第21話 機械仕掛けのヌートリア
今まで、クソ以下だと思っていた飛び蹴りの特殊効果
【蹴った相手に、『東京ドーム』を基準にして土地の広さなどを比較、または説明されてもピンと来なくなる呪いをかける 】が、使い方次第でここまで強くなるとは、思わなかった。
結果、ヌーターンは心を病み、巨大ヌートリアの制御や魔術を扱うどころではない程、精神的ダメージを一時的にだが負う事となった。
この攻撃にシオンが巻き込まれたのは、予想外だったが……。
明らかに能力が、誇張されてると思うのは俺だけじゃないはず。
しかしお陰で戦況は優位になった。
……って思うじゃん?
「あわわわ!?制御不能!制御不能!待ってくれ、大魔神ヌートリアよ!おちつけ!おちけつ!」
と、ヌーターンは正気に戻るや否や、現在の状況を瞬時に理解したらしい。
「今日の所はここら辺で勘弁しといてやる!ワタシは帰る!」
「おい待てぇ!?」
捨て台詞を吐き、撃墜したドラゴンに駆け寄り、逃げようとするヌーターンを俺は追いかける、が……。
「ああああああああっ!?どこへ行くのだ!?待って!?待ってよぉおお!??置いてかないでぇ!!」
ヌーターンがドラゴンに叫んだ。
時間の経過で傷が多少癒えたドラゴンもヌーターン同様、現在の状況が最悪と理解すると小鳥の様に、飛び逃げていったのだ。
置いてかれたヌーターンの背中から哀愁を感じる。
例えるなら、通勤中トイレに間に合わず、下半身を穢してしまったおっさんみたいな感じだ。
ドラゴンが上司を置いて逃げるのだから、かなり悪いんだろうな現状……。
「ピバァアアアアアrrrrrrrgh!!!」
巨大ヌートリアが甲高い咆哮を上げる。
これはとてもうるさい。流石に村人たちも起きてしまっただろう。
ヌーターンが巨大ヌートリアの制御を失った。
そのせいで、あのデカブツは今にも村を破壊してしまうような危険な存在だろう。
まったく、ヌーターンはダメだなぁ……。余計な仕事が増えたじゃないか。
おまけにシオンもあれから絶不調である。
君は一体、何しにきたんだい?
気づけば、動ける人材は俺だけ、大根だから『大根材』か?そんなくだらない事を考えるより、早く巨体ヌートリアの駆除をしよう。
ジェイク等に助けを要請したいものだが、俺は一つ、武器を持っている。
スケトールハンマー・ミェルニル。
コイツを使ってなんとかしよう。
俺は信じてるぞ?有能ドスケベハンマーくん!
そのまえに!
未だに、ウジウジしているシオンを立たせる。
「なんすか!?あのデカい、ヤツ!?ひょっとして例の超古代兵器っすk……うっ!?」
俺はすっとんきょうな事を喚くシオンの意識を腹パンで奪い、安全そうな所に彼女を投げておいた。
「よし、やるか!」
俺はあのデカブツの処理をする。
出来なくとも報酬は頂くつもりよ!
・・・
デカーイ!説明不要ッ!
……いや、説明するべきだな。
現在、俺は巨大ヌートリア、
別名『機械仕掛けのヌートリア(ルビ変換が面倒なのでこの名称は使わない)』の背中にいる。
登る事は簡単だった。根っこ触手を使いよじ登ったのだ。
そして改めて思ったのだデカいと。
俺の推測だと現在地、巨大ヌートリアの背中は地上から50mはゆうに超ている。
根っこ触手の最大射程が50mなのでそこから計測した。
結果、四足歩行のくせに全高100mくらいはあった。
引くほどデカい。
巨大ヌートリアは俺が背中に乗っていようが気にしている感じはしない。
コイツはたまに鳴いたり、足踏みしたりするくらいしか行動しないので、村が直接破壊される事は今は無いだろう。
とりあえずネッコボルグを、ヌートリアの背中に適当に突き刺していく。
「……」
自分の背中が、悲惨な状況になっているにも関わらず、巨大ヌートリアの反応は特になかった。
ネッコボルグの効果【刺されると痛い】が不発に終わった。
そもそも、すっかり忘れていたのだが、今までネッコボルグだの根っこ触手だの、飛び蹴りだの、乱発してたせいで、俺の力の根源、野菜エネルギーが実際のところ、カツカツである。
野菜エネルギーは、ゲームで例えるならMPやスタミナみたいなモノ。無くなれば、いつかの様にぶっ倒れる。
巨大ヌートリアは、エクスカリカリバーによって召喚されたダムの壁で身体は出来ている。材料は木や土だ。
明らかに、質量等が何倍にも膨れ上がっているが、恐らくヌーターンの魔術による効果だろう。
質量保存の法則など魔術の前では歯が立たない、という事にしておこう。
巨大ヌートリアを発生させたヌーターンはドラゴンに置いていかれたショックで呆けている。
シオンちゃんと違い、ヤツはどうなってもいいので、今は放置している。
ネッコボルグが使えないとなるとついにコイツの出番という事だろう。
スケトールハンマー・ミェルニル。
巨大ヌートリアの背中にコイツの一撃を叩き込んだ。
するとハンマーを打ち付けた部分に、人がひとり埋まりそうなクレーターが出来上がった。ミェルニルの効果によって蒸発したのだ。
うん、俺の予想では、全消し出来るかと思ったのだが、そこまで事はよく運ばない。
打ち付けた部分の土と木が蒸発したという事実から、これは外殻なのだろう。デカ過ぎて一度では消しきれなかったのだろう。
どこかに核がある。
無難に考えて、核があるのはこの巨体の内部。
簡単に言ったが、池に落とした石を探すようなもの。探してたらキリがない。
しかも、ミェルニルで外殻を削っていくのは、池の水をバケツで減らすのと同じ、これもキリが無い作業。
しかし、これが最も効率の良い方法なのだ。
ミェルニルで叩けば叩くほど、掘り進める。効率はの良くはない、けどもテンポ良く進めるのでストレスは無い。
「核を探すより、このデカブツを破壊した方がいいな」
幸いにも巨大ヌートリアには再生能力はない。
身体内部を掘りまくり、コイツ自身が動いた時に、自然と自壊するようにするのだ。
「となるとやはり足からだな」
まずは全体重を支えている、4本足を壊す。
足一本にしても、その円周、太さたるや規格外の大きさだ。
特に後ろ足なんかは、穴掘って整備すれば、アパートに改築できるかもしれない。
俺は一度掘った穴から這い出て、飛び降りようとした。
しかし俺は飛び降れなかった。
まさかここに俺以外が来ると思っていなかったし、来たヤツは、来たヤツで、さっき思いっきり逃げようとしたヤツなのだから、尚更だ。
「ふーっ……ふーっ!!……こうなったら玉砕だ!大根よ、覚悟ぉ!」
ヌーターンは涙で濡れて赤くなった眼で、俺を睨み、エクスカリカリバーを握りしめ、猫みたいにフーフー!と怒りながら襲いかかって来た。
「ちょ、待てよ!?ここは協力してコイツを破壊しようぜ?なっ?な!?」
「問答無用!騎士の誇りにかけて……ッしねー!」
必死な呼びかけも虚しく、ヌーターンはこんなところで襲いかかってくる。
騎士の埃かなんか知らないが、君しつこいよ?
トトンヌやスッパマッパ分隊、大天使ミーナちゃんより尺使ってる気がするからね?
自重してほしいな!
(おまけ)大きさ(身長・全長)比較
重巡ダイコンデロガ(主人公)、野菜獣大根
0.4m
ハダカデバネズミ人族
0.5m
ヌートリア人族
1.2m
人族
シオン
1.48m
ミーナ
1.52m
クレア
1.68m
トム
1.75m
ジェイク
1.9m
カピバラ人族
2.2m
〜〜〜
ヌーターンが乗ってきたドラゴン
25m
根っこ触手の最大射程
50m
邪竜カピバラゴン
60m
機械仕掛けのヌートリア
800m(尻尾含む)




