第96話 んんwww ご注文はうさぎですぞwww
ウサタンは、地面を隆起させ、レイラを担ぐ俺の動きを封じにかかる。
おまけに盛り上がった土壌は、鋭く尖り、用心していても、串刺しになってしまいそうだ。
『常に神経を使う戦い方は、ストレスでしかない』と、今更だが嘆きたい。
「捉えた!」
ウサタンは邪悪な笑みを浮かべる。
突き出た大地から抜け出すために、俺は飛び跳ねたが、それが仇となってしまった。
ウサタンはピョンギヌスの槍を構えると、槍の先端から黒い稲妻がバチバチとほとばしる。
ウサタンは槍を一振りし、漆黒の雷電を俺ら目掛けて放つ。
ブラックサンダーおいしいよね! ……いや、そうではない。
あー大変! 迫り来る雷撃を避けられない!
「!?」
そんな俺と黒雷の間に割り込むように、何かが飛んできた。
それは大剣だ。
黒雷は大剣に直撃すると、四方八方に弾けて消えた。
大剣が俺を守るように、どこからか飛んできてくれたのだ! ラッキー! 超展開バンザイ!
その代わり、俺達を守ってくれた『唐突に現れた大剣くん』は、黒焦げとなってしまった。 あとで弔ってやろう。
……はて? 過去にも似たような事が有った気がするのじゃが?
「デロ先輩! おまたせしたっす!」
なんか忠犬のキャンキャンとした声が聞こえる。
声の方を見た。
そっちは大剣が飛んできた方向だった。
大剣を投げたのは赤毛虫犬メイドと呼んでいる少女、シオンだった。
「お前、生きとったんかぁ! ウェーイ!」
なんか色んな感情が混ざった声が出た。
いや、そもそも死んでない。
「すみませんっす! とりあえず間に合って良かった!」
思い……出した!
かつてヌーターンと戦ってた時、今と同じく雷撃にやられそうになった時に、シオンは自分のハルベルトを犠牲に、俺を守ってくれたんだっけ?
流石は忠犬、誉れなり!
「くそっ! もう復活したの君!? まあ、いいや!一人二人増えた所で、今の僕には敵わないに決まってるよ!……って!? あわわ!?」
ウサタンの足元に雷が落ち、ウサタンは驚き戸惑う。
ここは雨など降らない乾いた大地。おまけに快晴。
魔術でなければ、落雷が起きるはずがない。
「確かにな。 怪我人が、一人二人増えたところで何も変わらないかもしれんな。なら試してみるか?」
全身に銀色の鎧を纏った騎士がいた。
その騎士の右手には、稲妻が巻きついた聖剣が握られている。
あの聖剣は、俺が刻甲にさっき預けた奴だ、
「クレア!?」
俺は騎士の名を呼んだ。
「またせたな! よくわからんが、刻甲のインコと鳩尺様には世話になった!」
「ポポポポポポポ!!」
クレアの側には、ウサタンとの交戦中に、どこかへ逃げたと思っていた鳩尺様がいた。
そうか、鳩尺様は彼女達を連れて来るために戦線離脱したわけか。
よく見れば、クレアとシオンの周りにはインコが飛んでいる。
『小鳥箱』から出てきたインコ達だ。
このインコ達と、ドン・グリードの頭に居座ったおしゃべりインコが互いの情報を交換し、ここへ彼女達を招く事が出来たようだ。
あのおしゃべりインコは、ただのおしゃべりじゃなかったんだなぁ。
レイラをはじめ、シオン、クレアは、それぞれ違う場所から現れた。
一体、ウサタンはどんだけ『亜空間格納庫』のゲートを設置して回ったんだ?
物小屋や、この川辺付近に3つもゲートを設置するとか、意味あるの?
幾ら何でも多すぎでしょ!
マインク○フトの湧き潰しくらい徹底してんなぁ! おい!
ついにウサタンによってバラバラになっていた者達が集結した。
ウサタンは、毛をレイラに刈られた事でとてもお怒りである。
怒りというのは、冷静さを失わせる。
普段しないようなミスを犯しちゃう事だってある。
クレアは剣から雷撃を飛ばし、俺達の周りの突き出る岩石を一掃した。
これでウサタンから距離を取りやすくなった。
ウサタンは、槍を構えてこちらに突進してくる。
同じ槍使いのフーリーとはまた違った豪快な動きで槍を操っているようにみえるのは、その巨体によるものだろう。
ウサタンの槍を、俺はレイラを庇いながら、慎重に躱していく。
ピョンギヌスの槍にかすった場合、何が起こるかわからないからだ。
「こっちも忘れてんじゃねぇぞ!?」
ウサタンに迫るのは、何も急遽駆けつけたシオンとクレアだけではない。
体制を立て直したドン・グリードもいる。
彼はウサタンに向かって木ノ実を吹き飛ばす。
それに合わせるように、クレアも放電しながら斬りかかる。
ウサタンは自身の周りに膜、バリアを張って攻撃を防ぐ。
「シオン! レイラを頼む!」
「了解っす!」
二人がウサタンを食い止めてくれたお陰で、距離を離す事が出来た。俺はレイラをシオンに預ける。
それから俺は再び、ウサタンの元へ突っ走る。
「わしも援護するで!」
「ポッポー! クルッポー!」
アードバーグと鳩尺様もウサタンを食い止めに入る。
ウサタンは毛を刈られようと、数人を相手にしようと、決して怯まなかった。
「これでも喰らえや!」
アードバーグはモップから泡を大量に沸かせる。
泡は流れ続け、ウサタンの足にまとわりつく。
「う!? 小癪な!」
ウサタンは泡によって、下手に動けばコケてしまうと察して、背中に生やした翼を羽ばたかせる。
それは飛ぶために羽ばたいたのではない。
ウサタンは翼を羽ばたかせる事で、泡諸共、俺達を吹き飛ばす気らしい。
阻止したいが、ウサタンも魔術による飛び道具、火球や黒雷を無作為に飛ばしてくるので、無用心に動けば、焼き鳥にされるだろう事は俺でもわかるし、ここに居る者は皆理解している。
『戦闘』を知っているからこそ、誰も手を出さない。
だから、下手に近づく事など出来そうにない。
けれど、このままではウサタンが泡を飛ばしてしまうだろう。
「クーソーウーサーギィイイ!」
ところが『戦闘』を知らない奴がいれば話は別である。
泥に塗れた一人の少女が、右足を引きづりながら、走ってきた。
その姿は、まるでゾンビだ。
その少女はゾンビよりかわいいが、ゾンビよりも厄介だ。
そして何より、ゾンビよりも面倒くさい奴だ。
その少女は、俺の妹であり姉であるダリアちゃまだ。
彼女は脚をつり、ウサタンのもふもふパワーによって戦闘不能になったものの、なんとか復活したようだ。
ここは砂漠であるが、ダリアの周りの空気は冷えていた。
ダリアちゃまが泡に近づくと、泡は瞬時に凍結し、ウサタンの足は固められてしまった。
もちろん、ウサタンも抵抗する。
自身の足を、魔術で発熱させ氷を溶かす。
ウサタンは、ドン・グリードとクレアの攻撃も捌かなければならないので、氷を溶かす事は後回しにしたようだ。
「うぉおおおお! くーたーばーれー、っや!」
ダリアちゃまはウサタンに突進していく。
彼女は止まらないのではない。
自分で作った氷に滑って、止まれないのだ。
それを突進する事で誤魔化す気だ。
「グハァ!」
ダリアちゃま渾身の、悪質タックルがウサタンを吹っ飛ばす。
ダリアちゃまとウサタンは川まで滑り続け、そのままボチャンと落ちた。




