8話 逃避
少女を抱えリタの手を引き宿に走る。
何が起こったのか全くわからないがあんだけ大きな音が響いた場所なら人が寄ってくる筈だ。
もし、他の人に見られたら完全に俺たちは人殺しと見られるだろう
しかも相手は勇者パーティーのグレンだ。
知名度がある分めんどくさい事になりそうだ。
とりあえず宿屋に戻る事にした。
人と会うことはなく宿に着く。
「リタ、直ぐに街を出た方がいいんじゃないか?」
「いきなり街を出ても疑われるだけだと思うから少しここに止まった方がいいと思うんだけど」
少し時間が経ったからなのかリタは落ち着いている。
「誤解してるようだがあの人間は死んでないぞ」
俺が抱ええている少女が会話に入ってくる。
「わ!?忘れてた!」
「忘れてたとは失礼な、妾は貴様らを助けてやったのだから感謝しろ」
「それより君は誰なの?」
リタが腰を屈めて少女と目線を合わせる。
少女は自分で立てるほど回復しており俺の手を握っている。
「妾の名はイブリース。勇者に封印されていた悪魔だ」
悪魔。
少女はそう名乗った。
どこからどう見ても可愛らしい少女にしか見えないが今さっきの魔法を見たら信じるしかない。
「なんで封印されていたのにあのタイミングで解けたんだ?」
あの時に封印が解けるなんてタイミングがよすぎる。
「悪魔と聞いても怖がらないのだな、さすが異世界人」
悪魔と言われても見た目は天使だからね。
ちなみにリタはベットでくるまっている。
リタの場合は家が教会だから普通以上にビビってそうだ。
それよりリタに普通に異世界人って聞かれてるけど大丈夫なのか?
「話は戻すが封印を解けた理由はお主が我に魔力を流したからだぞ」
「特に魔力を流した覚えはないんだけど」
「何を言っておる、お主から妾の肩に大量の魔力が流れておったぞ」
よく考えたらリタとグレンの闘いを見ていた時にずっと肩を掴んでいたかもしれない。
その時に無意識に魔力を流していたかもしれないな。
「なんで、封印されている悪魔様があの場所にいられたのですか?」
小さな声で震えながらもリタが問いかける。
「いつの時代かわからぬが大昔に勇者と戦って負けた妾は魔力が枯渇する呪いをかけられた」
「なんで、勇者はイブリースを殺さなかったんだ?」
「最後まで話を聞け。妾は悪魔だから死というものは存在しない。だから勇者は妾を殺さずに魔力を枯渇させる呪いをかけた」
大体はわかった。
魔力を枯渇して力が無くなったため石化して封印されてたってことだ。
「それならイブリースはもう力を取り戻したのか?」
「お主から魔力を貰ったから一時的に少しだけ力が戻っている状況だ。呪いは消えてないからな」
「なら、俺が魔力をあげないとまた石化してしまうのか」
俺には無限魔力っていうエクストラスキルがあるから魔力枯渇はしないだろう。
イブリースに常に魔力を送ることだって可能だ。
「妾も封印されるのは嫌だからな、お主の奴隷になるしかないのだろうな。お主が妾に魔力をくれるならこの体を差し出してもいいぞ?」
イブリースが着ているワンピースの肩紐をほどく。
美しい少女の裸体が目の前にある。
イブリースの姿はとても美しく理性のストッパーは完全に壊れていた。
そのふっくらと膨らんでいる少女の胸を触ろうとした時、
「だめー!!日向さんは私だけを見てればいいの!」
横で見ていたリタが大声を上げ、俺のそばに寄ってくる。
「日向さんは私のおっぱいを触ればいいんですよ!」
混乱状態のリタが俺の手を掴み自分の胸に押し付ける。
リタさんのおっぱい柔らかすぎる!
俺の右手がリタの大きな乳房を鷲掴んでいる。
それから沈黙の5秒が経った。
「きゃー!!!」
冷静になったリタは何をしでかしたか理解したらしく、顔を真っ赤にして叫んでいる。
「リタ!夜だから」
リタの口に手を抑えるとコクコクと頷いる。
「ごめんなさい、落ち着いた」
「それでお主は妾を助けてくれるのか?」
「まだ状況はわからないけど、助けて貰った恩もあるし魔力は供給するよ」
「ククッ、流石妾の主様だ」
こんな小さな女の子に主様って言われると興奮するな。
悪魔だから年齢的には少女ではないだろうけどロリババアは嫌いじゃない、むしろ好きだ。
「えぇ!?悪魔様と一緒に行動するって事ですか!?」
リタに相談するのを忘れていた。
「リタ、ダメかな?」
「ダメじゃないけど、確かに今さっきは助けてもらったし…」
リタが下に俯き考え込んでいる。
やはり宗教的には悪魔は悪い存在なのか。
「連れて行ったら日向さんと2人の時間が減るし」
小声でブツブツ言っているのが聞こえた。
難聴じゃないから聞こえるんですよ。
リタさん、この場面でなんて嬉しいことを考えているんですか。
「それよりグレンが生きてるって本当か?」
イブリースの魔法を喰らって生きているとは思えないが。
「あの人間は中々の手慣れのようだぞ。まだ生命の反応はする。しかもこの街にはあの人間以外にも3匹も強い匂いがするぞ」
完全に勇者パーティーだ。
あれだけの魔法攻撃を喰らっていてまだ生きているって性格は腐っていてもさすが勇者の仲間だな。
「もし、そいつらが来てもイブリースが倒せばいいんじゃないのか?」
「流石に妾とてこのレベルのパーティーを相手にするのは難しい。全盛期の力があれば余裕じだが、今の力じゃ無理だぞ。それに1人は勇者の血を引いているようだしな」
イブリースはそこまでわかるのか。
確かにこのまま街に残るのは危なそうだ。
「リタ、このまま村に逃げるか?」
「えっ?グレンがいるから村の場所バレているけど大丈夫?」
グレンがリタの村出身だったことを忘れていた。
このまま逃げたらグレンが追いかけるのを辞めるってことはないのだろうか。
それでも村に戻るデメリットは大きすぎる。
「一旦、他の街へ逃げて少し時間を空けて村へ戻るか?」
「それがよさそうですね、それなら西にテオマルタっていう街がるからそっちに行きますか?少し治安が悪いけど、とりあえず逃げるだけなら大丈夫だと思います」
治安が悪いのは仕方がないか。
とりあえずグレンたちから逃げることを優先しよう。
「それじゃあ、荷物をまとめて今から向かうか」
「そうですね、夜道は危険ですけど悪魔様がいるから大丈夫だと思います」
「妾の力がなくても小娘の力があればその辺のモンスターは問題はなかろう」
「私はそこまで強くないですよ?」
リタは充分に強いと思うんだが強さの基準がわからないからなんとも言えないな。
グレンに押し負けてたとは言え相手は勇者パーティーの戦士だからな。
「小娘にはエクストラスキルの守護者がついているから人間の中ではかなりの強者だと見たが違うのか?」
「えぇ!?で、でも私、守護者の発動条件がわからないんですけど」
「守護者は純愛を誓った者の近くにいる時に常時発動するスキルだな。今も発動しておるぞ」
この場には俺とイブリースしかいないから俺に純愛を誓ったって事になる。
こんな俺をそんなにも愛してくれるくれるなんて嬉しすぎてどうにかなりそうだ。
「通りで体が軽くなったり、グレン相手に少しは戦えたんですね」
リタさん早く気づいて!
何か強そうなスキルっぽいしもっと早く気づいて!
「私と日向さんの愛がこうやってスキルで現れるのはすごく嬉しい」
リタが自分の胸に手を当てて俺を見つめる。
「俺も嬉しいよ、リタ」
俺もリタとの愛の結晶が駄目男として出現したんだ。
って嬉しくない!
俺にももっと強くてかっこいいスキルが欲しかった!!
「イチャイチャするのもいいが、早く此処を出た方がいいぞ」
荷物もまとめ終わり、宿を出る事にした。
少ししか眠れてなく二度寝もできなかったがそこまで辛くはなかった。
イブリースが背中に乗っかり重いこと以外は。
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