第38話 品性ってどこに売ってますか?
ワニよりもヌートリア人族のバタフライの方が速い事が証明され、舟から落ちワニから逃げ切るも、機嫌を損ねてしまったレイラもほんの数分、放ったらかしにしていたら機嫌が直った。
こっちとしてはそれで良いが、お前はそれで良いのか?
「ダイコンよ……、ワタシの勇姿をとくと見たか……!?」
検証を終えたヌーターンが辛そうに肩で呼吸しながら、俺に問う。
「ごめん、ワニの襲撃にあって、結果しか知らない」
俺は正直に答えた。
それを聞いてヌーターンは悲しそうな顔をした。
そんな顔しないで……?ワニに勝ったところは見たから……。
そんな彼に俺は、預かっていたエクスカリカリバーを渡す。
……ん?待てよ?エクスカリカリバーの能力って……。
俺はこのタイミングで思い出した。エクスカリカリバーという聖剣に秘められた能力を。
第2の能力、木材を召喚しダムを作る能力。
第3の能力、木材の加工を簡略的に実行でき、組み立てる事も出来る能力。
「なぁ、ヌーターン?俺エクスカリカリバーの事を、思い出したんだけど……?」
ヌーターンに俺は尋ねる。
「ん?どうしたのだ?」
「わざわざ、川を苦労して渡らなくても、エクスカリカリバーの第2、第3の力を使って、橋でも作れば良かったんじゃねーか?」
俺の言葉に、ヌーターンは俺と目を合わせたまま、情報処理が追いつかないポンコツPCみたいにフリーズした。
「は!?……そ、その手があったな!忘れてたぞ!」
つまり、あんな事をしなくても、建築に於いてチート級のアイテムを使えば、ワニなんかどうでも良い存在だった訳だ。
……前回は、とんだ茶番だったZE☆
・・・
1つ目の問題が無事に解決した。
しかし、これで終わりではない。
問題はもう1つ残っている。
これは、ワニの件みたいに道具で解決する事は出来なさそうなのだ。
それは、俺達の本来の目的、擬似屁によって盗賊達の皆様に喧嘩をしていただき、自滅させる事。
これは、相手を選ばなくてはならないだろう。
いくら盗賊が気の短い連中だとしても、誰が屁をこいたかでもめて、大喧嘩するほど子供では無いのは当たり前。
ここは、手当たり次第でやるしかないな。
「なぁなぁ?いつ頃始めるだぁ?もう準備出来とるで?」
機嫌が直った、バーディア語verのレイラが声をかけてきた。
「あぁ、ちょうど作戦を始める所だ。それより、その手どうしたんだ?わざわざ濡らさなくても、レイラ程の使い手には必要なさそうな事だが?」
彼女は両手を濡らしていた。
濡れた方が音がなりやすい。
しかしこれは自転車の補助輪の様なもの、初心者がやる事だ。
もはや技を極めたレイラには、手を濡らす必要性は無いと思えるが……。
「それじゃリアリティが無いだがな!手を濡らすと本物っぽい湿っぽさが現れるだが〜。
屁以外の何かが出た様な音を出したら不快感は高いけぇ、喧嘩させ易いと思うで?」
そこまで、考えてたのか!?
確かに乾いた音より、湿った屁の音の方が、不快だろう。
彼女の発想は素晴らしいものだ。とにかくすごい……けど引くわ!
「……なら手当たり次第で、やってくれ!俺の経験上、人数は多い方がいい!けど無理するなよ、バレ無いように!」
「問題ないで!これでも私、暗殺者だけぇ安心しんさい!成功させたるで!」
これからやる事を抜きにすると、レイラがカッコよく見え、彼女の言葉には絶対的な安心感があった。
その後まもなく、レイラは俺でも認知できない速度でそこから霧のように消えた。
「あれ、大丈夫なのか?」
ヌーターンが俺に尋ねてきた。
「あんな顔されたら信じるしか無いだろ?ところでお前、俺と一緒に居ていいのか?何か確かめたい事があるって言ってたが?」
ここはレイラに任せるが、俺はヌーターンが俺達についてきた目的について逆に質問した。
「お!忘れてたぞ!では、これより私は単独で行動する!」
ヌーターンは素でここに来た目的を忘れていた様だ。
彼は急いで準備を始め、俺と別れた。
「ちょっと良いかダイコン!?こっち来てーな!」
しばらくして、レイラが急いで戻ってきた。
彼女はらしくもなく、息を乱し動揺している様子だ。
もしかして、失敗?バレたのか?あんなに自信満々だったのに。
「あんな〜、作戦は上手くいっただがー、けどなー予想とは違う展開になった!」
「へ?」
俺は彼女の言葉の意味がわからなかった。
とりあえず彼女について行く事にした。
・・・
レイラが二人組の盗賊の後ろに己の存在を殺し忍びよる。
盗賊のむさ苦しい、毛むくじゃら男2人は気づかない。
ブリリリィ……
屁の音が聞こえた。湿っていてとても不愉快な音だ。
一応、確認しておくが、これは手から空気を押し出す音であって、腸内から出たガスの音ではない。
男達はレイラに気づかない。
レイラは俺のいる所に戻ってきた。彼女の顔色は良くない。
ここまでは順調。
盗賊はもめるだろうか?
「……どうしたバルタサール?下の口から可愛い声を出して?」
ん?今なんて?
「今のは無意識じゃ、けしてお前さん……ロドリゴを振り向かそうとしたわけじゃ無いぞ……?」
……は?
「バルタサール!……やらないか?」
やめないか!
「ロドリゴ!」
「バルタサール!」
「ロドリゴォオオオ!!!」
「バルタサーーーール!!!」
いかんいかん!危ない危ない危ない危ない危ない!
むさいおっさんが、毛むくじゃらのおっさんをその場で押し倒した。
レイラが動揺してた理由はこれだろう。
盗賊は女がいないので、男のみである。
長い盗賊の生物史において、生物が子孫を残すために独自進化し、恋愛対象が男へと変わったのだ!
「いや、そうはならんだろぉおおお!?」
俺は怒り、嫌悪感、絶望感、憎しみとか色々喉から吐き出した。
「ダイコン!気持ちはわかるが、静かにしんさいな!」
レイラに諭される。彼女も顔が少し青ざめている。
ホモが嫌いな女の子は居ないと聞いた事あるが、あんな汚いおっさんの、生BLなんて女の子でもトラウマになるだろう。
逆の立場で言えば、汚いババァの生百合を見せられている様な感じだ。
これは、セクハラではなくパワハラだ。
そこで俺は察した。
ナン・モネーナ村にいる金髪のクッソかわいい女の子達が無事な理由を。
ここに居座る盗賊は、やおい盗賊団だった訳だ。
なら村の女の子が盗賊に攫われない理由も納得できる。
「もしかして、今まで全部あんな結果になったのか?」
「そうだで……」
恐る恐る、俺はレイラに尋ねると、彼女は顔を引きつらせながら頷いた。
「……ちなみにどれくらい?」
怖いもの見たさで、俺はレイラに尋ねてしまう。
「……多分、7回」
「…………多いわ!」
「ごめん」
「なんで、もっと早く確証を持たなかったの?」
「どうしても、信じる事が出来んかった……。きっと次は成功するって思っとっただが?」
「そっかぁ……」
この周辺で7組、最低でも14人が、盛り合っているという訳だ。
「これから、どうするだ?」
「これ以上、地獄絵図の完成を手助けしてはいけない。この場がイカ臭くなる前に避難しよう!急げ!」
作戦は失敗。
変なモノが見えてしまう前に、ハッテン場と化したここから離れる事にした。
・・・
盗賊の頭目、フェルナンドには悩みごとがある。
それは自分の大切な恋人、バルタサールの様子が最近おかしいという事。
頭目という立場、彼を構ってやる事はなかなか出来ないが、それを了承した上でフェルナンドとバルタサールは結ばれた。
「バルタサールめ!アイツ絶対他の男と懇ろな仲になっているに違いない!この俺はお前の事を常に想っているのにッ!今日こそ、ヤツが浮気してる証拠を掴んでやる!」
フェルナンドはバルタサールが最近、他の男と出会っている噂を聞いた。
心辺りはあった。
最近、自分に対してバルタサールの態度が冷たいのだ。
フェルナンドは真意を確かめる覚悟を決めた。
どんな結果になろうと彼は引く気はない。たとえ恋人が他の男と密会していても、知らないふりは出来ないのである。
「良い事、聞いたぜぇ……」
付近をたまたま通っていた動く大根、ダイコンデロガは、フェルナンドの独り言をたまたま聞いていた。
「作戦再開できそうだ。ひとまずレイラの容態が回復しだいだな」
レイラには刺激が強すぎた。
あの状況を7回も引き起こしてしまったショックで、彼女は貧血で倒れた。
ダイコンデロガでさえも、野菜エネルギーを一定値失う程ショックを受けたのだ。
鳩尺様に次ぐ手強い相手だが、ダイコンデロガは盗賊の攻略法を今、完成させた。
「レイラの努力が無駄にならなくてよかった。あの作戦のままでよさそうだな……」
今度は絶対に上手くいく。そうダイコンデロガは確信した。




