第25話 子供は野菜嫌いで動物好き
核を破壊された巨大ヌートリアは、その形を維持する事さえ出来ず、軸を失った積み木の塔の如く崩壊し、巨大ヌートリアはガレキの山と化した。
上記は、クレアから聞いた事。
現在、日は頭上へと差し掛かるくらい登っている。それくらい時間は経過していた。
半日も気を失うとは、あの『気持ち悪い球体』の臭いは恐ろしい物だ。赤筋大根の身でありながら、臭いに瞬殺されたのだから。
お陰で不眠症は解決したが、あの五感全てに不快さを与える物体には関わりたく無いものだ二度と。
あと、今は普通の大根に戻っている。
ヌーターンの事だが、俺の触手によって繋がれていたので、クレア達の手によってガレキの山より救出された。
彼は主犯であるため、ハダカデバネズミが捕まっていた牢屋にぶち込まれた。
だが俺とヌーターンは温泉とネスノ村の件で、ビジネスパートナーとなっているので、話を多少盛り、嘘を塗りたくったヌーターンの武勇伝を、クレアやジェイク、シオンをはじめとした村の人々に話をでっち上げ、ヌーターンは許される事となった。
ヌーターンは害獣指定を受けているヌートリア人族。
人間同士でも差別だの政治的な問題など、何年掛けても解決できないのに、他種族、害獣の彼が受け入れられるか心配した。
しかし、その心配はまさかの杞憂で終わる。
村長に温泉の事を話すと、「つまり稼げるのじゃな!問題ない!そのヌートリア人族は許す!」と金による寛大な心を見せつけてくれた。
他の村人も、「金のため、やってやりますぜー!」とやる気満々である。
なんだこの金の亡者どもは!?
この村の人々が詐欺に合わないか、俺は心配である。
クレアとジェイクは「ダイコンデロガがヤツを推すのなら大丈夫だろう」と軽く言うのみだ。
そして現在。クレアは王都に向かっている途中のトムに、ある連絡を届けるようだ。
なんでも、源泉を掘り当てるために、ハダカデバネズミの力が欲しいからという、村長からの頼みである。
ケータイとか無いこの世界では連絡に相当時間がかかりそうだが……。
そんな俺の心配を他所に、クレアは信じられない物を出してきた。
魔術によって電報を発信する道具である。
なにそれ、超便利じゃーん!
話しに聴くと、かつてトトンヌと野菜獣大根に村が襲われた際、このとんでも通信機によって、クレアを早急に村へ戻す事ができたらしい。
一度に発信できる文字は30文字。
クレアは今頃、王都にいるであろうトムに『ハダカデバネズミ シキュウ ツレモドセ。コチラデ ツカウ』と電報を送る。
しばらくして、トムから返信がきた。
『ハ?ジョウダンダロ?ナニシニ オレハ コンナトコマデ キタ?』
こりゃ怒ってますな。
そりゃ怒りますわ〜。
クレアはトムのご機嫌をとるように再度返信している。
クレアの側にいるシオンさえも少し申し訳なさそうな雰囲気を醸し出している。
トムがかわいそうだなー
・・・
俺はヌーターンに会うためヤツを探す。
エクスカリカリバーはヌーターンへと返し、俺はミェルニルを屯所に置いている。
ここで反旗を上げられたら、赤筋大根になれないので危険だが、ヌーターンはそんな事はまずしない。
そんな事はヤツを見つければ解ることだった。
「ヌートリアすげー!」
「私も乗せてー!」
「毛がふかふかしてる!」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?なんだお前ら、触るな!乗るな!」
「かわいい!」
ヌーターンは村の子供達のおもちゃにされていた。
背中に乗られ、尻尾を掴まれ、リボンや花をつけられてたりしている。
その子供達の中には、ニック爺さんとこの俺をひたすら見てくる女の子もいた。
彼女はヌーターンの肉球を触っている。
子供達に、揉みくちゃにされ、叫んでいながらも、心底嫌がって無さそうである。
「おい、ヌーターンなにしてんだ?」
「む!?デロガ殿か!ちょうど良い」
俺に気づいたヌーターンは俺の所に子供を背中に乗せ四足歩行でこちらに歩み寄る。
なにこのシュールな絵面。
「あ!ナマズ殺しの大根だ!」
「ほんとだ!ナマズ殺しだ!」
子供達は俺に指をさし、例の名で呼んできた。
「ナマズ殺しには石を投げろ!」
ガキ大将的な男の子に石を投げられる。
それに便乗して他の子も石を投げ始める。
いやなんでだよ!ヌーターンと扱いの差が違いすぎるわ!
普通、逆だよな?
どんだけナマズを殺める事が重い罪なんだ?
あれはどっちみち食用だったろ!
子供達に石を投げつけられる俺の姿を滑稽に思ったのか、ヌーターンは不敵な笑みを浮かべていた。
若干、イラっと来たので、根っこ触手をムチの様に使い、ヌーターンをひっぱたいた。
彼はなんか文句言っている様だが知らんな。
それから一悶着あったが、なんとかなった。
俺は根っこ触手でヌーターンをぐるぐる巻きにして、屯所へ連れていく。
ヌーターンとは一時的に温泉を掘り当てる為に同盟を結んだ。
しかし、彼の所属するげっ歯類連合とは敵同士。あくまで今はヌーターン個人だけが仲間という事。
そのため、ヌーターンにはげっ歯類連合に争わなくても良い事を伝えに行って貰わなくてはならない。
例の魔術による通信機器をげっ歯類連合が所持していないので、原始的に自分の足で向かって貰うしかない。
ここで問題が発生する。
「どっちにいけば良いのかわからぬ!」
ヌーターンがアホな言い訳をしてきた。
本人曰く、ドラゴンに行く道を任せていたので、自分独りでは、げっ歯類連合のアジトに帰れないらしい。
つまり、ヌーターンは迷子。
あのドラゴンがいなければここに辿り着く事も出来なかったそうだ。
ならば、ヤツらの次の動きについて聞いてみる。
「東の村周辺を侵攻しているアライグマ人族を成敗するってトトンヌ殿とヒパビパ殿は言っておられた!」
東の村のアライグマ人族。
以前、クレアとシオンが話していた件だな。
ヌーターンの口振りからアライグマ人族は、げっ歯類連合とは無関係。強いていえば敵同士という事。
早くにも、東の村に向かった方がよさそうだ。
ヌーターンがアジトを出て数週間は経っていると本人は言ってたし。
「ちなみにアジトってどこら辺にあるんだ?目印とかなんかあるだろ?」
近くで話を聞いていたクレアが割って入る。
迷子とはいったが普段生活している場所。
何か目立つ物は近くにある。
「うーむ。でっかい火山があった!」
ヌーターンは頭を悩ませ、一つの答えを出す。
「火山……?ここらへんだと、ウルカ火山か?」
クレアがヌーターンに確認をとる。
ウルカ火山って確か、カピバラゴンとカッチョパッチョ大王が神に封印された所だったな。
「そこだな!」
ヌーターンは声をあげた。
俺もそこで間違い無いと思う。
今まで調べてきたお粗末な情報の中で照らし合せても、ウルカ火山がげっ歯類連合に関係ある可能性は極めて高い。
「ダイコンデロガ殿?ウルカ火山がどこかわかっているのか?」
クレアに問われる。
そういえばこの世界、この周辺の地理についてはよく調べてなかった。
「ウルカ火山は東の村より更に東方。大陸最大の高さと広さを誇る、シギア峡谷地帯を越えた先、砂漠のバーディア国にあるんだ。この国の王都に行くよりも大変だ」
クレアが親切に説明してくれたが、聞いたことが無い地名ばかりで何を言ってるか理解できない。
しかし、それだけ知らない地名が出たって事はそれほど遠く、辛い道のりなのだろう。それは理解る。
ヌーターンは移動手段に恵まれていたので、数週間で移動する事ができたらしい。
まぁ、次の目的が出来たので結構。
村の外も悪くないかもしれない。
やっと前半経過です。




