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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・導かれんでもいいヤツら編
15/187

第15話 珍騒動の終幕

「ぜぇ……ぜぇ……」


「キもちワるー……」


息を切らすクレアと、彼女に振り回されて目が回った俺は、村の一角に座り込んでいた。


あれからなんとか、追いかけてくるミーナを、撒くことができた。


とは言っても、長くはここにいられない。


クレアは少しでも息を整えなくてはダメだろう。


とはいえ、どこにいても最終的には、ミーナちゃんと和平交渉を締結させなけれならない。


いつまでも鬼ごっこ、かくれんぼをするわけにもいかない。


俺自身に自由はない。

奪われたクレアの聖剣の代用として俺は使われている。


屯所内と違い、屋外なら代わりになりそうな物はあるはずなのだが、クレアは俺を離さない。


はなして……。



「とりあえず、大丈夫そうだな……」


クレアが周囲を見渡す。


「……なぁ?大丈夫なのか?剣を盗られたままだぞ?」


いくら大根(おれ)を代用しているとはいえ、クレアの精神が安定しているとは俺は思えない。


「あぁ、その事なら問題ない。変に迷惑をかけてしまって、すまない。次から気をつけよ……」


クレアは、ある物を見つけてしまい黙った。


嫌、この場合、()()()()()()という方が良いのだろう。


クレアの視線の先には撒いた筈のミーナちゃんがこちらを無表情で眺めていた。


「「ッ!!?」」


俺とクレアは驚き過ぎて声にならない叫びをあげる。


ミーナと目が合うと、彼女はニタリと微笑んだ。


ヒェ……!


「逃げろや!」


とっさにクレアに怒鳴るように言うと、クレアは思いっきり走りだした。


「まってくださ〜い」


ミーナは笑顔で、クレアの聖剣を引き釣りながら、俺たちを追いかける。


「おいクレア!何か作戦ないのか!?」


「え?私は貴方が考えているものかとばかり……」


ダメだこりゃ。クレアは逃げる事しか考えていないようだ。


俺は怖くて頭が働かない。

それはクレアも同ということだ。



「ヘイ!団長ぉ!」


何者かの声が聞こえた。


「む……!?トムじゃないか!大丈夫なのか!?」


ミーナちゃんのメモ用紙を、直視したが為に精神的ショックを受け、退場した筈のトムが並走してきた。


彼は何かが入った、大きめのずだ袋を担いでいた。


「事情はシオンから聞いた!俺だけくたばってる訳にもいかねぇしな。聖剣が無い今、これで戦うしかない!」


シオン、生きてたのか。それは吉報だな。


クレアはトムから、ずだ袋を受け取り、その中身を確認すると、彼女の表情が緩くなった。


「ダイコンデロガ殿!迷惑をかけたな。もう問題はない!あとは任せろ!」


俺は無事に解放された。


今、ナチャラルに『ダイコンデロガ』って呼んだな。


クレアは、ずだ袋から中身を取り出した。


「なんだあれは!?」


俺は、戸惑った。クレアが手にした物が、あまりにもアンニュイ過ぎて。


「え、えぇ……」


ミーナも困惑した。



クレアが手にした物。それは変わりとなる武器……とは言えないな。しかし彼女にとっては有効打となる代物なのかもしれない。


俺の見ている物が幻では無く、現実だとするならば、彼女、クレアが手にした物は、ナマズだ。


体長100cmを越える、大きなナマズだ。


そう、ナマズだ。キャットフィッシュだ。


ナマズはまだ生きているようで、口をパクパクさせている。


クレアはナマズの尻尾を掴み、上段に構える。


「えぇ……なまず?」


物凄くシュールな光景にミーナも、どうして良いかわからず、戸惑っている。


「なぁトム?あれは何なんだ?」


「クレア団長は、ナマズの使い方が上手いからな。

たまたま今日、そこの川で捕まえてて良かったぜ。後で食うか?」


違う、そうじゃない。


トムに尋ねた俺がバカだ。ナマズの使い方って何だよ。そんな事は聞いていない。


「昔、団長が剣を川に落とした時があってな。その時、変わりにナマズを持たせたら、それなりの活躍をしてくれた事があったのを、思い出してな」


色々、気になるエピソードだな。後で聞いてやる。



「さぁ、ミーナ!気分を落ち着かせるんだ。私にも責任がある。ダイコンデロガ殿を許してはくれないだろうか!?」


「……」


クレアがミーナを諫めるように説得するが、ミーナはナマズに困惑しているようだ。


ミーナから先程までの狂気は、ナマズの出現により、剥がれていた。


ナマズを持ったクレアは、少しテンションがおかしい。


ミーナは困惑しすぎて、フリーズしてしまっている。


ナマズは口をパクパクさせている。


「なぁ、ミーナ!大丈夫!誰もお前を責めない!安心しろ!」


「いやぁ……」


ミーナは、自分がどうしていいかわからず、動揺してている。

ナマズを手にして襲いかかる相手の対処法など、聞いた事ない。


クレアはクレアで、ナマズを手に入れ絶好調のようである。そして無駄に暑苦しい。


ナマズは口をパクパクさせている。


「ミーナ!何故だ!何故わかってくれないんだ!ここまで頼んでいるのに!」


わかって無いのはクレア、お前だよ。


「悪魔に取り憑かれたのなら、私が祓ってやる!すまないミーナ!」


「え……!?ちょっ!?私は……」


「痛いのは一瞬だ!うぉおおお!」


なに言ってんだ?アイツ……。


クレアはナマズを構え、駆け出した。


俺はとっさに動いた。

根っこ触手を伸ばし、クレアの足を掴む。


「ふんぎゃ!」


足を掴まれたクレアは、勢いよく振り子のように転んだ。


ナマズくんも勢いよく頭を地面に打ち付けた。


遠心力によって、大きな力で叩き付けられたナマズは動かなくなった。


ナマズが、パクパクしなくなった。

死んでしまったのだ。


彼の口がパクパクする事は、二度と無い。

二度と開かぬ、ナマズくんの口とエラ。

君には直接、感謝を言いたかった。


ありがとう。ナマズくん。


勇敢な1匹の尊い犠牲により、今回の珍騒動は幕を閉じた。



俺はもうミーナちゃんに、下手な事は出来ない。

彼女は以前の天使に戻ったが、彼女の狂気は健在のようだ。


俺は何故か抱きしめられた。


「もう、離しませんからねぇ……デロちゃん」


うん、全然癒えてない。

彼女の狂気は潜在的な物らしい。

ジェイクがこの事を知っているかは、俺にはわからない。




結果的に俺の名前は『巡洋艦ダイコンデロガ』となり、一部からは『ナマズ殺しの大根』と呼ばれる事になるのだった。


珍騒動後に『もう、なんでも良いや』と妥協した結果である。




・・・




ワタシは、トトンヌ殿が休戦をしたという事実の真意を確かめる為、一人でネスノ村に向かっていた。


……はずだったのだが、いつになってもネスノ村に着かない。


気づけば一週間が経ち、ワタシは海岸沿いにいた。


どうやら、行く方位を間違えていたらしい。


朝、トトンヌ殿が日の有る方へ行ったので、ワタシも日の有る方へ進んだのだが、どういう訳か、逆の方向へ進んでいたらしい。


ワタシは一度来た道を、戻る事にした。


ワタシにはトトンヌ殿やヒパビパ殿を始めとした、『げっ歯類連合(ローデンティア・ネオ)』の加護がある。


おまけに、竜族を使役する事もできる。

その力を生かし、ワタシにはビーバー人族より授かった聖剣『エクスカリカリバー』を使う才がある。



ワタシは、ヌートリア人族の騎士王ヌーターン。


次こそ、ネスノ村に向かう。











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