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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・ビーバー卓の騎士編
17/187

第17話 怖い!ヌートリアの進撃

動ける大根になって、2週間が経った。



最近、夜間におかしな出来事が起こる。


何か聞こえるのだ。ガタガタと揺れる音や、獣の様な鳴き声などが。



時は多分、丑三つ時。


俺はネスノ村の夜間の見張りをしている。


この世界の文明レベルは、だいたい中世ヨーロッパだ。


もし俺に、知能と経験が有れば、産業革命を起こし周りから、ちやほやされた甘い人生を送る為に、尽力していただろう。



つまり、この世界に街灯などあるわけ無いので暗い。


月光による照明サポートを期待していたが、生憎の曇り空なので暗い。



『夜間、怖いもの』

といえば、幽霊など非科学的な物が思い浮かぶ。


しかし、夜間に車や自転車を扱う者にとっては、それよりも『怖いヤツら』が居る。


それは、無灯火の自転車だ。


実はそれだけではない。


反射板、ライトなど明かりによる存在証明、安全対策を怠る事で闇に潜み、ジョギングやウォーキングをする者達こそが、畏怖の対象なのである。


サイクリストの世界では前者を『ステルス・ジョガー』

後者を『ニンジャ・ウォーカー』と呼び、恐れているらしい。



「おわぁ!危ねぇ!?」


「おっと!すまない」


俺以外にクレアとシオン、ジェイクの3人が警備を担当しているのだが、不審人物に気づかれない為にも、明かりとなる松明やランタンは使えない。


もう少しの所で、クレアに蹴り飛ばされていた所だ。



夜間は危険が湧いてくる。色々な意味で。みんなも気をつけよう!



この異変は、俺がこの世界の事を本で調べ始めた頃から毎日、起こっているのだ。


最初は1日に一度ある程度だったが、最近は1時間ごとに、発生している。


騒音に悩まされ、数人だが不眠症を患い始めた村人がいるので、俺達が立ち上がった訳だ。


睡眠を邪魔する事は極悪非道だ。


犯人は誰か知らないが、一発殴らないと気がすまない。


「ダイコンデロガ殿も不眠症なのか?」


最近やたらイライラしてたのでクレアに心配された。


「お、俺がー、不眠症な訳ぇないだろー?」


「そうか、元気そうでなによりだ……」


自覚はある。俺は誤魔化したが、その演技力は大根役者だ。大根なだけに……ふふっ。


……。


……(これ)は重症だな。早く事件を解決して安眠したい。



「うわぁああ!」


悲鳴が聞こえた。シオンの声だ。


「シ、シオン!?」


クレアと俺はシオンの声が聞こえた方へ駆け出した。




・・・




俺達がシオンを見つけた時には、彼女と駆けつけた俺とクレア以外には誰もいなかった。



「だ、だんちょ!出たっすよ!いきなり、バーッて!?目が光っててぇ!?」


「ひとまず、落ち着けシオン!」


シオンは腰が抜けたのかその場に座り混んでいた。


暗くてシオンの表情は見え無いが、涙ぐみ震えた声でクレアに訴えかけている。


シオンはこの見張りに参加する予定は無かった。


しかし、俺が『お化けが怖いのかい?』と煽ったら、シオンは顔を赤くして『怖くねぇし!全然怖くねぇーし!ワンパンだし!』とムキになり、作戦の指揮を取ろうと、クレアとマウント合戦を始めていた。


そんな彼女も今は腰を抜かし、クレアの腕を掴んでいる。


トムがいたら、腹抱えて笑ってそうな光景だ。


シオンは産まれたての子鹿の様に、足を震わせ立ち上がった。……クレアの腕は離さないが。


「何かあったのか?」


ジェイクが少し遅れて合流してきた。


「なぁ、ジェイク?それはなんだ?」


俺はジェイクが何かを、掴んでいる事に気付いた。


「これか?今そっちの方から走ってきてたんでな、捕まえた」


ジェイクが捕まえたのは、イタチだった。


「「そういう事か……」」


俺とクレアは察した。


シオンが見た、目が光っていた影とは、このイタチの事だ。


「シオンちゃんはかわいいなぁ!えぇ!?」


「う、うるせぇ!うわぁああん!」


俺は笑いをこらえながら、シオンにトドメの一言(フォロー)を呟くと彼女は泣き崩れ、クレアに屯所へと運ばれていった。


残念ながらシオン選手は、ここでリタイアです。



「なぁ、ジェイク?クレアが今、剣を手放したら相当ヤバい事になりそうだな」


俺は不安を感じた。

今回の件が人為的な犯行という可能性も十分あり得る。

その場合、村の前衛であるクレアは、狙われる可能性は少なくない。


「その時はまたお前が代用品となれば良い事だ」


ジェイクはいつぞやの事をどこで知ったのだろうか?


「それは無理ぞ、あんなのは二度とごめんだ!」


俺は呆れた様にジェイクに突っ込みを入れた。


「ところでダイコンデロガ、根っこ触手という奴で周囲の様子は見れるか?」


「一応、やってみたがこの暗さでは根っこ触手の『視覚』は役に立たないんだ」



「なら、他の五感の機能は使えないのか?」


「どういう訳か光が無いと、根っこ聴覚も扱えないんだ」


自分自身、根っこ聴覚が扱えない事には困惑している。太陽光が無ければ基本的に、根っこの機能の扱いが限られているのだ。


根っこ触手で今出来る事は、手足の代わりに使う事。


切断して、根っこボルグにする事くらいだ。


「ジェイクは腹の方は大丈夫なのか?」


俺は話題を変えた。元々、気になっていた事でもある。

無いと思うが、幽霊にビビって脱糞という大惨事は絶対あってはいけない事だ。


「心配ない。日中こそ迷惑をかけているが、夜間は何故か腹の調子は安定している。それに自身の体の事は分かっている」


「そうか」


ジェイクは先程から空を見上げている。絶賛曇り空のため何も見えないのだが……。



戦闘面では、ジェイクもクレアも癖はあるが有能である為、俺はまたお役ごめんになるのだろう。


楽だから一向に構わないがね。



それからしばらくしてクレアが戻ってきたので、俺たちは行動を再開した。




・・・




そろそろ、前の不審な音から、1時間が経つ。


今度こそ、音の在り方を特定したいものだ。



「グオォオオオオッ!」


何やら獣の鳴き声が聞こえた。


目覚まし音の代わりになるくらいには、五月蝿い咆哮だ。そして、以前から聞こえていた、鳴き声と同じものだ。


「……上か!?」


神経を研ぎ澄ませていたクレアは音の出所を特定したようだ。


だが、上方には雲が掛かっており、星すら見えない。


「!?」


クレアは勢いよく上方へ抜刀した。


振り上げられた剣の先端から、青白い稲妻が放たれ、分厚い雲を貫いた。


雲はそれにより周囲に飛び散り、村周辺は月光により照らされる。


そして何かが、村外れに流星のように墜落した。


墜落音がここからでもよく聞こえる事から、かなり大きな物が落ちたのだろう。


ひょっとしたら未確認飛行物体でも落としたのかもしれない。


「やはり、あの雲は魔術の類だったか……」


ジェイクが呟く。先程から空を見上げていたのはそういう事だったのか。


やはり、先人に知識に関しては敵わない。




・・・




墜落現場に到着した俺たちが見た物、それは大きなトカゲにコウモリのような翼が生えた生物、ドラゴンだった。

頭部だけで乗用車並みの大きさがある程でかい。


「おいおい?まじかよ……」


思わず声が漏れた。


カピバラゴンと違い、本物の竜を見たからだ。


「下手に近づくな、気絶してるだけで生きている」


ドラゴンに近づきすぎた俺を、ジェイクが呼び止める。


それをよそ目にクレアはドラゴンに平気に近づく。


「大丈夫だ。目覚めてもしばらくは、身体を動かせないだろう」


クレアとジェイクはドラゴンに乗り上がり、色々と調査を始める。



「誰かが乗っていた形跡があるな。それに高濃度の魔力を感じる。この異変の犯人に違いないな……」


ジェイクは眉間にシワをよせて語った。



「……っ!」



少し離れた所に何か小さな影が蠢めいている。


「クレア、ジェイク!?アレはなんだ?」


俺は2人に問い、蠢めく影に近づく。


「こいつは……!」


俺を含めたここにいる3人は、その影に見覚えがあった。


その影は上半身が地面に埋まっており、抜け出そうと尻尾や足をバタバタさせている。


かわいい。


以前、同じ光景を見たことがある。


「トトンヌ……!?」


俺たちが見ているのは、どう見てもヌートリア人族の尻だ。


「やはり、貴様らの仕業だったか……」


クレアの表情が険しくなる。


クレアはヌートリアの尻尾を掴み、土から抜こうとする。


その時だった。


「クレア団長!避けろ!?」


ジェイクだけが、異変に気付きジェイクが突き飛ばそうと、クレアに駆け寄る。

死角から、クレアの放つ斬撃に似た何かが、飛んできたのだ。


「ーっ!?」


反応に遅れたクレアは飛んでくる斬撃を背に受け、その場に身体を崩した。


「ふっふっふー!見たか人間!これが我々ヌートリア人族の力よ!貴様らが見ていたソレはただの木偶人形よ!」


何かが、いた。


トトンヌと同じ見た目をしているが、鎧を着込み、片手には剣を持っている。


「誰だお前は!トトンヌじゃないな!」


「貴様がトトンヌ殿が言っていた大根だな?

ワタシはヌートリア人族の騎士王ヌーターン!

よくもワタシの作戦を邪魔してくれたな!この聖剣、エクスカリカリバーで天誅を下してやる!」


「騎士の癖にやる事が汚いぞ!」


俺と騎士王ヌーターンは睨みあう。


「くっ……私とした事が、不意を突かれるとは」


クレアは重い足取りで立ち上がる。


「大丈夫なのか、クレア団長?」


クレアはジェイクに身体を支えられている。


「あぁ、思っていたよりも身体は平気なんだが……」


何かクレアが、俺の方をチラチラと見ている。様子がおかしい。


「……我慢できない。すまない!ダイコンデロガ」


クレアが俺を掴む。


「痛い!クレアァ!痛いわ!」


クレアは俺をかじりだした。


とっさに根っこ触手で彼女を縛り、身動きを封じた。


クレアの歯型が残ってしまった。治るだろうか。


「一体、なんなんだこれは……?」


ジェイクもわからないらしい。


「ふっふっふー!良いだろう人間、特別に教えてやる!その女は、我がエクスカリカリバーの呪いにかかったのだ!」


「なんだと?本物なのか?」


「ジェイク、お前、知ってたんかい!」


「本物という、確証が持てなかった……ヌートリアがビーバー人族の聖剣を持つなど、同盟を結んでいたとしても、あり得ない」


「ふふっ。ワタシは特別なのだ、あらゆる試練を乗り越え、トトンヌ殿の協力を得て、手にしたんだからな!」


「ところで、どんな呪いなんだ?」


急にクレアにかじられたという、キテレツな事実。

一体、どんな呪いなのだろうか。


「この聖剣に斬られた者は、ありとあらゆる物を、かじりたくなる呪いにかかるのだ!恐ろしいだろう!?」


ヌートリアの騎士王さんは教えてくれた。


うん、それは怖いな。まるでゾンビだ。


クレアはこの近くで、一番かじりやすそうな俺を選んだ訳か。


解せぬ。


「ジェイク、呪いは解けるのか?」


「それは、俺にも分からん。過去には、エクスカリカリバーで斬られた者達によって、ジャングルが1つ滅んだという話もある。恒久的な呪いかもしれない」


解けない呪い。


そういえば、俺の『飛び蹴り』にも、実用性がない恒久的な呪いをかける力があったな。


しかし、エクスカリカリバーの呪いは俺の飛び蹴りと違い、えげつなく悲惨な結果を呼ぶ物だ。



どうにかして、呪いを解く術を見つけなければならない。


「ジェイク、クレアを安全な所に運んでくれないか?」


「いいのか?手強い相手だぞ?」


「それは、わかってる。だが、もしジェイクも呪いにかかったら洒落にならないだろ?ここは俺に任せて行け」


もう俺の死亡フラグがビンビンに勃ってるじゃないか。


でも、なんか行けそうな気がするの。



ジェイクは根っこ触手で縛られたクレアを、米俵みたいに担ぐと村へと消えた。



俺はこの、自称ヌートリア人族の騎士王さんと向かいあう。


こいつの名前なんだっけ?


忘れたので、ヌートリア・ペンドラゴンとでも呼ばせて貰おう。



まともに、戦うのはトトンヌの時以来だ。


前回と違い、仲間の助けは来ない。


だが、力はついた。楽に倒してしまっても良いのだろう?


夜間なので使える技は限られるが、なんとかなる。



この戦い、俺の勝利だ!

もう、何も怖くない!


約一カ月の休載をとります。


投稿再開は八月上旬ごろを目処にしています。


詳しく決まりましたら、活動報告でお知らせします。

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