第23話 クレア復活、やったー!
(クレア視点)
愚かにも、私は敵の術中にはまり、無性に何かを齧りたい欲求に脳内が支配された。
私はあろう事か、戦友ダイコンデロガ殿を齧ってしまった。
勿論、激昂をくらい、拘束された後ジェイクに何処かへ運ばれた。
それが私が覚えている最後の記憶。
身体の心底まで伝わる獣の咆哮で私は目覚めた。
ここはいつもの屯所。
辺りが真っ暗という事から、時間はそこまで経っては無いのだろう。
身体を締め付けていた根っこを千切るも、堅牢な結び目に苦労し、私は鎧ごと脱ぎ、あの場所へ向かう事にした。
聖剣ラビラコゼを扱う為の鎧、というのは本当だが実際無くても良い。
私が聖剣と、この堅牢な鎧を常に身につけている理由。
聖剣は私の精神を安定させる物だ。
一方、鎧はその聖剣の力を安定させる為の物。
聖剣ラビラコゼは本来、王となる者が扱う物。
それを、ネスノ護衛団長という地位にいたとしても、ただの冒険者兼兵士が使っている。
この際、そんな事はどうでも良かった。
聖剣の怒りをかって私の身に何かあれば、ダイコンデロガ殿に頼ろう。そんな事は身勝手。自分でも何故この発想に至ったのかは不明だが。
「ん……クレアか?もう大丈夫なのか?」
屯所を出ると、ジェイクに声をかけられた。
ダイコンデロガ殿に頼まれ、私をここまで運んできた男だ。しかし彼が私を、引き止める事は無かった。
「ああ、何か枝を噛んでないと落ち着かないが、それ以外問題ない」
「そうか……」
自分から聞いておきながら、ジェイクは他人事のような相槌をいれた。
私は例の呪いを緩和させる為、木の枝を咥えている。
変人だと思われようがこの際気にしない。
私は、ダイコンデロガ殿がいるであろう場所に目を向ける。
そこには、そちらの方角の景色を覆い隠すほど巨大な何かがいた。
「さっきあれが急に現れてな、ヌートリアというのは、あそこまで巨大化できるんだな。俺も知らなかった……
あと、一応止めたんだが、少し前にシオンが応援にいってたな」
ジェイク曰く、あのイタチにびびっていたシオンが、ダイコンデロガの援護に向かったらしい。
悪い予感しかしない。
「ジェイク、無茶な頼み良いか?」
「へい」
私の目を見ただけでジェイクは全てを察した。
野菜獣大根、ハダカデバネズミ人族の時に使った、身体強化魔術を私に施した。
「これで、文句無いか……?」
「お前は全然、私を引き止めないのだな……」
「あぁ、どうせ無駄だからな」
それだけ言うとジェイクは歩き出した。
「どこへ行くんだ?お前も来るのか?」
私は質問した。彼も来るなら頼もしいだろう。
あんな城や都市みたいな化け物を相手するなら、戦力は多い方が良い。
「急に腹が痛くなった。後は任せる……」
彼はどうやら、自分との戦いに臨むらしい。
何というか、ブレない男だな。
私は馬房からマサ子を連れ出し、あの巨大生物の元に向かう事にした。
その途中の事だが、村の端にシオンが倒れていた。
返り討ちにでもされたのだろうか?
例の巨大なヌートリア(?)からは離れているので真意はわからない。
とりあえず、ここに置いといても大丈夫そうなので私は無視して通り過ぎる事にした。
・・・
(ダイコンデロガ視点)
ビーバー人族の聖剣、エクスカリカリバー。
ヌーターンが理解していなかった第3の特殊効果、それについて俺は解明する事に成功した。
当初、赤筋大根としてより高い力を奮うため、エクスカリカリバーを、ヌーターンより奪取したわけだが、
お試し感覚で使ってみる事で、真価を知る事が出来た。
エクスカリカリバーの第3の能力、それは木材の加工を簡略的に実行できるというもの。
刃の形がノコギリに似てたり、柄の底がカナヅチになっていたりと、大工要素はこれを為すためだろう。
エクスカリカリバー、ミェルニル、赤筋大根の力を掛け合わせ、巨大ヌートリアの核を探すことがより楽になり、掘削の効率も大幅に上がった。
作業は順調かと思っていた。
しかし、この作業を良くは思わないヤツがいる。
巨大ヌートリアだ。
背中にネッコボルグを突き刺そうが、体内を掘りまくろうが、背中を燃やそうが、依然として反応がなかった、このデカブツも己の危機にやっと気づいたようだ。
巨大ヌートリアは、どこぞの六神合体するロボみたいに動かない。
しかし、ひとつひとつの動作が脅威となる。
掘った穴に突風が吹き荒れる。
俺は飛ばされ無いように、必死にしがみつく。
それも虚しく、この赤筋大根の力を持ってしても耐える事は出来なかった。
気づけば、巨大ヌートリアの体外へと飛ばされた。
出た所は背中ではない。鼻の穴だった。
「んんんんっっっ……ピバァアアアアアアッ!!!」
巨大ヌートリアの天地を揺らす咆哮によって俺は更に飛ばされた。
幸いにも、村とは逆の方面。
俺を飛ばしても、ご立腹の巨大ヌートリアは俺に視線を向ける。
今まで四足歩行だった体をヤツは起こし、二足歩行でこちらに歩みよる。
立った事でより大きく感じる。
頭部は見上げてもみえない。
一歩踏み出すだけで、地が揺れ木の枯葉が吹雪いている。
巨大ヌートリアが尻尾で薙ぎ払ってきた。
砂煙が巻き起こり視界が遮られる。
幸いにも、大根という小さい体のお陰で尻尾にあたる事は無かった。
赤筋大根の能力では、この視界の悪さを改善することは出来ない。
根っこ触手で体を押し上げる。
幾ら何でも飛ぶ事は出来ないが、跳ねる事は出来る。
赤筋大根の特性で増強された力で、ノミの如く跳ねる。
砂煙を抜け巨大ヌートリアとご対面した。
このままだと、落下するので根っこ触手で巨大ヌートリアの頭を掴み、これ以上暴れられるのは迷惑なので、目潰ししておこう。
「ピバァアアアアアアアアアアアアア!??」
そう簡単にはいかなかった。
巨大ヌートリアは頭を振り回し、俺を振り落とす。
また更に村から離れる事が出来たので支障はない。
再び、巨大ヌートリアの頭を見上げる事になった。
しかし、今回はさっきと違った。
「あれは……!?」
巨大ヌートリアの頭より更に上、空に雷雲が現れた。
これは、アイツの魔術だ。しつこいヤツだ。
ヌーターンめ、あんだけやって諦めないのか……。
トトンヌといい、ヌーターンといい、ヌートリア人族は本当にしつこい生き物だ。
雷雲を観察していると、ヌーターンのモノとは特徴が、一致しない事がわかった。
だが、その雷雲を俺は知っている。
ドス黒い雲から、紫に煌めく稲妻が蛇の様に唸っている。
これは、俺のトラウマのヤツだな。
ハダカデバネズミの件で、身をもって体験したもっ!
でも、今は安心感の方が大きい。
やったれ、クレア!あんな巨大ヌートリアなんて消し炭にしちまえ!
俺が心でそう願うと同じくして、巨大ヌートリアに、眩い閃光、轟く雷鳴を連れた紫電が直撃した。
あれは痛いよ?俺が保証してやる。
巨大ヌートリアは落雷で生じた爆炎のせいで態勢を崩し、尻餅をついた。
その方向にはは村があるので、少し肝が冷える。
「お?ここに居たか、ダイコンデロガ殿。要らぬ心配をかけた。すまない。」
クレアがマサ子に跨り、こちらに向かってきた。
「おっ!やっぱクレアじゃ〜ん!?もう大丈夫なのかい?」
俺は気さくに声をかける。
今のクレアは、いつも来ている鎧を脱ぎ、黒っぽい布の服という、シンプルかつ戦闘には似合わない格好でやってきた。
鎧が無いと聖剣の扱いに困るといってたが、大丈夫なのだろうか?
彼女のその姿には流石に「えぇ……」と困惑したものの、彼女の姿をよく見ると「エッッッッ」と全てを理解できた気になれた。
なにせエロいんだよ!
鎧のせいで今まで、拝見出来なかったけど、今はボディラインが見えるんだよ!
これは、ヤバい!
胸とかクビレとか!
マジパネェ!
そんなバカな思想は排除し、クレアには聞きたい事がある。向こうもそれは同じだろう。
「なぁクレア?エクスカリカリバーの呪いは大丈夫なのか?」
「一応、枝を噛む事で症状を緩和させてるんだ。これでなんとかなる」
そんな単純に、解決出来るものなのかよ。
でもクレアが枝を咥えている姿は、いつもの凛々しい彼女と違い、野生感あるワイルドみ(?)に溢れるのでこれはこれで良いよね?
「ところでダイコンデロガ殿は、その赤い線はなんなんだ?」
まぁ、それは聞かれるだろうな。
「頑張ったらこうなった」
説明するのが面倒なので簡略にそう説明した。
「そうか、流石だな」
クレアはそれだけ言った。
俺の対応に慣れてきたのだろうか?淡白すぎる。
俺が言えた口じゃないが。
こうして、俺とクレアはヌーターンが残した迷惑な『バカデカいクソを』を本格的に処理する事にした。




