第95話 設置しすぎたゲート
俺達はウサタンを弱体化させた後、ドン・グリードのアーモンド弾により、ウサタンを川へ吹っ飛ばした。
これで安心! と、思うじゃん?
ところがどっこい!
川から上がってきたウサタンは前よりデカく、強くなってたんだよ! ふざけんなよ(笑)
せっかくの連携が無駄じゃないか!? クソがっ!
ウサタンは優しい表情をしているが、彼の瞳からは、俺達に対しての憎しみや殺気を感じられる。
以前と立場が逆転してるようだ。
「……まず最初に、君らの仲間3人に魔力を与えた。
次いで魔眼を破られ魔力が萎んだ。これは致命的さ、対価は払ってもらわなきゃ納得いかない!
さらに、君らを倒すために四大元素を用いた全ての魔術を使った。これで、魔力を無駄に使い過ぎちゃったよ……。
とまぁ、ここまで魔力を消費したのは初めてだね。
でも、改めて考えれば、『野菜獣大根の特異点』『バーディア王女様の覚醒』更に『ギャングスター、ドン・グリードの参入』や『アライグマ人族の洗浄術』……これだけ揃っちゃってたなら、力を過度に使ってしまったのも、納得するよ。
……だから、僕は君らに敬意を持って、叩き潰す!
この姿は僕が今使える全魔力、全能力を総動員した姿だよ! 魔王の本領を発揮してあげるよ!」
巨大なウサギと化したウサタンが思い足取りで、川から上陸してくる。もちろん二足歩行で、だ。
ウサタンはブツブツと、独り言を言っている。
魔力を消耗した理由って、魔眼を破った事以外、君の勝手ですよねぇ?
逆ギレはやめていただけませんか!?
迷惑ですわよ!
彼の怒りの沸点は等に超えている。
さっき述べた聖剣を使った作戦、アードバーグの洗浄術後は無駄じゃなかったので、一安心。
そして、ウサタンがブチ切れたのも、その作戦が成功したからだ。
こりゃ、大変だわね。
俺達は身構えた。
ウサタンは濡れた体を震わせ、水分を飛ばす。
それは犬とか、動物がよくやる仕草だ。
そう思っていた。
だから異変が起こる事を予想出来なかった。
「ぐぉおおお!? なんだこの、モフモフ!?」
俺は捕まれた。ウサタンに。
水を飛ばすために身体を震わせたのはフェイク。
瞬間的に高速で動き、俺を捕らえたという事だ。
「くっそ! デカイくせに、早く動きやがってぇ!」
どうやら、ドン・グリードもウサタンに捕まったようだ。
「へっへー、まず二人ゲットー!」
ウサタンは巨体に似合わない無邪気な声を上げている。
とてもご機嫌のようだ。
俺は素直に捕まっている気は無い。
根っこ触手を伸ばして、ウサタンを攻撃する。
しかし、いくらウサタンの身体を束ねた根っこ触手で殴っても、モフモフな剛毛により、衝撃、威力を緩和され、無意味となってしまう。
このまま、チェックメイトとなってしまうのだろうか?
「オバカサンハ、カワヘ、センタク二、イキマシタ。……ジュンビ、デキタヨ、デキタヨ! ピーちゃん、ナガレテキマシタ」
そんな状況でも、ドン・グリードの頭のインコは喋り続けている。
「そぉかぁ、ニワトリのヤツに役に立つから持っとけと言われてたが……そういう事か! ……報告あんがとよ! インコのピーちゃん!」
ドン・グリードはインコの言葉を聞き、不敵に笑った。
「ほう……、そっか、ふはは! バカめ! ウサタン! テメェは、俺の能力を使ってやりたい放題してくれてたようだなぁ?」
空気を読まないインコの台詞を聞いたドン・グリードが笑いながらウサタンを煽り始めた。
インコに影響され、ドン・グリードは現状を理解する能力を欠損してしまったのか?
今、ウサタンを煽っても死ぬだけやで?
「何が言いたいんだい?」
ウサタンはイラつきながらも、ドン・グリードの戯言を受け入れた。
ドン・グリードは喋り続ける。
「お前よぉ、ダイコンと王女様を探すために、このイアドネスシティのあっちこっちに、亜空間へのゲートを設置しまくったろ?」
「うん、したよ? 便利だからね使わせて貰ったよ?」
うん、確かにあれは厄介だった。
まさか、潜んでいた物小屋から、3人の刺客が現れるとは思わなかったからな!
「んで、そのゲートの処理はしたのか?」
ドン・グリードは嘲るように、ウサタンに質問した。
「いや? してないよ」
「だろうなぁ……バカめぇ!」
「!?」
ウサタンの後方に、大穴が現れた。
あの穴は見たことある。
物小屋でクレアやシオン達が出てきた、ドン・グリードの『亜空間格納庫』のゲートの出入り口だ。
その穴から人が飛んできた。
動きが早すぎて、誰かよくわからない。
「ん!? お前は、大根達にやられた筈じゃ!?」
ウサタンは急に現れた人物に困惑している。
「ごめんなーダイコン! 迷惑かけたで!」
穴から現れたのは一人の少女。
ダリアちゃまの双子の妹である、暗殺者レイラだった。
「浅はかだったなウサタン! テメェがバカみてーにゲートを、あっちこっちに作ってくれたおかげで、こうやって使わせて貰う事が出来た訳でよ! ちゃんと片付けできねぇのかクソガキ?」
「こんのぉおおお! バカにしやがってー!」
ドン・グリードはウサタンを煽る。
ウサタンは幼さ故か、事が良く進まなくなったせいか、ドン・グリードだけに意識を向けてしまった。
その隙を突き、奇襲が得意なレイラは、短剣を二本、逆手に持ちウサタンへと突進した。
ジョリジョリジョリジョリィイイ!という毛を刈り上げる音が聞こえた。
「うわぁ! 僕の毛を刈り取るなぁ!」
ウサタンの黒い体毛が宙に舞い、辺りに山のようにふり落ちる。
恐らくレイラは、洗脳時に早々に退場となったため、力が余り残っていたのだろう。
故にウサタンに攻撃を与える事が出来た。
ウサタンは急いで魔術の火球を作り、レイラへと放り投げる。
「ぐはっ……!? あとは任せたでダイコン……!」
火球はレイラに直撃した。
不完全な即興の魔術とはいえ、火球に直撃したレイラは倒れる。
『やる事はやった。あとは任せる』と言いたげな感じだ。
全てに於いて早すぎるよレイラちゃん!
もう少し、粘ってくれないかな?
けど君の功績は、すごく……大きいです。
「ああ!? 僕の毛がぁあ!?」
ウサタンが毛を刈り取られた事にショックを受けている隙をつき、もう一度根っこ触手を束ねる。
俺は、レイラが刈り取ってくれたウサタンのボディを殴った。
「ぐわぁああ!」
モフモフな体毛が刈り取られ、スッキリした事で一撃を加える事が出来た。
そして、俺とドングリードはウサタンの束縛から解放された。
「おい、レイラ!大丈夫か!」
俺は倒れているレイラに喋りかける。
「問題ないで! こんくらい……ぐはっ!」
全然、大丈夫じゃないじゃーん。
普通に吐血してるんですけど……。
これって火球に当たったダメージじゃないよね?
まさか、トラウマの遅延ダメージが残っちゃっているのか?
そうだとしたら、ごめん!
「おい、ダイコン! ちんたらしてたらウサタンにやられるぞ、油断するなよ!」
ドン・グリードは悶えるウサタンから距離を開ける。
俺も、倒れるレイラを根っこ触手で担ぎ距離を開ける。
「バカにしちゃってぇ! よくも僕の毛を刈り取ったな! 贖罪はしてもらうよぉ!」
ドン・グリードは殴られた腹部を抑えながら、槍を杖代わりにして、魔術を唱える。
さっきから思っていた事なのだが、魔術を唱える際、詠唱するなり、掛け声をあげるなりと、プロセスをトトンヌやジェイク、魔女のねーちゃんはやっていた。
しかし、ウサタンはノーモーションで速攻で魔術を発動させてくる。
これはウサタンが他よりも、圧倒的な実力者である証明だろう。
ウサタンは、レイラを担ぐ俺の足元の大地を隆起させてきた。
案の定、ウサタンは魔術を唱えたりする素振りはしていない。
隆起する地面、岩石は鋭く尖っている。
毛を刈りとっまレイラともども、俺を突き殺す気だ。
殺意たっけーな! おい。
串刺しになるのは勿論嫌なので、飛び跳ねて、ウサタンの攻撃を回避する。
ピョンギヌスの槍を介して魔術を使っているのか、飛び出る岩石に触れるだけで、力が抜けてしまう。
「そのバーディア人は許せない! 僕の体毛は金や金剛石、賢者の石より価値があるに決まっている!だから許せない!」
ウサタン、そこまで、自分の体毛を愛でたのかよ。
『色欲』のくせに『怠惰』を担当してやがると思ってたら、物凄く『傲慢』なやつだ。
おまけに『色欲』のくせして『憤怒』でもある。
実際、ウサタンは現在激おこである。
おまけに魔眼の力で他人の能力を奪うので『強欲』も追加される。
ウサタンは一人で、七大罪コンプリートするかもしれない。
あとは『嫉妬』と『暴食』だけだ! 目指せコンプリート!




