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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・大根転生編
2/187

第2話 カピバラ監修、東京ドームの呪い 《挿絵あり》

改稿しました。


ミーナはネスノ村で生まれ、幼い頃より畑仕事の手伝いを進んでやっていた。


最初は両親の負担を軽くしようという親切心からだったが、いつのまにか、やりがいを感じていた。

雨の日も、風の日も、体調を崩した日も、家族や他の村人が止めない限りは自らすすんで、畑仕事に精をだす。



彼女が育てた野菜は、村では評判がとても良い。


もちろん大根そのものが、王族や貴族に献上されるほどに上質な野菜という事もあるが、質に関係なく彼女の育てた野菜からは、やさしい味がするそうだ。


彼女は今日も畑仕事に勤しむ。


事件は昼下がりに起こった。



「わー! 大変だー! 畑の大根が襲ってきたぞー!」


「な〜に〜!? 煮ても焼いても、おろして食べても美味しい俺達の村の大根が攻めてきただとー!?」


「それは大変だわ!? 私達ネスノ村の大根の美味しさは、他の村の雑種(ザコ)どもとは格が違うのよ!? きっと強いに決まってるわ!」


「バチが当たったんだべ! 大根おろしに、ポン酢をかけず、醤油をかけたから大根の神様が怒ったんだべ〜!?」」



大根畑の方が何やら騒がしい。

同時に数人の村人が畑から逃げこちらにやってきた。



「ミーナちゃん、こっちは危険だ! 家の中に隠れなさい」


「……え?」


ミーナが畑仕事で、世話になっているおばさんが顔を青くして腕を掴む。


「い、一体、何があったんですか……!?」


大根が攻めて来た!

という状況を、ミーナは呑み込めていないようだ。



「大根が魔物になって攻めてきたんだ!おそらく畑の大根すべてだと……思う」


「そんな……」


おばさんは悔しそうな顔で彼女に説明した


突然、野菜が魔物になる話などミーナは聞いた事などなかった。

おばさんも「こんな事は初めてだ」と言う表情をしている。


「お兄ちゃんとクレアさん達は、いないんですか?」


ミーナはこの村に魔物が現れた時の為に国から派遣された戦士と、村の自警団を一人でやっている兄の所在を聞く。


「クレアさん達は、村周辺の魔物退治で朝からいない…… ジェイクは、……わからない」


「それより今は早く家に隠れなさ…………い!?」


逃げていた二人は突然、100匹ほどの大根に囲まれた。


その素早さに対し、成す術などなかった。


ミーナが気づいた時には、無数の大根に横にされ、何度も、何度も、空中にほうり上げられていた。

他の村人も同様。大根に捕まりミーナと同じく胴上げされている。


ミーナは謝り続けた。けして彼女のせいではない。だが、魔物化してしまったのは「自分がきちんと仕事が出来ていなかったから」だと思いこんでいた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」と繰り返し唱える。自然と涙が溢れてくる。どんなに辛く、怖くても唱え続けた。


しばらくして想いが通じたのか、彼女の周りから大根が消えた。


ほうり上げられたミーナを誰かが受け止める。


ミーナを受け止めたのは兄ジェイクでも、クレアとかいう人物でも、村の誰でもなかった。


それは大根だった。

大根(かれ)は何も言わず他の村人を助けていく。


大根(かれ)が飛び蹴りを放つたびに一人、また一人と助けられていく。


全員が助かった事を確認すると、大根()は大根畑の方に走り去った。




・・・




「うわぁ……やっちまった」


俺はトトンヌに飛び蹴りをプレゼントした。


トトンヌは現在、上半身がぬかるんだ地面にめり込んだ為、脱出しようと足や腰、尻尾を振って必死にもがいてる。


かわいい。


……いや、そうではなく、俺は大根特有の尖った両足で蹴ったのだ。

それに人や大根が出せるような速度を軽々超越()えた飛び蹴りだ。

無事では済まないだろう。


改めて、考えると恐ろし事をしてしまったものだ。


この事が『動物を愛して護る団体』に知られでもしたら、俺は手足を切り落とされ顎を砕かれ、腹を空かした豚のエサにされる事は間違いないッ!


人間だった前世では、情緒不安定だとよく言われたものだ。


流石にトトンヌが可愛そうに感じてきたので助ける事にした


トトンヌの尻尾を掴み、思いっきり引っ張る。

足場がぬかるんでいるので力が入りにくい。

大根特有の尖った両足のおかげで滑る事はない。


しばらく引っ張るとトトンヌは雑草のように抜けた。


カピバラ一匹、救出成功である。


「ウェッヘェ!?ゲホゲホ……!き、貴様ァ!よくもやってくれたなぁ!?」


トトンヌは泥まみれになりながら、怒りをこちらにぶつけてきた。瞳に涙を浮かべながら。


「いや〜ごめんよぉ、吹っ飛んでいくイメージで蹴ったのに、まさかその場に埋まるとは……」


「もういい!貴様から根菜類の総司令(ダイコマンドー)の地位を剥奪する!……どうだ!悔しいだろう!?もう貴様はただの動く大根だ!!」


トトンヌは頭に血が上ってるのであろう。何が言いたいのかよく分からん。

ただ、顔に蹴り傷が一切なかった。思ったより丈夫らしい。


「トトンヌの旦那には感謝してるぜ今でも。……ただ自分で誓った事を優先しただけ。あんたが、やってる事は、善い事じゃない」


「つまり、我の邪魔をするという事だな……?

良いだろう。我が全魔力をもって貴様を地獄に送ってやる!」


「いいぜ!飛び蹴りしか出来ないが、それだけあれば十分よ!」


大根の大群に勝ったのだ。

カピバラ一匹くらいすぐに倒せる。




・・・




おいおいおいおいおい!?……聞いてない!


トトンヌは魔術とかいうヤバい力を使ってきた。

恐らく俺達、大根が動ける様になったのも魔術の力なのだろう。


カピバラ一匹と思って舐めて近づいたら、火の弾を連射してきたのだ。


直撃はしなかった。しかし大根の葉に何度か擦り、ところどころ焦げてしまった。


こちらは飛び蹴りしか出来ないが、技が磨かれ飛び蹴りに新たな効果が付与された。威力自体は少々下がってしまったものの、得たものは大きいだろう。




『技名』覚醒・飛び蹴り


・効果 蹴った相手に、『東京ドーム』を基準にして土地の広さなどを比較、または説明されてもピンと来なくなる呪いをかける

……この呪いは解くことが出来ません






は?

俺は頭に入ってきた技の新情報に心躍らせていた事 がバカバカしくなった。


流石に可笑しいだろ。何で異世界で東京ドームが出てくるんだ……?


生前、テレビなどで「ここ〇〇は東京ドーム5つ分の広さがある」と説明されても地方民だった俺の頭には「?」が浮かんでいた。


だから何だよ! ピンと来ないだけで殺傷能力は

皆無じゃねーか!


気づけば涙が流れていた。


唯一使える飛び蹴りが強化されたかと思っていた。が、実際は弱体化。

その事実のみが頭を埋め尽くした。




そもそも大根に生まれ変わってしまった事自体、原因は一応知っているのだが、意味不明だ。


なんで、大根なんだ?

俺が大根に対する想いなんて、『おでんうめー!』くらいしか無いぞ?

刺身の下に敷いてある大根、つま(けん)をずっと飾りだと思って手を付けないくらいに、俺は大根に関して無関心だった。

そのせいでバチが当たったかと言えばそうとは思わない。


もしバチが当たるなら、俺はトマトに転生していると思う。



俺は幼い頃より、トマトが大の嫌いで最近はまともに口に入れた事はない。

あの内部の見た目と、口内に広がる青臭さが無理なのだ。


という事でトマト嫌いあるある4選!


1、トマトは嫌いだが、ケチャップやミートソースは寧ろ好物である。


2、テレビや雑誌で紹介される美味しそうな料理に限って、トマトが混入しており、何とも言えない気持ちになる。


3、どの品にもトマトが入っているイメージがあるモ○バーガーには、なかなか行けない。


4、「ミニトマトくらい一口で食べろ」とうながされ、トマトの汁を出さぬ様、噛まずに思い切って飲み込んだら喉にトマトが詰まり、周囲がパニックになる。


トマト嫌いな人には、当てはまると思います!


そう考えてみるとトマトじゃなくて良かった!大根で良かった!


……。


いや、全然よくねぇよ!




「チクショウ!チクショウォ!」


新能力も俺の存在も意味不明すぎて、俺は全てが嫌になった。


前の世界に戻りたい。お家に帰りたい。


俺はヤケクソとなり、トトンヌに飛び蹴りを放つ。


偶然か必然か、俺の両足はトトンヌの腹部に命中した。


「グふぇえ!?」


トトンヌの体は5mほど吹っ飛んだ。


俺自身びっくりしたが、攻撃が当たった理由は別にあった。


「お前がミーナと村を助けてくれたのか?大根同士、仲間割れの次は黒幕の()()()()()と決戦かぁ。 大根の癖に良いやつだな、お前……」


俺とトトンヌ以外にここに一人。

いつのまにか増えていた。


その人物は、カンボジアが天国に思える程、ひでぇジャングルで狩り大好き星人と戦ったり、人類抵抗軍の指揮官の母親を殺す為、未来から送られてきてそうな筋肉を纏った男だった。


俺はこの男を知らない。


「力、貸すぞ大根」


どうやらこの男と、どこかでフラグを建てたらしい。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《2019年3月21日掲載》


勝手ながらイラストの方を描いてみました。




今作のヒロイン

ミーナ


挿絵(By みてみん)




主人公

大根


挿絵(By みてみん)



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