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第28話 禁術andぽっぽー!


鳩尺様に追われ森を駆け、坂を登り降り倒れる樹を、崖を飛び越える事で、少し差を広げる事が出来た。


「私が囮になります!」


「「え?」」


そんな中ミーナちゃんが囮になると言ってきた。

俺もシオンも困惑し目を丸くして驚いた。


「私、思ったんです。このままだとブラック(B)ヘッド(H)スナイパー(S)ちゃんでも体力が尽きちゃいます。デロちゃんの攻撃が通用しないとなると、今私が行くしかないんです」


「勝算はあるんすか!?なんならオレも一緒に……」


「デロちゃんでも歯が立たないのに、猪戦法のシオンさんじゃダメです!シオンさんはデロちゃんのアシストをお願いします。私は兄ちゃんに呪いや悪霊の対処法を教わってるんです!私の読みが合ってるなら、足止めできます……」


シオンの発言はミーナに辛辣に遮られる。


果たして本当に足止めできるのだろうか?

安易にできるなら、もっと前に発言するはずだが。


「本当に大丈夫なのか?」


「はい。さっきまでじゃダメだったんです。けれど今なら多分……いや、絶対上手くいきます。

……そうだ、これを持っててください」


俺はミーナから真っ白な札を貰った。


「それがあれば私の安否が分かります。もし真っ黒になったら私は死んだという事です!」


それだけ言うとミーナは微笑み、走る馬から飛び降りる。


「ちょ!おま!?」


「シオンさん!?危険だと思ったら逃げてください!」


「……」


シオンの呼びかけに、ミーナは何も言わなければ振り向きもしなかった。


「……デロ先輩!?」


「……ここで止まったらミーナちゃんの覚悟が無駄になっちまう。今は少しでも遠くへ逃げる。もしもの時の対策はその時考えよう」



ミーナちゃんは本気を出せば、俺やクレアでさえ手を出せない狂気の化身だ。

だが俺は彼女の事が心配だ。しかし、もう止まれない。

彼女のためにも今はただ逃げるのが良い。




・・・




(ミーナ視点)


禁術というものがある。


禁術とは、あらゆる生命の霊魂を支配する魔術の一種。

私の知る限り、どこの国の法でも禁忌とされている。


しかし、稀に使う者がいる。

大根を魔物にしたあの時のヌートリア人族がそうだ。

禁術を扱う者は少ないし、対抗できる者は更に少なく皆無といってもいいかもしれない。


また、あのヌートリア人族のように禁術を使う者が現れてもおかしくないと私は考えた。


私はみんなと違い、人の手伝いとか畑仕事しかできないのが嫌で、たまにクレアさんや兄に、色々と教わっている。


私は、私を村を助けてくれたデロちゃんに恩返ししたい。


彼は文字が覚えたいらしく、教えてあげたら喜んでくれた。

彼には名前が無いらしく、命名してあげたら喜んでくれた。

そんなデロちゃんに恩返しがしたい。

私を守ってくれたデロちゃんに認めてほしい。



そこで私は兄に頼んだ。禁術の会得を。

兄、ジェイクなら、その手の話を知っていてもおかしくない。


案の定、禁術の会得方法を兄は知っていた。


でも教えてくれる訳がなかった。怒られた。


けれど、兄は私の心情を察してくれたのか、代わりに禁術に対抗できる術をくれた。術というより魔道具だけど。


そして今、その魔道具を使う時が来た。


あの鳩尺様は召喚される際、冒険者の人達を飲み込んだ。


時々、兄から禁術について教えて貰ったから、鳩尺様が禁術による顕現だとわかった。

あれは取り込んだ命の数だけ強大化する召喚霊の類。

取り込まれた人は、すぐには死なない。

少しずつ、命を吸われ朽ち果てる。

それまでの時間がどれくらいかはわからない、



デロちゃんは数日前に村を救っている。

その時の侵略者、ヌーターンの扱う『機械仕掛けのヌートリア』は無機物に命を吹き込むゴーレム生成魔術という物を発展させた禁術だと、兄は言っていた。


なのでデロちゃんは禁術の対策を見つけているかと思っていた。

けれど、あれとこれはまた別物。

対策が同じな訳がなかった。


けれどそれで良い。


私は待っていた。

デロちゃんに恩返しをするこの時を。


私達はしばらく、鳩尺様からとにかく逃げた。


早めに仕掛けてはいけない。


鳩は本来、走るための身体の作りはしていない。

歩く時は体の重心を保つために首を振る


鳩尺様は鳩でありながら、鳩の在り方を否定している。

高速で頭を振り、馬に追いつくほど細く短い足を回す。いくら召喚霊といえど、負担が無いはずがない。


そして時は来た。

デロちゃん、シオンさん、BHSちゃんと私は別れる。心配をさせないように札を置いて。



私は、兄から貰った魔道具を取りだした。


「ポポポポポポポッポー!ポポポポポポポポポポポ」


鳩尺様が突っ込んでくる。


「お嬢さん!?そこを退きなさい」


「嫌です!」


鳩尺様の背に乗る刻甲に私は、魔道具【封玉】を投げつける。


「なにをしようと無駄です!さっき貴女も見たでしょ!」


私は自然と笑みがこぼれた。

当たらないと確信し、その封玉を避けようと鳩尺様も刻甲も思ってなかったから。


「ふふ……私の私達の勝ち」


「何!?」


「ポッポォ!?」


封玉は鳩尺様の胸に当たった。


その瞬間、鳩尺様を包んでいた瘴気が消え、頭の奥に突き刺さるほどの高音が鳴った。


「ポッッッッッッッッポッ!!?」


鳩尺様は喉から息を弾かせ、勢いよく近くの樹にぶつかった。


「クックドゥドゥルドゥー!……お嬢さん、貴女何をした?」


刻甲が困惑した顔で、私を問い詰める。


「ちょっと力を封じさせて貰っただけですよぉ」


封玉には、禁術の力を封印し弱体化させる能力がある。


封玉に当たった鳩尺様の召喚霊としての力を消したのだ。


霊としての力を失えば、馬に追いつくほど細く短い足を回せば砕ける。


それと同時に頭を振れば脳震盪によって脳は負担を負い、最悪潰れる。

ただの鳩になった事で蓄積されていた負担が鳩尺様自身に襲いかかのだ。


「ポ……ポ…………ポポ」


足をもつらせ木にぶつかった鳩尺様は体がピクピクと震え、白目をむき泡を吹いている。


「なるほど、大体理解できました!封玉ですか、良い代物を持っているんですね。凄いですよお嬢さん」


鳩尺様の胸に減り込んだ使い済みの封玉を刻甲は愉快そうに持つ。


「でも、残念でしたね?お嬢さんももう助からない」


「承知の上です」


刻甲の言葉の意味はすぐにわかった。


足元が黒い霧に包まれ、無数の手に捕まれる。


こういう事は予想済み。召喚霊によっては傷付けると呪い殺される事があるようだ。


「霊としての力は無くなりましたが、鳩尺様の力は健在です。貴女は鳩尺様を傷つけた。これは恐ろしく罰当たりな事です。貴女は強制的に鳩尺様の力になってしまうんです……悲しいですね」


やっぱりそうだ。

私は特に焦らなかった。

先の冒険者と同じく、鳩尺様に囚われてしまうが『霊としての力は無くなった』と刻甲は今言った。


つまり、デロちゃんでも攻撃が通用する事になったといこと。

例え、私の様に罰が当たろうが、あのデロちゃんなら負ける事は無いと私は思う。

恐怖なんてない。寧ろ、デロちゃんの力になれて嬉しい。

そう考えていると、無意識に笑えてくる。


私は安心しきり、黒い霧の中へ沈んだ。




・・・




(重巡ダイコンデロガ視点)


俺とシオンはミーナと別れた後、森の奥地に到達した。


辺りは大木が生え、その表面には苔。地面にも苔、あと草。

上は葉に覆われ、木漏れ日が緑の世界を照らし、黄金色に見える時もある。


そんな幻想的な景色に魅入るほど俺の心は浮つかない。


「デロ先輩!?ミーナさんの様子はどうっすか?」


俺とシオンは彼女から貰った白い札を何度も見ている。


「よし白だ!」


「白っすね……」


ミーナと離れ数分が経つ。


この札は魔力を記憶し、その魔力の主の生存を離れていても確認できる命符(めいふ)という優れ魔道具らしい。


シオンやクレアもこれを持つ事は珍しくないとか。


ミーナと離れ時間が経ち、札が白のままという事は作戦は上手く行ったようだ。

鳩尺様も刻甲も追いかけて来なくなった。

危機はひとつ解決したと思って良いだろう。


とりあえずミーナに再開したら彼女には感謝しなければならない。



再開できればの話なんだが。


「シオン?帰り道分かりそうにない?」


「わかんないっすね……」


ひたすら森を逃げ崖を跳んだり曲がったり、時には潜ったり登ったと思ったら降ったり、そんな事を繰り返していたら、よくわからない現在地に着いたのだ。



「そういえば魔物見ないな、どこいったんだ?」


「さぁ、どうなんすかね?そもそもさっき戦った魔物どもは本来ここら辺にいる訳がない種なんすよ……野菜獣大根が発生したあの日に魔物狩りしてた時と同じっす!……不気味」


「そうなの?」


「そうっす!」



ここから出るための道を探す。

俺は根っこ触手を使い周辺50mを探索する。


シオンは根っこ触手で見つけた怪しい箇所を調べる事にした。



「デ、デデデ、デロ先輩!ヤベーの来るっす!逃げて!」


「へ?」


手分けて探索してちょっと時間が経った頃、シオンがこっちに向かって走って来る。何かに追われているらしい。


「……いや、こっちくんなよ!バカァ!」


「って言われてもー!」


木がなぎ倒される。地が揺れ、葉の雨が降る。


何か巨大な黒い物体がこちらに突進しきている。


大きな体に長く鋭利な2対のねじれた牙。ケツには小さな尻尾。


……象さんかな?長い鼻は見えないな。

……頼む!象さんであってくれ!パオーンと鳴いてくれ!


「ブォオオオオオオオ!!!」


象さんであって欲しかった奴が俺らを見つけ雄叫びをあげる。


「デロ先輩!あれは魔猪っす!おそらくこの森の魔獣は奴で間違いないっすよ!ちなみにドラゴンと同じクラスの強さっす!デロ先輩、やっちゃってください!」


「……」


「デ、デロ先輩??」


「うわぁああああああああ!?」


恐怖心、俺の心に恐怖心。


「デロ先輩、どうしたっすか?……てか待ってぇ!」



「猪はアカン!逃げろ!(ヤツ)から逃げろ!殺される!勝てる訳がないよ!もうダメだ、お終いだぁ!死ぬぅ!みんな死ぬぅ!」


「デ、デロ先輩……?」



トラウマが蘇った。


人間だった最期の日。あれは自分が完全にバカだった故の過ちだとわかっているからこそ、猪が怖い。


シオンが何か叫んでるが、聞こえない。

ただ猪から逃げる。それしか俺の頭にはなかった。




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