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2話 教会と姉妹


知らない天井だ。

さっきまで何かと戦っていた気がする。

意識がハッキリしないまま体を起こし、周りを見渡す。

タンスや花瓶があるだけでほとんど物も無く、誰かが住んでるとは思えない部屋だ。

もちろん病室でもない。

だんだんと今まで起きた出来事を思い出していく。

夢だったのか?

そう疑問に思ったが、ベットから立ち上がり自分が歩けることがわかり現実だとわかる。

俺はゴブリンとの戦いで死んだのだろうか。

そのまま部屋を出ると少し長い廊下があり、何も考えず適当に歩く。

廊下をまっすぐ歩き正面の大きな扉を開ける。

そこは教会だった。

テレビでもゲームでもよく見たことのある教会だ。

そしてそこには美女がいた。

金色の長いロングヘアーが腰まで伸びており、シスターの格好をしている。

俺が助けようとしていた子に似ている。

もしかして俺が寝ている間に3年ぐらい経ったか?


「怪我などはございませんか?」


透き通った声が響く。

この場に俺とシスターしかいないので俺に話かけてきてるにだろう。


「はい、大丈夫です」


「それはよかったです」


優しく微笑む姿に見惚れる。

なにこれやばい。

こんな美人の人に心配されて、微笑まれたら惚れてしまう。

ていうかもう惚れている。


「それで、ここはどこですか?」


とりあえず疑問に思っている事を聞く。

こんな美人の人がいるなら天国と言われても疑わない。


「ここはヤムアナ村の教会ですよ。貴方は私の妹をゴブリンから助けてくれたそうですね。ありがとうございます」


あの時の女の子は妹なのか。

そんなことよりもあの時、確かに俺は助けようとしたがすぐやられた気がするんだけど。

思い出してみるとすごく恥ずかしい。

あんな自信満々に助けにでて、何もできず返り討ちにされるって、、、


「自己紹介が遅れました。私はメルツナと申します」


「俺は朝間日向といいます。ゴブリンから助けた記憶はあまりないのですが、助かってよかったです」


とりあえず俺が助けたことにする。

名前は本名を使ったがよかったのだろうか。

日本名を使うと怪しまれたりしたらややこしくなりそうだが、咄嗟に偽名を答えるのは無理だ。


「リタから聞いた話によるとゴブリンの群れに囲まれたところを助けていただいたと言ってましたよ。大量のゴブリンを倒して、最後に残ったゴブリンに不意を突かれて頭を打撃されたと聞いたのですが」


嘘ですね。

あの時はゴブリン2体しかいなかった気がするが。

妹のリタさんはなぜ嘘をついているんだろうか。


「リタさんはどこにいますか?少し話したいんですが」


とりあえずリタさんになにが起こったか聞いてみよう。

この世界の事を聞くのは後でいいか。


「リタは自室にいると思いますよ。案内しますね」


廊下に引き返しメルツナさんについて行く。

俺が目覚めた部屋の2つ隣の部屋をメルツナさんがノックする。


「リタ、旅の方が目を覚まされましたよ」


「本当ですか!?よかったです!」


いきなり扉が開きすごい勢いで出て来る。

やはりリタさんもすごく可愛い。

シスターの格好はしていなく、部屋着なのかすごく軽い格好をしている。

履いているズボンも半ズボンで目線が太ももに釘付けされるもなんとか目を逸らす。


「日向さんがお話しあるようなので、私は他にやる事あるのであとはよろしくお願いしますね、リタ」

「わかりました、あとは任せてください」


満面の笑みのリタさん。

すごく可愛い。

こんな娘と2人きりにしてもいいのか?

まぁ、信用されるに越したことはないが。


「それでは、部屋にどうぞ、日向さん?」


「朝間日向だ。日向でいいよ。リタさんって呼んでだらいいかな?」


女の子に下の名前を呼ばれて心が踊る。


「では、日向さんって呼びますね!私のことはリタと呼び捨てで呼んでください」


笑顔が眩しい。

そしてフランク。

ナースのおばさんとしか喋らなかった俺に緊張するなというほうが難しい。

そのままリタの部屋に入る。

部屋の中は女の子らしい部屋ではなかったが、リタの優しい匂いで包まれていた。

俺が目覚めた部屋に私物が混ざった感じだ。

元々女子の部屋に入るのは初めてなので比較対象がないが。


「それでさ、あの時何があったのかな?メルツナさんは俺が助けたって言ってたけどそんな事した覚えがないし」


リタに誘導され椅子に座り問いかける。


「日向さんはあの時、ゴブリンに普通に倒されました」


ですよね。

知っていました。


「その後、私がゴブリンをサクッと倒して、日向さんを連れて教会まで戻ってきました」


ちょっと待って。

どういうことですか。


「えっ、倒せたんですか?」


「あれぐらいなら毎日戦ってますよ」


「でも、あの時悲鳴をあげていませんでしたか?」


悲鳴を聞いたから俺が飛び出して助けに行ったのだ。


「あれは、その、虫がですね。木から落ちてきまして」


リタは俺から目を逸らし明後日の方向を向く。


「なにそれ!俺恥ずかしすぎだろ!!」


恥ずかしさの極まりない。

もう死にたいレベルだ。


「で、でも私すごく嬉しかったんですよ!普段男の人に助けて貰う事なんてないので」


リタが俺の手を力強く握る。

リタのフォローで心が痛い。


「そうだね、フォローありがとう」


俺は半泣きで掠れた声で言う。

俺の手を握っているリタの手はすごく柔らかくて暖かい。


「フォローじゃないです!本当です!助けてくれたことが嬉しくてお姉ちゃんには少し違った話を伝えました」


「少し?」


「はい、少し」


リタは俺に目を合わせずに答えた。


「どこが少しだよ!話が180度違うぞ!俺はゴブリンにすら負ける貧弱なんだぞ!!」


自分で言ってて悲しくなる。

なぜ異世界に来てこんな事になってるんだろうか。

本当に異世界ならチート能力でゴブリンを倒して、今頃はリタに惚れられモテモテハッピーになってたんだろうか。


「そ、そんなことより、日向さんはなんでこんな田舎にいるんですか?」


リタが話を逸らす。

さて、ついにこの話になったか。

なんて説明したらいいんだろうか。

元の世界の話をしても信じてもらえないだろう。


「えーとっ、実は目が覚めたらここに居てな」


記憶喪失大作戦!!

もうここまで来たらやけくそだ。


「ゴブリンに頭を殴られて記憶を失ったんですか!?」


無駄な心配をかけて胃が痛い。

でも今はそれしか方法がないから仕方がないか。


「あぁ、多分それで記憶喪失になってしまったみたいだな」

「でも、私を助けようとしたことは覚えているんですよね?私を助けようとしたのは殴られる前だから覚えてないはずじゃ?」


リタが首を傾げ、鋭い指摘をしてくる。


「そこだけはなんとなく覚えてたんだよ!今覚えてるのは自分の名前だけなんだ」


少し早口になりながら反論する。


「それでは、記憶が治るまで私がお世話をしましょう!」


リタは人を疑うと言うことは知らないのだろうか。

お世話してくれるのは嬉しいがなんだか罪悪感が湧いてしまう。

どちらにしろ行く宛はないからありがたい。


「それなら少しの間お願いしてもいいかな?俺に手伝い出来ることなんかあれば働くからさ」


「日向さんの面倒は私がたっぷり見ますよー」


満面の笑みでリタが言う。

もしかしたら人をお世話することが好きな女性なのかもしれない。

とりあえず、この美少女リタと過ごす日々が続きそうだ。


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