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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・導かれんでもいいヤツら編
13/187

第13話 重巡ダイコンデロガ

俺の名前をミーナに考えて貰っている。


それを告げた途端にクレア、トム、シオンの態度が変わった。急に。


前述の二人はともかく、シオンがあそこまでマルくなる事は、予想などできなかった。


シオンは初対面の頃の聞き分けの無いバカさ具合が好きだったのになぁ。

彼女には、もっとのびのびと自由にしてもらいたいものだ。


俺は彼女らを追いかけようと、思ったものの、先程と同じ対応されるかもしれないので、今はやめておこう。


しばらくここで俺は、棒立ちすることにした。



俺がアホみたいに棒立ちを開始してしばらくすると、ミーナがこちらにやってきた。


俺を見かけると彼女は手を振り、顔には笑みが浮かんでいた。


「ミーナちゃん、やけにご機嫌だね。何か、良いことでもあったん?」


俺の問いに彼女は笑顔で頷いた。


「……決まりました!大根さんの名前がついに決まりました!」


「お、マジか!」


彼女は、右手に紙を持っていた。




・・・




その頃、クレア・フィンバック、シオン・クーパー、トム・スミスの3人は、屯所付近の物陰に集まっていた。


「なぁ、団長。……俺、変な夢を見たぜ。あの大根の名前、ミーナちゃんが決めるっていう夢をな……」


トムは囁いた。壁にもたれ、腕を組み、己が聞いた事を否定するように。


「奇遇だな、実は私も同じ夢を見たんだ。昨日も今日も重労働だったから疲れてるんだろう。ハハハハ……」


「いや、団長!?夢じゃ無いっすよ!?トムも変な事言うんじゃねぇ!黙ってろ!」


シオンは現実逃避する二人にツッコミを入れた。


「どうするっすか!?あの大根は性格こそゴミ野郎っすけど、実力はマジでツエーんすから、変な名前付けられでもしたら……」


「シオンよ。オメェの気持ちも分かるけどよ。今の俺達にゃ、何も出来ねぇのよ。辛いけど。」


「トムは黙ってろ!もう名付けに関して、ミーナさんに任せるのは、懲り懲りっすよ!今まで、何人犠牲になったか、忘れたんすか団長!

マサ子も、ブラックヘッドスナイパーも、名付けたのは彼女なんすよ!?」


「わ、私はしばらく、剣を手放すよ。事態が終わったら私を探してくれ……!」


「何バカな事いってんすか!?それ現実逃避っすよね!?」


シオンは、剣を押し付けて来ようとするクレアに必死に抵抗する。


「おい団長!バカ!ミーナちゃんが現れたぜ!」


トムの呼びかけに二人は黙り、ミーナを見た。


ミーナは彼女らに気づく事なく、屯所の方に向かった。


「あの先は、大根がいた所だな。右手に紙を持ってた所から、名前が決まったのかもな……」


「団長、どうするっすか?」


「とりあえず接触しよう。下手したら死人が出る。屯所の中なら、安全だろう。二人も何かあったらフォローを頼む」


「「了解」」




・・・




やっと、俺に名前が付くのだ。しかも名付け親は、大天使ミーナエル。


彼女と話していると、さっき何処かへ去ったクレア以下3名に「立ち話もなんだから」と屯所の中へ案内された。


なんで、そんな良待遇されるのかわからない。



屯所内のロビーに通されたものの、クレア、シオン、トムは黙りこんでいる。


彼らの目的がわからない……。


「あの……そろそろ良いですか?」


俺がこの状況に困惑していたせいか、ミーナに心配された。


「あ、ごめん。良いよ!どんな名前を考えてくれたんDAIっ!?」


気分を変えようとノリを変えたが、ミーナに同情されたのか、苦笑いされた。


一方、例の3人は不動である。


現在、彼女ら3人、俺とミーナの計5人しかいない為、場は無人の様に静寂している。



「……では、名前を発表します!」


ミーナは背筋を伸ばし表情は朗らかとなる。


やっと、俺の名前が決まるのだ。


固有名というものは、とても大事である。


それは昨日、そして今日の野菜獣大根の襲撃でわかった。

俺に野菜獣大根の討伐をさせなかったのは、クレアとジェイクに言われたように、判別が困難だからである。


そして、大根としての自分の名前が、やっと決まる。


ミーナの事だ。変な名前には、ならないだろう。


どんな名前になっても俺は後悔しない。


ミーナは一呼吸起き、俺の名前を発表する


「巡洋艦ダイコンデロガです!」


「……」


「……」


「……」


「……」


ミーナが発した言葉に、この場にいる俺を含めた全員が黙る。時間の流れさえも、黙った気がした。


今、ミーナは何か変な事を言ったな。


おそらく、名前では無いだろう。

仮に名前だとしても、酷い聞き間違いだろう。


「……あの、もう一度お願い」


確認のため俺はもう一度、ミーナに尋ねた。


「巡洋艦ダイコンデロガですよぉ」


「……」


「……」


「……」


「……ぷっ」


再び、この空間の万物が黙った。


今、笑った奴だれだ?




・・・




「めぇ〜〜」


ヤギが崖を、駆け上がる。


上に草原があるからだ。


「めぇ〜〜」


ヤギは崖を登る。

蹄でカツカツとリズムを刻み、崖をジグザグに登る。


彼らヤギにとって、こんな崖登りなど朝飯前である。


わざわざ気にかける程でも無い。


が、あと一歩の所でヤギは足を踏みはずした。

唐突にに真上に現れた影に、驚いたからだ。


ヤギは真っ逆さまに落下した。


「めぇ〜〜〜!!」


ヤギの断末魔が辺りに悲しく木霊した。




・・・




「巡洋艦ダイコンデロガですよぉ〜」


嗚呼、駄目だぁ!


まったく、()()()()()()()()()を挿入して、この現実を否定しても、変える事は出来なかった!


ヤギは報われない。



ミーナはネタでは無く、本気で言っている。


『三度目の正直』という言葉を信じて、確認をとるもやはり答えは変わらず『二度あることは三度ある』であった。


満面の笑みと自信に満ちた表情に、神聖さをトッピングしたような顔で言っている。


嘘であって欲しいが、嘘ではない。


「あの、一つ質問良いかな?」


俺はミーナに問いかける。

それはこの村に来て、一番気になっていた事だ。


「この村にいる馬に、マサ子とブラックヘッドスナイパーって名付けたのって……」


「はい、私が名付けたんです。皆さんには喜んでもらえました」


お前だったんかい!

やっぱりそうか、そうなんだ。


ミーナは自分のネーミングセンスに、違和感を感じていない。


彼女は、完全な善意でやっている。

逆に、善意以外は何もない。

それがミーナという少女なのだ。


彼女の笑顔を目の当たりにしていると、拒否する事など出来ない。


「な、なぁ……ミーナ?ホントにそれで良いのか?」


今まで黙っていたクレアが、ミーナに声をかけた。


「はい、私が考えた中で、一番カッコよくて、強そうな名前なんです!」


ミーナの眸に、一切の濁り無し。


そっかぁ……『強くてカッコいい名前考えてる』って言ってたなぁ、君。


普通なら皮肉に聞こえる。


『巡洋艦ダイコンデロガ』ってなんだよ。

『タイコンデロガ』をもじった、ダジャレじゃねーか!


第一、なんで向こうの世界のネタを、お前が知ってるんだよ……?


「(お、おい、大根の旦那ぁ!悪い事は言わねぇ。キッパリとここは断るべきだぜ?)」


トムが助言を囁いた。


確かにこの『巡洋艦ダイコンデロガ』など常軌を逸している。拒否するべきだろうか。


「なぁミーナさん、もう一度考えるべきっすよ!ちょっと派手っすよ!もう少し普通にシンプルな名前の方が良いっすね。『ジョン』とか」


シオンよ、俺はペットじゃないんだぜ?


『人』としての名前をくれ。大根(おれ)にも人権は必要だ。


「ちなみに、他にどんな名前を考えていたんだ?」


クレアがミーナに、恐る恐る尋ねると、ミーナは握っていたメモ用紙を見開く。


「えっと『天帝グレートデン・タチバナ』

『超時空クリケットニンジャ・タカノブ』

そして『巡洋艦ダイコンデロガ』の三つで悩んでいたんです」


なんだっそら!?


ミーナは独特な世界観をお持ちのようである。


だが、人につける名前ではない。

もちろん、馬など動物にもつけたらダメだ。


「なぁ、ミーナちゃん?少しそのメモを見せてくれないか?」


「え!?」


俺は彼女が持つメモ用紙に、何が書かれているか気になり聞いてみた。

ミーナは見られる事に対抗があるのか、メモを握りしめ、恥ずかしがっている。


俺は、クレアに視線を送る。彼女は俺の考えがわかったらしく、シオンとトムに視線を送った。


「あ!?空飛ぶ牛だ!」


「あー、ホントだー!」


シオンは唐突に叫び、トムが便乗する。


ここは屋内だ。そんなもんで、誘導できる訳ないだろ。引っかかるのは、お前(シオン)くらいぞ?


「えっ!?どこですか!」


……訂正しよう。ミーナちゃんが引っかかったわ。


彼女は勢いよく立ち上がり天井を見渡す。

見えない事に気づかない。


入れ食い良すぎだ。ミーナちゃんと空飛ぶ牛の関係を知りたいが今はそれ所ではない。


ミーナの隙をつきクレアは彼女を羽交い締めにした。


「今だ!ダイコンデロガ!」


クレア達の強力な協力のおかげで、俺はミーナからメモ用紙を奪う。


そのメモ用紙には、この世界の文字を覚えきっていない俺でさえ、正気を保てなくなる内容が書かれていた。


内容については、ご想像に任せよう……。


「うわぁあああああ!?」


俺は叫んだ。目の前に書かれている事に恐怖を感じたからだ。


初めて目にしたが間違いない。これは禁書指定受けてもおかしくない。


TRPGなら、SAN値チェックを必要としているだろう。

1D10/1D100なら、3割削られた気分である。


「大根の旦那ぁ!大丈夫か!?」


トムが俺の急変に心配し声をかけてきた。


「一体、何が書かれているんだ?」


怖いモノ見たさであろう。トムは禁書(メモ)を見てしまった。


「こ、これは!オェ……お、俺は、もう関わるのはゴメンだぜ。今日はもう寝る!……ウップ」


トムは血相を変え、屯所から飛び出して行った。


彼の受けたショックはかなり大きい。俺はメモをミーナに返した。


クレアとシオンは、メモの内容が気になっていたようだが、俺とトムの反応を見てその気が失せたようだ。


「……なんかゴメン」


俺はミーナになんとなくだが謝った。


そして世の中、知らなくても良い事があるという経験を積んだ。


「……」


俺の謝罪に対し、ミーナは無言だった。


しかし、ただ単に無言というわけではなかった。


ニタリと笑いながら俺を見ていた。


「ヒェ…」


俺は腰が引けた。


「責任……とってくださいネ?デロちゃん?」


『巡洋艦ダイコンデロガ』という名前は確定されたようだ。

『デロちゃん』なんて呼び方されたら、脳が解けるよー。


否、そんな事を言っている場合ではない!


ミーナの表情は、逃げ場所をロストした獲物を、目前にした狂気(けもの)の眼だ。


「デロちゃん、逃がしませんよぉ」


俺は逃げようとした。だが逃げられなかった。


蛇に睨まれた蛙。

今の俺はその『蛙』だ。

動けない。逃げれない。


優しさを擬人化した大天使ミーナエルは堕落し、闇に塗れてしまった。俺たちのせいだろう。


でも、ヤンデレ属性を追加したミーナちゃんか……。


嗚呼、それはそれで良いですなぁ〜。












……誰か助けて。

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