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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・大根転生編
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第4話 トトンヌ、死す!今こそ、決着を……

私の元に村から、魔術による緊急の電報が届いた。


それは『ネスノ村に、魔物の大群が現れた』というものであった。


我々ネスノ護衛団は、村近辺の魔物の発生を知り、

今日は朝から魔物の討伐を続けていた。


村からは少々距離があるため、報せを受けても団員を皆、連れて行く訳にもいかない。それに普通に急いだ所で間に合わないだろう。


一応村には、ジェイクと言う魔術士のくせにガタイが無駄に良く、腕もたつ男がいるが、奴は腹をよく壊す。


おまけに、魔物の大群だ。彼一人では、まかなえない。


行ける人間は限られていた。元々、魔物の出現という事象自体少ない地域だった為、小隊程の規模しか無く、団員は少ない。


結局の所、行けるのは団長である私だけだった。

私は雷の力を宿した聖剣の力によって音速を超えた移動が可能であったからだ。


団員の心配をすると、副団長のシオンとトムに「はやく行け」と怒鳴られた。


「あ、そうだ!団長!」


「ん?どうかしたか、シオン?」


副団長の一人、シオンが私を呼び止めた。


「一応だけどよぉ……その剣から絶対に手を離すなよ

絶対無いと思うけど!

まじアレがヤバいんだから団長は!……気を付けろよな!?」


彼女は私の事が心配らしい。


もっとも、私はそんな事は百も承知である。自分の事くらい自分で管理できる。


「問題無い。シオンも無理するなよ……」


私はそれだけ言うと馬にまたがった。


私はネスノ護衛団長クレア・フィンバック。これより、ネスノ村の応援へと向かう。




ネスノ村に戻ると、至るところに大根が散らばっていた。


私と交友関係のある少女、ミーナに事情を説明してもらった。


大根が魔物となり襲ってきた事。


その大根のうち1匹が村を救った事。


その後の話は、案の定トイレに篭っているジェイクに、事情を聞いた。


彼は村を救った大根と共に黒幕のヌートリア人族を倒したと語った。


どうやら私の出番は、なかったらしい。


そこでジェイクとミーナにお願いをされた。


「例の大根が姿を見せないから様子を見てきて欲しい」と。


私は彼がいると思われる、村から少し離れた場所へ行く事にした。




・・・




俺は確信した。


今、トトンヌは油断している。裏切るには、最高のタイミングであると。


作戦はこうだ。


奴は魔術とやらに関しては恐らく、上級者なのだろう。


そこで俺が、根っこ触手を使い

この異世界に存在するかどうかは、全然わからないが『召喚』を実行する事を提案し、トトンヌを指定の位置に呼び止めておく。


そこには俺の根っこを忍ばせてある。

意識がこちらに向いている間に、それで縛って、奴をギャフンと言わせてやるのだ。


トトンヌはバカなので、細かい事は場合によって対処すれば良い。


何故、召喚かというと『罠への誘導が楽そうだ』という俺の感である。別になんでも良いのだが。



「やぁやぁ、トトンヌの旦那ぁ! 少し見てもらいたいモノがあるでやんす!」


自分自身でも、意味の分からないテンションでトトンヌに駆け寄った。


「な、なんだ……? 気味悪いなぁ」


少し引かれた。


悲しい。


「召喚術を、扱えるようになったので、見てくれないかな?……かな?」


緊張のせいか、学校帰りにゴミ漁りに行きそうな少女の口調になった。


「召喚術だと!?……やはり貴様はただの大根では無いのだな。

我ら、偉大なるカピバラ人族の仲間にも一人しか召喚術を、扱える者はいないものだ。……良いだろう、迎えが来るまで、暫し時間はある。 それに我も興味がある! 貴様の召喚術を見せるが良い!」


トトンヌは予想を良い意味で裏切ってくれた。

まさか、ここまで興味深々に食らいつくとは。


この世界の『召喚』という物は、俺が想像してたよりも、凄い物らしい。


勿論、俺は召喚術(そんなもの)など出来ない。


ここまで作戦は順調。


トトンヌを指定の位置に誘導し、俺は根っこ触手を『ズズズッ……』と全身から生やす。


その絵面に、トトンヌは少し身を震わせていた。


まぁ、無理もない。実際、気持ち悪いと言う事は、俺も理解してるつもりだ。


「だ、大丈夫なのか……!?」


トトンヌが俺を心配しだす。


本当は良い奴なのかもしれない。だがしかし、今の俺はこのカピバラもどきの、ヌートリアを捕獲。あるいは駆除することしか考えていない。


あの少女を泣かせた事を後悔させてやる。


「それでは、お見せしましょう!」


トトンヌの意識がこちらに向いて居る事を確認し、奴の背後に、予め仕掛けておいた根っこ触手をバレないように、近づける。


「ー来たれ龍神。我が声に応えよ。我が肉体を喰らいて顕現せよ!ー』」


適当にそれっぽい詠唱をして見る。


……。


「お! あれか」


トトンヌは村の方を指差していた


……え?


召還など出来る訳ないのだが?


まさか俺にそんな力が……!?


俺もそっちに目線を移した。


……。


うん、なんかいた。


どこから、来てるんだ……アイツは?

普通は、術者の近くに現れるもんだろ。


……でもまさか、適当な詠唱で呼び出せるとは。


とりあえず、新能力の覚醒である。


やったね。




それは騎士だった。


青と銀で彩られた、ゴツめの鎧を纏った騎士が馬に跨り、こちらに向かって来ていた。


……が、様子がおかしい。


その騎士は剣を鞘から抜き、こちらに突進してきた。


抜かれた剣に青白い稲妻が、まとわりつく。


……あ、これアカンやつや。


おそらく、適当な詠唱で呼び出されたことに怒っているに違いない。


適当詠唱の『我が肉体を喰らいて』と言ったところが、悪かったのだろう。

何せ、大根食べても、面白く無いだろうし……。


騎士は稲妻が巻きついた剣をこちらに振り下ろす。


轟く雷鳴が聞こえるより先に、トトンヌは飛んできた斬撃により、後方へと飛ばされた。


トトンヌは5、6回、ボールみたいにバウンドした後に地に伏せ、動かなかなった。


「えぇ……なにこれ? えぇ……」


予想外過ぎて困惑するわぁッ!? こげな事ぉ!


騎士はトトンヌが動かなくなった事を確認すると、こちらに視線を向け、馬から降りてきた。


次にそいつは俺に剣を振り下ろす……事はなく、ただ兜を脱いだだけだった。


その騎士は、黒髪の綺麗な女だった。


ポニーテールなのは個人的に高得点。


おまけに、執事の格好など男装が似合いそうな、凛とした顔つき。現に今の鎧姿は好きだ。大好き。


しかし、その凛とした表情は、視線で突き殺されそうな殺気を帯びているように見え、俺は距離を取る。


彼女も俺の動きに合わせ、一歩ずつ近づいてくる。


見た目大好きだけど、怖い!


「そ、しょれ以上(イゾ-)近づくんじゃねぇ……!」


俺は予想以上にビビっているのか、声がかすれ滑舌が悪くなっていた。


彼女が「?」という顔をしていたが、この時の俺にはメンチを切られた様に見えた。


ここで言う台詞はただ一つ。今の俺は()()()()()

そして、相手は生前に『薄い本』でお世話になった女騎士……。


俺は更に、数歩退がる。女もそれに合わせ近づいてくる。


……今だ。


「それ以上近づいてみろ?」


ここで一呼吸入れ、続けて。



俺は、貴様を(オレア,クサムヲ)『くっころ』す!(クッコロス!)


出来る限り、目と鼻の穴を全開にして叫んだ。


「…………プッ」


受けた。恐らく顔が勝因だろう。生前、練習してて良かった。


大きな隙が生まれた。


今だ!と言わんばかりに、地中に忍ばしていた根っこ触手で女を縛り付ける。


俺があの台詞を言いたいが為に後退してた訳じゃ無い。全ては作戦のためである!


……。


……嘘つきました。

七割はあの台詞を言いたいだけでした。


すみません。



「「なんだ、これは!?」」


声が二つ重なった。


一つは触手によって縛られた女騎士の物。


もう一つは、斬撃を貰って動かなくなったと思っていた、トトンヌの物だった。


「トトンヌさん……、平気で?」


俺は恐る恐る尋ねた。


「平気な訳が無いだろう!死ぬかと思ったぞ!」


その割には元気な、トトンヌ。彼は地団駄を踏んでいる。


ほんとコイツ、ヤベェな……。

早く手を打たないとこっちの身が危険だ。

アレを間に受けて無事とはな。

ジェイクの攻撃は魔術で防いだ様だが、今回はどう見ても直撃。


とりあえず、トトンヌは俺が裏切った事には、まだ気づいていない模様。


本来、トトンヌをハメるはずだった罠には、俺が召喚したと思われる『とんでもくっころ騎士』が収まっている。


「お、おい!?どういう事だ?……話が違うではないか!?」


くっころ騎士はこの状況に理解が追いついていない様子。


俺自身、理解できてないし。


「私はジェイクとミーナから村を救った英雄、大根の様子を見てくるよう頼まれただけだ!」


へ?


つまり、コイツは俺が召喚した訳ではなく、たまたまタイミング悪く、勘違いしてただけのようだ。


「まさか、貴様らグルなのか!?」


おっと、ここまで言われると面倒くさい事になる。


「……違うんです。騎士様。私はこのヌートリアに脅されているんです!」


「「!?」」


俺の、でまかせにトトンヌと騎士が同時に驚いた!


「は、話が違うではないか!?休戦したはずだろ!」


トトンヌが声を荒げる。どうせ、最初から裏切るつもりだったのだ。……許せ、トトンヌェ。




……いや、待てよ? この二人で遊んで見よう。


俺はトトンヌに耳打ちする。


「法螺を吹かなきゃ、こっちの身が危険ですぜ。隙を見つけて倒しますから、時間稼ぎ頼みます」


「……そ、そういう事か!わかったぞ!」


今度は騎士に一言、耳打ちする。


「こんな事になったのも、トトンヌっていう、薄汚いヌートリアの仕業なんだ……」


「なんだって!? それは本当か!?……やはりそういう事だったのか!

そういえば、紹介がまだだったな。 私はネスノ護衛団団長、クレア・フィンバックだ。」


「俺は大根だ。名前はまだ無い。」



トントン拍子に事が進み、俺は首の骨を折られても仕方ないくらいの、邪悪な笑みを浮かべた。


面白くなるぞ。これは!



・・・



その頃、ネスノ村のジェイクは、クレアの帰りが遅い事に何かあったと、感づき始めていた。


「あの、ヌートリア……。アレをまともに食らって生きてたかぁ。スゲーな」


他人事のように言っているが、彼は現在トイレで己と戦っていた。


昨日食べた猪肉が、あたったのだろう。

いつもトイレに行く回数は他人よりも多いが、今日は朝からほとんど篭っている。


先ほど、大根の援護をした時だけ腹の調子は安定していた。

だが、今は再び、トイレの中だ。

トイレから、出ては入って、出ては入ってを繰り返している。腹の調子が安定しないのだ。


妹のミーナも彼を心配する程に。


「……クレア団長、そして名も知らない大根よ。俺は援護に行けない。二人で頑張れ。」


ジェイクはそれだけ呟き、己との戦いに戻った。



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