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第39話 盗賊のおっさんは雄性先熟

【注意】 本作者の人格を問われる表現を含みます。

食事中に閲覧する方はご注意ください。


盗賊どもの予想も出来ぬ素性によって、作戦は失敗となった。


だがそこで折れる俺ではない。

運良くも撤退途中、盗賊の頭目だと思われる男の言葉から、誰がこんなドロドロ展開好むんだよ?と思いながらも、勝機が消え失せてなかった事を理解した。


盗賊のカシラが言っていた恋人の名、バルタサールはさっき俺らが目の当たりにしてしまったおっさんの名だ。

ヤツはロドリゴとかいうおっさんと、やらんでもええ事をおっ始めた。

これを、こちらの作戦に上手く利用しよう。


キャストの品質は悪いが、文句は無い。むしろこっちとしては最高だ。


俺はレイラを呼び出し、作戦の再開を伝える。

その事に関して彼女は多少怖がっていたが「成功する確信があるから少しだけ耐えれば良い」と伝えたら納得してくれた。



そして現在、浮気現場を押さえようとしている盗賊のカシラ、フェルナンドをバルタサールの元へ誘導中である。

その方法はとても地味。

レイラがフェルナンドに、自らの存在をちらつかせてバルタサールとロドリゴの元へ注意を引き、誘導していくのだ。


「ほんとに大丈夫なんかこれ?もう(えら)い思いしたくない……ちゃんと成功するだかぁ?」


レイラが心に受けた傷は予想よりも深いらしい。

ならば、俺の猪恐怖症のみたいにトラウマを吹っ飛ばしてやろう。


「大丈夫!もし失敗したらシオンが、例の森で覚えたニワトリのモノマネで一週間過ごすからよ!」


この場にいない赤毛虫を犠牲にレイラの緊張をほぐしてみる。


「シオンちゃんが?……ふふ、それは面白いなー、ありがとー、ダイコン!自信持てた」


レイラの表情が明るくなる。

シオンが理不尽な無茶振りをされる事もなさそうだ。


これより決戦に臨む。




・・・




約10分を費やし、フェルナンドをバルタサールの元へ届ける事に成功!


では早速出会って貰いましょう!




「バルタサール!なんでこんなところにいるんだ?……貴様、ロドリゴか!!?」


フェルナンドがレイラの気配を追って、たどり着いた先には、探していた恋人のバルタサールがいた。

しかも他の男と肌を密着させている。まさに修羅場だ。


「フェルナンド!?お前さんこそなんでこんなところにいるんじゃ!?」


バルタサールも動揺を隠せない。


ロドリゴはフェルナンドを見つめている。


「どういう事だロドリゴ!貴様は俺とバルタサールを引き合わせてくれた恩人だったはず!もしや貴様、まだ頭目の座を狙っているのか!」


説明ありがとう。

フェルナンドの言葉にロドリゴは不気味に笑った。もともと不気味だけど。


「その通りだよ。カシラ……いや、フェルナンド。だがひとつだけ言わせて貰おう。俺からは何もしていない。バルタサールが俺の元へ来たのだ」


「それは、どういう事だ……バルタサール、嘘だと言ってくれ!」


ロドリゴの言葉にフェルナンドは狼狽える。


「……」


バルタサールは黙っている。

2人の想い人に挟まれ気持ちが割れているのだろう。



「……だってお前さんは、わしの気持ちをわかってくれないんじゃもん!!」


バルタサールがフェルナンドに、普段から溜まっていた不満、怒りを破裂させた。


「どういう意味だバルタサール!」


「お前さんは、わしの想いに気づいてくれなかった!わしはお前さんの事を毎日想い続けていた。なのに、お前さんは!毎日、仕事ばかり!こんなの酷いわい!」


「それは、確かにそうだ、すまない!けど、それを告白の時、受け入れてくれた筈じゃ……」


「こんなに苦しいって思わなかったんじゃ!夢みたいに暖かい物かと思ってた。けどそんなのは妄想。実際はこんなに非情じゃった!わしの計算違いじゃ!」


「そんな……」


バルタサールの不満に、心砕かれたフェルナンドは硬直する。


「……なら、今からまた最初からやり直そう!バルタサール、お前の事は第1に考える!だから!」


諦めず、声を震わせながら訴えかけるフェルナンド。そんな彼に、バルタサールから誰もが予想していなかった言葉が吐き出される。


「無理じゃよフェルナンド……!わしのお腹の中にはロドリゴとの子供がいるんじゃ!!」


「なんだとぉおおおおお!!?」


驚愕の事実にフェルナンドは驚いた。



ええええええええええええ!?なんつった今!!?

意味わからん!

何、妊娠って!?

お前、お前らおっさんじゃん!?なんで!??

もしかして独自の進化をしたというのは本当なのか?


以前テレビで知った事だが、例えば魚類には、鯛やクマノミ、ウツボ等、性別が成長過程によって変わったり、空気を読んで性別が変わる個体も存在する。

カタツムリやウミウシとか両性を司る動物も少なからず存在する


ちなみにオスからメスに変わる事を雄性先熟というらしい。

ここは異世界。人間の中にも女がいないので空気を読んで性別を転換するヤツがいてもおかしくないだろう!


……いや、やっぱないわ。おかしいわ!

となりにいるレイラがむせるくらいにおかしいわ!


「大丈夫か、レイラ!?」


俺はレイラの背中を摩り、気分を落ち着かせる。


「ゴホゴホッ……これは駄目(いけん)苦しい(えらい)……ゲホゲホ!」


この世界の住人であるはずのレイラがここまで動揺しているのだ。

普通ではない、超常現象の一種だろう。

何もしなくても俺達の正気が削がれていく。

鳩尺様のくねくねダンスよりタチが悪い。



「そ、そんな……」


フェルナンドの心、ここにあらず。

真実を知ってしまった彼にさらに追い討ちが迫る。


「そういう訳だ、フェルナンド。ざまぁないぜ!バルタサールが俺の子を宿した時点で俺がここの頭だ。お前は全てを失った!」


「そんな……信じられない、バルタサール!もう一度俺にチャンスを!」


「……」


バルタサールは応えない。



よし、時は来た。作戦を実行する。


「レイラ!これで最後だ。おっさんを妊娠させたおっさんの後ろで最高の擬似オナラをぶっ放してやれ!」


今更、女の子に何言ってんだ?と思いながらも俺は彼女に全てを託した。


「わかったで……ちゃんとそこにおってな?失敗したらごめん」


レイラはむせてたせいか目に涙が浮き、俺は盗賊を観察しやすいよう高い位置にいる為、彼女が上目づかいで訴えてるようでかわいい。

これは神が、情けでくれた今回唯一の癒しだろう。



レイラの気配が消えた。

彼女はおっさんを妊娠させたおっさんロドリゴの後ろで、不快極まりない濁音を掻き鳴らす。


ブボボ……!ブリュブリュリr……!


レイラは手から圧縮された空気と共に汚い音を連発した。

連続的に出された汚ねぇ音は、本物の屁の音を凌駕していたと俺は思った。



「!?……ロドリゴォオオオオオオ!貴様、俺の見ている目の前で、下の口でバルタサールを口説くか!!?」


「……は?今のは俺じゃない!フェルナンドじゃないのか?」


「そんな訳あるか!!?」


フェルナンドは激昂し、腰からサーベルを抜き、ロドリゴに斬りかかった。


「やめるんじゃ!」


ロドリゴを庇うようにバルタサールが盾となり、彼の肩から胸、横腹を袈裟懸けに刃が斬り通った。


「ぐふっ……」


「「バルタサーーーーール!!!」」


フェルナンドとロドリゴは叫んだ。こんな結果は2人とも望んでいなかった。


「……なんという事だ。こんなはずでは!おのれ!ロドリゴォオ!貴様だけは許さん!」


「それはこっちの台詞!バルタサールの仇は新夫の俺が討つぞ!」



「なんだ?なんだ?」


「どうしたんだカシラ?」


「キャー!バルタサール殿が血まみれだぁ!」



騒ぎに気づき、ハッテン後の盗賊達や、その他の盗賊が集まりだした。




この盗賊どもは、もともとフェルナンド派とロドリゴ派に分かれていたらしい。


両陣営はこの後、滅ぶ事になる。


完全に俺達の勝利だ。

一度は失敗し、心を病みさえしたが目的は完遂された。


仲間割れ途中のホモ盗賊を尻目に戻ってきたレイラと握手を交わす。


「上手くいったぞな!?……よかったぁ〜」


レイラは呪縛から解放された。

作戦を見事に成功させた事で、トラウマを乗り越えた。


俺とレイラはここから、離れる事にした。


エクスカリカリバーで橋を作り帰りたいが、それを持つヌーターンがどこかに行ったままなので、しばらく川岸に待機することにした。



今回の連載をもって、11月まで約1ヶ月間、休載します。

連載再開の日時が決まり次第、活動報告にて連絡します。

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