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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
アライグマの全世界ピカピカ計画
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げっ歯類連合vsアライグマ人族【後編】


地平線から日が顔を出し、大地が緋色に染まる。


アライグマ人族の王、アードバーグ・ライジングは兵を総動員して、げっ歯類連合に刃を向ける事になった。


川の向こう岸にいる事が分かっている以上、いち早く根絶やしにしておかなくてはならないと、アードバーグ王は考えた。


この川の全幅は約600m。ここらでは最大級の河川である。


普通ならばこの川は船じゃなければ渡れない。

しかし、アライグマ人族にはワニに騎乗する水軍がいる。


今まで水軍が敗れた戦などない。水軍が動けば必ず勝利する。

アライグマ人族の水軍とは、この大陸の獣人族界隈に於いて、勝利と同義語である。


勿論ワニは、泳ぐだけでなく、地上でも活躍する。

水陸両用の戦術から、水軍は揚陸騎兵とも呼称される。


よって昨夜、面倒くさがっていたヌートリア人族の兵も勝ち戦だと確信している為、指揮は高い。

勝つ事を前提とした雑談が聞こえる。

「帰ったら、木の実が食べたい」とか「返り血で汚れたら洗ってほしい」とか。


空が赤から青に変わった頃、水軍の進撃は始まる。


ワニに乗った水軍は各陣形を整え、進水する。

その数、約500騎。


誰も彼らを止める者はいない。



ところがどっこい、アライグマ人族最強(笑)の水軍は、一瞬にして全滅する事となる。


「一応、言っとくが、弓とか飛翔系魔術には気ぃ付けろ?敵さんには転移魔術つかっとる魔術師おるけぇのぉ、油断は出来んで?」


アドミラールは兵達に呼びかける。


「大丈夫ですよ、我々水軍には特殊防御結界ありますけぇ、沢山(ようけ)弓が飛んで来ようが、ここまでは届かん(たわん)ですよー」


アドミラールの呼びかけに、他のアライグマ人族は軽くあしらった。

心配なんてしなくたって勝てると思ってるのだから。

一瞬で戦いは終わる。帰って、好きな物を好きなだけ洗えるのだから。


勿論、一瞬で終わるのは悪い意味でも同じ事。


「なんじゃ、あれ?」


アライグマ人族の1人が空を指差すと皆の視線がそちらへ向く。


アドミラールは、それは鳥だと一瞬思ったが違った。


白い軌跡を空に引きづりながら、雷とはまた違う大きな音と共に、それは飛んでいる。


もしこの光景を、どこかの転生した大根が見れば飛行機が飛んできたと錯覚しているだろう。


アライグマ人族はそんな物を知らない。


何かが上空を超高速でとんでいる。それも1つではない。

全部で5つの何かが飛んでいる。


「なんじゃ、あれ?ドラゴンか?」


「ドラゴンにしては、えらい紡錘形じゃのぉ?」


アライグマ人族がざわつき始める。


「あれこっちに向かって来とるで!攻撃準備じゃ!」


謎の飛行物体がこちらに向かって急降下してきた。


物凄い速度でアライグマ人族に迫る5つの飛行物体。

あまりの早さに空気が振動し、川の波が激しくなる。


轟音にやられたのか、アライグマ人族の数人が頭を抑え、苦しみだす。


アドミラールは、いち早く現状を理解し回復、補助魔術を仲間に施す。


そしてアドミラールやアライグマ人族は謎の飛行物体が何か理解した。


「あれは、マグロ!?」


超高速でこちらに迫るモノ。それは飛行機でもドラゴンでも無かった。

マグロだった。

大型の遠洋性回遊魚で寿司ネタとしても有名な、赤身魚のマグロだ。


こちらに飛んできたマグロは水軍に対し、魔術による爆撃を行った。


あちらこちらで爆発が起こる。


マグロが水軍の頭上を飛び去ると、彼らを追うように衝撃波が水軍を襲った。


マグロ達の飛行速度は音速を超えていた。

目の前をそんな速さで横切られた場合、大惨事は免れないだろう。


アライグマ人族はワニから川へと転げ落ちる。


ワニもアライグマもパニック状態。どこかへ逃げ出す個体も少なからず存在し、中にはアライグマに嚙みつこうとして、追いかけっこをしている連中もいる。


アライグマ人族にとってもう戦どころではなかった。


彼らは再びマグロ達の追撃に襲われる。


一度目と同じく、魔術による爆撃とマグロ人族が音速で飛ぶ事で発生する衝撃波が水軍を襲い、もはや軍勢は崩壊。アライグマ人族は満身創痍。



無敵を誇るアライグマ人族総勢500人の水軍は、5分と持たず、たった5匹の空飛ぶマグロによって壊滅させられてしまった。




・・・




無敵の水軍が一方的に、よくわからない手口で全滅させられた光景をアードバーグ王は口を開けて阿呆の様に眺める事しか出来なかった。


「なんじゃあれ……?こんなん嘘じゃ!夢じゃ!あの最強無敵完璧な水軍が、こがにあっさり負けるはずないんじゃ!悪夢じゃ!」


アードバーグ王は頭を掻き毟る。

今見ているモノは夢。悪夢なら覚めてくれと念じながら頭を地道に打ち付ける。



「 どうでした、ウチのマグロ人族のお手並みは?すごいでしょ?」


アードバーグ王は耳元で誰かに囁かれた。


「なんじゃ、貴様ぁ!?」


アードバーグ王は声の主を知っていた。

その人物は昨晩会った、温泉を手に入れる野望を持つカピバラ人族のヒパビパであった。今回は彼1人の様だ。


「なっ、いつのまに!?」


「今です」


「き、貴様、何をしたんじゃ!?我々アライグマ人族の水軍が、いとも容易く……!」


「えぇ、私自身困惑してますよ?凄いですよねぇ、マグロ人族」


感情昂ぶるアードバーグ王とは対照的に、ヒパビパは淡々と答える。


アードバーグ王はここで思考を一旦冷静にする為、川で手を無意味に洗った。


「一応、最後の警告(かんゆう)しますが、我々げっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)に加わって頂けませんか?」


ヒパビパはこんな時でも笑顔を保っている。

アードバーグ王はその笑みが、自分の事を嘲笑っているように感じた。


「マグロ人族が水中ではなく、空中で戦うとは予想外でしょ?私も予想外でした」


ヒパビパの戯言を無視し、アードバーグ王は考える。

自分は武装している。

勿論、盾も剣も携帯している。

一方、ヒパビパは昨日と同じく戦場には場違い(アンニュイ)な道化のような格好をしている。手には細く短い杖しか持っていない。


その事に気付いたアードバーグ王はニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべた。彼は心中、形成逆転したと確信してしまった。


アードバーグ王は身長差がかなりあるが、剣先をヒパビパの眉間に突き向ける。


「アライグマ人族は、本当に頑固なんですね……残念です」


次にヒパビパがため息を吐いた瞬間、アードバーグ王の前から彼が消えた。


「どっ、どこじゃ!?」


「ここですよ?」


ヒパビパはアードバーグ王の後ろにいた。

彼は帽子を脱ぎ、その中に金貨を数枚入れている。


アードバーグ王は察した。このカピバラ人族が瞬間移動ができるほど芸達者であると、ただの道化ではないと。


ぶっ殺し(ぶちまわし)たる!堪忍せぇや!」


アードバーグが、ヒパビパに斬りかかった。

その剣先がヒパビパの喉笛を搔き切る、はずだった。


突如湧いた白い煙によってヒパビパの攻撃は弾かれる。


煙が晴れると、何も携えていなかったヒパビパの手には剣が握られていた。



「ほぅ、やはり私は強運だ。無駄に運が良すぎる気もするが、神が私を愛すのだから仕方ない」


ヒパビパは自らの手に現れた剣をアードバーグ王に向ける。アードバーグ王はその剣に見覚えがあった。


「アライグマ人族の聖剣『アラーインスレイヴ』じゃと!?なぜ貴様(おどれ)が使っとるんじゃ!?」


アライグマ人族に古くから重宝される聖剣アラーインスレイヴ。

本来なら聖域と呼ばれる場に保管されている。

王位継承など祭り事の時のみ、この聖剣が多くの目に触れられる。


洗浄戦争を始め、全ての戦において使用される事はなかった。

ビーバー人族の聖剣と同じく、環境を大きく変えてしまう可能性がある為だ。


「流石、よくご存知ですね?ならばこれの力も知ってますよね?」


「いくらなんでもアライグマ人族でも、それはいけん!?やめーや!」


「そうですか……」


アードバーグ王の忠告を無視し、ヒパビパは彼をアラーインスレイヴで斬り裂いた。



アードバーグ・ライジング率いるアライグマ人族王国は事実上、崩壊する事となった。



トトンヌはヒパビパから少し離れた所で彼の援護、瞬間移動をしていた。

アライグマ人族にヒパビパ殿が負けない事など知っていたが、彼は別の事で頭を悩ましていた。


「うーむ……。ヌーターンの奴、あれからどこへ行ったのだ?心配だなぁ……」


「あの騎士王さんは方向音痴で周りに流されやすいですからねぇ」


部下を心配するトトンヌを見かけ、ヒパビパが声をかけた。


「そうなのだ!あいつどこ行ったのだ!?死ぬ事は無いだろけど」


「大丈夫ですよぉ、今までなんだかんだ迷子になっても帰ってきたじゃないですか?きっと、お腹が減ったら帰って来ますよ?」


「それもそうだな!」


「それより、ネスノ村に奇襲をかけたいのですが?ダメですか?」


「あの大根はヤバいのだ!?あれをどうにかするには、もう少し戦力が欲しい!例の『海王複製計画』が完遂するまで、休戦のままが良いのだ!」


「海王さんの複製はまだ先ですねぇ。個人的にはカピバラゴンだけで十分な気もしますけど……」


「カピバラゴンには力を蓄えさせるのだ!その間にバーディア王国の海を支配するのだ!あとマグロ人族にはシギア峡谷地帯を支配させるのだ!あの飛行能力があれば、あそこを支配したも同然!」


「そうですか、それは楽しみですね」


ヒパビパはトトンヌの無駄に壮大な侵略計画を温かい目で見ている。

この先、何があろうと彼は、トトンヌに着いて行くつもりなのだ。



大根を始め、ネスノ村の人間が、げっ歯類連合の面々と再会するのも遠くない先になりそうだ。



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