3話 森です
「ということで、お姉ちゃん!日向さんは記憶が戻るまでうちに住むから」
「わかりました。よろしくお願いしますね、日向さん」
すごく早い展開で僕が住むことが決定した。
メルツナさんもすぐに了承する。
「本当にいいんですか?迷惑になると思うんですが」
「大丈夫ですよ、ここは困っている者を助ける教会です。それにリタを助けてくれた恩人でもあります」
俺が恩人だという設定は完全に忘れていました。
ということならこの教会に少しは住ませてもらおう。
女の子2人と同居なんて最高じゃないか。
「日向さんには、リタの狩りを手伝ってもらいたいです。リタはたまに調子に乗ってしまうので、いつも不安で」
「そうだね、日向さんがいると安心だからね」
俺が強いという設定も忘れていました。
まぁ、リタも強いだろうし心配することはないだろ。
っていうかリタ、調子に乗るって部分は否定しなくてもいいのかよ。
「私が森で狩りをして生計を立てているんです、教会だけじゃこの小さな村では稼げないんですよ」
「教会はどうやって稼ぐんですか?」
シスターメルツナ様のパンツでも売るのか。
全財産叩いて買うぞ。
無一文だけど。
「基本は募金と治療ですね。シスターになる条件は回復魔法が使えるの事です。病気や怪我などは教会で治します」
そんなことまで忘れたんですか?と言いたげなリタが説明する。
この世界には病院という概念がないらしい。
街の教会となると大きくシスターや神父がたくさんいるらしい。
「この世界の常識も結構忘れているんだ。すまんな、これからも色々教えてくれ」
記憶喪失設定がすごくめんどくさい。
転生したと説明したいが説明できる自信がない。
「リタは回復魔法が使えないから狩りをしているのか?」
「いえ、私も回復魔法は使えますが先ほども言ったように小さな村ですので収入が少ないんです。だから私が狩りをしてモンスターの素材などを売って生活しています」
俺もすぐに強くなって狩りができないと負担にしかならないな。
何かしらのチートがあればいいんだが、本当に俺は戦えるんだろうか。
「日向さんの体つきを見ると剣や槍を使って戦っているように見えないので、もしかしたら魔術師だったのかのしれませんね」
魔術師!!
剣で戦う戦士も好きだが魔術師はもっと好きだ。
「魔術師かどうかってどうやったらわかるんだ?」
「ギルドで魔法石を貸してもらえるとわかりますよ。日向さんが倒れた時は荷物もギルドカードも持っていなかったようですしギルドに行けばギルドカードの再発行もしないといけませんね?」
ギルドカードなんて作ったことないから、再発行はできないだろうな。
どんどん話が異世界ファンタジーっぽくなってきたぞ。
この俺のスーパー魔法を見せつけてやりたい。
「これからギルドに行きたいんだけど、無理かな?」
リタに聞くと、少し気まずそうな顔をする。
「すいません、ここは村なので街に行って見ないと」
「それじゃあ、仕方ないか。魔法を使えるか覚えていないし、できるだけリタのサポートをするよ」
魔法をすぐ使いたいようになりたいが、リタに迷惑をかけるわけにはいかない。
話はひと段落つき、お試しにこれから狩りに行くことになった。
女の子には到底振り回せなさそうな両手剣を背中に背負う。
なぜそれが持てるんだ。
試しに貸してもらったが、俺には持つのが精一杯で振り回す気力はない。
「よくこんな重いものを持てるな」
「私も最初は軽いものしか持てなかったんですけど、段々と持てるようになりました」
とのこと。
リタの腕は男の俺の腕より一回り細い。
俺だって男の中では細い方で、リタは小柄な女の子の身体だ。
流石、異世界。
意味がわからない。
結局、俺は小さなナイフを一本持っていくことになった。
戦闘はリタがするらしいので、俺は荷物運びをすることになった。
教会を出ると、周りは畑や田んぼが多かった。
田んぼに稲らしきものがあり、異世界でも米はありそうだ。
「私たちの村は作物で成り立っています。作物の半分以上は街に売りだしているんですよね」
村は大半が畑と田んぼだった。
小さな家がポツポツとあり、大体30世帯ぐらいだ。
すれ違った人たちと挨拶をしたが、大半が50代以上の男性と女性。
「それにしても荷物はすくないな、こんなものなのか?」
「狩りをするので、獲物を持って帰らないといけませんよ」
それもそうか。
狩りの話を詳しく聞きながら、森の奥深くに進んでいった。
森は異世界感を特別感じるようなものはなかった。
リタに指示されたようにキノコや木の実などを採取していた。
狩りと言っても採取がメインなのだろうか。
この異世界は平和だな。
「静かに」
木の実をバックに入れているとリタが俺のそばに来て腰を下ろした。
そこからリタに手を引っ張られ忍び足で移動した。
リタと手を繋ぐこととこれから何があるのか不安で心拍数が上がった。
そこから少し進むと血の生腐った臭いがしてきた。
「ウルフですね、ゴブリンを食べているみたいです」
30mぐらい先に狼のような動物が何かの肉を貪っている。
この距離でみビチャビチャとグロテクスな音が聞こえてきた。
ウルフは4匹いた。
大型犬よりも大きく、大きいウルフは全長4mぐらいある。
黒色と灰色の毛皮に包まれていて、ゴブリンを食べている姿を見ていなかったら犬好きの俺は好きになっていただろう。
「リタ、逃げた方がいいんじゃないのか」
1匹ならまだしも、4匹もいる。
ゴブリンとよく戦うと言っていた彼女でも荷が重いだろう。
「何言ってるんですか?ウルフですよ!お肉美味しいんですよ!」
リタは興奮気味に大きな声を上げ俺にウルフの良さを語ってきた。
勿論ウルフはその声に気づきこちらを振り向く。
「リタ、ウルフがこっち向いてるんだけど。やばくないですか」
正直に言うと足が震えて逃げることすらできない。
こちらに走ってくるウルフは中々のスピードがあり、一瞬で間合いを詰めてきた。
走っているウルフの口は血で真っ赤に染まっており余計に恐怖が込み上がってきた。
「私の強さを見ていてください。必ず守ってみせますから」
リタは細く綺麗な腕で背負っている剣を抜き、ウルフの方に走っていった。
ウルフはリタに向かって飛びかかり、大きな牙を見せ嚙みつこうとする。
リタはウルフの口の中に剣を突っ込み、ウルフを真っ二つにした。
次にきたウルフも首を切断し、その次は体を半分にした。
あっという間に終わった。
ほんの一瞬で全てを終わらせたのだ。
「日向さんがいるから今回は結構持っていけますね」
リタは慣れた手つきで解体をしていた。
腕前が凄いのか、リタに返り血は全くついていなかった。
「凄いね、俺は何もできなかったのにリタは一瞬でウルフを倒して」
「日向さんがいれたから頑張れたんです。守って上げないとと思うと力が湧いてきちゃいまして」
女の子に気を使わせる俺は最高にカッコ悪かった。
戦闘描写無理






