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第27話 最恐の召喚霊、鳩尺様 [挿絵あり]


ブラック(B)ヘッド(H)スナイパー(S)によって、大事なトコロを粉砕された兄ちゃん達に黙祷を捧げてから、この森での状況は変わった。


魔物がうじゃうじゃと湧いてきた。


10mを超えるムカデとか、その倍の長さと太さを誇る紅い大蛇とか。


初めて見た時は、あまりのキモさに絶句した。


その他にも、デカいハエとか、サーベルタイガーみたいな奴らに襲われた。あと俺は巨大蛙に喰われた。


でも、熱いバトル展開とかそういうの無かったの!


だって魔物達(あいつら)弱いんだもん!

今まで戦ってきた奴らの方が圧倒的に強い。


見た目はふざけているが、ヌートリア人族とか巨大ヌートリア、もっと言えば野菜獣大根の方がここの魔物より強かった。

見た目は厳つく強そうなここの魔物は、野菜獣大根よりもゼンゼンヨワイー!


ムカデや大蛇は俺が根っこ触手で縛り、その間にシオンが大剣でぶった斬ったら死んだ。

サーベルタイガーみたいな奴にはネッコボルグを投げつけたらショック死した。


俺を食った蛙の体内で土に潜るあの技、大根ドリルスピンをしてみたら、安易に脱出できた。

そして蛙は腹に穴が空いて死んだ、ごめん。


という訳で俺ら3人には、特に被害はない。


もちろんミーナちゃんも活躍してる。

返り血や蛙の体液で汚れた俺とシオンを魔術で洗浄したりして。


少し離れているところでも、他の冒険者が魔物と戦っている。

しかし俺達と違い、時間をかけ数人で魔物1匹を攻略している。

五分五分の戦いだ。


彼ら冒険者が魔物(ザコ)の相手をしている隙を突いて魔獣(ほんめい)を探す。



しかし、いつになってもそれらしい魔獣を見つける事は無かった。

魔獣の外見はアバウトにも分かっていない。もしかしたら、倒した魔物の中に紛れて殺ってしまったかもしれない。

他の冒険者も諦めムードである。


そこで新たな問題が生じる。

さっき(あん)ちゃんが俺を狙っていた。

魔獣と同じ金貨5枚という懸賞金が賭けられている。


目の前にそんな金が普通に居たら、手を出すのが普通だろう。何せ俺も金に目が眩んで()()()()()()()()()


そんなこんなで、魔獣探索に飽きた冒険者達の矛先が俺に向いた。

しかも何故か団結しているから、多数を相手しなきゃならない。


相手は屈強な男たち。

こんなウブな大根に何をする気ですこと!?

乱暴する気でしょ?エロ同人みたいに!


この状況にはシオンも感づいたようだ。

いくら彼女でも、複数を相手にするのは面倒だろう。


木陰から冒険者の1人が飛び出してきた。

良い奇襲だ!感動的だなぁ、だが無意味だ。


俺は既にここ周辺の地中に根っこ触手で作った罠を忍ばせてある。

これを使うのは、トトンヌを引っ掛けようとしてクレアをハメたとき以来だ。


奇襲を仕掛けた男は罠に引っかかり、身体を根っこで縛られる。


冒険者はそれを見て引くどころか、逆に一気に突っ走ってきた。


数で推せばなんとかなると思っているのか?

あいつらは互いに目でコンタクトをしあっている。

いつの間に彼らは友情、絆を深めていたようだ。


「俺の背を踏んでいけ!金貨は俺達のもんだ!」


「おう!あとはまかせろ!」


罠にひっかかった男が後方の輩に叫ぶ。

それに応答し、また何人も俺に立ち向かってくる。

その度にゴキブリホイホイのように罠に引っかかるんだからもうアホとしか言いようがない。


頑張れば報われるとかいう精神論なのだろうか?やーね、そういうの。

最初は緊迫し、殺気全開のシオンも今や地面に寝そべり、ミーナは荷物の整理を、BHSは草を食べている。



そんなこんなで金に目が眩んだ冒険者は皆、満身創痍。1人を除いては。


そいつは、周りの冒険者とは見た目が異端すぎる。


その姿は時代劇等で目にする修行僧。

だがここは中世ヨーロッパの世界観。

東洋風のそいつの得体が知れなかった。


笠を深く被った修行僧は鈴の付いた杖を付き、こちらに向かってくる。


「ん!?デロ先輩、アイツ罠に引っかかってない!?」


シオンが声をあげる。

あの修行僧、根っこ触手の罠の仕組みを理解したのだ。


修行僧は地面から数cm浮いていた。

俺の罠は地面に足がつく事でトラップが発動するようにしている。手動にするより断然楽だし。


修行僧から紫色の不気味なオーラが放っている。これは浮遊魔術とかそういう類の物だろう、多分。


罠を越えると、僧は地面に足をつけ、笠を脱ぐ。


「何!?」


シオンが驚き声を出す。


罠を突破してきた修行僧の露わとなった頭部、普通なら歪な物だ。だがこの世界なら普通の事。


罠を越えた修行僧。

そいつは頭に赤いトサカを生やし、クチバシを持っていた。

この世界ではニワトリ人族という奴だ。


「どうも、初めまして。愚僧(わたし)は、東の最果ての国より参った破戒僧、刻甲(コッコウ)でございます」


ニワトリの頭を持ち、身体は人。今までの獣人とは違うフォルムには俺も驚く。


そういえば、シオンが異常に反応していた。


「シオン?このニワトリについて知ってるのか?」


「な!?デロ先輩!この人は冒険者の中では凄い有名人なんすよ!東の果ての国から来た伝説のプリーストなんすよ!1人でドラゴン倒したり、召喚術を扱う凄く強い人なんすよ!」


「コッコッコ……。過剰評価ですよお嬢さん?愚僧は、ただ帰る郷を捨てた哀れなニワトリ人族です」


刻甲和尚(コッコウおしょう)は笑いながら答える。表情はとても温厚で優しい物だ。


「長話は趣味ではないです。そこの不思議な大根よ?大人しく捕まりなさい」


「え……?やだよ」


刻甲の表情が冷たいものへと瞬時に変わる。


彼の実力は罠に自ら引っかかったり、馬にムスコを蹴られる様な半端な冒険者とは訳が違うだろう。


「早速ですが、愚僧は十八番を呼びます」


刻甲は数珠を取り出し、念仏を唱えだした。


「来たれ黄泉の巨鳥、その封印は解かれ八尺の躰はそなたの婿を捕らえる魅惑の武器にならん!恵屡痴鬼 狗陀採!」


呪文を唱えると刻甲の周りからドス黒い霧が現れる。


「うわっ!なんだこれは!」


「苦しい……」


「やめてくれぇええ!」


「うわぁああああああ!」


黒い霧は罠に捕らえられた冒険者達を包む。

霧に覆われた彼らは皆苦しみだし、沼に沈む様にそこから消えた。


「え……?何これ?」


俺も困惑する。

目の前の禍々しい霧は、明らかに安全とは言えない。


「デロ先輩!?マズいっす!?逃げましょう!」


シオンが顔を真っ青にして叫んだ。


BHSも草を食べるのを止めるくらいだ。状況は尋常じゃないくらい悪い。


「シオンさん!デロちゃん!乗ってください!」


ミーナに呼ばれ、俺達はBHSに跨り、その場を一気に離れる。


「……残念。逃げる判断は良いですが無駄です!さぁ行かれよ鳩尺様(はとしゃくさま)。痴禁闥多斗痴禁南無伴採香!」


刻甲が呪文を高速で唱えると霧の中から純白な何かが現れる。


「ポポポポポポポポポポポポポ……ポッポゥ!」


その白いモノは、大きさが2m半くらいの鳩だった。


ただ、デカいだけの鳩じゃない。


首が身体の3分の2を占めるほど長く、頭に麦わら帽子を被り、黒く長い髪が生えている。



挿絵(By みてみん)



その鳩と目が合った。

全身の血の気が引いていく。


彼女と目が合うと同時に、鳩尺様(はとしゃくさま)と呼ばれたそれは跳ねた。


「なんだあの跳躍力!?」


鳩尺様は100mは余裕に跳び、着地するとこちらに向かって走りだした。


いや、走るんかい!

そこは飛べよ、仮にも鳩だろ!?


俺は内心ツッコミを入れるが、そんな場合ではない。


鳩尺様は全力で走り、BHSに迫る。


BHSはサラブレッド種ではないため、速度は多少劣る。

といっても鳩如きに追いつかれるような駄馬ではない。

あの鳩尺様は鳩というより、ダチョウと呼んだ方が良いと思えるくらい早い、見た目はアヒルに近いが。

ターボババァとどちらが早いか気になる。


それにしても、あの長い首に短い2本の脚でよく走れるものだな。逆に関心する。

ケイデンスは幾ら?11000まできっちり回す?


「ポポポポポポポポポポポポポポ……ポッポゥ、クルッポー!」


鳩尺様の鳴き声が次第に大きくなる。


「無駄だ。鳩尺様からは逃れられない。大人しく捕まれよ大根の方」


刻甲は鳩尺様の背に乗り、こちらに呼びかけてくる。


「そんなの無理に決まってんだろーッ!」


俺は鳩尺様の脳天めがけ、ネッコボルグを投げつける。


当たらない。


あれ、確実に当たった筈だが?

今度は2本同時に。


また当たらない。


「なんでだ!?」


俺は兎に角、ネッコボルグを鳩尺様めがけ投げつけるが、1つもかすりすらしない。


鳩は歩く際に首を振る。高速で動いているため、鳩尺様の首振りの速度はミシン針の様だ。

とは言ってもネッコボルグが外れるほど不規則な動きという訳ではない。

では、何故はずれるか?


俺は1つの結論を出す。


「槍がヤツの身体をすり抜けてしまうぞ!」


「やっと気づいたか。鳩尺様はあらゆる物理攻撃、魔術を流してしまうのだよ?」


嘘やん。そんなの……。



「おい、シオン!BHS様の速度を上げろ!マス◯ングスペシャルだ!」


「え、なんすかそれ?……まぁいいや。流石のBHSでもこれが限界速度っす!これ以上は無理っす!」


こちらの攻撃が効かない以上、ひたすら逃げるしかない。


「ならひたすら逃げてくれ!加速するキノコとか落ちてたら取れ!」


「キノコ……?さっきから何言ってんすか!?」


幸い魔物による襲撃がないだけマシ。


鳩尺様はすぐ後ろまで迫って来ている。


ひたすら走る。逃げる。疾る。




どれくらい、鳩尺様から逃げただろうか?

森深くまで来たのか昼間にもかかわらず薄暗く不気味な雰囲気だ。


「ポ!ポポポポ!ポポポポポポポポポポッッッ……クルッポ〜!!」


暗闇に紛れて鳩尺様を撒こうとジグザグに走るも、ミサイルの様にしつこく追いかけてくるのでそんなに引き離せない。


鳩尺様の目は暗闇では赤く光っている。それが暗闇の中でも走れる秘密なのだろう。



追いかけっこはまだ続きそうである。




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