。
ワタシはもう少しこの辺を調べて……」
「なーなー?そろそろ帰ろうでー」
ここでレイラが萎れた感じで話しかけてきた。
「ちょっ!?」
会話を遮られヌーターンは困惑している。
ヌーターンとの合流に時間がかかったせいでレイラが項垂れ始めてしまったのだ。
俺も早く休みたい。
「うん、レイラちゃんの言う通り!ヌーターンがいないと川渡れないんですけどー!エクスカリカリバーで橋作ってくれなくなーい?ぶっちゃけ、アライグマの話ぃ、あとでも良くなくなくなーい?」
なくなく言い過ぎて肯定か否定か分からなくなった。
「ちょ、おま!?」
ヌーターンはまだやり残した事があるようだがこれ以上、ここに居座るのも嫌なのですよ!
俺はヌーターンの話を無慈悲に斬り伏せ、帰る事にした。
ヌーターンは納得がいかないようだが、そんな事しらん!
ここは妥協してもらおう。
・・・
「それにしても凄いな、その剣……」
俺はヌーターンがエクスカリカリバーの能力で、橋を組み立てるのを棒立ちで見ていた。
「エクスカリカリバーだでな?……なんでこんな便利な物、行く時に使わんかった〜?」
純粋な疑問をレイラに問われる。
「いや、その、……単純に忘れてました。本当に申し訳ない」
金属男の生みの親、鬼畜博士のように彼女に謝罪した。
今回、レイラを酷使しすぎたと自分でも思っている。
彼女には少し憩いの時間をやろう!我々のパーティは超絶ホワイトだ!仲間の願いならば受け入れてやろうぞ。
……それに対して、シオンやヌーターンの扱いが雑、だと?……知らんな。
・・・
俺は何も無い真っ白い空間に佇んでいた。
俺は任務を完了させ、ナン・モネーナ村に帰還後まもなく眠りについた。
普通に考えて、その流れでこんな所に来るなんて現実的にありえない。
つまりこれは夢。
夢にしては五感に伝わる情報が鮮明過ぎる。これは明晰夢って奴だ。夢を夢だと自覚している状態である。
あと俺の目の前に白い全身タイツのマネキンがいるが深く考える事はやめよう。夢なのだから。
……。
どうしよう。何もする事ないし、情景はちっとも変わらねぇ。
ここはひとつ、色々と久しぶりな気分なのでナン・モネーナ村とこれまでの件について、振り返ってみよう!
前回までのあらすじッ!
異世界を二分するネスノ村とげっ歯類連合の陣営は互いに軍を形成し、
もはや開戦の理由など誰もわからなくなった村規模の戦争を100年間継続していたのかもしれないし、してないかもしれない。
その“百年戦争”の末期、ネスノ村の一大根だった主人公「重巡ダイコンデロガ」は、げっ歯類連合を強襲するという面倒な作戦に、無理矢理参加させられる。
作戦中、ダイコンデロガは「素体」と呼ばれるギルガメス軍最高機密を目にしたため軍から追われる身となり、町から町へ、星から星へと幾多の「戦場」を放浪する事となり、
その疲れからか不幸にも黒塗りの、陰謀と破壊と犯罪の渦巻く現代に蘇る正義の騎士、ナイ○2000に追突してしまう。
『おいゴルァ!ナ○ト2000 のスキャナー、赤く塗らねぇのか!?』
「貴様塗りたいのか!?」
……ん?
直接脳内に、誰かの声が聞こえのでノリで返答してしまった。
せっかくの、夢の中での地の文だ。
そのくらい自由にさせて欲しい。
はて?前も同じような事があったような……?
『そのあらすじ全然違うじゃねーか!あと混ざりすぎ!』
また変な声が聞こえたわー。
……つーか、思いだしたわー。
この声、神の声だわー。
聞きたくないわー。
『思い出してくれたんだね!でも、神と書いてクソと読むなんて酷い!もっと崇めてよ!力を与えたのは誰のお陰か忘れたの?』
「何が『誰のお陰で』だよ!お前のせいで大根になったんだろ!?あと、声だけじゃなくて姿見せろよ!」
『ずっと目の前にいるんだけど……?』
「……」
『……』
「もしかして、白タイツのマネキン?」
『そだよー?』
そーなんだ……。
「以前の、黒ショート、リクルートスーツの姉ちゃんの姿はどうしたんだ?」
『あの姿だと、情報量多くて困るんだよね〜。白タイツのマネキンの方が描写するの楽じゃん?
この空間が真っ白なのも同じ理由。情景描写が楽!語彙が足りない時は「この手に限る!」でしょ?』
「この手しか知らないんだろぉ〜?……ちなみに俺、動けないんだけどなんで?
なんかすごいチカラで縛ってたりしてる?」
『私はなにもしてないよー。今の君は何故か、ただの大根だから動けないんだね!』
神はそう言うと、鏡をどこからか召喚させ、俺の姿を映しだした。
今、夢の中の俺はガチの大根だ。
手も足も出せねぇ!
顔も目も口すら無い、ただの大根だ!
ただ、視界は良好。喋る事もできる。
細かい事は夢なので気にしない様にしておく。
『うーん、顔が無いのは寂しいなー。そうだ!神の力で顔を描いてあげよう!』
神がそう言うと、油性ペンが宙に現れ、大根の皮に何かを描くように自立し動き出した。
『完成だ!どうだ?嬉しいだろう?』
「……ぎゃあああああ!」
『お?良い反応してくれるじゃないか!』
「顔が描かれた事で華やかになった、嬉しい!ありがとー!……なんて言う訳ないだろっ!?バカァ!」
なんで、漂流的教室風の恐怖顔なんだよ!
完成度高すぎて条件反射で『ぎゃあああああ!』って言っちまったよ!
『そんなに褒めないでくれよー、照れるじゃないかー』
「褒めてねーよタコ!……それより、何か用とかあるんじゃねーの?何も用が無いなんていくら神でも無いだろ?」
『そうなのだよ!やっと本題に入れるぞい!』
「お前のテンションがわからない……、神コワイ!」
『それ、ブーメランになってるから!?……私も君の事がわからないよ!
……実は今回は、君の扱う力について話しに来たんだ。
前は時間が無かったから何も言えず仕舞いだったからね!』
なるほど、それは有り難い。
変な能力とか覚醒するし、赤筋大根みたいな有能な能力についてはこっちも知りたかった所だ。
『それらの能力は、全部私からの餞別だ。
変な能力は適当に選んだ結果なのです、チョコエッグやウエハースの中身だと思って許してくれ!』
図々しいなコイツ……。
『あと、君はまだ気がついていない様だが、赤筋大根以外にも、別の形態に変身出来る可能性があるんだな〜君には』
神がやっと期待を持てる事を言った。
「それ本当っすか?というか、ちゃんと使えるモノなの?外れじゃないよね?」
『心配は要らない。使い方を間違わなければ、神にだって有効だし……。もちろん私にも効くぞ!あれは嫌いだ!』
「この世界にいた三界王とかにも効くの?」
『そりゃ……お前……、効くでしょ?』
「なんでクワ○ン口調?……そりゃ凄いなぁ……じゃあ、お前を殺す!」
『え?なにその、デデン!とか聞こえそうな台詞は……?死ぬほど(発言が)痛いぞ?
その力を覚醒させるには、流水に浸かるという条件があるんだ』
「何故?」
『流水に浸かってないと、身体から出る『毒』で死んでしまうからなのだよ』
ヒェ……、どんな能力か考えるだけで恐ろしいな、それ。
「最高じゃないか!」
『最高なのか!?』
流水に浸かれば能力が覚醒するのか。
ワニによって舟が大破し、川に落ちた時、一瞬だが痛みを感じた。もしかしたら、能力発現の兆しかもしれない。
『ちなみに他にも君には力があるのだ。今日は特別サービスだ!巨大化について教えてやろう』
まじかよ、そんな力あるのかよ。太っ腹だな神様。
できれば『機械仕掛けのヌートリア』とかいう巨大ヌートリア戦の時に教えて欲しかったな。
それで、どうしたら大きくなれるの?
『キャッサバを食べれば大きくなれるよ?』
「キャッサバ!?」
『熱帯で育つイモで、タピオカの原料でもあるね。君が今いる辺りだとバーディアにタロイモがあるよ!バーディアは乾燥帯の、砂漠の国と言われてるけど、南はジャングル地帯なんだ。そこで栽培されてるよ?』
「違う、そう言う事を聞いているんじゃない!何でキャッサバ食べたら巨大化するんだよ!?」
『知らなーい。芋ようかん食べて巨大化する暴走族いるし、それと似た様なもんでしょ』
「知らんのかい!」
しかも猿顔の一般市民さん達に迷惑かかりそうですねー。
『そんじゃあ、私からはもう何も言う事は無い。健闘祈ってるよ!』
「まてまて!急すぎるって!S.T.A.Y.」
突然、逃げるように去ろうとする神様を俺はなんとか呼び止める。
キャッサバの事はともかく「他にも言うことあるだろ!」と突っ込みたい。
不幸にも、俺はキャッサバの衝撃で、頭から色々吹っ飛んでしまった。
今、奴に逃げられたらマズい。
俺は、神を夢の中に捕らえたままにするか考える事にした。




