第20話 クソ能力の使い方
大剣。
渾身の力を奮って相手を叩き斬る武器。
俺自身、思った事なのだが、シオン・クーパーという少女には、矛に似たヤツよりも、彼女の戦い方、性格から考えるに、大剣の方が適していると思う。
大剣といえば、某狩りゲーを思いだす。
それをやり始めて間もない頃、友人Aくん(こしあん派vsつぶあん派の時のAくん)と共に遊んでいたら、『お前、大剣のくせに「通常弾強化」とかつけてんじゃねーよ!「集中」つけろよバーカ!』と、数年に渡ってディスられ続けたので、個人的な良い思い出は無い。
なんて事を考えていると、シオンは遠心力に身を任せ、ヌーターンへと、大剣を振るっている。
先程、ヌーターンの魔術によって発生した雷雲は、シオンの妨害によって、効力を失い消えてしまった。
お陰で月光の下、視界は良好だ。
「ぐぇ!?」
シオンの出鱈目に見える攻撃は、良い感じにヌーターンを疲労させ、ついにはバットでボールを打つような感じでヌーターンは大剣の刃の腹部分によって飛ばされた。
だが、飛ばされたヌーターンはそこで何やら魔術を唱えだす。
否、それは厳密には魔術ではないのかも知れない。
奴が発動させたそれは、エクスカリカリバーの第2の能力『キャメロット・オブ・ビーバーズ』であった。
それも、さっきと同じ大きさのダムをいくつも召喚している。
「流石に反則だろ!?限度ないのか、その能力ぁ!」
俺は思わず、つっこんでしまった。
だがしかし、ヌーターンは一体何をする気なのだ?ただのダムを量産したところで、奴は、この聖剣の力をちっとも理解できていない。
「使い方が分からぬなら、ワタシの力で上書きすれば良いだけなのだぁ!全ては、げっ歯類連合の為にぃ!温泉を我らが手にぃ!」
ヌーターンが聖剣を天を切り上げる様に振りかざした。
……ん?ヌーターンは今、さらっと重大な事を言ったぞ?
俺の聞き間違い、あるいは書き間違いでなければ、奴は『温泉』と言った。
「おい!?今、温泉と言ったか?」
一応、確認をとる。
「そうだとも!ワタシ達がこの村を滅ぼすのは、この地下に眠る温泉の源泉を手中に収め、ここに『温泉要塞』を築きあげる為なのだ!ふっふっふー!」
……。
……前々から、予想はしてた。
カピバラって温泉ネズミって言われるくらい親和性あるし、ここ近辺の地中は温かい。ハダカデバネズミの巣にいた時は、より温かったし。でも、それが目的とは思わなんだ。
「確認させてくれ!?温泉が欲しいだけか?」
「いかにも!」
えぇ……。
ヌーターンは「それだけだ」と言わんばかりに即答してきたので俺は混乱する。
「ど、どういう事なんすか?」
シオンもわかっていないようだ。なら俺が分からなくて当たり前なのだろう。
・・・
ヌーターンはトトンヌ同様、魔術の扱いに長けている。
ヌーターンは何やらブツブツと呪文を唱えると、無数のダム群が一箇所へと集まりだした。
それらを束ねた大きさは、ヌーターンが連れてきた竜が豆粒に見えるどころか、ネスノ村さえも覆い尽くすほどの大きさであった。
「さぁ、立ち上がれ!ヌートリアの大魔神よ!『機械仕掛けのヌートリア』
ヌーターンの掛け声と共に、ダム群だったそれは、超巨大なヌートリアを模したものに変形した。
「まさか、こんなバカデカいゴーレムを扱うのかよ!一体なんなんだあの沼ドブネズミは!」
流石のシオンも、こんなデカブツを目の前にして困惑している。
彼女にゴーレムと呼ばれた巨大ヌートリアは、その場に鎮座したままだ。
あれは、なんたってデカい。その一言に尽きる。木の枝や泥で作られているだろうが、村よりも大きく、都市のようなモノなのだ。
俺はミェルニルを握る。あんなのに、勝てるだろうか?野菜エネルギーの事も少しだけ不安だし、勝てる気がしない。
俺は自分の体内で赤い光が流れている事に気づいた。
「なんだこれ?」
それ以外、身体に特に異常は無いのだが、ちょっときになるな。なんか怖い。
「ふっふっふー!このまま村共々、ペチャンコになってしまえー!」
ヌーターンは今になって、直接的に、村を破壊する気だ。それは困る。
「ピバァアアアアアアアアア!!!」
巨大ヌートリアは、その図体に似合わない甲高い声で咆哮をあげた。
嗚呼、これで終わりか。大根に生まれ、ヌートリアやハダカデバネズミに襲われ、変な名前をつけられ、天使だと思っていたら狂気の化身に目をつけられる。
おまけに不眠症。
転生してからも、する直前からも、ろくな事が無かった。
根っこ触手で巨大ヌートリアを拘束してみるも、流石にあの巨体相手では、役に立たなかった。
気に入っていた飛び蹴りも、東京ドームがなんとかってクソ能力になったので無力だし……。
まぁ最期かと思って、冥土の土産にヌーターンとお話ししてみよう。
「なぁ、ヌートリアの騎士王?」
「なんぞ、大根?」
俺に声を掛けられこちらに視線を向ける。その顔からは、勝ち誇ったような、王者の風格が透けて見える。
「そのでっかいヌートリア、東京ドーム何個分の大きさなんだ?」
対した効果は無いだろうが、飛び蹴りの付属効果を最期に見ておきたかった為に俺はこんな変な問いを投げかけた。
さっき、俺の飛び蹴りをまともに食らったんだし、効果はあるだろう。
「トーキョードームってなんだ?」
「なんすかそれ?」
ヌーターンだけでは無く、シオンも顔をしかめて尋ねてきた。
「……トーキョードーム、一体それはなんなのだ!?美味いのか?強いのか?」
ヌーターンは『トーキョードーム』という単語が頭から離れなくなったのか、よくわからない質問をしてきた。
「くっ!?理解らぬ!トーキョードームってなんなんだ!?」
「んー?マ◯モス怪人10匹分くらい強いんじゃないの?強さ10マンモスってとこかなぁ〜」
「わからぬ!?」
どうやら、ゴル◯ムの最強怪人で例えても理解されないようである。
やっぱ、マグロ食ってる様なヤツはダメだな……。
「くっそー!なんて事だ!?トーキョードームが頭から離れぬ!」
ヌーターンは汗をダラダラと流し、その場にうずくまり頭を抑えている。
【東京ドームで例えられてもピンとこなくなる能力】のはずだが、まさかの精神攻撃へと昇華していたとは、俺自身びっくりしている。
東京ドームつえー!?
クソ能力とか、俺がかってに決めつけていただけのようだ。
ヌーターンはついに、巨大ヌートリアの制御を出来なくなってしまった。
「おいシオン!今がチャンスだ、叩き込むぞ!」
「……」
あれ?シオンから反応がない。巨大ヌートリアに怖気付いて逃げたんじゃないだろうな
「……なんだよトーキョードームって。もしかして世界を滅ぼす古代兵器か……?なんだよ、一体なんなんだ……!ちくしょう、チクショウ!」
ヌーターン同様、シオンも頭を抑え、身体を丸くさせ、歯をガタガタ震わせて、東京ドームを恐れていた。なんでお前まで被害受けてるんだ??
「あっ……そういえば」
シオンには初対面の時、襲われたので、反射的に蹴ってたな、懐かしい。
飛び蹴りの呪いも、エクスカリカリバーの特殊能力と同じく、永続的なモノだったし。
まさか、その効力が今出るとはな……。いっけね〜☆
無差別メンタルバーサーカー大根!ここに誕生である。そしてありがとう東京ドーム。




