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第32話 漁夫の利っていいよなぁ?


鳩尺様の第2の能力。

体を左右に波のようにくねくねと揺らし、それを直視した者を発狂させる力がある。


俺もシオンも、くねくね鳩尺様を直視した為、満足な力は扱えなくなってしまった。


恐らく刻甲の作戦だ。

物理的に俺に勝てないと知り、精神面を攻める事にしたのだろう。


鳩尺様の幻にうなされる事は無くなったが、赤筋大根の力を解除しなくてはならない程、精神は疲労した。


ただ、シオンと違い、それだけで済んで良かった。

大根だからかどうかは知らないが、彼女みたいに項垂(うなだ)れる事が無くてよかった。


力が抑制された事以外は良好。それが重大な欠陥である訳だが……。


今や、ブラック(B)ヘッド(H)スナイパー(S)だけ無事なのがせめてもの救い。


シオンのほっぺをつねってみると、彼女は意識を取り戻してくれた。


「おい、シオン!?調子はどうだ?魔術は使えるか?どうだ?」


「ん……あ、あいっ!オレもそろそろやってやるっすよ!自分でも今まで情け無いって自覚してるんすけ……」


「んなこと今はどうでも良いんだよ!魔術が使えるかどうかって聞いてんだよ!」


俺の主観だが、シオンの容態は顔色が悪いだけで、大丈夫そうだ。

くねくねダンスによる精神汚染は一時的のようである。


「も、問題無いっす!ただ、今の状態では、詠唱しなきゃ無理っす!」


魔術を扱う時には詠唱が必要、というのはこの世界においては半分嘘である。


ジェイクやトトンヌ、ヌーターンを思い出して貰ったらわかる通り、呪文を唱えたりしなくとも掛け声で魔術を使う事も出来る。

普通は、呪文を唱える事が魔術発動のための魔力の出力の確認や調整となっている。

だが、魔術を使い慣れている者はそのプロセスは必要としない。

掛け声については、より多くの魔力を込めるため、気合を込めるという意味合いがあるらしい。


シオンも使い慣れた魔術ならば、詠唱しなくとも使えられるらしい。

ただ、今は鳩尺様のくねくねダンスによって精神状態が弱っている。そのため詠唱に時間がかかる。


ちなみにこれらの情報は、この森に来る途中にミーナちゃんとシオンに聞いた話だ。

覚えたての情報は誰かに一方的に語りたいものだ。


「出来るなら問題ない!アレを使う準備を今からしてくれ!」


「了解っす!」


シオンは呪文を聞き取れない声で唱え始める。


これは教科書通りの実用性の無い発動方法らしいので、やる者は少ない。ただ失敗する事はなく、確実なので今のシオンには適している方法だ。


あの大雑把なシオンが、堅実に物事を考えてる……

なんか我が娘の成長のように嬉しい。

……まてまて、俺そんなに年とってない!まだ未成年やぞ、一応。


「ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ!」


精神面が弱体化した俺にトドメを刺すため、鳩尺様と刻甲が、今度は飛んできた。

やっと、走る事は効率が悪いと気づいたらしい。


鳩尺様は俺達の後方に着陸し、追いかけて来た。


……結局、走るんかい!?




・・・




まちょにとどめを刺さず放置して、ミーナちゃんを救うはずが鳩尺様からまた逃げる。


一体何したいか分からない行動にも意味はある。


俺らは現在、再び森深くに逃げている。

鳩尺様も刻甲も素直に追いかけてくれる。

しかし先ほどと違い、鳩尺様の速度は早くはない。



ミーナちゃんを救う為、彼女を探していた時の話だ。


ミーナちゃんの身元が不確かなので鳩尺様を倒せたとは、思えなかった

そして俺は、シオンが扱える魔術の事を聞いていたので、意識を取り戻した彼女に提案した。



『閃光飛ばす魔術で、鳩尺様を無力化させることは出来るか?』と。


ネッコボルグだの物理攻撃は効かないので、間接的に傷つけるか、無力化させるかの2つに絞っていた。




そして、今がその時。

追いかけてくる鳩尺様の目が赤く光り、視界が悪い森の中でも俺達を確実に追いかけてくる。


「シオン、作戦通りやれるか?」


「な、なんとか大丈夫そうっす……!準備は万全っすよ!」


おし、それなら良い。


鳩尺様のくねくねダンスによって、シオンの精神状態は極めて悪い。


「そろそろ、あの場所だ!構えろシオン!」


「了解っす!」


俺達は目的地に着いた。ここでけりをつける。

鳩尺様はバカ正直に追いかけてくる。



俺はシオンに合図を出した。


シオンは魔術を唱え始めた。


鳩尺様と刻甲は、薄暗い森に突如現れた閃光に襲われる。


「小癪な、往生際が悪い!……何ぃ!?」


「ポポポポポポポポポポポポポポポ……ポォーッ!?」


2人は、閃光をまともに見てしまい。鳩尺様は態勢を崩した。



そんな彼らを待っていた物は、目の前に迫っていた崖だ。

フラッシュによって俺達から目を離したのが仇となり、道を外れ崖へと突っ走っていったのだ。


「ポポポポ!?ポポ……ポォーーーーッッ!??」


刻甲と鳩尺様は止まろうとするも、木の根に足を引っ掛けてしまい、ごろごろと転び、木にぶつかりながら崖の下に転落していった。



さて、この崖の下がどこかと言うと、俺達が迷い混んだ場所なのだ。


つまり、魔猪(まちょ)がいる。

赤筋大根の力を解除したため、根っこ触手の弱まった拘束力では、まちょは手に負えない。


今頃、崖の下のまちょは、怒り散らしているだろう。


「デロ先輩!?上手くいきましたよ!見ました?俺の魔術……うっ!?」


「はしゃぐな、赤毛虫!見所はここからだ。望遠鏡で様子を見とけ!」


はしゃぐシオンのほっぺを摘み、黙らせる。

俺は鳩尺様とまちょの戦いを近くで見るため、崖を降りた。




・・・




崖の下、鳩尺様とまちょがエンカウントした。


というかまちょの方が反応が早かった。


落ちてくる鳩尺様に合わせる様に、まちょが突進してきていた。

とてもカンカンらしい。


「ポッポッッッ!?」


お見事。まちょの体当たりによって鳩尺様が飛ばされた。


鳩尺様を攻撃した代償で、まちょは無数の手に掴まれるがその巨体には無力。霧の中に引きずり込まれる事は無かった。



「……こやつは、魔猪!?そうか、この森の魔獣ですね」


刻甲は目の前の状況を理解し、すぐさま行動を開始する。


「御仏となれど幾度と勘違いされれば、羅刹となりて三千世界を穢すでしょう。……痴禁布位礼尾 佗呑陀野尼 布位礼尾布位酒餓鬼他……許せん!」


刻甲が呪文を唱えると彼の身体が大きくなる。

服は破れ、人間の身体がみるみる内に筋肉の塊と化す。


刻甲の体型が、海外のアニメ(カートゥン)でよく見る逆三角マッチョへと変貌した。


とても下半身が弱そうである。


「うぉおおおお!?」


刻甲(マッチョ)がまちょを殴る。


「ピギィァアアアア!??……ブォオオオオオオオ!」


まちょも殴られて怯むも、態勢を立て直し刻甲に体当たりする。


「ポポポポポポポポポポポポ、クルッポ〜!?」


鳩尺様がまちょに忍び寄る。


まちょが態勢を崩した。

鳩尺様の周りの植物が全て枯れていた。

それは魔獣であるまちょに対しても似た事が起きる。


まちょの後ろ足が腐食していた。


四輪駆動(4WD)の動物にとっては一本の足だけでも使えなくなる事は致命的。


「ブォオオオオオオオ!!」


それでもまちょは止まらなかった。

刻甲と鳩尺様に立ち向かっていく。



「とても良い勝負じゃないか!感動的だなぁ、だが無意味だ!」


俺は満面の笑みでこの戦いを見ている。


鳩尺様と刻甲vsまちょ、勝つのはどちらか?


「答えは俺だ!?」


漁夫の利っていいよなぁ?

戦いに参加せず勝つこの時を待っていた。


ミェルニルを構え、再び赤筋大根に変化する。


鳩尺様のくねくねダンスによる呪いが解けるこの時を待っていた。


どうやら赤筋大根は精神攻撃に弱いようである。

だが、今は離れてるから安心!


根っこ触手を出来るだけ多く伸ばし、切る。

無数のネッコボルグを生成する。


ヌーターンの時にもやったネッコボルグの雨を、あの3匹(?)に食らわすのだ。


赤筋大根の力が加わり、強力な物へとなっている。


さっさとミーナちゃんを助けよう。命符の色はグレイ。


大量のネッコボルグを形成させ、激闘を繰り広げている3匹へ、槍を降り下ろした。


ネッコボルグ(覚醒)なんて無くとも、とりあえず赤筋大根の圧倒的パワーで押し切れるだろう。

超野菜人になって界○拳使えば強いんじゃね?的な発想である。


槍の雨に襲われた結果、木々が倒れ、砂ぼこりが上がる。


「うわぁ……やり過ぎちゃった」


自分でやっておきながらドン引きする。

遠くで観戦しているシオンも口を開け驚いている。


だって、ここまで強いとは思わないじゃん?


これは赤筋大根の破壊力を想定していないこの森サイドに問題がある!俺は無罪!何も悪かねぇ!


呑気な俺の足元に、砂煙とは別に黒い霧が迫っていた。


「あっ……理解できたわ」


「ポポポポポポポポ!?」


霧の中から鳩尺様と無数の手が現れた。


赤く蛇のような眼に睨みつけられているのがわかる。


だが、問題ない!俺はミェルニルで鳩尺様を殴る。


あれ、当たらない?


「ポポォ〜??」


よく見れば鳩尺様が透けていた。

コイツは力が限界なのか、消えそうだ。

最後の抵抗として、全力を尽くし、俺を殺しにきたのだろう。


「ポ!ポポポ!クルッポ〜!ぽっ!!」


鳩尺様に(つい)ばまれる。


「痛い!やめろ!」


抵抗するも、こちらの行動は全部すり抜けてしまう。


絶対絶命である。


そこで俺は近くに岩を発見した。


根っこ触手を伸ばしネッコボルグで、その岩を思いっきり引っ掻きまわす。


ギギィイイイイイ!!と嫌な音が鳴った。

この音は、黒板を引っ掻いた時の不快な音に似ている。

小さな頃、鉄の破片で岩を引っ掻いたらどういう原理かは知らないが、たまたまこの音が鳴った事を思い出したのだ。


閃光による目眩しが効いたのだ、ならば他の感覚器官にも有効的なダメージは与えられると俺は考えた。


「ぽ、ぽ、ぽ、……ぽっぽぉおおおおおお!」


予想通り、聴覚への攻撃は絶大な効果を発揮した。


鳩尺様に纏わり付いていた黒い霧が吹っ飛び、透けていた鳩尺様が実体化した。


鳩尺様から身を守る術が全て剥がれた。

この時を狙っていた。

俺はミェルニルで鳩尺様の顎を、かち上げるように殴り飛ばした。


「ポッッッッッッッッ!!!?」


鳩尺様が真っ逆さまに崖下へ転落していく。

ここに来てミェルニルの効果が発動し、鳩尺様が纏っていた霧は蒸発して消えた。


「ポポポポ……くるっぽ〜!!!」


鳩尺様は崖下へ転げ落ちると時間差もなく、突如大爆発した。


「えぇ……!?」


黒い霧が撒き散らされる。


無数の破片が黒い爆炎を貫き、ロケットの様に弾け飛んでいる。

このトゲトゲしい爆破はセメント爆破って奴だな!間近で見ると凄く迫力がある。


憎めない見た目をしていたが、鳩尺様を倒す事ができた。


しかし、鳩尺様に取り込まれたミーナちゃんやその他大勢は出てこない。

最悪、瓦礫の下敷きになってしまっている事もありえるので、シオンと共に捜索しに崖下へと向かうことにした。




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