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4話 ウルフの肉は美味しかったです


リタが倒したウルフの素材をバックに詰めていた。

必要な部位と肉以外は置いていくらしい。


「残った肉はトレントが食べるんですよ」


とのことだ

この世界の植物は動物の死骸などを吸収するらしい。

光合成はしないんですか。

俺はいつも光合成だけをして生きていきたいと思ってるんだが、この世界では植物になる夢は不可能だな。

まぁ、光合成もしているかもしれないが。

森に入ってから2時間ぐらいしか経っていないが、教会に戻るらしい。


「いつももう少し奥に入るんですけど、今日はウルフの群れに出くわして運が良かったです」


満面の笑みでリタが言う。

かわいい。

かわいいし強いし、剥ぎ取りができる。

なんてお得な3点セットだ。

そして俺はいつになったら強くなるんでしょうか。


「今夜の晩はウルフの肉ですよ〜」


スキップするリタ。

少し早い。

小走りをしてなんとかリタの横に辿り着く。

ウルフの肉が意外と重い。

軽く10kgぐらいあるんじゃないのだろうか。

だがしかし、ここで根をあげる訳にはいかない。

なぜならリタは俺の3倍以上の荷物を持っているからだ。


「明日は街にウルフの素材を売りに行くのでギルドにも行きましょう」


「ギルドに行けるのか。街は結構遠いんじゃないのか?」


「歩いて半日ぐらいですよ」


そりゃまた疲れそうだな。

前世は病気で寝込んでいた俺に半日も歩けるのだろうか。

まぁ、太陽の下を歩いているだけで楽しいから大丈夫だろう。


「ただいまー、お姉ちゃん!ウルフの群れを倒したよ!」


特に何も起こらず教会に着く。

昼前に教会を出て今は夕方前だ。

メルツナさんはおじさんと喋っていた。


「おかえりなさい、リタ。今晩はウルフの肉ですね」


あんな化け物を倒したことを報告しても驚かないのは、いつも通りだからだろう。

リタが特別強いのだろうか。

それとも、 この世界の住民は皆強いのだろうか。

前者であってほしい。

みんな強かったら俺の人権がないです。


「明日はウルフの素材を売りに街に行くから」


「わかったわ。後で、買ってきてほしいものをまとめておくね。日向さんもお疲れ様です」


メルツナさんが微笑んでくる。

女神だ。すごく輝いて見える。

これはすぐ疲れも吹っ飛ぶな。


「ムーさん、今日もきてたんですね」


リタがメルツナさんと喋っていたおじさんに声をかける。

ムーさんと呼ばれていたおじさんは身長が高く、筋肉、筋肉、筋肉。

筋肉しか見えない。

この村の人をちょくちょく見るが、ほとんどの人はガタイが大きく、筋肉がすごい。

リタが強い訳じゃなくこの世界の住民が強い説が出てきて悲しい。


「ガハハハ、少しは大きくなったか」


あなたはテンプレ親戚おじさんですか。

ツッコミを入れたくなるがリタの後ろで静かにしておく。


「大きくなるわけないじゃないですか!この前会ったのは3日前ですよ」


リタが笑いながらツッコミをいれる。

俺、こういうおじさん好きですわ。


「君が日向くんか」


ムーさんが俺に声をかける。


「あっ、はい」


コミュ障がでてきて、まともな返事ができない。


「リタを助けたんだって。凄いじゃないか。ガハハハ」


背中をバシバシ叩いてくる。

メルツナさん、その話は嘘なんで広めないでください。


「俺はそんな大した事してないですよ。記憶も失って今は何もできませんし」


とりあえず下手にでる。


「ガハハハ、そんな謙遜するな!まぁ、リタを惚れさせるには無理だがな」


なんでですか。

リタを早く惚れさせてハッピーエンドで終わりたいんですけど。


「リタを狙ってるなら強くなるより、うっ」


リタの拳がムーさんに溝うちに入っている。

ムーさんの巨体がうずくまり、床をコロコロしている。

っていうかリタさん何をしているんですか。

メルツナさんもあらあらって感じで見てるだけじゃないですか。


「ムーさん、大丈夫ですか!」


最初に俺が声をかける。

ムーさんが顔を上げ俺にグッドサインを出す。そして、沈んだ。

ガクッと倒れ気絶するムーさん。

何故か顔を真っ赤にして俯いているリタ。

そしてそれをニコニコして見ているメルツナさん。

誰かどうにかしてくれ。

結局、ムーさんはその場に放置。

リタは自分の部屋に引きこもり、俺とメルツナさんで晩ご飯の準備をすることになった。


「ごめんなさいね、手伝わせてしまって」


「俺は居候の身ですから。どんどん使ってください」


井戸から水を汲み、調理場に運びメルツナさんと料理していく。

料理の知識はないが包丁などの使い方はわかるので、メルツナさんの指示通りに野菜や肉などを切っていた。


「リタは少し照れ屋さんだから、ムーさんにからかわれるとたまにああなるのよ」


たまにああなっちゃうんですか。

ムーさんは定期的にリタに殴られて倒れるんですか。

あんだけ筋肉がある人でも一発殴るだけで沈めるリタはやっぱり強いんだな。

強いというか怪力。


「それにしても、何に照れたんですかね」


「そりゃあ勿論、好きな人に自分の好みのタイプを聞かれるのが恥ずかしかったんじゃない」


メルツナさんは普通に爆弾発言をする。

好きな人?

あの場には俺とムーさん、メルツナさんとリタしかいない。


「リタってムーさんが?」


「そんなわけないじゃない、貴方よ貴方」


フフフッと小さく笑い俺を指差す。

リタさんはいつ俺を好きになったんですか。

そんなフラグは建てた覚えはない。


「でも不思議なのよね。あの子の好みのタイプは弱い人だもの。日向さんはゴブリンの巣を一掃するほどの魔導師なんでしょ?」


それです。

メルツナさんそれです。

弱いんです俺。


「ま、まぁ、アハハ」


乾いた声で返事をする。


「何故リタは弱い人が好きなんですか?」


好みのタイプで弱い人なんて初めて聞いたぞ。


「この村は城壁もない小さな村だから魔物によく襲われるの。だからみんな強いのよね」


ムーさんだって筋肉がすごいからな。

勿論、他の村人もムーさんほどはいかないがかなり筋肉がある。


「人はないものねだりなのよ。幼い頃から筋肉と力ばかり見ていたリタは弱い人に憧れていたのよ。だから幼馴染のプロポーズも断るから困ってたのよね」


なんて無茶苦茶な話だ。


「だから強いといっても筋肉のない日向さんに惚れたのかもしれないわね。だからリタのことよろしくお願いね?せめて記憶が戻るまではそばにいてくれない?」


あんな美少女が俺に惚れた理由が弱くて筋肉がないからか。

俺はこの異世界で俺強プレイをしてハーレムをするつもりだったんだがな。


「はい!よろこんで!」


別に俺強プレイできなくても美少女と結婚できればいいよね!


晩ご飯ができる頃にはリタも部屋から出てきた。

今さっきのことはまるで何もなかったように皿を並べている。


「今日の晩ご飯は日向さんに作ってもらったのよ」


作ったは作ったがほとんどメルツナさんに教えてもらいながらだ。

ちなみにメニューはパンにウルフ肉のステーキ、ウルフ肉シチューだ。

個人的には米が食べたかったがシチューなのでパンになった。

メルツナさんに聞いたところ、この世界の主食は米とパンが半々らしい。

日本とそんなに食文化は変わらないようで安心した。


「日向さんっ!いただきます!」


リタが椅子に座り手を合わせる。

その文化こっちにもあるんですね。

そもそも、俺はどうやってこの異世界の言葉を喋っているのだろうか。

手を合わせて「いただきます」と言うのは日本の文化だ。

偶然、この世界にも手を合わせる文化があり、喋っている言葉が翻訳でいただきますに聞こえてるだけなのだろう。

翻訳がかかっているのかわからないが。


「日向さんの料理、美味しいです」


メルツナさん焼いたステーキを食べながら笑っているリタを見ているとそんな些細なことは忘れられた。






晩ご飯を食べた後はすぐに就寝することになった。

明日の朝は街へ行く為、早く家を出るらしい。

感覚では10時ぐらいだ。

月は無いが、大きな星が2つある。

1つは赤色、もう1つは薄い青色。

それ以外は日本で見た夜空と一緒だ。


「本当に異世界に来たんだな」


ベットの上で夜空を見ながらポツリと呟く。

転生。本当に転生なのだろうか。

もしこのまま眠ったら病室で目を覚ますかもしれない。

もしかしら、現実の俺は植物状態になっていて、夢を見ているだけかもしれない。

怖い。

会ってたったの1日しか経っていないが、俺はリタに恋をしていた。

俺の前世。

本当に前世なのかはわからないが、俺の前世は学校にも行けずに病室での生活だった。

高校は勿論、中学校も持病のせいでろくに登校もできず、友達などいなかった。

会話相手は病院の人と家族だけだ。

病院の中は俺と同年代の人はいなかった。


「俺ってやっぱり、惚れやすいのかな」


ハッキリ言って一目惚れだった。

性格も俺好みの元気で可愛くて従順な娘だ。

だからこそ怖い。

こんな可愛い子が俺の事を好きになるのだろうか。

そんな都合のいい話はあるのだろうか。

この世界は全て妄想なのかもしれない。

コンコン。

ドアのノックが聞こえドアが開く。


「日向さん?起きてますか?」


昼前に見た部屋着の格好と似ている。

ショートパンツの様なものを履いており太ももを露出しており、Tシャツを着ているだけだ。


「中々寝付けなくて、てへへ」


ポニーテールだった髪は解かれていて肩まで髪がかかっている。

リタはてくてくと步いてきて、ベットの上に座っている俺の横に腰を下ろした。


「そうなんだ。俺も中々寝付けれなくてさ」


この世界のことが不安で泣いていたなんて言えない。


「目が赤いです。泣いていたんですか?何か辛い事でも思い出しましたか」


横にいたリタが近づいてくる。

じりじりと寄ってくるリタとの距離がなくなり肩と肩が触れる。

リタの暖かさが伝わってくる。

この暖かさも俺の妄想なのだろうか。


「何か辛いことがあったら私が聞きますよ」


なんで君は今日初めてあった俺に優しいんだ。

何故か涙が出てくる。


「君が、君の温もりが本当に暖かくて、それが嘘みたいで、信じれなくて、なんで俺が生きているのかわからなくて」


言葉が出てこない。

何故俺は今この場所にいるのか。

あの病室はどこに行ったのか。

一人になり現実へと目を向けた時、その恐怖が襲いかかってきた。

気づくとリタは俺の目の前に立っていた。


「私はここにいますよ。日向さんが離れろって言うまで絶対に離れません」


柔らかい身体が俺を包みこむ。

リタの双丘が顔を包み込み、頭を撫でられる。


「私が必ず守ります。たとえどんな事があったとしても」


リタの匂いに包み込まれて、その温もりを堪能した。

それから10分ぐらい俺はリタに頭を撫でられ続けた。


「ありがとう。もう大丈夫だ」


正気に戻った俺の顔は真っ赤になっているだろう。


「辛くなっても、いつでも私がいますからね」


俺はこの優しさに甘えてもいいのだろうか。


「俺は君に嘘をついている。記憶が失っているなんて」


膝の上に置いていた手の上にリタの手を重ねてくる。


「それはなんとなく、わかっていました。今は言えないかもしれませんがいつか日向さんの過去を教えてください」


「ああ、今度またゆっくり話すよ」


過去といってもたいした話じゃないが。

別の世界から来たと言ったら信じてくれるだろうか。

この世界が俺の妄想かなんてどうでもいい。

今はこの暖かさに甘えよう。



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