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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
ネスノ村・大根転生編
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第1話 ロクでもねぇ物語の始まり



結論から言おう。


俺は不幸にも死んじまった!

しかーし、急に現れた神様の情けで、異世界へと転生することができた。


……が、この世界に生まれてから数ヶ月間ずっと土の中にいる。 クソッタレ!


体は全く動かせない。出来る事は周囲の声や音を聞くことのみ。


そしてわかった事がある。

ここはネスノ村という農村で、細かく言うとそこの大根畑らしい。 つまり……


俺は「大根」に転生したらしい……。


なるほど、何故土の中にいるのか、体が動かせないのか納得出来る。


……いや、出来ねぇよ!


「何故、大根なんだ……」と悲しみと怒りと絶望にリンチされた俺は自殺を考えたが大根なので、もちろん出来るわけがないのだ。


そんな俺を神さまは見捨てなかった。


悪いことばかりではなかったのだ。



「大根さん、大きく立派に育ってくださいね…」


毎日、水やりや畑の手入れをしてくれる女の子がいるのだ。

彼女は優しく丁寧に、我々大根の世話をしてくれる。

姿は見えないが、彼女の優しさは充分に感じる。

前世では異性に優しくされた事なんてなかったから余計に心に響くのだ。……泣ける!



守らなければ……。


俺は心に、そう誓った。


まぁ、ただの大根である限り誓いを守ることはできないがね……。




数日後、事件は起こった。


蠢くことさえできなかった俺(大根)の体に力がみなぎってきたのだ。


手足の感覚を、前世振りに得た俺は迷い無く地上へと身を乗り出す。


「なんだこれ……?」


俺は戸惑う。なにせ周りに手足が生えて、はしゃぎ回る大根に畑は占領されていたのだから。

まさか、俺以外にも大根に転生した奴がいたとは。

と、安心したがどうやら違うらしい。


「さぁ、行け野菜獣大根どもよ! やつらの村を混沌の恐怖に落としてやれ!」


三流小悪党の様なセリフが聞こえたのは畑の中心。


そこには、子供ほどの背丈のボロ布を纏った人物が立っていた。


否、それは人ではなかった。


ネズミだった……。


他の大根たちは、彼の命令に従い村の方へと駆け出していく。


そのシュールな光景に唖然していると、ネズミがこちらに歩みよってきた。


「どうした? お前も早く暴れまわるが良い」


「貴方が俺らに力を、くださったのですか?」


質問すると、ネズミは戸惑いだした。


「何故、貴様は喋れるのだ? 何故、知性があるのだ……? 我の『禁術』によってお前達に力は与えたが、知性など与えてはいない。 会話など出来ないはず」


つまり俺以外の大根には知性はなく、このネズミの命令を実行するだけの操り人形という事なのか。


「なぜだ!? なぜ貴様は喋れるのだ!?」


「お前こそネズミのくせになんで、喋ってんだ!? 舐めてんの? お? お?」



「ネズミではない……我はカピバラ人族の救世主(メシア)、トトンヌである!」


目をクワッ! と見開き、ネズミ改めカピバラ人族の救世主(なんたら)(自称)トトンヌは偉そうに、自己紹介をしてきた。


このげっ歯類に安い挑発をしてみたが、コイツは全く動じない。

かなりの強者なのか?

それともただのアホなのか?


とりあえず、カピバラ『人族』と名乗っているから獣人というモノなのだろう。

異世界ではよくある事だ。

だが、ここまで獣な獣人は珍しい。

普通はケモ耳と尻尾以外は人の見た目をしているのが妥当。


だが、このトトンヌは、二足歩行で人語を話すという事を除けばただの獣だ。



「それで? 俺は村を襲えばいいのか?」


「そうだ! お前達、野菜獣大根の必殺技は『飛び蹴り』だ! 狙ったモノをことごとく屠る威力があるぞ!」


「なるほど!」


「グボァ!?」


トトンヌの言葉通り、俺は『飛び蹴り』をしてみた。


目の前にトトンヌという格好の的があったので、見事に決める事が出来た。


「こ〜の〜馬鹿ぁ! なんで我を蹴ったのだ!?」


近くいたお前が悪い。


トトンヌは、試しに蹴られた事が余程悔しかったのだろう。

涙目になりながら、俺に噛み付いてきた。


「痛い! やめて! 離して! いだだだだだだ!」


これは痛い! 流石はげっ歯類の前歯。 噛まれると洒落にならない。


俺は体を揺さぶり、トトンヌを引き剥がそうとする。



「からーい!!!」


新鮮な大根を齧った事で、トトンヌの舌にはピリッとした辛さが広がった。


「さ、流石はネスノ村の大根! 齧られてもなお、本能で抵抗するとはな! ……恐れいったぞ! すごいなお前!」


トトンヌは俺に関心したようで、手を取ってきた。


よくわからないが、前歯という名の拳を交えた事で、一方的な友情がトトンヌの中で芽生えたらしい。




・・・




トトンヌと仲良くなったので、彼にこれまでの経緯を聞いてみた。


どうやら、ここネスノ村の地下にカピバラ人族にとっての宝が眠っているらしい。


この村の大根は王族や貴族にも振る舞われるほど評判がよく、村の特産品であり村の象徴である。

トトンヌは大根を無くせば村に対して経済的に傷を負わせ村を滅ぼせると語ってくれた。


俺ら大根はその作戦の先鋒。

村に対しての宣戦布告という意味があるそうな。


トトンヌがやっている事は決して良いことでは無い。

だが、彼のお陰で土から出ることが出来た。

彼のお陰で自由に動きまわれる様になった。

……これは感謝するしかない。


「トトンヌの旦那ァ、俺はあんたに感謝してる。

全力で協力させてもらうぜ!」


「頼もしいではないか!好きに暴れてこい。貴様には根菜類の総司令(ダイコマンドー)の地位を与えよう」


「有難き幸せ」


なんやその称号? ……ダッサ。


トトンヌから信頼を得た俺は盗賊気分で村を襲うことにした。


ヒャッハー! 誰も俺様を止められねぇ!

男どもは、皆殺し! 女の子は、ナデナデしてやるぜぇー!




・・・




村の半分は既に幾多の大根により制圧されていた。


村人たちのほとんどは既に屋内へ避難しているようだが、逃げ遅れた人たちも少なからずいる。逃げ遅れた人々は大根たちに胴上げされているようだ。


たのしそう


俺は呑気にその光景を見ていたが、胴上げされている本人たちは、訳が分からないといった顔をしている。

俺自身もなぜ胴上げなのかわからないが、きっとこの世界では特別な意味があるのだろう。

あとでトトンヌに聞いてみよう。


「あれは……ッ!?」


俺の視線がある一点をとらえる。


「うぇぇん……ごめんなさい、もっと丁寧にすべきでした。ごめんなさい……ごめんなさい……」


視線の先では、少女が大根に胴上げされていた。


俺はその少女を見たことは無いが、知っている。

この世界に大根として生まれた時から知っている。


いつも大根(オレたち)の世話を優しく丁寧にしてくれる少女だ。


その少女が泣きながら、大根に胴上げされている。


これは助けな、いかんでしょ。

今こそ誓いを果たす時である。


考えるより先に体が動いた。


大根数匹めがけて飛び蹴りを放つ。


前世では飛び蹴りなどやったことないし、出来るわけもなかったが体が自然に動いたのだ。


「ウギャー」


大根どもが悲鳴をあげながら、周囲に飛び散った。


胴上げされていた少女を保護した後、ついでに胴上げされている他の村人達の救出もはじめる。


「ウギャー」


「ウギャー!」


「ウギャー!!」


大根どもに飛び蹴りを放ちまくり、胴上げされていた村人を全員救いだす。

周囲に生きている大根が、いなくなった事を確認した俺は、トトンヌの元へ戻ることにした。


女の子を泣かすのはダメだ。可愛い子を泣かすのは勿論ダメだが、ブサイクを泣かすのは景観汚染なので、極力控えた方がいい。


例え犯人、黒幕が、キュートなカピバラだとしても許される事では無い。




・・・




「一体、何があったのだ!? 他の大根はやられたか?」


村が静かになった事に異変を感じたトトンヌが、こちらに駆け寄ってきた。


「トトンヌの旦那ァ、俺はあんたには感謝してる。体をくれて本当にありがとう……」


「何を改まっているのだ根菜類の総司令(ダイコマンドー)!? 他の大根はどうした?誰にやられたのだ!?」


トトンヌは俺に目線を合わせ優しく問いかけた。


「トトンヌさん……少し目をつぶっててください」


俺の指示に従い目をつぶるトトンヌ。


「まだか?」


「まだです」


俺は、助走をつけトトンヌに飛び蹴りを顔面にプレゼントした。


「グボォッ」と音と共にトトンヌの上半身がぬかるんだ地面に埋まった。


「あんたには感謝してるけど、村人にしてる事が気にくわない! 女の子がひとり泣いちゃってるんだぞ! これが人間のする事かよ!

って事で、俺はアンタの邪魔をする! ……ごめんね!」




ネスノ村をかけた大根とカピバラの戦いが今、始まろうとしていた。


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